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マスオ、最後の審判を下す5 (最終回)
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「どうか、マサヒトだけでも助け_____」
ぐぼっ。
眼の前で、アカネが口から血を吹き出した。
胸に、マサヒトの槍が突き刺さっていた。
「な・・・・・・マサヒト・・・・・・なんで・・・・・・」
「白河さん、そして亡くなった同級生のみんな。・・・・・・僕が敵を討ちました」
マサヒトが槍を引き抜くと、アカネの傷口から、口から血液が噴出した。
がっくりと膝をつく。
「た・・・・・・助け・・・・・・ライカン、さま・・・・・・」
アカネが隣に佇む主人を見上げた。懇願の眼差しで。
ライカンが、服の中からユニコーンの角を取り出した。
どんな傷でも瞬時に癒やす力がある、魔法の道具。瀕死のオーガすら元に戻した威力。
それを見て、アカネの顔がほっとした表情になった。
やった、これで助かる、とばかりに。
だが。
ライカンは手にした角を、ぐしゃりと握りつぶした。粉々になって散っていく。
アカネの顔が歪む。
「な、なぜ・・・・・・」
「これが俺の審判だ」
ぐっ、とアカネが体を支えきれず、床に両手をついた。
なおも弱々しく、ライカンに、マスオに手を伸ばしながら。
それが叶わぬと知ると、アカネはナオヤを、マサヒトを見上げた。
「ふ、ふたりとも・・・・・・たすけ・・・・・・たすけ、て・・・・・・」
だが、救いの手はどこからも差し伸べられなかった。
絶望したアカネは、床に散らばったユニコーンの角の粉に向かって這いつくばり、舌を伸ばした。イヌのように。
「い、嫌だ・・・・・・死にたく、ない、しに、たく・・・・・・な・・・・・・」
ばたり。
アカネは浅ましく舌を出したまま倒れ、絶命した。
その表情には、驚愕と苦悶、苦痛、恥辱、その他負の感情が恐ろしいほどに浮かんでいた。
それを無機質な目で見下ろしていたマスオだが、その遺体の中に光る宝石を拾い上げ、口に入れた。
ぱああああっ。
ライカンの姿が光り輝き、やがて収束して形となった。
人間の、16歳の少年の姿に。
その姿は、ナオヤの記憶にあったよりも凛々しく、立派な体格をしていた。
「・・・・・・やっぱり、マスオ、だったんだな」
「ああ」
ナオヤの問いに、マスオは素直に頷いた。
「どうして、アカネを」
「こいつの仇だ」
マスオの影から、何かがゆらり、と現れた。
それの正体を知って、ナオヤもマサヒトも驚愕の表情を浮かべた。
「白河!」
「白河さん!まさか、無事で_____」
だが。
ナオヤは悟った。
これは彼女であって、彼女ではない。生あるものの表情を浮かべていなかった。
「マスオ、彼女、は」
「・・・・・・魂のない、抜け殻だ」
マスオはそう言うと、マントを着せたノリコの腕を取って窓際へ立った。
窓ガラスを粉々に砕くと、彼女の腰に腕を回し、空を見上げる。
「マスオ」
ナオヤは呼びかけた。
「・・・・・・いいのか、俺たちは」
「好きにしろ」
「マスオくん」
マサヒトが笑顔で言った。
「ありがとうマスオくん、アカネを討たせてくれて。もうこれで、思い残すことはありません」
「またいつか会えるか、マスオ」
「さあな」
ばさり。
背中から羽根を生やし、マスオはノリコとヴァンパイアのサキを連れたまま、王都の空へ飛び去っていった。
モンスターの逆襲 完
ぐぼっ。
眼の前で、アカネが口から血を吹き出した。
胸に、マサヒトの槍が突き刺さっていた。
「な・・・・・・マサヒト・・・・・・なんで・・・・・・」
「白河さん、そして亡くなった同級生のみんな。・・・・・・僕が敵を討ちました」
マサヒトが槍を引き抜くと、アカネの傷口から、口から血液が噴出した。
がっくりと膝をつく。
「た・・・・・・助け・・・・・・ライカン、さま・・・・・・」
アカネが隣に佇む主人を見上げた。懇願の眼差しで。
ライカンが、服の中からユニコーンの角を取り出した。
どんな傷でも瞬時に癒やす力がある、魔法の道具。瀕死のオーガすら元に戻した威力。
それを見て、アカネの顔がほっとした表情になった。
やった、これで助かる、とばかりに。
だが。
ライカンは手にした角を、ぐしゃりと握りつぶした。粉々になって散っていく。
アカネの顔が歪む。
「な、なぜ・・・・・・」
「これが俺の審判だ」
ぐっ、とアカネが体を支えきれず、床に両手をついた。
なおも弱々しく、ライカンに、マスオに手を伸ばしながら。
それが叶わぬと知ると、アカネはナオヤを、マサヒトを見上げた。
「ふ、ふたりとも・・・・・・たすけ・・・・・・たすけ、て・・・・・・」
だが、救いの手はどこからも差し伸べられなかった。
絶望したアカネは、床に散らばったユニコーンの角の粉に向かって這いつくばり、舌を伸ばした。イヌのように。
「い、嫌だ・・・・・・死にたく、ない、しに、たく・・・・・・な・・・・・・」
ばたり。
アカネは浅ましく舌を出したまま倒れ、絶命した。
その表情には、驚愕と苦悶、苦痛、恥辱、その他負の感情が恐ろしいほどに浮かんでいた。
それを無機質な目で見下ろしていたマスオだが、その遺体の中に光る宝石を拾い上げ、口に入れた。
ぱああああっ。
ライカンの姿が光り輝き、やがて収束して形となった。
人間の、16歳の少年の姿に。
その姿は、ナオヤの記憶にあったよりも凛々しく、立派な体格をしていた。
「・・・・・・やっぱり、マスオ、だったんだな」
「ああ」
ナオヤの問いに、マスオは素直に頷いた。
「どうして、アカネを」
「こいつの仇だ」
マスオの影から、何かがゆらり、と現れた。
それの正体を知って、ナオヤもマサヒトも驚愕の表情を浮かべた。
「白河!」
「白河さん!まさか、無事で_____」
だが。
ナオヤは悟った。
これは彼女であって、彼女ではない。生あるものの表情を浮かべていなかった。
「マスオ、彼女、は」
「・・・・・・魂のない、抜け殻だ」
マスオはそう言うと、マントを着せたノリコの腕を取って窓際へ立った。
窓ガラスを粉々に砕くと、彼女の腰に腕を回し、空を見上げる。
「マスオ」
ナオヤは呼びかけた。
「・・・・・・いいのか、俺たちは」
「好きにしろ」
「マスオくん」
マサヒトが笑顔で言った。
「ありがとうマスオくん、アカネを討たせてくれて。もうこれで、思い残すことはありません」
「またいつか会えるか、マスオ」
「さあな」
ばさり。
背中から羽根を生やし、マスオはノリコとヴァンパイアのサキを連れたまま、王都の空へ飛び去っていった。
モンスターの逆襲 完
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