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マスオ、ゴブリンになる5
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「・・・・・・てな、・・・・・・・・・よ」
「依頼、・・・・・・で、・・・・・・・・・てさ」
「・・・・・・じゃ、まだまだ・・・・・・・・・・・・」
目覚めると、どこかから話し声が聞こえてきた。
何を話しているのか分からない。マスオは目を開けた。
そこは暗く、狭い場所だった。
どうやらウサギ狩り用の落とし穴だ、と気づいたのはしばらくしてからだった。
あのゴブリン兄妹3匹と堀った罠用の穴、そこに転がり落ちていたのだ。
マスオは気配を殺し、ゆっくり起き上がった。
見つかったら殺される、それは肌で感じた。だからゆっくりと穴から這い出し、地面を這った。
魔法に射抜かれた右脚は壊死していた。匍匐前進の支えくらいにはなり、引きずって這った。だがもう満足には歩けず、走ることもできないと直感した。
そっと。
気配を悟られないようにそっと、周囲を伺った。
夜になっていたが、奴らはまだそこにいた。
たき火を囲んで談笑していたのだ。多数のゴブリンたちを虐殺した、その洞窟の前で。
「しっかし、これでまだレベル33かぁ。かったるいなあ」
斧戦士が、空中を見上げてため息をついていた。
「なあナオヤ、お前いまレベルいくつだ?」
マスオは仰天した。
その口調と名前に、聞き覚えがあったからだ。
ナオヤ、と呼びかけられた勇者らしき男は、ん、と答えた。
「レベル48、かな」
「はー、すげぇなあ。さすが勇者様、レベルアップも早いし、武器も防具も伝説の装備、だもんなあ。ったく、やってらんねーぜ」
斧戦士がごろん、と頭の下に腕を組み、横になった。
「何言ってんのタカヒコ。ナオヤが王子様に転生してくれたおかげで、うちらもいい装備をもらったんじゃない」
そう答えた赤い髪の女性。
あの弓使いだ。
ゴブリナに矢を放った、憎き女。
この口調も間違いない。姿形は違うが、同級生のアカネだ。
マスオをことさらバカにし、いつも蔑むような目で見ていた女。あの課外授業の時も、ナオヤやタカヒコと一緒になって落ちろ、て落ちろ、と囃し立てていた奴だ。
「そうですね。ナオヤのおかげです」
そう答えたのは、槍の戦士。
こいつは口調的にマサヒトで間違いなさそうだ。いつもナオヤやタカヒコとつるんでいた奴。
「でも、1匹逃しちゃったね・・・・・・」
最後に答えた女性。
話し方も声も間違いない。白河さん、白河サキだ。
アカネがフォローに入る。
「サキが気にすることないよ。ゴブリンの1匹くらい、どうってことないよ。他にもたくさんいるし」
「だけど・・・・・・」
まだうつむいている。
「でも」
槍戦士マサヒトがあとを継いだ。
「あのゴブリン、ちょっと変わってましたよね」
「だな」
勇者ナオヤも頷いた。
「依頼、・・・・・・で、・・・・・・・・・てさ」
「・・・・・・じゃ、まだまだ・・・・・・・・・・・・」
目覚めると、どこかから話し声が聞こえてきた。
何を話しているのか分からない。マスオは目を開けた。
そこは暗く、狭い場所だった。
どうやらウサギ狩り用の落とし穴だ、と気づいたのはしばらくしてからだった。
あのゴブリン兄妹3匹と堀った罠用の穴、そこに転がり落ちていたのだ。
マスオは気配を殺し、ゆっくり起き上がった。
見つかったら殺される、それは肌で感じた。だからゆっくりと穴から這い出し、地面を這った。
魔法に射抜かれた右脚は壊死していた。匍匐前進の支えくらいにはなり、引きずって這った。だがもう満足には歩けず、走ることもできないと直感した。
そっと。
気配を悟られないようにそっと、周囲を伺った。
夜になっていたが、奴らはまだそこにいた。
たき火を囲んで談笑していたのだ。多数のゴブリンたちを虐殺した、その洞窟の前で。
「しっかし、これでまだレベル33かぁ。かったるいなあ」
斧戦士が、空中を見上げてため息をついていた。
「なあナオヤ、お前いまレベルいくつだ?」
マスオは仰天した。
その口調と名前に、聞き覚えがあったからだ。
ナオヤ、と呼びかけられた勇者らしき男は、ん、と答えた。
「レベル48、かな」
「はー、すげぇなあ。さすが勇者様、レベルアップも早いし、武器も防具も伝説の装備、だもんなあ。ったく、やってらんねーぜ」
斧戦士がごろん、と頭の下に腕を組み、横になった。
「何言ってんのタカヒコ。ナオヤが王子様に転生してくれたおかげで、うちらもいい装備をもらったんじゃない」
そう答えた赤い髪の女性。
あの弓使いだ。
ゴブリナに矢を放った、憎き女。
この口調も間違いない。姿形は違うが、同級生のアカネだ。
マスオをことさらバカにし、いつも蔑むような目で見ていた女。あの課外授業の時も、ナオヤやタカヒコと一緒になって落ちろ、て落ちろ、と囃し立てていた奴だ。
「そうですね。ナオヤのおかげです」
そう答えたのは、槍の戦士。
こいつは口調的にマサヒトで間違いなさそうだ。いつもナオヤやタカヒコとつるんでいた奴。
「でも、1匹逃しちゃったね・・・・・・」
最後に答えた女性。
話し方も声も間違いない。白河さん、白河サキだ。
アカネがフォローに入る。
「サキが気にすることないよ。ゴブリンの1匹くらい、どうってことないよ。他にもたくさんいるし」
「だけど・・・・・・」
まだうつむいている。
「でも」
槍戦士マサヒトがあとを継いだ。
「あのゴブリン、ちょっと変わってましたよね」
「だな」
勇者ナオヤも頷いた。
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