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マスオ、冒険者ギルドと戦う4
しおりを挟む戦いの翌朝。
マスオは目覚めると、全身に心地よい気だるさを感じた。
一夜であれほどの女を相手にしたのは初めてだった。オスとして深い満足感に浸る。
「おはようございます、ライカン様」
「うむ」
朝食前に、挨拶に来たアカネをまた寝所で屈服させてやる。
続いてハツミにエミ、シオリ、いつまでも反抗的なショーコも次々と貫く。そしてワーベアであるヒメも、以前捕えて放置していた女冒険者たち3人も犯し尽くし、マスオは満足して洞窟を出た。
(さて、街はどうなっているかな)
ふたたび人狼の姿で、街に潜入した。
冒険者ギルドは騒然としていた。そりゃそうだろう、ほぼ全戦力を投入して、誰も帰ってこないのだから。
「一体どうなってる?あれだけの手練れがいて、何の情報も来てないのか?」
「まだ戦闘中なのでは?あるいは時間がかかって夜営しているとか」
「それにしても、何か連絡を寄越すはずだ」
「誰か、偵察に出られるものはいないか!」
残った奴らに大した冒険者はいないようだ。マスオはそっとギルドを離れた。
兵士たちの詰め所へと向かう。
中の様子をうかがうと、こちらは緊張の度合いを強めている様子だった。
「冒険者たちが50人以上、行方不明らしい」
「やられたのか?ゴブリンに?」
「オーガがいたって話だし、蜘蛛の棲む森へ入っていくのを見た者もいる」
「あの森、ヤバいな」
兵士たちの話に耳を澄ませる。
3日後には、王都から「勇者様御一行」と討伐軍の兵士、それに「王直属の親衛隊」とやらが来るらしい。
総兵士数200人、という数字を耳にして、マスオはふたたび慄いた。
統率など無きに等しい冒険者どもと違い、完全武装の正規兵が200人も。
それにナオヤたち勇者パーティが4人。さすがに対処しきれる戦力ではない。
(今度こそ、ダメかもしれないな)
街の中の井戸を回って、フォレストスパイダーの麻痺毒を入れたビンをいくつか放り込んでおき、マスオは街を後にした。
洞窟に戻り、作戦を考える。
やはり、戦力が足りない。
ここはオーガたちにも働いてもらうか。
繭状態で定期的に麻痺毒を打ち込んでいたオーガ、オーグレスたちを、繭から解放してみることにした。
多くは衰弱し、卵を産み付けられて死んだものも複数いたが、さすがの生命力で何匹かが生き延びていた。奴らが襲来するまで3日、肉でも食わせれば少しでも戦力になるかも知れない。
「ヴォエアアアアアアア・・・・・・」
オーガたちはだめだった。ゴブリンらに肉を喰われ、蜘蛛の卵を産み付けられて肉も削げ落ち、もはや瀕死の状態だ。とても戦力には使えそうになかった。
オーグレス8体は餌としていなかったせいか、比較的元気だった。拘束を解けば襲いかかってくるかとも思ったが、ぐるぐる巻きにして毎晩のように陵辱されていた奴らの心はとうに折れていたらしく、よろよろと起き上がるとマスオにひれ伏した。
ゴブリンの姿をとっても襲ってはこなかった。誰がボスなのかちゃんと認識できているようだった。
こんなことならワーベアのメスも殺さず残しておけば、とマスオは後悔したが、時既に遅し。ヒメグマが残っただけだ。今度から皆殺しにする時は慎重に考えようと反省した。
オーグレスの1匹は、鬼にしてはなかなかに目を引く外見をしていた。額に角はあるが、オーグレスの中では格別に整った顔立ちをしていた。マスオの前に這いつくばり、従順な姿勢を見せている。
(こいつに、女どもを見張らせるか)
オルドにはもう20人近くの人間がいる。一斉に逃げ出せばコボルナ2匹ではとても敵わず厄介だ。だが食人鬼オーグレスが見張り番をしていれば、徒手空拳で逃げようとするバカもいないだろう。いれば食われてしまっても構わない。
果たして、見目麗しいオーグレスはマスオの命令に頷き、王の間の前でじっと女たちを見張った。マスオの産ませたハイゴブリンやオルドの女たち、それに世話係のゴブリナやコボルナを襲う気配もない。好色そうなゴブリンどもが、マスオの留守に女たちを襲う心配もないだろう。オルドの女たちもオーグレスを見て諦めた表情を浮かべていた。
最も戦力として増えたのは、死んだオーガの苗床からボコボコと多数産まれてきた黒蜘蛛たちだ。いつの間にか大量に増え、洞窟の天井にびっしりと張り付いている。
