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マスオ、コボルドを倒す2
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コボルド。
欧米の伝承に出てくる、鉱山に棲む妖魔族だ。
銀を腐らせるという言い伝えがある、コバルトの語源となったイヌ頭の生き物。
「キャン!キャンキャン!」
「キイイイッ!キイキイキイイイッ!」
洞窟の中で、ゴブリンとコボルドは互いに牙を剥き出し、激しく威嚇しあっていた。仲が悪いのだろう。両者とも、いまにも掴みかかろうとしている。
そこへ______
グルルルル。
低い声がした。
甲高いコボルドとはまるで違う、威圧感のある声。
その声に、威嚇しあっていたゴブリンもコボルドも押し黙った。
グルルルル。
まただ。
どうやら、コボルドの開けた横穴の奥から響いてくるようだ。
「キャン!キャンキャン!キャン!」
コボルドは喜び、小躍りし始めた。反対にゴブリンたちは一斉に怯えた表情になり、振り返ってマスオの顔を眺めてきた。
なるほど。
ボスの登場か。
コボルドのボス、さしずめコボルドキング、といったところか。
ずん。
ずん。ずん。ずん。
小柄なコボルドの体格には相応しくない、重量のある足音が近づいてきた。
コボルドたちが通路を譲る。こちら側のゴブリンも。
「グルルルル・・・・・・」
ひときわ大きな赤い目が、俺を見つめた。
でけえ。
マスオは戦慄した。
ホブゴブリンであるマスオもゴブリンの中ではひときわ大きいが、コボルドキングはマスオと遜色ない大きさだ。他のコボルドの倍以上ある。
そして。
コボルドキングは、両手に武具を携えていた。
人間に比べると稚拙な武装だ。しかし金属の剣、金属の盾。それだけで充分に脅威である。
マスオを睨むと、刃渡り1メートル以上ありそうな剣、いやナタをマスオに向かって突きつけ、コボルドキングは一層巨大な声で吠えた。
「グオオオオオオオオオオオオオオン!」
「キ!キイ!キイキイ、キイイイイッ!」
その声だけで、ゴブリンたちが一斉に逃げ惑う。
だが。
「グルオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!」
マスオが叫び返す。
今度は、見守っていたコボルドたちが、一斉に逃げ腰になった。
棍棒を握り直し、マスオはコボルドキングへと襲いかかった。
樫でできた硬い棍棒が、金属の盾をぐああああん、と鳴らす。
だが相手はそれを押し戻し、ナタを振り下ろしてきた。
二度、三度と棍棒を、ナタを打ち合う。
しかし、手数的にはマスオが不利だ。あちらはナタと盾があり、マスオには棍棒しかない。
べき。
マスオの棍棒がへし折れた。
金属と木材の強度の差であり、使い古したせいであり、技量の差でもある。
まだ転生して数回程度しか戦いの経験がないマスオよりも、群れの長として歴戦をくぐり抜けてきたコボルドキングの方が、戦う技術も経験も数段優れていた。
「グアアアアッ」
ボギッ。
腕をナタで直撃され、マスオは痛みに苦痛を漏らした。左腕が折られたようだ。
「ウオオオオオオン!」
既に勝利を悟ったか、コボルドキングが雄叫びを上げ、両手を突き上げた。
コボルドたちも喝采し、手にしたノミやハンマーをガンガンと鳴らす。
だめだ、このままじゃ。
マスオは不利を悟った。力はほぼ同等、戦闘技術はあちらが上だ。おまけに武器も失ってしまった。
マスオはくるりと踵を返し、洞窟の奥へと逃げ出した。
欧米の伝承に出てくる、鉱山に棲む妖魔族だ。
銀を腐らせるという言い伝えがある、コバルトの語源となったイヌ頭の生き物。
「キャン!キャンキャン!」
「キイイイッ!キイキイキイイイッ!」
洞窟の中で、ゴブリンとコボルドは互いに牙を剥き出し、激しく威嚇しあっていた。仲が悪いのだろう。両者とも、いまにも掴みかかろうとしている。
そこへ______
グルルルル。
低い声がした。
甲高いコボルドとはまるで違う、威圧感のある声。
その声に、威嚇しあっていたゴブリンもコボルドも押し黙った。
グルルルル。
まただ。
どうやら、コボルドの開けた横穴の奥から響いてくるようだ。
「キャン!キャンキャン!キャン!」
コボルドは喜び、小躍りし始めた。反対にゴブリンたちは一斉に怯えた表情になり、振り返ってマスオの顔を眺めてきた。
なるほど。
ボスの登場か。
コボルドのボス、さしずめコボルドキング、といったところか。
ずん。
ずん。ずん。ずん。
小柄なコボルドの体格には相応しくない、重量のある足音が近づいてきた。
コボルドたちが通路を譲る。こちら側のゴブリンも。
「グルルルル・・・・・・」
ひときわ大きな赤い目が、俺を見つめた。
でけえ。
マスオは戦慄した。
ホブゴブリンであるマスオもゴブリンの中ではひときわ大きいが、コボルドキングはマスオと遜色ない大きさだ。他のコボルドの倍以上ある。
そして。
コボルドキングは、両手に武具を携えていた。
人間に比べると稚拙な武装だ。しかし金属の剣、金属の盾。それだけで充分に脅威である。
マスオを睨むと、刃渡り1メートル以上ありそうな剣、いやナタをマスオに向かって突きつけ、コボルドキングは一層巨大な声で吠えた。
「グオオオオオオオオオオオオオオン!」
「キ!キイ!キイキイ、キイイイイッ!」
その声だけで、ゴブリンたちが一斉に逃げ惑う。
だが。
「グルオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!」
マスオが叫び返す。
今度は、見守っていたコボルドたちが、一斉に逃げ腰になった。
棍棒を握り直し、マスオはコボルドキングへと襲いかかった。
樫でできた硬い棍棒が、金属の盾をぐああああん、と鳴らす。
だが相手はそれを押し戻し、ナタを振り下ろしてきた。
二度、三度と棍棒を、ナタを打ち合う。
しかし、手数的にはマスオが不利だ。あちらはナタと盾があり、マスオには棍棒しかない。
べき。
マスオの棍棒がへし折れた。
金属と木材の強度の差であり、使い古したせいであり、技量の差でもある。
まだ転生して数回程度しか戦いの経験がないマスオよりも、群れの長として歴戦をくぐり抜けてきたコボルドキングの方が、戦う技術も経験も数段優れていた。
「グアアアアッ」
ボギッ。
腕をナタで直撃され、マスオは痛みに苦痛を漏らした。左腕が折られたようだ。
「ウオオオオオオン!」
既に勝利を悟ったか、コボルドキングが雄叫びを上げ、両手を突き上げた。
コボルドたちも喝采し、手にしたノミやハンマーをガンガンと鳴らす。
だめだ、このままじゃ。
マスオは不利を悟った。力はほぼ同等、戦闘技術はあちらが上だ。おまけに武器も失ってしまった。
マスオはくるりと踵を返し、洞窟の奥へと逃げ出した。
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