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1 雨屋小智子
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1 雨屋小智子
人はそれぞれ、なんらかの欲望を隠し持っている。
普段はそれを見せないよう、隠して暮らしている。
誰にも言わないように、誰にもバレないように。
例えばそう、うちのクラスの委員長。
雨屋小智子、あめやさちこ。真面目で一年の頃から成績も教師ウケも学年トップ、快出席、曲がったことなどしたこともない三つ編みメガネの女子。
どんな授業も欠かさずノートを取り、テスト前には彼女がメモした「試験に出そうな要点」をまとめた、通称「雨屋ノート」がLIMEで学年中に流れるような「スーパー委員長」でさえも、欲望を隠していたりする。
月曜日の5限目、授業科目は古文。
教師はもうとっくに定年を迎えているにも関わらず、「希望」で教職にしがみついているだけの爺。声は小さく聞き取りにくい。もし聞こえていたとしても、強烈に眠気を誘うような声色なのだ。
まるで眠気を誘う呪文だ。
あと、呂律が回っていないので日本語とは認識されない。「古文を古文で教えている」と揶揄される所以である。
しかし、生徒ウケは抜群に良い。
チャイム通りに授業が終わるし、授業中は居眠りしていても内職していても、一切叱られない。ただし、騒いでいると定期テストから減点されるので、みんな静かだ。
そして、授業が終わるとその日の内容をまとめたプリントを配布してくれる。テストは全てこのプリントから出題される。だからノートを取る必要もない。というか、授業すら不要だ。この配布プリントだけで十分だ。
だから、こと古文に関しては「雨屋ノート」の出番はない。雨屋でさえも必死に眠気を堪えつつ、うつらうつらしていたりする。たぶん真面目に聞いているのだ。だから眠くなる。
ましてや、4限目は体育だ。必死で運動して弁当を食べ、これで眠くならないほうがおかしい。
かたん、と雨屋の手から鉛筆が落ちた。
よし。
俺、鴉間里矢(からすま さとや)は眠気を堪えつつ、ポケットに忍ばせてあった鉛筆キャップを握りしめた。
2限目の終わり、化学室に雨屋が忘れていったものだ。眼の前の席に座っていたから間違いない。
いまどき、鉛筆および鉛筆キャップを使っている女子高生など、このクラスには雨屋しかいないし。
俺はキャップを握りしめながら、眠りに落ちていった。
ふむ。
これが雨屋の夢の中、か。
俺は周囲を見回した。よく見慣れた廊下、見慣れた窓の外、見慣れた教室の群れ。
学校、か。
夢の中でまで学校とは、雨屋ってよっぽど学校が好きなんだな。優等生だし、当然か。
雨屋は1年生の1学期から2年の今まで、成績はずっと学年トップをキープしている。かといってガリ勉タイプ特有の、人を見下したような態度や陰鬱な空気もなく、明るくて女子ウケもいい。可愛いから男子ウケも悪くない。特にトレードマークな三つ編みメガネは、特定の一部男子にカルト的な人気を博している。胸のボリュームもなかなかだ。俺だって何度か夜のお世話になった。
さて、本人はどこだ。
ここは雨屋の夢の中、本人はどこかにいるはず。
色んな人の「夢」を覗き見てきた俺は、どんな人物だって「自分」が登場しない夢は存在しないことを知っていた。夢は必ず、その人の一人称視点なのだ。
(雨屋って、茶道部だったよな)
茶道部の部室、そこへ向かう。新校舎の1階だ。
(あれ)
しかし、1階は存在しなかった。階段に向かうと、1階に続く階段は途中で切れていた。
夢の中ではよくあることだ。どうやら今日の雨屋は、茶道部の部室には用事がないらしい。
