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幸せのカタチ (お題:ラブレター・不幸の手紙・後悔)
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「あ…」
いつも通り、下駄箱を開けると、何かがひらひらと落ちて来た。
私はしゃがんでそれを拾う。何か手紙のようだが…。
「ど~したの?紗枝ちゃん」
友人の小春がそんな私を見下ろしてくる。
「な!なんでもねぇよ!それよりお前、朝礼当番だろ!早く行け!」
私はその手紙を咄嗟に隠し、小春を追い払う。
小春は不満そうに「えぇ~」と言いながらも、職員室に向かって一人歩いて行った。
危なかった…。もう少しで小春に見つかる所だった。
私は改めて手紙を見る。
これはもしかしてラブレターと言うものではないだろうか。
気になる…。気になるが、此処で広げるわけにはいかない。
私は急いでトイレの個室へと駆け込んだ。
「やっぱり…」
封を切ってみれば案の定、それはラブレターだった。
『ずっと前から先輩が好きでした。今日、校舎裏で待っています』
見た事のない文字。当然ではあるが、小春からのものではなかった。
…って、何期待してるんだ!私は!
頭と共に、そんな邪念を振り払う。
そもそも小春は女で、私も女だ。そう言うのは。
「ダメ…。だよな」
声に出した言葉が自身に突き刺さる。
その内小春も誰かにこういう手紙をもらって、付き合って、私から離れて行ってしまうのだろか。
そう思うと、この手紙が不幸の手紙に見えてきた。
「…嫌だなぁ」
それでも、いつか、きっとそのような日は来るだろう。
しかし、私は女だ。女々しいのだ。だから、その日が来るまでもうちょっとだけ、少しだけでも良い。小春の傍にいたい。
「断ろう」
私は個室から出ると、小春が待っているであろう教室に向かった。
いつか覚める夢だと分かっていても。今だけは、もう少しだけ…。
「紗枝?紗枝、起きて」
耳元で聞き覚えのある優しい声が響いてくる。
「ん…。う~ん…。もう少し…」
私は温もりを求め毛布の中に逃げ込む。
「もう!紗枝はいっつも寝起きが悪いんだから!早く起きないと会社に遅刻しても知らないんだからね!」
はっ!そうだ!今日は朝から会議が入っているのだ。いつまでも寝ている場合じゃない!
時計を見てみれば、まだ少し余裕があった。
しかし、今の件で完全に目が覚めてしまった為、ベッドから這い出る。
そのまま洗面所へと向かい、身だしなみを整えつつ、今日の仕事を頭の中で整理する。
まず、絶対に朝一番の会議はいらないと思う。なんせ、どの部署も今回の会議の答えを持っていないのだから。
会議はいつも通り、有耶無耶になったまま、立ち消えとなるだろう。
進捗状況はメールで確認し合える。完全に無駄な時間だ。
それでも皆、何も言わないのは上から言われているからで。それ以下でもそれ以上でもない。
「はぁ」
鏡越しに溜息を吐く。
会社は無駄な事が多い。主に上の人間のおかげで。
加えて、性善説で業務を進めようとするし、努力の一言で人手不足をどうにかできると考えている。頭の悪い連中だ。
そのくせ、自分たちの負担を減らして、責任からも逃れようとする。
もっとも、日本の多くの企業が同じような体質らしいので諦めてはいるのだが。
「はあぁ…」
私はひと際大きな溜息を吐く。正直やっていられないの一言だろう。
しかし、そんな事を言っていても仕方がない。私はリビングに顔を出す。
「おはよ。小春」
「おはよ。紗枝」
エプロンをした小春が私を笑顔で出迎えてくれた。
「旦那様はお疲れのようですね。溜息。こちらまで聞こえていましたよ」
小春は変な喋り方をすると、困ったように、やれやれと首を振った。
「あぁ、悪…」
そこまで言った私の唇を小春の指が止めた。
「辛かったらやめても良いんだからね。私は紗枝が幸せならそれだけで十分なんだから」
そう言って小春は私を抱きしめてくれる。
「…後悔はしてないのか?」
私と一緒にいる事。
「してないよ。…まぁ、紗枝の体には全く興味がないけどね!」
その言葉にぐさっとくる。
結局、小春はノーマルだった。
肉体関係を迫るのは私ばかりで、どうも気が引けてしまう。
「それでも私は幸せだよ。だって小春とずっと一緒にいられるんだから。会社も辛いならやめて良い。だってほら、二人でパートすれば余裕でしょ?」
確かにその通りだ。
現在小春は専業主婦だが、学生時代はバイトもやっていたし、対人関係が上手い分、私より向いているだろう。
「まぁ、もう少し頑張ってみるよ」
私が苦笑して返すが、小春はそれでも納得していないらしく、顔を曇らせていた。
「よし、決めた。頑張りすぎたら怒るからね。怒ったら別居だから。分かった?」
小春が捲し立てる様に言う。
本当に私の事を心配してくれるようだった。
「ありがとう。小春」
「どういたしまして。紗枝」
私達は二人、顔を見合わせると笑い合った。
==========
※おっさん。の小話
やってまいりました。
「にゃんこ大戦争」第三弾。
今回はにゃんこに話しかけていた女の子と、お友達のお話です。
「にゃんこ」同様に、それぞれの世界。それぞれの価値観があるんだよ。
と言うお話でした。
幸せの形は人それぞれですよね。
Twitterで少しLGBTの話になりましたので、今回はこの様な話にさせて頂きました。
良かろう。戦争だ と共に炎上しそうな内容ですね!
