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マスオ、ゴブリンになる2
しおりを挟む最初に出会った、3匹のゴブリンたち。
言葉は一切通じない、いや言葉すらないのかもしれないが、そいつらは親切にしてくれた。キイキイ声とジェスチャーだけで、飲み物と食べ物が出てきた。
腐った虫、筋張った木の根、泥臭い水だったが、なぜかマスオは美味しく感じた。人間の頃は絶対に食べられなさそうなものでも、今のマスオにはご馳走だった。
3匹は楽しそうにマスオに食料を差し出し、自分たちも食べた。
食べた後は外へ出て遊んだ。キノコを掘り、虫を集め、木の実を食齧り、川に出て魚を手づかみで取った。
夕方になると、洞窟に戻って火を焚き、たき火を囲んで魚を焼いた。
楽しかった。
今まで暮らしていた中で、こんなに楽しい日はなかった。
初めて「友達」と遊んだ、そんな気がした。
3匹と一緒に洞窟へと戻り、寝具もなく地べたに寝転び、気がついたら眠っていた。
翌朝、朝日で目が覚めた。
3匹はマスオに笑いかけた。歯も磨かず顔も洗わず、外に出て木の実を食べた。
大人のゴブリンが焼いてくれたキノコを食べた。あまりの美味しさに、ほっぺが落ちそうだった。
水たまりの水へ口をつけて飲んだ。深煎りの茶のような深い味わいがした。
3匹はマスオを森の中へ連れて行った。
手製の弓と槍を持ち、獣を追った。イノシシやウサギを追い回し、採ったネズミの皮を剥いで生のまま噛み付いた。今まで食べたことがないほど美味しい肉の味がした。
ただ、狼は怖いらしく、遠吠えを聞くとすぐ巣に向かって走った。
3匹のうち、1匹はメス、ゴブリナのようだった。並んで排尿する時にペニスがなかった。
ゴブリナはマスオに優しかった。名前を知りたかったが、相変わらずのキイキイしか分からなかった。
3匹は「きょうだい」らしかった。兄2匹に妹、というところか。そうマスオは感じた。
ゴブリナは身体の大きい兄2匹に比べ、体格もやや小さかった。獣を狩る時も他の2人から守られていた。
兄2匹もマスオを気に入っている様子だった。大きな魚が釣れると、いつもマスオにくれた。
少し見慣れると、3匹はマスオや他のゴブリンより少し大きかった。
強いきょうだいなのだろうか、そんな風にマスオは思った。
彼らといると、毎日が新鮮で楽しかった。
朝日も夕日も、飛ぶように通り過ぎていった。
こんな日々がずっと続く、そんなふうに思い始めていた。
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