廊下を逆戻りし、教室を覗いたが、誰の姿もなかった。
(ん)
声がした。
教室の並んだ廊下の突き当り、「生徒会室」の中からだ。
幾人かのざわめきと、少女の声。
雨屋の声だ。
「・・・・・・やっ、やめてっ」
「大人しくしてろ」
「せ、センパイっ、お、お願いですっ」
「ほら、脚広げろよ。すぐ済むからサ」
「は、離してっ!」
強い、切迫した声。
その中に、少し哀願するような、媚びるような声音も混じっている。
ガララッ。
俺は扉を開けた。鍵はかかっておらず、簡単に開いた。
さほど広くない生徒会室で、数人が女性を床に押し付けていた。というか押し倒していた。
3年生の生徒会役員、男子ばかりだ。副会長が少女の右腕を、書紀が左腕を押さえつけている。
少女の正面、スカートの中へ腰を押し込もうとしているのは、3年のイケメン生徒会長だった。
サッカー部のエース、金髪のキザ野郎。生徒会長のくせに、耳にピアスなんか開けてたりしてちょっとアレなのだが、女子人気は抜群の生徒会長である。
そいつはへへ、とイヤらしい笑いを浮かべながら、少女の両脚を両腕に抱え込んでいた。
そして。
押し倒されている少女は。
(あーあ、こういう夢かぁ)
真面目委員長、雨屋さんが5限目の古文の時間に居眠りしながら見ていたのは、自分がイケメン生徒会長にレイプされる夢、だった。
しかも、だめだめとか言っておきながら、その目は期待に輝いていたりする。
(一応、トラウマっぽくはないけど)
一度、本当に怖い目にあった人の夢に潜ってしまったことがあり、あの時はマジで怖かった。
雨屋の怖い記憶、とかではなさそうだ。ああいうタイプの夢は、だいたい背景も真っ黒だったりする。この生徒会室は明るくて、天井の蛍光灯も明々としていた。
俺はつかつかと生徒会室へ入っていった。今まさにレイプ寸前の場面、そこへ歩み寄る。
「な、なんだテメェ___」
雨屋を押さえつけている生徒会長のアゴを蹴り上げた。
ガシャン、と窓ガラスが割れ、イケメン生徒会長は校舎の外へ吹き飛んでいった。
「て、てめ」
「よくも」
かかってくる、数人の生徒会役員共。
だが俺はパンチを易々と躱し、顔面へのカウンター、ボディーブロー、回し蹴りを叩き込む。
ものの数秒で、雨屋を拘束していた奴らは床に這いつくばった。そいつらはそのまましゅううう、と消えていく。
あとには、床に押し倒れていた雨屋だけが残った。その格好のまま、ぱちくり、とまばたきして俺を見上げる。
「あ、あの・・・・・・からすまくん、だよね?同級生の」
「ああ」
「すごいね、からすまくん、こんなに喧嘩強かったんだ」
「まあな」
これは嘘だ。
俺はひ弱な男子高校生だ。喧嘩などまともにしたのは小学校低学年くらいで、たぶんクラスの中でも弱いほうだ。
だが、夢の中では無敵だったりする。
これは、雨屋がこの世界を作り出しているから、だったりする。たいていの場合、女子が考えている夢の中の登場人物は弱く設定されている。
しかし、そこへ「侵入」した俺は、自分が無敵だと設定している。主に自分の脳内で。
俺が想像する範囲なら、どんなことでもたいてい可能だ。北闘真拳だって放てるし、ツルはめ波も撃てる。飛びコプターで飛んでみたことだってある。見えない天井に衝突して墜落したが。
「助けてくれて、ありがとう」
「・・・・・・いや」
これはお邪魔だった、そう思う。
たぶん、雨屋は最後まで期待していたのだ。だって、窓の外へ吹っ飛んでいった生徒会長、ちゃんとちんこついてたし。しかも、現実にはあり得ないようなデカさのモノが。
雨屋はきっと、「だめ、そんな大きいの、入らない」をしたかったんだろう。無理矢理入れられて、巨大なイチモツの痛みに耐える、ってあたりまで。