まぁ おっさん は皆、好きなように生きれば良いと思いますよ。
度を越せば犯罪者として淘汰されますけどね。
いつも通り、下駄箱を開けると、何かがひらひらと落ちて来た。
私はしゃがんでそれを拾う。何か手紙のようだが…。
「ど~したの?紗枝ちゃん」
友人の小春がそんな私を見下ろしてくる。
「な!なんでもねぇよ!それよりお前、朝礼当番だろ!早く行け!」
私はその手紙を咄嗟に隠し、小春を追い払う。
小春は不満そうに「えぇ~」と言いながらも、職員室に向かって一人歩いて行った。
危なかった…。もう少しで小春に見つかる所だった。
私は改めて手紙を見る。
これはもしかしてラブレターと言うものではないだろうか。
気になる…。気になるが、此処で広げるわけにはいかない。
私は急いでトイレの個室へと駆け込んだ。
「やっぱり…」
封を切ってみれば案の定、それはラブレターだった。
『ずっと前から先輩が好きでした。今日、校舎裏で待っています』
見た事のない文字。当然ではあるが、小春からのものではなかった。
…って、何期待してるんだ!私は!
頭と共に、そんな邪念を振り払う。
そもそも小春は女で、私も女だ。そう言うのは。
「ダメ…。だよな」
声に出した言葉が自身に突き刺さる。
その内小春も誰かにこういう手紙をもらって、付き合って、私から離れて行ってしまうのだろか。
そう思うと、この手紙が不幸の手紙に見えてきた。
「…嫌だなぁ」
それでも、いつか、きっとそのような日は来るだろう。
しかし、私は女だ。女々しいのだ。だから、その日が来るまでもうちょっとだけ、少しだけでも良い。小春の傍にいたい。
「断ろう」
私は個室から出ると、小春が待っているであろう教室に向かった。
いつか覚める夢だと分かっていても。今だけは、もう少しだけ…。
「紗枝?紗枝、起きて」
耳元で聞き覚えのある優しい声が響いてくる。
「ん…。う~ん…。もう少し…」
私は温もりを求め毛布の中に逃げ込む。
「もう!紗枝はいっつも寝起きが悪いんだから!早く起きないと会社に遅刻しても知らないんだからね!」
はっ!そうだ!今日は朝から会議が入っているのだ。いつまでも寝ている場合じゃない!
時計を見てみれば、まだ少し余裕があった。
しかし、今の件で完全に目が覚めてしまった為、ベッドから這い出る。
そのまま洗面所へと向かい、身だしなみを整えつつ、今日の仕事を頭の中で整理する。
まず、絶対に朝一番の会議はいらないと思う。なんせ、どの部署も今回の会議の答えを持っていないのだから。
会議はいつも通り、有耶無耶になったまま、立ち消えとなるだろう。
進捗状況はメールで確認し合える。完全に無駄な時間だ。
それでも皆、何も言わないのは上から言われているからで。それ以下でもそれ以上でもない。
「はぁ」
鏡越しに溜息を吐く。
会社は無駄な事が多い。主に上の人間のおかげで。
加えて、性善説で業務を進めようとするし、努力の一言で人手不足をどうにかできると考えている。頭の悪い連中だ。
そのくせ、自分たちの負担を減らして、責任からも逃れようとする。
もっとも、日本の多くの企業が同じような体質らしいので諦めてはいるのだが。
「はあぁ…」
私はひと際大きな溜息を吐く。正直やっていられないの一言だろう。
しかし、そんな事を言っていても仕方がない。私はリビングに顔を出す。
「おはよ。小春」
「おはよ。紗枝」
エプロンをした小春が私を笑顔で出迎えてくれた。
「旦那様はお疲れのようですね。溜息。こちらまで聞こえていましたよ」
小春は変な喋り方をすると、困ったように、やれやれと首を振った。
「あぁ、悪…」
そこまで言った私の唇を小春の指が止めた。
「辛かったらやめても良いんだからね。私は紗枝が幸せならそれだけで十分なんだから」
そう言って小春は私を抱きしめてくれる。
「…後悔はしてないのか?」
私と一緒にいる事。
「してないよ。…まぁ、紗枝の体には全く興味がないけどね!」
その言葉にぐさっとくる。
結局、小春はノーマルだった。
肉体関係を迫るのは私ばかりで、どうも気が引けてしまう。
「それでも私は幸せだよ。だって小春とずっと一緒にいられるんだから。会社も辛いならやめて良い。だってほら、二人でパートすれば余裕でしょ?」
確かにその通りだ。
現在小春は専業主婦だが、学生時代はバイトもやっていたし、対人関係が上手い分、私より向いているだろう。
「まぁ、もう少し頑張ってみるよ」
私が苦笑して返すが、小春はそれでも納得していないらしく、顔を曇らせていた。
「よし、決めた。頑張りすぎたら怒るからね。怒ったら別居だから。分かった?」
小春が捲し立てる様に言う。
本当に私の事を心配してくれるようだった。
「ありがとう。小春」
「どういたしまして。紗枝」
私達は二人、顔を見合わせると笑い合った。
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※おっさん。の小話
やってまいりました。
「にゃんこ大戦争」第三弾。
今回はにゃんこに話しかけていた女の子と、お友達のお話です。
「にゃんこ」同様に、それぞれの世界。それぞれの価値観があるんだよ。
と言うお話でした。
幸せの形は人それぞれですよね。
Twitterで少しLGBTの話になりましたので、今回はこの様な話にさせて頂きました。
良かろう。戦争だ と共に炎上しそうな内容ですね!
まぁ おっさん は皆、好きなように生きれば良いと思いますよ。
度を越せば犯罪者として淘汰されますけどね。
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