森にいる、知能も力も弱い小蜘蛛たちですら冒険者相手なら十分戦力になった。こいつらならもっと役に立つだろう。
どうせ洞窟を占拠されれば皆殺しにされるのだ。せいぜい働いてもらって、少しでも兵隊の数を減らしてもらおう。
ゴブリンやコボルドも働かせた。洞窟の改造をあちこちと指示した。以前作った罠はほとんどナオヤたちのパーティに通用しなかったので、イチからコボルドどもに作り直させた。
洞窟の壁や天井にも細工させた。黒蜘蛛が隠れることのできる穴を掘らせ、防衛力を高めた。壁にもあちこちに一見行き止まりに見えたり、奥があるように見せかけて行き止まりを作らせた。突貫工事だが、人間の目には暗闇で見通しにくい洞窟だ。集団で侵入してくる相手には有効かもしれない。
「パパ」
「パパ、できた」
工事にはシオリとエミの産んだ子ゴブリンたち、通称ハイゴブリンが役に立った。まださほど知能が高いとは言えないが、言葉が理解できるし、ここに穴を掘れ、とか、ここに岩を仕掛けろ、など、そんな程度でも理解できるのは充分にありがたい。
ゴブリン洞窟の奥、コボルド洞窟にはさらに精緻な罠を仕掛けさせた。ここは元々コボルドたちが使っていた階段や住居スペースが豊富にある。人間の特性を生かした罠を設置させた。
「ライカン様、人間が来るのですか?」
騒がしい気配を聞きつけ、アカネが聞いてきた。
「ああ」
「あの、わたしたちは」
「奥の間にいろ。俺が死んだら道連れだな」
そう話すと、全員が暗い顔になった。
女僧侶だけでも味方について欲しいところだが、あと数日では難しいだろう。最後に裏切られる方が厄介だ。
他の冒険者捕虜たちから離れ、元同級生たちだけを集めた。
「もし俺が死んだら、お前たちは人間の街へ帰れ」
「・・・・・・はい」
小声で言うと、アカネは露骨に嬉しそうな顔をした。
エミとシオリ、ショーコ、ハツミらマスオの子供らを産んだ女たちは微妙な表情をしていた。マスオに情が移ったというより、産んだ子供らを心配しているようだ。ゴブリンであっても自分が産んだ子どもたちだ。育てているうちに、情が湧いてしまったのだろう。
「ママ、ママ」
「ママ、ぼくたち、がんばるよ」
「パパを助けるから、心配しないでね、ママ」
総勢40匹ほどになる、言葉を解するハイゴブリンたちは、ママたちの曇る表情など理解できず、ただ初めての戦いに期待を膨らませていた。これから始まる地獄絵図も知らずに。
最終決戦場となるであろう王の間にも、簡単に罠を仕掛けておく。
マスオの常識では、ラスボスの部屋にトラップなどない、というのがセオリーだった。ボスは堂々と勇者と戦って散る、それが日本のRPGだ。
だがここは日本じゃないし、マスオは正々堂々としたボスを演じるつもりもなかった。
自分の武具を手入れし、オーガの身体とホブゴブリンの身体、ワーベアの身体にそれぞれ装備しておく。
こうすれば、ワーウルフの姿から変身すればいつでもフル装備状態で戦える。
戦う準備をして3日目の夜、マスオがオーガ村のメス狼たちと交尾して戻ってくると、エミたちが「陳情」しに来た。
「ライカン様、どうかわたしたちにも、戦う武器を下さい」
「寝返るためか」
「違います。・・・・・・もし軍隊や冒険者が雪崩込んできたら、わたしたちは」
なるほど。
オルドの女たちは無防備だ。ナオヤたち同級生が庇ってくれればいいだろうが、そうでなければ気が立った兵士らに乱暴される可能性がある。
「だがお前らは寝返る可能性もある。短剣くらいしか渡せん」
「それで充分です」
マスオはコボルドの工房から短剣を持ってこさせた。
ハイゴブリンは「ママのため」と喜び勇んで武器を取ってきた。
1本あまったので、念のためゴブリンの姿に変身し装備しておく。まあゴブリンの肉体で、しかも短剣1本で戦うことはまずないだろうが。
「ありがと、みんな」
「ママたちもいっしょに、たたかおーね!」
そう言われると、エミもハイゴブリンたちに抱きついて泣いていた。
マスオは、以前にも増してゴブリンやコボルドたちに厳しく訓練をさせた。
長槍を使った集団戦、逃げると見せかけての投石や弓攻撃、松明を狙って視界を奪う方法、暗闇での接近戦。
ハイゴブリンたちにも、戦うすべを教えられるだけ教えた。
3日3晩、マスオは朝と夕にオルドの女たち全員を抱いた。
一人でも多く、種を残してくれるように。
できるだけの準備をした4日目の朝、奴らが現れた。
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