6 / 86
マスオ、ゴブリンになる5
しおりを挟む
「・・・・・・てな、・・・・・・・・・よ」
「依頼、・・・・・・で、・・・・・・・・・てさ」
「・・・・・・じゃ、まだまだ・・・・・・・・・・・・」
目覚めると、どこかから話し声が聞こえてきた。
何を話しているのか分からない。マスオは目を開けた。
そこは暗く、狭い場所だった。
どうやらウサギ狩り用の落とし穴だ、と気づいたのはしばらくしてからだった。
あのゴブリン兄妹3匹と堀った罠用の穴、そこに転がり落ちていたのだ。
マスオは気配を殺し、ゆっくり起き上がった。
見つかったら殺される、それは肌で感じた。だからゆっくりと穴から這い出し、地面を這った。
魔法に射抜かれた右脚は壊死していた。匍匐前進の支えくらいにはなり、引きずって這った。だがもう満足には歩けず、走ることもできないと直感した。
そっと。
気配を悟られないようにそっと、周囲を伺った。
夜になっていたが、奴らはまだそこにいた。
たき火を囲んで談笑していたのだ。多数のゴブリンたちを虐殺した、その洞窟の前で。
「しっかし、これでまだレベル33かぁ。かったるいなあ」
斧戦士が、空中を見上げてため息をついていた。
「なあナオヤ、お前いまレベルいくつだ?」
マスオは仰天した。
その口調と名前に、聞き覚えがあったからだ。
ナオヤ、と呼びかけられた勇者らしき男は、ん、と答えた。
「レベル48、かな」
「はー、すげぇなあ。さすが勇者様、レベルアップも早いし、武器も防具も伝説の装備、だもんなあ。ったく、やってらんねーぜ」
斧戦士がごろん、と頭の下に腕を組み、横になった。
「何言ってんのタカヒコ。ナオヤが王子様に転生してくれたおかげで、うちらもいい装備をもらったんじゃない」
そう答えた赤い髪の女性。
あの弓使いだ。
ゴブリナに矢を放った、憎き女。
この口調も間違いない。姿形は違うが、同級生のアカネだ。
マスオをことさらバカにし、いつも蔑むような目で見ていた女。あの課外授業の時も、ナオヤやタカヒコと一緒になって落ちろ、て落ちろ、と囃し立てていた奴だ。
「そうですね。ナオヤのおかげです」
そう答えたのは、槍の戦士。
こいつは口調的にマサヒトで間違いなさそうだ。いつもナオヤやタカヒコとつるんでいた奴。
「でも、1匹逃しちゃったね・・・・・・」
最後に答えた女性。
話し方も声も間違いない。白河さん、白河サキだ。
アカネがフォローに入る。
「サキが気にすることないよ。ゴブリンの1匹くらい、どうってことないよ。他にもたくさんいるし」
「だけど・・・・・・」
まだうつむいている。
「でも」
槍戦士マサヒトがあとを継いだ。
「あのゴブリン、ちょっと変わってましたよね」
「だな」
勇者ナオヤも頷いた。
「依頼、・・・・・・で、・・・・・・・・・てさ」
「・・・・・・じゃ、まだまだ・・・・・・・・・・・・」
目覚めると、どこかから話し声が聞こえてきた。
何を話しているのか分からない。マスオは目を開けた。
そこは暗く、狭い場所だった。
どうやらウサギ狩り用の落とし穴だ、と気づいたのはしばらくしてからだった。
あのゴブリン兄妹3匹と堀った罠用の穴、そこに転がり落ちていたのだ。
マスオは気配を殺し、ゆっくり起き上がった。
見つかったら殺される、それは肌で感じた。だからゆっくりと穴から這い出し、地面を這った。
魔法に射抜かれた右脚は壊死していた。匍匐前進の支えくらいにはなり、引きずって這った。だがもう満足には歩けず、走ることもできないと直感した。
そっと。
気配を悟られないようにそっと、周囲を伺った。
夜になっていたが、奴らはまだそこにいた。
たき火を囲んで談笑していたのだ。多数のゴブリンたちを虐殺した、その洞窟の前で。
「しっかし、これでまだレベル33かぁ。かったるいなあ」
斧戦士が、空中を見上げてため息をついていた。
「なあナオヤ、お前いまレベルいくつだ?」
マスオは仰天した。
その口調と名前に、聞き覚えがあったからだ。
ナオヤ、と呼びかけられた勇者らしき男は、ん、と答えた。
「レベル48、かな」
「はー、すげぇなあ。さすが勇者様、レベルアップも早いし、武器も防具も伝説の装備、だもんなあ。ったく、やってらんねーぜ」
斧戦士がごろん、と頭の下に腕を組み、横になった。
「何言ってんのタカヒコ。ナオヤが王子様に転生してくれたおかげで、うちらもいい装備をもらったんじゃない」
そう答えた赤い髪の女性。
あの弓使いだ。
ゴブリナに矢を放った、憎き女。
この口調も間違いない。姿形は違うが、同級生のアカネだ。
マスオをことさらバカにし、いつも蔑むような目で見ていた女。あの課外授業の時も、ナオヤやタカヒコと一緒になって落ちろ、て落ちろ、と囃し立てていた奴だ。
「そうですね。ナオヤのおかげです」
そう答えたのは、槍の戦士。
こいつは口調的にマサヒトで間違いなさそうだ。いつもナオヤやタカヒコとつるんでいた奴。
「でも、1匹逃しちゃったね・・・・・・」
最後に答えた女性。
話し方も声も間違いない。白河さん、白河サキだ。
アカネがフォローに入る。
「サキが気にすることないよ。ゴブリンの1匹くらい、どうってことないよ。他にもたくさんいるし」
「だけど・・・・・・」
まだうつむいている。
「でも」
槍戦士マサヒトがあとを継いだ。
「あのゴブリン、ちょっと変わってましたよね」
「だな」
勇者ナオヤも頷いた。
64
お気に入りに追加
116
あなたにおすすめの小説
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。
欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します
ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!!
カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
【書籍化】パーティー追放から始まる収納無双!~姪っ子パーティといく最強ハーレム成り上がり~
くーねるでぶる(戒め)
ファンタジー
【24年11月5日発売】
その攻撃、収納する――――ッ!
【収納】のギフトを賜り、冒険者として活躍していたアベルは、ある日、一方的にパーティから追放されてしまう。
理由は、マジックバッグを手に入れたから。
マジックバッグの性能は、全てにおいてアベルの【収納】のギフトを上回っていたのだ。
これは、3度にも及ぶパーティ追放で、すっかり自信を見失った男の再生譚である。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
男女比1:10。男子の立場が弱い学園で美少女たちをわからせるためにヒロインと手を組んで攻略を始めてみたんだけど…チョロいんなのはどうして?
悠
ファンタジー
貞操逆転世界に転生してきた日浦大晴(ひうらたいせい)の通う学園には"独特の校風"がある。
それは——男子は女子より立場が弱い
学園で一番立場が上なのは女子5人のメンバーからなる生徒会。
拾ってくれた九空鹿波(くそらかなみ)と手を組み、まずは生徒会を攻略しようとするが……。
「既に攻略済みの女の子をさらに落とすなんて……面白いじゃない」
協力者の鹿波だけは知っている。
大晴が既に女の子を"攻略済み"だと。
勝利200%ラブコメ!?
既に攻略済みの美少女を本気で''分からせ"たら……さて、どうなるんでしょうねぇ?
勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス
R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。
そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。
最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。
そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。
※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる