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マスオ、エルフを討つ9

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予想外の掘り出し物だ、ミッシュロルミを手に入れたマスオは満足して、そのまま彼女を抱き寄せて眠った。
ふと、夜半に目を覚まし、何か違和感に気づいた。

(風の通る音か?)

何者かが、足を忍ばせている気配がした。
新しい館は静まり返っていた。何一つ、物音すらない。
が、マスオの耳には狼の遠吠えが聞こえてきた。何か嗅ぎつけたらしい。

マスオは服を身に着け、部屋から出た。

(逃げた、か)

エルフの姫君、ファティナの姿がない。
殊勝な顔つきをしていたのも、脱走計画を立てていたか。
殊勝な顔つきをしていたのも、脱走計画を立てていたか。

館から出ると、屋敷の見回りをしていたらしいダークエルフの女が近寄ってきた。

「ライカン様」
「エルフのファティナが脱走した。何か見ていないか」
「いえ、何も」

月明かりがない夜だ。だがダークエルフの目と耳なら闇を見通せていたはず。
それをかいくぐる、となると。

(何らかの魔法、あるいはアイテムか)

見回すが、靴跡すらない。
だがマスオが狼に姿を変えると、ファティナらしき匂いの痕跡を嗅ぎつけた。ごく軽い、ほとんど足跡もない地面の窪みも。

マスオは匂いを辿り、館の敷地から出た。
やはり脱走に間違いない。足跡と匂いは真っ直ぐに街の門へと向かっていた。
そして城壁を上り、一直線に下へと。

(ここを飛び降りたのか、凄いな)

ビル3階分ほどはありそうな城壁。人間の頃のマスオなら、見下ろすだけでチビっていただろう。

ワーバットになり、翼を出してふわりと舞い降りると、再び狼となって追跡を再開した。やはり樹海へと向かったようだ。
だんだん匂いが強くなってきた。どうやらまだ逃げて時間は経っていない。すぐ近くだ。

(あれだ)

一見何もない、真夜中の平原。
その途中に、目を凝らさねば分からないほどの不自然な歪みがあった。

マスオはバットに姿を変え、空へと舞い上がった。

(いた)

エコーロケーション。
見えずとも分かる存在を、音波で探知する。
女だ。マントを被っているようだ。

(なるほど、透明マント、か)

エルフ族のアイテムだろうか。さすが姫君、そんな貴重なものを密かに所持していたとは。
大方、里から逃げ出す時に使おうとしたのだろう。だが運悪くゴブリンに見つかったか、はたまたマスオの吐いた糸に絡まってしまったか。
マスオが糸を巻き付けると、透明マントは動けなくなった。

「動くな。動いたら即座に殺す」

マスオがじり、と近づくと、観念したように頭部を覆うマントを取った。
やはり。

「これはこれは、姫君様。こんな夜更けにどちらへ?」

透明マントを羽織っていたのは、やはりファティナだった。

「・・・・・・あ、あなたに、話すことなど」

短剣を抜こうとしている。だが糸で絡まって抜けないらしい。
マスオが糸を外してやると、途端に襲いかかってきた。

「あ、兄様の敵!覚悟っ!」
「ふむ」

やはり、結構鋭い一撃だ。身構えていなければ、あるいは一撃を食らっていたかもしれない。
だがマスオは易々と手首を掴み、ひねり上げた。

「い、痛っ!」
「見つからずにここまで逃げるとは、なかなかの能力だ。シーフにでもなれば良かったかもな」
「離しなさい!穢らわしい。・・・・・・誇り高きエルフ族を、盗賊呼ばわりなど」

星明かりくらいしかない闇の中で、美しい瞳が爛々とマスオを射抜いていた。
先程まで抱きしめていたミッシュロルミと比べてみる。やはり美しい。姫君ってのはこうでないとな。

「逃げたら殺す、そう言ってなかったか?」
「殺しなさい、わが里の民を殺したように。何の罪もないわが民を、あなたは、よくも平気で」
「罪もない?」

何いってんだこいつ。罪だらけだろうが。
おっと。
マスオはファティナ姫の口をぐい、と掴んだ。舌を噛み切ろうとしたためだ。

「む、むぐっ」
「死ぬことなど許さん。お前には、その身体で罪を償ってもらうのだからな」

尚も暴れ、抵抗するファティナを、マスオは草原の中に押し倒し、凌辱した。
舌を噛まぬよう布を口に押し込み、マントを初め、衣類を全て剥ぎ取って。
自らを蹂躙する男の感触に泣き、喚き、すすり泣くのも構わず、マスオは腰を動かし続け、何度も射精した。
10回ほども放っただろうか。子宮や膣をあふれさせ、吸血してはみなぎらせてまた押し込み、顔面や腹部、乳房まで精液まみれにして、最後は満足して果てた。
拘束していた布を外しても、もうファティナに抵抗する気力はない様子だった。

「何の罪もない、お前はそう言ったな」
「・・・・・・」
「エルフ族が何をしたか、知らないのか」
「・・・・・・何も、していません」
「ダークエルフの集落を襲い、殺し、奪い、女を集団で手籠めにすることは、エルフにとって罪にならないのか?」
「な」

ファティナは驚き、目を見開いた。

「そ、そのような、戯言を。信じるわけが」
「知らないのも罪だ、エルフの姫君。お前たちを襲った俺たちの中に、ダークエルフが混じっていたのは知っているな?」
「・・・・・・それは」
「なぜダークエルフが混じっていたのだと?」
「・・・・・・それは、その、彼らが、わが里を追放されて、それを恨みに」
「それもまた罪だろうが。・・・・・・だがそれだけじゃない。マーサルヴァ、俺に仕えるダークエルフの女だ。あいつが俺に会いに来て頼んだんだ。ダークエルフの集落をエルフ族が襲っている、助けて欲しい、とな」
「・・・・・・まさか」

信じられない、といった表情。

「我々に恨みをぶつけるための、嘘に決まっています」
「そうかな?俺がダークエルフの集落に着いた時、ちょうど襲撃の最中だった。マーサルヴァは俺の目の前で数人のエルフたちに衣服を剥ぎ取られ、まさに犯されるところだった。今のお前のように」
「・・・・・・」
「だからエルフの村を襲った。お前の言う通り、俺は穢らわしい存在だ。だが肌の色が違うというだけで殺しても罪にはならない、とうそぶくお前よりも、汚れてはいない」
「そ、そのようなこと、わが父が許すはずが_____」
「族長は認めていたぞ。襲撃を指示したのは自分だ、とな」
「・・・・・・」

うん、確かに言った。マスオはよく覚えている。

「・・・・・・たとえ、そのようなことがあったとして、わが高潔なる兄が、そのような暴挙を見過ごすなど」
「アーメダ、あの戦士はお前の兄だったな。・・・・・・マーサルヴァが土下座して頼み込んできた、彼女の友人を殺し、犯した犯人こそ、お前の兄だ」
「・・・・・・う、ううっ」

凌辱された裸体のまま、ファティナは嗚咽を漏らし始めた。
全部嘘だと思うなら思えばいい、そうマスオは思った。マーサルヴァが真実を語っているとは限らないのだから。
だが、彼女の言葉は信じるに値する。少なくともマスオは短い付き合いの中でもそう思っていた。

どれほどまで泣いていただろうか。
知らない間に、彼女はもう泣き止んでいた。
徐々に、東の空が白み始めていた。

「真実を、確かめたく思います」
「いいだろう。もし俺の言葉が本当なら」
「罪を、償います」

小さな声で、ファティナはそう言った。
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