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マスオ、最後の審判を下す4
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背後から響いてきた明るい声に、ナオヤは驚いて振り返った。
マサヒトも、ノリコも、声の方向を見て驚愕の表情を浮かべた。
「アカネ!」
「アカネちゃん!」
「今までどこに______」
そして気付いた。
すぐ隣にいる人物に。
「・・・・・・おまえ、は」
「マスオ、ですね」
「・・・・・・」
ライカン。確か、そう名乗っていたはず。
アカネが非難の眼差しを向けてきた。
「その呼び方は失礼に当たるわ、ちゃんとライカン様とお呼びしなさい」
「な、アカネ、おまえ」
「あたしはもう、身も心もライカン様のものなの。ああ、ライカン様ってほんと、凄いんだから・・・・・・ライカン様に比べたら、あんたたちみたいな粗チンはもう、どうだっていいわ」
そう言って、マスオにだらしなくしなだれかかった。
「・・・・・・ここへ、何しに来た」
ナオヤは油断なく身構えた。
アカネもライカンも丸腰だが、ただ話し合いに来た、というわけではないだろう。
アカネがふふ、と笑った。
「ライカン様はね、あんたたちに審判を下しに来られたのよ」
「審判だと?」
「ええ。あんたたちに生きる価値があるかどうか、ね。・・・・・・さあ、命乞いをしてみたら?ライカン様のお慈悲にすがるのよ。お聞き届け頂いたら、まだ生かしといて頂けるかもよ?」
「お、俺はまだ生きる!生きさせてくれ!マスオ!た、頼む!」
床に転がり、切られた腕の傷口を押さえながらダイスケが叫んだ。
「お、俺も!おまえの手下になる!何でも言うことを聞くから!」
続いてコウジも。
ニヤリ、とアカネが口の端を吊り上げた。
「どうなさいますか、ライカン様」
「バスケ部のコウジ、お前は1年の頃、俺の上靴をトイレの便器に放り込んだ。何回も」
ライカンの冷たい声と見下ろした瞳の色に、コウジはたじろいだ。
「え、あ、そ、それは」
「生かしておく価値は、ないな」
「あ、待って、待ってくれ」
どす。
マスオの指先が伸び、槍となって額の中央を貫いた。
コウジは物も言わず、絶命して倒れた。
「な」
「ま、マスオ」
ナオヤもマサヒトも驚愕するが、マスオは全く意に介した様子もなく、ダイスケを見下ろした。
「ロック部のダイスケ。・・・・・・よく俺をパシリに使ってくれたよな」
「いや、それは、その」
「アンパン買ってこい、自腹で、って20回くらい。んで、俺が買ってきたナイススティックを奪って食べ、半分食べて残りのクリームを俺のパンツの中に。ザーメンとかっつって」
「悪かった!悪かったよマスオ!反省してる!だから」
「死ね」
ざしゅっ。
ダイスケの眉間が貫かれ、目の光が消えた。
「ねえノリコ、あんたはどうする?ライカン様はあんたのこと、許してやってもいいと仰ってるわ。もうあと数分でこの宿にもゴブリンたちが入ってくる。あんたはあいつらに凌辱されて生きたまま食い殺されるか、ライカン様に頭を下げて孕み腹にしてもらうか。わたしみたいにね。どう?今日ここで死ぬ?もうちょっと生きたい?」
ノリコはベッドの上で座り込み、先程まで自分をレイプしていた、あっけなく殺された同級生たちを見下ろし、恐怖に顔を歪めた。
「い、嫌、死ぬのはイヤ、死にたくない」
「そ。じゃ、言うことがあるでしょ?ライカン様に」
「ま、マスオくん、どうか、助けて、ください」
「違うっつーの!」
パン!
アカネが、ノリコの頬を叩いた。
「ライカン様、でしょ!ほんと、鈍くっさい奴。・・・・・・ライカン様、どんな命令にも従います、一生お仕えします、そう誓いなさい!」
「ごめんなさい!ら、ライカンさま、ど、どんな命令にも、し、従います、一生お仕えしますから!」
「奴隷になります、メス奴隷にしてくださいませ、そう言いなさい!」
「は、はい!め、メス、どれいに、してください!お願いします!」
「ライカン様」
「・・・・・・いいだろう」
ばさ。
ほぼ全裸のノリコに、マントがかけられた。
「さて」
アカネは興味なさげに、残ったふたりを見やった。侮蔑の眼差しで。
「あんたたち、分かってるわよね。審判が下されなくっても」
「ああ」
「分かってますよ」
ナオヤは今までの、日本での学校生活を思い浮かべた。
全員がマスオをいじめていた。自分も。
雪の日に首筋から雪玉を背中に押し込んだり、シャーペンを授業中不意に背中に突き刺したり、トイレの個室の上からバケツで水をかけてやったり。
主にタカヒコがやっていたことだが、一緒になって笑っていた、あるいは手を貸したことは間違いない。
極め付けが、あの遠足だ。
船の穂先、丸太の上に立たせて、ペットボトルを投げつけて。落ちて笑いものにして。
まあ、生きる価値はないよな、と自嘲した。
アカネがニヤ、と口の端を歪めた。
「分かりきってるよね。それでも、土下座のひとつくらいしてみる?ダメ元で」
「なっ」
「誠意ってやつよ、セーイ。そのくらいしか、あんたたちに見せるものはもうないでしょ?」
「・・・・・・」
戦いの喧騒が近づいてきた。
もう時間がない、それはナオヤにも感じられた。
ナオヤは剣を鞘に収め、鞘ごと外した。
