変態中毒

ぬっこ

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海とバカ2人

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 賢斗は車に乗るなりバイト先の話や大学の友達の話を楽しそうに話した。一連の出来事を話し合えると何かを思い出したように手を叩いて鞄の中に手を突っ込んだ。

「じゃがりこ持ってきましたよ!九州しょうゆ味!美味しそうでしょ。」
「おう!美味そう。」
「食べます?」
「今はいらん。」 

「は~い…」と言いながら鞄の中にしまおうとする顔がしょんぼりして見えた。

「…お前は食ってていいねんで。」
「いいんです!一緒に食べたいんで!」

運転中でなければ頭を抱えて叫んでいたかもしれない。ていうか俺、こいつのこういうところに弱すぎやろと思う。

「…ちょっと見たら食いたくなってきたから1本くれ。ほら、あ!」

口を開けると賢斗は嬉しそうにじゃがりこを俺の口に入れる。

「うまっ!」
「でしょ!やっぱドライブにはじゃがりこでしょ!」
「お前今日テンション高いな。」
「そりゃそうでしょ。ドライブに海にサウナですよ!もう楽しいです!」

賢斗のテンションにつられて夏の曲を口ずさみながら海まで車を走らせた。


 海に着くとまだ夏休み前の平日だからか人は少ない。殆どプライベートビーチ状態だ。砂浜に簡単なテントを広げると汗がダラダラと額や背中から流れた。服を脱いで早速海に入ろうとすると「ちょっと待って!」と賢斗に呼び止められた。

「何?」
「日焼け止め、塗ってないでしょ。」
「あぁ、いけるっしょ。」
「だめですって。僕塗ります!」
「じゃあ背中だけ頼むわ。後は自分で…おわっ!」

日焼け止めのベタベタした液体が背中に広がる。

「おい、こしょばい!お前ちゃんと塗れよ!」
「え?ちゃんと塗ってますよ。」

賢斗の指が背中を撫でる。…こしょばい!完璧にふざけてる!と振り返ろうとした時、後ろから乳首を摘まれた。

「…ぅっ!……おい、バカ。」

賢斗が後ろから俺の耳たぶを噛んでそれから耳に息を吐いた。俺のペニスを後ろから触ってくる。

「……!」

こいつ、いつも俺がするようなことしようとしてる。しかもこんなとこで。バカやな…てかちょっと気持ちい。

「こんなとこで人に見られたらヤバいやろ。」

そう言うと賢斗は増々俺の身体をしつこく弄りだした。

「…こら、変態。」

手を掴んで押し倒すと賢斗はニコニコしながら「いつもの仕返しです。」と言った。

はぁ、可愛い。

「ちょっと勃ったでしょ。」そう言って俺のペニスを足でツンツンと触れてくる。

「…ちょっとな。」

親指と人差し指の間に隙間を作ってみせ、そのまま走って海に飛び込むと賢斗もついてきた。

「ちょっとじゃなくて結構やばかったですか?」
「バカ。」

賢斗のニヤついた顔に水をかけると応戦してきた。そこから暫くバカ2人になって遊んだ。


 「賢斗!そろそろ行くか!」

なぜか遠くまで貝殻を拾いに行った賢斗に声をかける。賢斗が両手で丸を作って戻ってきた。

「見てください!めっちゃ綺麗な貝殻いっぱいありました!」
「…おう。前々からちょっと思ってたけどお前かなり変わってんな。」
「だって彰良さんがめっちゃ遠くまで泳いで行っちゃうから俺そんなに泳げんしなーって砂浜見てて…そしたら綺麗な貝殻見つけて、それで気づいたらこんなにいっぱい。」
「はは!それ持って帰んの?」
「はい、店長たちに配ろうかな。」
「まさか俺と一緒に行ったとか言うつもりじゃないよな?」
「え、言うつもりでした。だめですか?」
「いや、だめ……駄目じゃないか?なんか…」
「彰良さんは〝何か〟に囚われ過ぎですって。もっとラフに生きましょ!」
「そうか…。」

俺は〝何か〟に囚われているのか…。

 結局日焼け止めを殆ど塗れていなかった俺たちは肌をヒリヒリさせたままサウナに向かったが肌が痛くてサウナは殆ど堪能出来なかった。風呂に使った後、賢斗はウトウトとして静かになった。「寝てていいよ。」と伝えてカーナビに住所を登録し、車を走らせると最初は起きていようと必死に睡魔と戦っていた賢斗だったが今はぐっすり眠っている。

カーナビが示す住所の前に到着すると〝阿木〟という表札があった。二階建ての立派な一軒家だ。

「賢斗、着いたぞ。」
「あぇ、寝てました?」
「うん、爆睡。」

信号待ちの時に撮った写真を見せた。

「うわ、最悪。思いっきり口開けて寝てた。それ後で消してくださいよ。」
「無理。賢斗フォルダに入れとく。」
「なんすか。そんなんあるんすか。」
「これ第一号。」
「最悪!っていうかすみません、ここまで来てくれてありがとうございます。」

賢斗はいそいそと荷物を持って車を降りた。

「じゃあな。また。」
「はい、今日はありがとうございました!また!」

車を出す前にもう一度家の方を確認する。ここに阿木陽斗も住んでたのか…今はもう出ていったって言ってたっけ。今は何処で何をしているのか…帰り道の車の中でほんの一瞬そんなことを考えたがすぐに賢斗との今日の思い出が頭を占めた。
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