「なあ雨屋」
「ん、なあに?」
「したいんだろ?」
「え」
じー、と俺はジッパーを下ろした。
ぽろろん、とあまり大きくない、普段見慣れたモノがまろび出る。
「ちょ、ちょっと、からすまくん」
「フェラ、知ってるんだろ。やれよ」
「そ、そんなの、し、知らな・・・・・・」
うん、嘘だ。
夢の中でまで嘘をつけるほど、雨屋はスレた女の子じゃない。
果たして、言葉と裏腹に、雨屋は床にぺたんと座ったまま、おずおずと俺のモノに手と口を近づけてきた。
きっと知識はあるんだろう。
もしかしたら、ちょっと雑誌で読んだとか、こっそり画像検索とかしたのかもしれない。真面目委員長でも。
行為は拙かった。ほんのちょっとだけ、口の中へ入れただけだ。
喉奥まで咥え込み、ぎゅっと締め付けるような感触は得られなかった。
まあ俺だって、リアルではしてもらったこともないんだけど。
だけど、つたなくとも雨屋が俺の股間へご奉仕してくれている映像は、十分に刺激的だった。
どぼっ。
現実ではあり得ないほどの精液が、大量に噴き出した。
「やっ!」
それは雨屋の端正な顔を汚し、メガネを穢し、制服へと降り注いだ。
これは俺のイメージなのか、それとも雨屋のなのか。分からない。
きっと俺の願望、なのだろう。雨屋に顔写してやりたい、という、歪んだ欲望。
「もう・・・・・・べとべとしてる・・・・・・」
これは雨屋の、精液に対するイメージだ。
きっと臭いもなければ味もしない。もし雨屋が今後男と交わり、口の中に生臭い液体を発射されれば、夢の中でもその味を思い出すかもしれないが。
精液とは、少し黄色っぽい白だ。だがこの液体は真っ白、まるでミルクのような白さだ。やっぱりこれは雨屋のイメージだな。
大量に顔写して少し満足したが、無論この程度で満足できるほど、男子高校生の性欲は薄くない。俺は放心状態の雨屋を、再び床に押し倒した。
「きゃっ!・・・・・・か、からすま、くん!?」
「やらせろよ雨屋」
両手首を頭上で拘束し、上から体重を押し付ける。
スカートをはだけ、ショーツを右手で抜き取った。夢の中だからなのか、するすると抜けた。
いや、きっと雨屋がそうして欲しい、と願っているからだろう。
「だ、だめ!だめよからすまく_____んんっ」
唇を押し付ける。
さっきの白濁液はもうどこにもなくて、無味無臭だ。
唾液まで味がない、というのはちょっと残念だ。せめて淡いレモンの味くらいはつけといて欲しい。
「挿れるぞ、雨屋」
「だめ、だめ!だめよからすまくん、お願い、だめ、やめ______あっ!」
ずぶ。
雨屋の肉体に、俺の肉棒が突き刺さった。
(おわああ、気持ちええ)
童貞なのに。
なぜ、セックスの快感がもたらされるのだろうか。分からない。
きっと、これは妄想なのだ。「こんな感触なんだろう」という。
現実はもっと気持ちいいものかもしれないし、ここまで気持ち良くないのかもしれない。
だが、俺にとっては今が現実だ。
俺は押し倒した雨屋の身体に向かって、必死に腰を振った。
「やっ!だめ、だめだよからすまくん、だめ、だめ、だめぇええ・・・・・・」
ぶんぶんと頭を左右に振る雨屋。
その三つ編みのうなじに鼻を押し付けると、少し芳しい香りがした。
実際の、雨屋の香りだ。教室ではさほど近くないが、通りかかった際に少し嗅いだことのある匂い。
「雨屋・・・・・・最高だ」
「だめ、やめて、からすま、くん」
「気持ちいいんだろ?雨屋」
「そ、そんなんじゃ」
嘘だ。
雨屋と繋がっている部分は、信じられないほどの愛液で濡れそぼっている。
もうびちょびちょのグチョグチョだ。
やっぱり雨屋は、「犯されたがって」いたのだ。
