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慰めてよ
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体育準備室に入ると先生は他の男子生徒の指導をしていた。少しだけ心がチクッとする。
「そこ座っといて。」
指さされた先の椅子に腰かける。ここで聞いていていいのだろうか。気まずい。
「ーーじゃあ次から気をつけろよ。もう帰っていいぞ。」
部屋から出ていく男子生徒と目があった。彼は睨みつけるように僕を見て、すぐに目を逸らして部屋から出ていった。まるで汚いものでも見るかのようだった。
「阿木、昼は何があったんや?」と先生は僕の側に椅子を持ってきて肩を抱いてくれた。僕は昼のこと、それから今までに抱いていた不安や不満をぶちまけた。先生は「まず涙ふけ。」と僕にティッシュケースを渡してくれた。
「お前は自分以外のことを気にし過ぎや。こっちが過度に気にしてても向こうは何とも思ってないことだってざらにある。まぁでも嫌なことは無理にやらんでいいって思ってるタイプや。俺は。嫌なことからは逃げたらいい。」
「…はい。」
「それからな、お前俺に依存してるやろ。」
「え…」
「このままやったらお前が駄目になる。」
心がざわざわとする。先生の顔を見ることができない。
「水泳の授業もあと2回か。これからはもう見学したら補習受けんでいいから。もうここに来るな。言っとくけどお前の為に言ってるで。分かってるか?」
「…はい。」
「あと今までのことは…」
涙が身体の下の方からぐわっと上がってくる感覚があった。この先、なんて言われるかを知っている。
「はい。別に誰にも言わないしもうここにも来ません!今までも来たくて来てるわけじゃなかった!」
「そうやな。…ほらティッシュ。」
締め付けられた喉から絞り出すようにして言ったつよがりはきっと先生に見破られている。
「要りません。失礼します。」
何もかも僕のためじゃなくて自分のためでしょ。それっぽいこと言ったって自分のために言ってるんだって分かってしまう。そういう人だって分かってた…けど、いつの間にか期待してしまっていた。僕の為に動いてくれる先生を。僕だけを見てくれている存在を。要するに僕は承認欲求の塊で欲求不満だったのだ。
沈みかけた夕日が廊下照らす中、ようやく下駄箱までたどり着いた。もうじきにここも真っ暗になるだろう。
「あ、阿木や。」
後ろから声をかけられた。振り返るとうちのクラスと隣のクラスの生徒たちだった。彼らは僕を見つけて嬉しそうだった。
「シャツ捲られんのめっちゃ嫌がるねんてな。なんでなん?」
「お前女疑惑かけられてんねんで。違うって証明したかったら裸になれよ。」
「あ、でもこいつ野中に贔屓されてるからな。なんかしたらすぐチクられるかもよ?」
「しないし。そんなん…。別にいいよ。見せても。何も面白いことなんてないけど。」
彼らと一緒に校舎裏に行き、僕はシャツを捲った。もうどうでもいいって気持ちだった。彼らは僕の裸を見て口々に何か言っている。笑っているものもいれば「うわっ。」と声をあげるものもいた。
「これ、自分で弄ってんの?」
指で触れられて一瞬快感が走った。
「…うん、そう。…じゃあ別にこれだけやから。」
「へぇ、阿木って思ってたよりおもろいねんな。」
「…?…じゃあ、帰る。」
「じゃあまた明日。学校来いよ。」
彼らは一体どういうつもりだろうか。もっと酷いことをされると思ったけれど正直拍子抜けだった。背中で彼らの笑い声を受け止めながら今更震える手を握りしめて帰った。
「そこ座っといて。」
指さされた先の椅子に腰かける。ここで聞いていていいのだろうか。気まずい。
「ーーじゃあ次から気をつけろよ。もう帰っていいぞ。」
部屋から出ていく男子生徒と目があった。彼は睨みつけるように僕を見て、すぐに目を逸らして部屋から出ていった。まるで汚いものでも見るかのようだった。
「阿木、昼は何があったんや?」と先生は僕の側に椅子を持ってきて肩を抱いてくれた。僕は昼のこと、それから今までに抱いていた不安や不満をぶちまけた。先生は「まず涙ふけ。」と僕にティッシュケースを渡してくれた。
「お前は自分以外のことを気にし過ぎや。こっちが過度に気にしてても向こうは何とも思ってないことだってざらにある。まぁでも嫌なことは無理にやらんでいいって思ってるタイプや。俺は。嫌なことからは逃げたらいい。」
「…はい。」
「それからな、お前俺に依存してるやろ。」
「え…」
「このままやったらお前が駄目になる。」
心がざわざわとする。先生の顔を見ることができない。
「水泳の授業もあと2回か。これからはもう見学したら補習受けんでいいから。もうここに来るな。言っとくけどお前の為に言ってるで。分かってるか?」
「…はい。」
「あと今までのことは…」
涙が身体の下の方からぐわっと上がってくる感覚があった。この先、なんて言われるかを知っている。
「はい。別に誰にも言わないしもうここにも来ません!今までも来たくて来てるわけじゃなかった!」
「そうやな。…ほらティッシュ。」
締め付けられた喉から絞り出すようにして言ったつよがりはきっと先生に見破られている。
「要りません。失礼します。」
何もかも僕のためじゃなくて自分のためでしょ。それっぽいこと言ったって自分のために言ってるんだって分かってしまう。そういう人だって分かってた…けど、いつの間にか期待してしまっていた。僕の為に動いてくれる先生を。僕だけを見てくれている存在を。要するに僕は承認欲求の塊で欲求不満だったのだ。
沈みかけた夕日が廊下照らす中、ようやく下駄箱までたどり着いた。もうじきにここも真っ暗になるだろう。
「あ、阿木や。」
後ろから声をかけられた。振り返るとうちのクラスと隣のクラスの生徒たちだった。彼らは僕を見つけて嬉しそうだった。
「シャツ捲られんのめっちゃ嫌がるねんてな。なんでなん?」
「お前女疑惑かけられてんねんで。違うって証明したかったら裸になれよ。」
「あ、でもこいつ野中に贔屓されてるからな。なんかしたらすぐチクられるかもよ?」
「しないし。そんなん…。別にいいよ。見せても。何も面白いことなんてないけど。」
彼らと一緒に校舎裏に行き、僕はシャツを捲った。もうどうでもいいって気持ちだった。彼らは僕の裸を見て口々に何か言っている。笑っているものもいれば「うわっ。」と声をあげるものもいた。
「これ、自分で弄ってんの?」
指で触れられて一瞬快感が走った。
「…うん、そう。…じゃあ別にこれだけやから。」
「へぇ、阿木って思ってたよりおもろいねんな。」
「…?…じゃあ、帰る。」
「じゃあまた明日。学校来いよ。」
彼らは一体どういうつもりだろうか。もっと酷いことをされると思ったけれど正直拍子抜けだった。背中で彼らの笑い声を受け止めながら今更震える手を握りしめて帰った。
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