異世界モンスターに転生したので同級生たちに復讐してやります

るふぃーあ

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マスオ、ゴブリンになる4

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勇者たちが近づいてきた。
光る剣を構えた勇者の傍には、巨大なな斧を振るう重戦士、槍を構えた素早そうな軽戦士が脇を固めていた。
後ろには弓戦士、さらに杖を持った魔法使いらしき姿も控えていた。
だめだ、とても敵わない。どう考えてもあちらが勝つのだろう。それは元人間のマスオにとって明白すぎるほど明白な事実だった。

どうする。考えろ。
ファンタジーゲームが好きだったマスオは、逆転の方法を必死で考えた。
ここから逆転する方法。
だが、圧倒的な力の差に、思いつくことは何もなかった。

「キシャァァァッ!」

3匹のうち、1匹が剣で切り裂かれた。
いつも大きな魚をくれたゴブリン。
ゴト、と首が落ちた。

「キイイイイイイーッ!」

もう1匹は、ゴブリナを庇って死んだ。
戦士の斧が振り下ろされるのを庇ったのだ。頭がスイカのように割れた。

どんっ!
マスオは突き飛ばされた。
突き飛ばしたゴブリナは、マスオの身代わりとなり、矢に貫かれた。

「キイ・・・・・・」

わずかに差し出された指を、マスオはそっと握った。
ばたり。
ゴブリナは倒れた。

ああ。
せっかくできた3人の友達が。一瞬で。

(次は、僕の番だ)

もう、だれも助けてくれない。庇ってはくれない。
逃げ場所はなく、反撃する力もない。
そんなマスオに、勇者たちが近付いて来た。

(だけど)

まだだ。
まだ死ぬわけにはいかない。
せっかくゴブリナが庇ってくれた命だ。ムダにはできない。絶対に。

(せめて、あがくだけ足掻いてやる)

マスオは地面に落ちていた、粗末な木の槍を掴んだ。
殺されたゴブリナの死体を持ち上げ、突き飛ばす。
勇者の方へと。

「うわっ!」

血まみれの死体を投げつけられ、勇者が仰け反る。
その隙をついて、脱兎の如く走り出した。

「こいつ!」

重戦士が斧を振り上げた。
その顔面へ向かって、口に含んでいた唾液を、ブーッと顔に吹きかけた。

「なっ!きったねぇ!」

目に入ったらしく、戦士が顔を覆った。

「はあっ!」

槍を手にした軽戦士が、長い槍を突き出す。
手にしていた木の槍で弾く。
槍はボッキリ折れたが、なんとか弾き返す役には立った。その脇をすり抜け、また脱兎のごとく走った。

「逃さないよ!」

入り口へと逃げるマスオの背後から、声が飛んできた。
右にステップすると、ヒュン、と耳のすぐ横を矢が通り抜けた。

「なっ!?あたしの矢を?」

残るは1人、入り口付近に立つ人影。

え。
走りながら、マスオはその顔に見覚えがあった。

(白河さん!?)

同級生の女子。
マスオが密かに憧れていた子だ。

(危ないから、やめようよ)

丸太の上で笑いものになっていた時、彼女だけが庇ってくれた。
あの時も、今までも、虐められているところを何度か助けてくれたことがある。
成績優秀で真面目、優しくて誰からも愛される女性。何よりとても可愛い。

ひょっとして、彼女なら。
マスオはそう思った。
この姿でも、マスオだと気づいてくれるのでは。

彼女に向かって手を広げ、抱きつこうと走った。
だが、彼女がマスオを見つめる目は険しかった。敵を、汚物を見つめる目だった。
彼女は杖をマスオに向け、呪文を唱えた。

「アイスニードル!」
「キシュワアアアアアッ!」

右脚に激しい痛みを感じて、マスオは転倒した。抱きつこうとした白河さんの隣を転がり抜け、洞窟の外の坂道をボールのように転がり落ちる。
そして、意識を失った。
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