腰を振り続ける俺、嫌だ嫌だと言いながら、快感に押し流される雨屋。
俺は雨屋の制服を、胸の部分を破いた。まるで紙切れのように破けた部分から、想像通りの白いブラが現れた。
ブラを剥ぎ取り、生の乳に食らいつく。
そこはミルキーのような味がした。これまた現実では味わったことのない部分だ。俺にとって、雨屋のおっぱいはミルキーの味、なのだろう。何度も舐め、甘噛みしては先端から出てくる甘露の液体を味わう。胸の先端から、生乳をしぼったような勢いで液体が噴出した。
「だ、だめ、おっぱい、噛まないで」
「いいだろ」
なんという甘い感触。甘い感覚。
喉をゴクゴクと、雨屋の乳が通り抜けていく。
さあ、そろそろだ。
古文の授業は、さほど長くない。
「雨屋、中に出すぞ」
「え?・・・・・・だめ、それはだめ、やめて、お願い」
「だめだ。・・・・・・だ、出すぞ、出すぞっ」
「やめて、お願い、赤ちゃんできちゃう、だめ、それだけはだめ、だめ、だめ」
雨屋の細い腕が、必死で俺をはねのけようとする。
だが、俺の胸で押し返されるだけだ。
雨屋にとって、これは現実らしい。
夢の中でこれは夢だ、と気付ける人間は少ない。
「出すぞ、出すぞっ・・・・・・だ、だすぞおおおおおおおっ!」
「だめ、だめえ、だめええええええっ!」
どく。どく。どく。
これまた大量の精液が吐き出され。
エロ漫画のように、雨屋の膣と子宮の中を満たし、それでもあふれて肉棒の脇からほとばしった。どぼぼぼっ。
「ああ・・・・・・な、中に・・・・・・出されちゃった・・・・・・」
かくん。
雨屋の身体から、力が抜けていった。
俺は身体を引き抜いた。
予想通り、膣からは大量の白濁液と、それに混じって血液が流れ出ていた。
これは、雨屋が処女だからだ。
彼女は「セックスしたら破瓜の出血がある」と信じているから、実際に出血している。
俺はもう一度、彼女に口づけた。
「雨屋、処女だったんだな」
「・・・・・・うん」
「心配するなよ、俺が面倒みてやるから。俺の女になれよ」
現実では、口が裂けてもそんなセリフは出ない。
夢の中、と分かっているから。
だが、雨屋は何も言わなかった。
そりゃそうだろう。彼女は学年の人気者だ。カレシがいるとは聞いてないが、俺なんかのことを好きでいるはずもない。
彼女は僅かに口を開いて_____
きーんこーんかーんこーん
はっ。
盛大にチャイムが鳴り。
俺は現実に目覚めた。
「き、きりーつ」
雨屋の声に、全員が立ち上がる。
礼もそこそこに、生徒らは教室から三々五々に出ていった。
6限目は視聴覚室だからな。
ふー。いい夢見たぜ。
「さとやー、次いくぞー」
友人のみつるが声をかけてきた。
おう、と返事して、まだ座ったままの生徒がいるのに気づく。
雨屋。
もう授業が終わったのに、まだ座り込んでいた。
全員が出て行ってから、俺は雨屋に近づいた。
「雨屋」
びくっ。
彼女の肩が、驚くほど揺れた。
ぎぎ、と音を立てそうなほどにゆっくりと、背後の俺を見上げる。
「な、なに?からすま、くん」
「次、視聴覚室だぞ」
「う、うん、そうだね。分かってる。・・・・・・すぐ、行くから、先に行ってて」
立ち昇ってくる、雨屋特有の香り。
その中に、少し違う香りが混じっているのに、俺は気づいた。
ははーん。
なるほど、それで立てないのか。
こりゃ、全員が消えてから女子トイレ、だな。
「これ、雨屋のじゃね?化学室に落ちてたけど」
鉛筆キャップを差し出した。
残念ながら、同じアイテムは二度と使えないのだ。
「え?あ、そ、そうだね。わたしのだ。・・・・・・あり、ありが、ありがとう、か、からすま、くん」
うーん、俺の顔、直視できないっぽいな。
これ以上いじめるのはやめとこう。
