62 / 86
マスオ、エルフを討つ4
しおりを挟むマーサルヴァがマスオの配下となって半月ほど、彼女は部下たちを一覧にし、戦力としてまとめてくれた。
いままでまとまりがなかったマスオの部下たちが、彼女の助言に従ってそれぞれの能力に従い、軍団として育成方針を固めていくことになった。
ゴブリン軍団。ハイゴブリンを数人ごとに配置し、剣と盾のゴブリンウォーリアー、弓を主体としたゴブリンアーチャー。そこへハイゴブリンの中でも魔法を覚えることのできたゴブリンメイジたちを入れ、組織的に戦う方法を教えさせる。最も潰しの効く歩兵部隊、というところか。
こいつらにはミッテルンの街を中心に、街周辺の人里を襲わせ、人族の娘を犯して数を増やさせる。
コボルド軍団。ゴブリンより力は弱いが、補助的な戦力として使用する。
手先が器用だから、武器や防具のメンテナンスや補修、進軍における道路整備、川への架橋など、器用さを生かした存在とした。戦闘工兵のような役割だ。
酒樽での酒造りやパンの製造、燻製肉の生産や織物作りなどもお手の物だ。
オーガ軍団。戦闘力では間違いなく主体だ。だが食料の消費も凄まじい。だから数は少なく抑え、少数精鋭部隊として鍛えさせる。
人間には到底扱えない巨大な両手剣や森を切り開くための斧、あるいは破城槌などを装備させる。
マスオの産ませたハイオーガたちは体格もほぼ大人同様になり、身長も3メートル近くになった。そろそろ「孫」も産ませることができそうだ、とメスのオーガ、オーグレスたちを見てマスオは品定めした。
ハイオーガたちはダークエルフのマーサルヴァを胡散臭い目で睨んでいたが、マスオが命じると整列して敬礼した。ここにはマーサルヴァの推薦で、メーロゥ、という若者を配置した。ダークエルフにしては精悍で、エルフに襲撃されても持ちこたえていた男だ。オーガたちを前にしても一歩も引かない度胸はなかなかのものだ。戦いでもうまく手綱を引けるだろう。
ウルフ軍団。移動力が鍵となる。偵察に遊撃、強襲にも役立つよう、ゴブリンやコボルドを乗せて移動する訓練も行わせる。
他にマスオの領地の巡回や侵入者への威嚇・排除、それに牧場にいる羊や牛、馬たちの監視も担わせる。
武器も防具もないため持久戦には弱いだろうが、それでもマスオが産ませた銀色の毛を持つ狼たちは普通の狼より数段大きく、並の弓矢ではほぼ刃が立たない。
プライドが高く、ゴブリンらを乗せるのに唸り声をあげているが、マスオが睨みつけると従う。しっかり教育すれば使えるだろう。
スパイダー軍団。街の中では敵味方の区別がつけにくく、繁殖させられないためミッテルン攻略には役立たなかったが、森を再建し下水道を利用して数を増やさせた。
黒蜘蛛から銀蜘蛛になってさらに知能が向上し、マスオの眷属と覚えれば襲わないようになった。それでもミッテルンの街中にいるとシオリたちが悲鳴を上げるので、主に街の外へ配置する。こいつらの糸は有用だ。待ち伏せなどの役に立つだろう。
ハーピィ軍団。こちらはかなり数も増え、マスオとクイーンの子であるハイハーピィも増えた。クイーンが率いているが、いずれハイハーピィたちが群れを率いることとなるだろう。クイーンには子作りに専念してもらう。
簡単な命令が通じるため、見張りや荷物の空輸にはとても役立つ。特にゴブリンやコボルドと相性が良く、食べ物を分け合ったりしている。喜んで彼らを洞窟や樹海へと運んでくれるし、機動力という点ではウルフより役立つだろう。
グリフォン軍団。マスオが樹海を飛び回って産ませた子供たちだ。数は少ない。
金色の翼を持つ子供らが生まれた。まだ小さいがいずれ大きく育つだろう。
言葉が通じないので、マスオの命令にも従わない。一緒に行動させようとするとすぐに縄張り争いを始める。卵もあまり数を産めないので、まだ戦力としては計算できない。
いまのところ、樹海で縄張りを守る役割くらいしか使えなさそうだ。
ヒッポグリフ軍団。マスオが馬たちを母体として産ませた、グリフォンの子だ。
比較的大人しく、マスオがグリフォンの姿でなくともある程度の命令を理解するようになった。飛べ、とか、休め、とかくらいだが。
ゴブリンやコボルドを背に乗せて飛ぶのも上手くなった。ハーピィよりも早く、積載能力が高いのもいい。幼体でもコボルドなら3体くらい軽々と運べるし、重い荷物もお手の物だ。
