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マスオ、ゴブリンになる3
しおりを挟む「キイッ!キイーーーーーッ!」
ある日の朝。
今までに聞いたことがない、鋭い声に目が覚めた。
「キイ?」
「キイキイッ!キイーーッ!」
3匹はマスオを連れて洞窟の奥へと逃げた。というか他に逃げ場はなかった。
やがて、入り口の方から血生臭いニオイが漂ってきた。叫び声、怒りと悲しみの声、何かの焦げる臭い。
「せやっ!」
マスオの耳に、声が聞こえてきた。
人間の声、それも日本語だ。
誰かが助けに来た、などと考えるには、マスオはもうゴブリンとして染まり切っていた。
「まだ奥にいるよ!10体くらい」
女性の声。
どこかで聞いたことのあるような、鋭い少女の声だ。
「よし、あと10ならいける!やるぞ!」
「「おうっ!」」
勇ましい掛け声に続いて、追従する声も複数聞こえた。
やがて、最奥に避難したマスオたちの目にも、人間たちの姿が見えてきた。
(あれは・・・・・・)
勇者。
そんな言葉が、真っ先に浮かんだ。
金髪に青い瞳をした少年が、先頭で剣を振るっていた。
黄金の剣はうっすらと魔法のような光を放ち、軽々とゴブリンの群れを薙ぎ払っていく。
輝く金属の鎧、青く光る盾。勇者、と呼ぶに相応しい姿だ。
粗末な木の槍しか持たないゴブリンたちは、なす術もなく、ただ一方的に切り裂かれていく。
ヒュン!
その後ろから、矢が射かけられた。
マスオのすぐ近くにいたゴブリンがギュエッ、と声を漏らして絶命する。
その光景は、ゲームやアニメが好きだったマスオにとって、見慣れた光景だった。
勇者パーティ。
あちらは討伐する側で、こちらはされる側なのだ。
なぜだ。
何も悪いことはしていないのに。
ただ、こちらがゴブリンだ、というだけなのに。
やめろ。やめてくれ。
マスオは叫んだ。
だがマスオの口から漏れるのは、ただキイキイという悲鳴だけだった。
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