俺はカバンを肩にかけ、雨屋を残してとっとと教室から廊下へ出た。
人はそれぞれ、なんらかの欲望を隠し持っている。
普段はそれを見せないよう、隠して暮らしている。
誰にも言わないように、誰にもバレないように。
例えばそう、うちのクラスの委員長。
雨屋小智子、あめやさちこ。真面目で一年の頃から成績も教師ウケも学年トップ、快出席、曲がったことなどしたこともない三つ編みメガネの女子。
どんな授業も欠かさずノートを取り、テスト前には彼女がメモした「試験に出そうな要点」をまとめた、通称「雨屋ノート」がLIMEで学年中に流れるような「スーパー委員長」でさえも、欲望を隠していたりする。
月曜日の5限目、授業科目は古文。
教師はもうとっくに定年を迎えているにも関わらず、「希望」で教職にしがみついているだけの爺。声は小さく聞き取りにくい。もし聞こえていたとしても、強烈に眠気を誘うような声色なのだ。
まるで眠気を誘う呪文だ。
あと、呂律が回っていないので日本語とは認識されない。「古文を古文で教えている」と揶揄される所以である。
しかし、生徒ウケは抜群に良い。
チャイム通りに授業が終わるし、授業中は居眠りしていても内職していても、一切叱られない。ただし、騒いでいると定期テストから減点されるので、みんな静かだ。
そして、授業が終わるとその日の内容をまとめたプリントを配布してくれる。テストは全てこのプリントから出題される。だからノートを取る必要もない。というか、授業すら不要だ。この配布プリントだけで十分だ。
だから、こと古文に関しては「雨屋ノート」の出番はない。雨屋でさえも必死に眠気を堪えつつ、うつらうつらしていたりする。たぶん真面目に聞いているのだ。だから眠くなる。
ましてや、4限目は体育だ。必死で運動して弁当を食べ、これで眠くならないほうがおかしい。
かたん、と雨屋の手から鉛筆が落ちた。
よし。
俺、鴉間里矢(からすま さとや)は眠気を堪えつつ、ポケットに忍ばせてあった鉛筆キャップを握りしめた。
2限目の終わり、化学室に雨屋が忘れていったものだ。眼の前の席に座っていたから間違いない。
いまどき、鉛筆および鉛筆キャップを使っている女子高生など、このクラスには雨屋しかいないし。
俺はキャップを握りしめながら、眠りに落ちていった。
ふむ。
これが雨屋の夢の中、か。
俺は周囲を見回した。よく見慣れた廊下、見慣れた窓の外、見慣れた教室の群れ。
学校、か。
夢の中でまで学校とは、雨屋ってよっぽど学校が好きなんだな。優等生だし、当然か。
雨屋は1年生の1学期から2年の今まで、成績はずっと学年トップをキープしている。かといってガリ勉タイプ特有の、人を見下したような態度や陰鬱な空気もなく、明るくて女子ウケもいい。可愛いから男子ウケも悪くない。特にトレードマークな三つ編みメガネは、特定の一部男子にカルト的な人気を博している。胸のボリュームもなかなかだ。俺だって何度か夜のお世話になった。
さて、本人はどこだ。
ここは雨屋の夢の中、本人はどこかにいるはず。
色んな人の「夢」を覗き見てきた俺は、どんな人物だって「自分」が登場しない夢は存在しないことを知っていた。夢は必ず、その人の一人称視点なのだ。
(雨屋って、茶道部だったよな)
茶道部の部室、そこへ向かう。新校舎の1階だ。
(あれ)
しかし、1階は存在しなかった。階段に向かうと、1階に続く階段は途中で切れていた。
夢の中ではよくあることだ。どうやら今日の雨屋は、茶道部の部室には用事がないらしい。
廊下を逆戻りし、教室を覗いたが、誰の姿もなかった。
(ん)
声がした。
教室の並んだ廊下の突き当り、「生徒会室」の中からだ。
幾人かのざわめきと、少女の声。