ヒッポグリフのメスはなぜか生まれていない。自分たちで繁殖させるのは難しいようだ。
アンデッド軍団。ゾンビにスケルトン。
野晒しにしているせいで一時期より数が減ったが、それでも補給いらず、食料いらずで街の周辺を延々と守ってくれている。まさに骨までしゃぶり尽くす存在だ。
こいつらはマスオの命令しか受け付けない。それもレイスの姿の時だけだ。
ダークエルフ。こちらは10人あまりと数は多くない。
だが命を救ったマスオに忠誠を誓っている。言葉が通じること、剣や魔法を扱えるのは大きな利点だ。
こいつらには戦術を学ばせ、指揮官クラスとしてマスオの軍団を率いることができる人材を育てさせよう。
最後に、ワーウルフとワーベア。
こちらはまだ軍団と呼べるほどに数がいない。ワーウルフはシオリが2匹、残りの女たちが数匹産んでくれただけだ。まだ戦えるほど大きくない。
ワーベアはヒメが産んでくれた1匹だけだ。ワーバットに至っては1匹も生まれていない。
ゴブリンたち妖魔とは違い、一度にたくさん産ませることができない。それに成長速度は人間並みだ。まだまだ戦力には程遠い。
しかし、マスオの子だ。成長すれば、信頼度という点でダークエルフよりも上になるだろう。
「見事なものです、ライカン様。これなら十分に人間と、あるいはエルフとも事を構えることができるでしょう」
「だといいがな。人間は悪どく小賢しい。あの手この手でこちらの戦力を削いでくるだろう」
「御意。より多くの兵士が必要です」
「そうだな」
(もっともっと、もっと増やさないとな)
苗床となる母体が少なすぎる。マスオは思った。
「後宮」の人間は、同級生女子たちが合計4人。ミッテルン襲撃の際の人質や、街へ迷い込んだ旅人が合わせて10人ほど。
ダークエルフの女は全て俺のものだと宣言はしたものの、あまり手を出し過ぎて残り少ない他のダークエルフたちの反感を買うのも面倒なので、とりあえず手を付けるのはマーサルヴァだけにしておいてある。
奴らの生殺与奪は握っているし、すべての女を孕ませることも容易いが、忠誠心も必要だ。
狼たちは順調に増えていた。一時期数を減らしたが、マスオが夜毎に通ったこともあり、かなり増えた。今はテリトリーを増やし、オーガ村周辺のいくつかの森を縄張りとして与えてある。まだまだ増やせそうだ。
見通しが明るいのはハーピィとヒッポグリフだ。クイーンハーピィは多産だし、牝馬はたくさんいるので、マスオが行為を行えば行うだけ増やせる。
食料も自分たちで果実やら、牧草やら野原の野ウサギだの野ネズミだのを狩る程度だし、穏やかで手間もかからない。
たまにヒッポグリフどもが美しい牝馬を巡って争う程度だ。マスオ以外の種も増えているが、あとは勝手に任せておく。あまり増えたら間引きしよう。
アンデッドは・・・・・・また戦いがあれば増えるだろう。
初期のゾンビたちはかなり肉が落ちてスケルトンになってしまっているので、ちょっと白い割合が増えた。戦力としてはダウンだ。
だが街中まで届いていた悪臭も減ったので、悪いことばかりではない。
(もっと増やすべきは狼、ハーピィ、ヒッポグリフ、あとワーベアとワーウルフだな)
あとはハーフエルフか。ライカンの姿で産ませられるのかは分からないが。
「ワーウルフとの間に子が成せた、という記録は、エルフの長い歴史にもなかったはず。ワーベアも同様です」
マーサルヴァが言った。
そうか、とマスオは残念に思った。エルフの娘たちを大量に捕虜にして苗床にすれば、もっと増やせそうなのだが。
「俺がエルフの魔石を喰らって、エルフに変身できればいいのかもしれないな」
「そんなことが?」
「どうかな」
試す価値はあるように、マスオには思えた。
「しばらくの間、お前には毎晩相手をしてもらう。ワーウルフとワーベアの交互だ。覚悟しておけ」
「ええ。夜が楽しみです」
マーサルヴァが嬉しそうに言った。
52
お気に入りに追加
116
あなたにおすすめの小説
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
スケートリンクでバイトしてたら大惨事を目撃した件
フルーツパフェ
大衆娯楽
比較的気温の高い今年もようやく冬らしい気候になりました。
寒くなって本格的になるのがスケートリンク場。
プロもアマチュアも関係なしに氷上を滑る女の子達ですが、なぜかスカートを履いた女の子が多い?
そんな格好していたら転んだ時に大変・・・・・・ほら、言わんこっちゃない!
スケートリンクでアルバイトをする男性の些細な日常コメディです。
分析スキルで美少女たちの恥ずかしい秘密が見えちゃう異世界生活
SenY
ファンタジー
"分析"スキルを持って異世界に転生した主人公は、相手の力量を正確に見極めて勝てる相手にだけ確実に勝つスタイルで短期間に一財を為すことに成功する。
クエスト報酬で豪邸を手に入れたはいいものの一人で暮らすには広すぎると悩んでいた主人公。そんな彼が友人の勧めで奴隷市場を訪れ、記憶喪失の美少女奴隷ルナを購入したことから、物語は動き始める。
これまで危ない敵から逃げたり弱そうな敵をボコるのにばかり"分析"を活用していた主人公が、そのスキルを美少女の恥ずかしい秘密を覗くことにも使い始めるちょっとエッチなハーレム系ラブコメ。
男女比の狂った世界で愛を振りまく
キョウキョウ
恋愛
男女比が1:10という、男性の数が少ない世界に転生した主人公の七沢直人(ななさわなおと)。
その世界の男性は無気力な人が多くて、異性その恋愛にも消極的。逆に、女性たちは恋愛に飢え続けていた。どうにかして男性と仲良くなりたい。イチャイチャしたい。
直人は他の男性たちと違って、欲求を強く感じていた。女性とイチャイチャしたいし、楽しく過ごしたい。
生まれた瞬間から愛され続けてきた七沢直人は、その愛を周りの女性に返そうと思った。
デートしたり、手料理を振る舞ったり、一緒に趣味を楽しんだりする。その他にも、色々と。
本作品は、男女比の異なる世界の女性たちと積極的に触れ合っていく様子を描く物語です。
※カクヨムにも掲載中の作品です。
大好きな彼女を学校一のイケメンに寝取られた。そしたら陰キャの僕が突然モテ始めた件について
ねんごろ
恋愛
僕の大好きな彼女が寝取られた。学校一のイケメンに……
しかし、それはまだ始まりに過ぎなかったのだ。
NTRは始まりでしか、なかったのだ……
【R18】童貞のまま転生し悪魔になったけど、エロ女騎士を救ったら筆下ろしを手伝ってくれる契約をしてくれた。
飼猫タマ
ファンタジー
訳あって、冒険者をしている没落騎士の娘、アナ·アナシア。
ダンジョン探索中、フロアーボスの付き人悪魔Bに捕まり、恥辱を受けていた。
そんな折、そのダンジョンのフロアーボスである、残虐で鬼畜だと巷で噂の悪魔Aが復活してしまい、アナ·アナシアは死を覚悟する。
しかし、その悪魔は違う意味で悪魔らしくなかった。
自分の前世は人間だったと言い張り、自分は童貞で、SEXさせてくれたらアナ·アナシアを殺さないと言う。
アナ·アナシアは殺さない為に、童貞チェリーボーイの悪魔Aの筆下ろしをする契約をしたのだった!
[完結済み]男女比1対99の貞操観念が逆転した世界での日常が狂いまくっている件
森 拓也
キャラ文芸
俺、緒方 悟(おがた さとる)は意識を取り戻したら男女比1対99の貞操観念が逆転した世界にいた。そこでは男が稀少であり、何よりも尊重されていて、俺も例外ではなかった。
学校の中も、男子生徒が数人しかいないからまるで雰囲気が違う。廊下を歩いてても、女子たちの声だけが聞こえてくる。まるで別の世界みたいに。
そんな中でも俺の周りには優しいな女子たちがたくさんいる。特に、幼馴染の美羽はずっと俺のことを気にかけてくれているみたいで……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる