異世界モンスターに転生したので同級生たちに復讐してやります

るふぃーあ

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マスオ、蜘蛛になる2

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ひと眠りした後、マスオは狼の姿となり、遠くまで偵察に出かけた。
狼の一群が護衛として付いてくるのを感じながら、マスオは考え事を巡らした。

転生者と地元の冒険者たちを1パーティずつ倒した。当初危惧していたが、勇者ナオヤたちはまだやって来ない。
奴らでなければ、ある程度の対処は可能なようだ。ゴブリンたちも戦いを覚え始めたし、コボルドの武具もそこそこ使い物になる。
あとは人間側の情報を得ねばならない。人里までの距離、街や城の規模、兵士数に冒険者の数、そして質。知りたいこと、知るべきことはたくさんある。
やはり、言葉を使って使役できる部下が必要だ。ゴブリンと狼、コボルドでは簡単な指示はできても、難しいことは伝えられない。
それに、マスオ自身の問題もある。ホブゴブリンや狼では、エミや人間の冒険者に尋問もできない。何がしか、人間の言葉を発することができる形態へ変身できる魔物の魔石が欲しい。

だが、マスオが転生してから出会った魔物は、全て人語を話せないものたちばかりだ。より知的な魔物はいるのだろうか。

(街だ)

狼の姿で走ること体感約20分、ようやく街らしき建物が見えてきた。
全力疾走ではないこの速度だから、距離として10キロ弱だろうか、そうマスオは予測する。
人間の徒歩なら2時間以上かかる計算だ。重い装備を持つならもっとかかるだろう。
これなら、常時街から洞窟へと続く道を監視させておけば、いきなり洞窟を急襲される、という可能性は低そうだ。

街は大きくレンガ造りの高い城壁で囲われていて、モンスターの襲撃に備えていくつか見張りの塔があり、門には番兵が槍を持って立っていた。最低限の警戒はしている、と見るべきだろう。
マスオは見つからないように注意しつつ、遠巻きに街をぐるりと回った。街道が3本あり、旅人や馬車が行き交って賑わっていた。
街は一周するのに10分ほどかかった。5キロ周囲くらいはあるだろうか。どのくらいの人口を有する街なのか、この世界の中での規模は大きい方なのか小さいのか、マスオには想像もつかなかった。
偵察を終えると、郊外の森で待たせておいた護衛の群れを率いて、マスオは洞窟へと戻った。
この街とマスオの洞窟の間に森がある。一直線に森を突っ切ってくるなら、この森に伏兵を置けば迎撃できそうだ。迂回するなら相当時間をロスするだろう。

**

翌日は反対方向、人間の街とは逆方向へと向かった。
目指す先には巨大な山々があり、頂上には雪が積もっていた。山々は険しく、容易に超えるのは狼の姿でも難しそうだ。

今度はかなりの速度を出し、山々を囲む樹海へと向かう。
樹海はかなり広範囲で、ゴブリン集落の近くの森とは比べ物にならないほど広い。それに草原も広かった。本気で走っても、なかなか樹海へと辿り着けなかった。
ようやく辿り着いた時は、もう太陽が高く登っていた。群れも狼たちはマスオの走る速度には追いつけないらしく、ゆっくり寛いでいるとようやく追いついてきた。

草原の羊と鹿を狩って昼食を済ませ、樹海へと足を踏み入れた。

「グルル・・・・・・」

護衛の狼が躊躇する仕草を見せた。ここから先は、狼にとっても怖い場所らしい。
マスオを先頭に、こわごわとあとをついてくる。

樹海はひどく静かで、ほとんど音もしないはずの狼の足音すら、ひどく響くように感じた。
頭上には網目状に木々の枝が巡らされ、昼間だというのに薄暗い。

妖精族、エルフやドライアド、小さいがピクシーでもいい。言葉が話せるような種族はいないものか。
いや、いたとして、そいつらを倒さねばならない。仲間や奴隷にするか、あるいはあの宝石をゲットして口にしないと。

油断なく進んでいたはずのマスオは、ふと足を止め耳を澄ませた。
おかしい。何かに、誰かに見られている。
周囲を見回しても、姿は見えない。狼の聴力を以てしても、何も聞こえない。

いや、待て。
何かが聞こえる。
ほとんど聞こえないような、微かな音。
これは何だ?聞いたこともない。
テストの時に紙をめくるような音。集中していないと聞こえないような音。

と。
音もなく、護衛狼が太いロープに巻き付かれた。
いや、ロープじゃない。
白く太い糸、これは・・・・・・

(蜘蛛だ!)

糸に巻かれた護衛狼は、たちまち樹上へと吊し上げられた。
しゅるるっ!
また別の狼が糸に捕らわれる。

マスオはホブゴブリンに変化した。手近な石ころを手に取り、糸に向かって投げる。
だが当たらない。狙うには細すぎる。

次に木を引き抜き、投げた。
今度は命中した。だが。

(切れない!?)

相当な弾力と粘着力を持つらしく、投げつけた木がそのまま糸に絡みつき、空中にぶら下がっていた。
と、マスオの右手も糸に捕らわれた。

(う、ヤバい)

引っ張っても切れない。それに剥がせない。

見ると、他の狼たちも次々と糸に捕まっていた。
複数の糸がぶら下がっていた。蜘蛛は一体ではないらしい。

力を込めてようやく引き剥がしたが、その頃にはもう、両脚や胴体にまで糸が絡まっていた。

「クオオオオオオン!」

頭上の声に見上げると、最初に糸に捕まった狼に、巨大な黒い蜘蛛が牙を突き立てていた。
がっくり、と狼が動かなくなる。

(ヤバい、猛毒だ)

恐らく致死性の毒。噛まれたら死ぬ。
だがもがいてももがいても、糸は絡む一方だった。
むしろ絡まっていき、もうどうすることもできない。
他の狼と同様、マスオの巨体も糸で絡め取られ、徐々に樹上に向かって吊り上げられていく。

(どうすれば)
(火を使えれば)

だが火は手元になく、起こすこともできない。炎の魔法もなく、ゴブリンやコボルドの助けも望めなかった。

やがて、糸の動きが止まった。
他の狼たちは、次々に牙を突き立てられていく。
間近に見ると、蜘蛛は思ったよりも巨大だった。ゴールポスト、ハンドボール用ではなくサッカーゴールくらいありそうな巨体。牙もかなりの大きさだ。

マスオはせめて一矢報いようと、すぐ近くに近寄ってきた巨大な蜘蛛に腕を振り上げようとした。だが腕は動かせなかった。

「グル、グルガオオオオオオオッ!」

威圧しても、蜘蛛は動じなかった。そもそも聞こえているのかどうか。
蜘蛛は牙を大きく開き、マスオに向かって_____

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