雨屋の声だ。
「・・・・・・やっ、やめてっ」
「大人しくしてろ」
「せ、センパイっ、お、お願いですっ」
「ほら、脚広げろよ。すぐ済むからサ」
「は、離してっ!」
強い、切迫した声。
その中に、少し哀願するような、媚びるような声音も混じっている。
ガララッ。
俺は扉を開けた。鍵はかかっておらず、簡単に開いた。
さほど広くない生徒会室で、数人が女性を床に押し付けていた。というか押し倒していた。
3年生の生徒会役員、男子ばかりだ。副会長が少女の右腕を、書紀が左腕を押さえつけている。
少女の正面、スカートの中へ腰を押し込もうとしているのは、3年のイケメン生徒会長だった。
サッカー部のエース、金髪のキザ野郎。生徒会長のくせに、耳にピアスなんか開けてたりしてちょっとアレなのだが、女子人気は抜群の生徒会長である。
そいつはへへ、とイヤらしい笑いを浮かべながら、少女の両脚を両腕に抱え込んでいた。
そして。
押し倒されている少女は。
(あーあ、こういう夢かぁ)
真面目委員長、雨屋さんが5限目の古文の時間に居眠りしながら見ていたのは、自分がイケメン生徒会長にレイプされる夢、だった。
しかも、だめだめとか言っておきながら、その目は期待に輝いていたりする。
(一応、トラウマっぽくはないけど)
一度、本当に怖い目にあった人の夢に潜ってしまったことがあり、あの時はマジで怖かった。
雨屋の怖い記憶、とかではなさそうだ。ああいうタイプの夢は、だいたい背景も真っ黒だったりする。この生徒会室は明るくて、天井の蛍光灯も明々としていた。
俺はつかつかと生徒会室へ入っていった。今まさにレイプ寸前の場面、そこへ歩み寄る。
「な、なんだテメェ___」
雨屋を押さえつけている生徒会長のアゴを蹴り上げた。
ガシャン、と窓ガラスが割れ、イケメン生徒会長は校舎の外へ吹き飛んでいった。
「て、てめ」
「よくも」
かかってくる、数人の生徒会役員共。
だが俺はパンチを易々と躱し、顔面へのカウンター、ボディーブロー、回し蹴りを叩き込む。
ものの数秒で、雨屋を拘束していた奴らは床に這いつくばった。そいつらはそのまましゅううう、と消えていく。
あとには、床に押し倒れていた雨屋だけが残った。その格好のまま、ぱちくり、とまばたきして俺を見上げる。
「あ、あの・・・・・・からすまくん、だよね?同級生の」
「ああ」
「すごいね、からすまくん、こんなに喧嘩強かったんだ」
「まあな」
これは嘘だ。
俺はひ弱な男子高校生だ。喧嘩などまともにしたのは小学校低学年くらいで、たぶんクラスの中でも弱いほうだ。
だが、夢の中では無敵だったりする。
これは、雨屋がこの世界を作り出しているから、だったりする。たいていの場合、女子が考えている夢の中の登場人物は弱く設定されている。
しかし、そこへ「侵入」した俺は、自分が無敵だと設定している。主に自分の脳内で。
俺が想像する範囲なら、どんなことでもたいてい可能だ。北闘真拳だって放てるし、ツルはめ波も撃てる。飛びコプターで飛んでみたことだってある。見えない天井に衝突して墜落したが。
「助けてくれて、ありがとう」
「・・・・・・いや」
これはお邪魔だった、そう思う。
たぶん、雨屋は最後まで期待していたのだ。だって、窓の外へ吹っ飛んでいった生徒会長、ちゃんとちんこついてたし。しかも、現実にはあり得ないようなデカさのモノが。
雨屋はきっと、「だめ、そんな大きいの、入らない」をしたかったんだろう。無理矢理入れられて、巨大なイチモツの痛みに耐える、ってあたりまで。
「なあ雨屋」
「ん、なあに?」
「したいんだろ?」
「え」
じー、と俺はジッパーを下ろした。
ぽろろん、とあまり大きくない、普段見慣れたモノがまろび出る。
「ちょ、ちょっと、からすまくん」
「フェラ、知ってるんだろ。やれよ」
「そ、そんなの、し、知らな・・・・・・」
うん、嘘だ。
夢の中でまで嘘をつけるほど、雨屋はスレた女の子じゃない。
果たして、言葉と裏腹に、雨屋は床にぺたんと座ったまま、おずおずと俺のモノに手と口を近づけてきた。
きっと知識はあるんだろう。
もしかしたら、ちょっと雑誌で読んだとか、こっそり画像検索とかしたのかもしれない。真面目委員長でも。
行為は拙かった。ほんのちょっとだけ、口の中へ入れただけだ。
喉奥まで咥え込み、ぎゅっと締め付けるような感触は得られなかった。
まあ俺だって、リアルではしてもらったこともないんだけど。
だけど、つたなくとも雨屋が俺の股間へご奉仕してくれている映像は、十分に刺激的だった。
どぼっ。
現実ではあり得ないほどの精液が、大量に噴き出した。
「やっ!」
それは雨屋の端正な顔を汚し、メガネを穢し、制服へと降り注いだ。
これは俺のイメージなのか、それとも雨屋のなのか。分からない。
きっと俺の願望、なのだろう。雨屋に顔写してやりたい、という、歪んだ欲望。
「もう・・・・・・べとべとしてる・・・・・・」
これは雨屋の、精液に対するイメージだ。
きっと臭いもなければ味もしない。もし雨屋が今後男と交わり、口の中に生臭い液体を発射されれば、夢の中でもその味を思い出すかもしれないが。
精液とは、少し黄色っぽい白だ。だがこの液体は真っ白、まるでミルクのような白さだ。やっぱりこれは雨屋のイメージだな。
大量に顔写して少し満足したが、無論この程度で満足できるほど、男子高校生の性欲は薄くない。俺は放心状態の雨屋を、再び床に押し倒した。
「きゃっ!・・・・・・か、からすま、くん!?」
「やらせろよ雨屋」
両手首を頭上で拘束し、上から体重を押し付ける。
スカートをはだけ、ショーツを右手で抜き取った。夢の中だからなのか、するすると抜けた。
いや、きっと雨屋がそうして欲しい、と願っているからだろう。
「だ、だめ!だめよからすまく_____んんっ」
唇を押し付ける。
さっきの白濁液はもうどこにもなくて、無味無臭だ。
唾液まで味がない、というのはちょっと残念だ。せめて淡いレモンの味くらいはつけといて欲しい。
「挿れるぞ、雨屋」
「だめ、だめ!だめよからすまくん、お願い、だめ、やめ______あっ!」
ずぶ。
雨屋の肉体に、俺の肉棒が突き刺さった。
(おわああ、気持ちええ)
童貞なのに。
なぜ、セックスの快感がもたらされるのだろうか。分からない。
きっと、これは妄想なのだ。「こんな感触なんだろう」という。
現実はもっと気持ちいいものかもしれないし、ここまで気持ち良くないのかもしれない。
だが、俺にとっては今が現実だ。
俺は押し倒した雨屋の身体に向かって、必死に腰を振った。
「やっ!だめ、だめだよからすまくん、だめ、だめ、だめぇええ・・・・・・」
ぶんぶんと頭を左右に振る雨屋。
その三つ編みのうなじに鼻を押し付けると、少し芳しい香りがした。
実際の、雨屋の香りだ。教室ではさほど近くないが、通りかかった際に少し嗅いだことのある匂い。
「雨屋・・・・・・最高だ」
「だめ、やめて、からすま、くん」
「気持ちいいんだろ?雨屋」
「そ、そんなんじゃ」
嘘だ。
雨屋と繋がっている部分は、信じられないほどの愛液で濡れそぼっている。
もうびちょびちょのグチョグチョだ。
やっぱり雨屋は、「犯されたがって」いたのだ。
腰を振り続ける俺、嫌だ嫌だと言いながら、快感に押し流される雨屋。
俺は雨屋の制服を、胸の部分を破いた。まるで紙切れのように破けた部分から、想像通りの白いブラが現れた。