土下座、か。いいだろう。どのみちもう、助かりはしない。
「どうか、マサヒトだけでも助け_____」
マサヒトも、ノリコも、声の方向を見て驚愕の表情を浮かべた。
「アカネ!」
「アカネちゃん!」
「今までどこに______」
そして気付いた。
すぐ隣にいる人物に。
「・・・・・・おまえ、は」
「マスオ、ですね」
「・・・・・・」
ライカン。確か、そう名乗っていたはず。
アカネが非難の眼差しを向けてきた。
「その呼び方は失礼に当たるわ、ちゃんとライカン様とお呼びしなさい」
「な、アカネ、おまえ」
「あたしはもう、身も心もライカン様のものなの。ああ、ライカン様ってほんと、凄いんだから・・・・・・ライカン様に比べたら、あんたたちみたいな粗チンはもう、どうだっていいわ」
そう言って、マスオにだらしなくしなだれかかった。
「・・・・・・ここへ、何しに来た」
ナオヤは油断なく身構えた。
アカネもライカンも丸腰だが、ただ話し合いに来た、というわけではないだろう。
アカネがふふ、と笑った。
「ライカン様はね、あんたたちに審判を下しに来られたのよ」
「審判だと?」
「ええ。あんたたちに生きる価値があるかどうか、ね。・・・・・・さあ、命乞いをしてみたら?ライカン様のお慈悲にすがるのよ。お聞き届け頂いたら、まだ生かしといて頂けるかもよ?」
「お、俺はまだ生きる!生きさせてくれ!マスオ!た、頼む!」
床に転がり、切られた腕の傷口を押さえながらダイスケが叫んだ。
「お、俺も!おまえの手下になる!何でも言うことを聞くから!」
続いてコウジも。
ニヤリ、とアカネが口の端を吊り上げた。
「どうなさいますか、ライカン様」
「バスケ部のコウジ、お前は1年の頃、俺の上靴をトイレの便器に放り込んだ。何回も」
ライカンの冷たい声と見下ろした瞳の色に、コウジはたじろいだ。
「え、あ、そ、それは」
「生かしておく価値は、ないな」
「あ、待って、待ってくれ」
どす。
マスオの指先が伸び、槍となって額の中央を貫いた。
コウジは物も言わず、絶命して倒れた。
「な」
「ま、マスオ」
ナオヤもマサヒトも驚愕するが、マスオは全く意に介した様子もなく、ダイスケを見下ろした。
「ロック部のダイスケ。・・・・・・よく俺をパシリに使ってくれたよな」
「いや、それは、その」
「アンパン買ってこい、自腹で、って20回くらい。んで、俺が買ってきたナイススティックを奪って食べ、半分食べて残りのクリームを俺のパンツの中に。ザーメンとかっつって」
「悪かった!悪かったよマスオ!反省してる!だから」
「死ね」
ざしゅっ。
ダイスケの眉間が貫かれ、目の光が消えた。
「ねえノリコ、あんたはどうする?ライカン様はあんたのこと、許してやってもいいと仰ってるわ。もうあと数分でこの宿にもゴブリンたちが入ってくる。あんたはあいつらに凌辱されて生きたまま食い殺されるか、ライカン様に頭を下げて孕み腹にしてもらうか。わたしみたいにね。どう?今日ここで死ぬ?もうちょっと生きたい?」
ノリコはベッドの上で座り込み、先程まで自分をレイプしていた、あっけなく殺された同級生たちを見下ろし、恐怖に顔を歪めた。
「い、嫌、死ぬのはイヤ、死にたくない」
「そ。じゃ、言うことがあるでしょ?ライカン様に」
「ま、マスオくん、どうか、助けて、ください」
「違うっつーの!」
パン!
アカネが、ノリコの頬を叩いた。
「ライカン様、でしょ!ほんと、鈍くっさい奴。・・・・・・ライカン様、どんな命令にも従います、一生お仕えします、そう誓いなさい!」
「ごめんなさい!ら、ライカンさま、ど、どんな命令にも、し、従います、一生お仕えしますから!」
「奴隷になります、メス奴隷にしてくださいませ、そう言いなさい!」
「は、はい!め、メス、どれいに、してください!お願いします!」
「ライカン様」
「・・・・・・いいだろう」
ばさ。
ほぼ全裸のノリコに、マントがかけられた。
「さて」
アカネは興味なさげに、残ったふたりを見やった。侮蔑の眼差しで。
「あんたたち、分かってるわよね。審判が下されなくっても」
「ああ」
「分かってますよ」
ナオヤは今までの、日本での学校生活を思い浮かべた。
全員がマスオをいじめていた。自分も。
雪の日に首筋から雪玉を背中に押し込んだり、シャーペンを授業中不意に背中に突き刺したり、トイレの個室の上からバケツで水をかけてやったり。
主にタカヒコがやっていたことだが、一緒になって笑っていた、あるいは手を貸したことは間違いない。
極め付けが、あの遠足だ。
船の穂先、丸太の上に立たせて、ペットボトルを投げつけて。落ちて笑いものにして。
まあ、生きる価値はないよな、と自嘲した。
アカネがニヤ、と口の端を歪めた。
「分かりきってるよね。それでも、土下座のひとつくらいしてみる?ダメ元で」
「なっ」
「誠意ってやつよ、セーイ。そのくらいしか、あんたたちに見せるものはもうないでしょ?」
「・・・・・・」
戦いの喧騒が近づいてきた。
もう時間がない、それはナオヤにも感じられた。
ナオヤは剣を鞘に収め、鞘ごと外した。
土下座、か。いいだろう。どのみちもう、助かりはしない。
「どうか、マサヒトだけでも助け_____」
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