後輩のカノジョ

るふぃーあ

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<入院11日目>

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<入院11日目>

翌朝。
朝食が終わると、退院したいと申し出た。

「もう少しリハビリしていてもいいけど、まあトイレ歩行でも痛みがなければ退院可能だね」
「ありがとうございます」

担当医が診察に来てくれて、退院を許可してくれた。
手続きはすぐに終わり、俺は着替えて病院を出た。

「退院、おめでとうございます」

病院の駐車場で、舞さんが車を止めて待っていてくれた。

「わざわざ迎えに来ていただいて。すみません」
「当然のことです。会社へ行かれますか?それともご自宅へ?」
「一度家に帰ります。放ったらかしなんで」

家の場所を伝え、荷物を積んでもらって、助手席に乗り込む。
BMW X7の助手席なんて初めてだ。朝のラッシュは終わっていて、舞さんの運転する車は快適に道路を進み、俺は自宅の詳細な場所を告げる。

「じゃ、ここで」
「荷物多いですから、お運びします」

俺のボロいアパートはあまり見せたくなかったが、舞さんはうんしょ、と階段を3階まで往復して入院中の着替えやら、書類やらを運んでくれた。
部屋は散らかっていたが、エロ本が放り出してなくて助かった。ゴミ箱へ色々と放り込み、ゴミ置き場へと捨てる。

「お着替えは?」
「大丈夫です」

綿パンにポロシャツのラフな格好だが、会社も来週からでいい、と言ってくれているので、とりあえず今日は顔見せだ。
また舞さんに運転してもらい、マルイスポーツへと向かう。
部長と社長に挨拶して、ついでに舞さんも紹介して、途中の喫茶店に寄って昼食を食べ、アパートへと戻った。

「では、気をつけてくださいね」
「ずっと運転してもらってすみません。今度は俺がドライブに誘います」
「連絡、お待ちしています」

舞さんの携帯とLIMEは交換済みだ。いつでも連絡できる。
高梨さんは・・・・・・結局、連絡先を聞けなかった。舞さんに聞いたら教えてくれるかもしれないが、きっと高梨さんはそんな手段を望まないだろう。

ふう。
1週間以上ぶりの我が家で、俺はソファに腰掛けた。

終わった、か。
冷蔵庫に残っていたビールを開け、喉へ流す。

思ったほど美味しくなかった。
ここに高梨さんがいたら、どんな味だっただろう。何を話しただろう。

(退院、おめでとうございます)
(ほら、ビールこぼしてますよ)
(冷蔵庫、空っぽですね。もっと野菜を摂らないと)

涙が一滴だけ、こぼれ落ちた。
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