ブラを剥ぎ取り、生の乳に食らいつく。
そこはミルキーのような味がした。これまた現実では味わったことのない部分だ。俺にとって、雨屋のおっぱいはミルキーの味、なのだろう。何度も舐め、甘噛みしては先端から出てくる甘露の液体を味わう。胸の先端から、生乳をしぼったような勢いで液体が噴出した。
「だ、だめ、おっぱい、噛まないで」
「いいだろ」
なんという甘い感触。甘い感覚。
喉をゴクゴクと、雨屋の乳が通り抜けていく。
さあ、そろそろだ。
古文の授業は、さほど長くない。
「雨屋、中に出すぞ」
「え?・・・・・・だめ、それはだめ、やめて、お願い」
「だめだ。・・・・・・だ、出すぞ、出すぞっ」
「やめて、お願い、赤ちゃんできちゃう、だめ、それだけはだめ、だめ、だめ」
雨屋の細い腕が、必死で俺をはねのけようとする。
だが、俺の胸で押し返されるだけだ。
雨屋にとって、これは現実らしい。
夢の中でこれは夢だ、と気付ける人間は少ない。
「出すぞ、出すぞっ・・・・・・だ、だすぞおおおおおおおっ!」
「だめ、だめえ、だめええええええっ!」
どく。どく。どく。
これまた大量の精液が吐き出され。
エロ漫画のように、雨屋の膣と子宮の中を満たし、それでもあふれて肉棒の脇からほとばしった。どぼぼぼっ。
「ああ・・・・・・な、中に・・・・・・出されちゃった・・・・・・」
かくん。
雨屋の身体から、力が抜けていった。
俺は身体を引き抜いた。
予想通り、膣からは大量の白濁液と、それに混じって血液が流れ出ていた。
これは、雨屋が処女だからだ。
彼女は「セックスしたら破瓜の出血がある」と信じているから、実際に出血している。
俺はもう一度、彼女に口づけた。
「雨屋、処女だったんだな」
「・・・・・・うん」
「心配するなよ、俺が面倒みてやるから。俺の女になれよ」
現実では、口が裂けてもそんなセリフは出ない。
夢の中、と分かっているから。
だが、雨屋は何も言わなかった。
そりゃそうだろう。彼女は学年の人気者だ。カレシがいるとは聞いてないが、俺なんかのことを好きでいるはずもない。
彼女は僅かに口を開いて_____
きーんこーんかーんこーん
はっ。
盛大にチャイムが鳴り。
俺は現実に目覚めた。
「き、きりーつ」
雨屋の声に、全員が立ち上がる。
礼もそこそこに、生徒らは教室から三々五々に出ていった。
6限目は視聴覚室だからな。
ふー。いい夢見たぜ。
「さとやー、次いくぞー」
友人のみつるが声をかけてきた。
おう、と返事して、まだ座ったままの生徒がいるのに気づく。
雨屋。
もう授業が終わったのに、まだ座り込んでいた。
全員が出て行ってから、俺は雨屋に近づいた。
「雨屋」
びくっ。
彼女の肩が、驚くほど揺れた。
ぎぎ、と音を立てそうなほどにゆっくりと、背後の俺を見上げる。
「な、なに?からすま、くん」
「次、視聴覚室だぞ」
「う、うん、そうだね。分かってる。・・・・・・すぐ、行くから、先に行ってて」
立ち昇ってくる、雨屋特有の香り。
その中に、少し違う香りが混じっているのに、俺は気づいた。
ははーん。
なるほど、それで立てないのか。
こりゃ、全員が消えてから女子トイレ、だな。
「これ、雨屋のじゃね?化学室に落ちてたけど」
鉛筆キャップを差し出した。
残念ながら、同じアイテムは二度と使えないのだ。
「え?あ、そ、そうだね。わたしのだ。・・・・・・あり、ありが、ありがとう、か、からすま、くん」
うーん、俺の顔、直視できないっぽいな。
これ以上いじめるのはやめとこう。
俺はカバンを肩にかけ、雨屋を残してとっとと教室から廊下へ出た。
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