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向上心
第169話
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クリア様を木の上で見守っていた私達。
立ち止ったクリア様はしばらくすると、頭を抱えてうずくまってしまった。
「助けて……。パパ……」
この距離では聞き取れないような声。
それを、糸の振動を通して私達は聴いていた。
瞬間、ゴブスケさんの投げた投げ槍の様に、勢い良く、一直線に私の横から飛び出すルリ様。
当然、止める暇など無い。
私が「あっ」と、声を出して、手を伸ばした時には、もうすでに、木の葉を舞い上げながら、クリア様の元に着地していた。
それに気が付いたクリア様は、顔を上げる。
そして、申し訳なさそうな笑みを浮かべているルリ様を見ると、顔を埋める様にして抱き着いた。
「ごめんな……」
そんなクリア様の頭を撫でるルリ様。
クリア様は、それに無言の抱擁を続ける事で答える。
「はぁ………」
その光景を見て片手で額を抑える私。
この展開は私の望んでいた物ではなかった。
出来るなら、ルリ様に見守る力を付けさせ、クリア様にも一人でも生きて行けるような行動力や、自立心を持つように仕向けたかったのだ。
しかし、これでは逆効果だったかもしれない。
お互いに、庇護欲と、依存性が高まってしまったように思える。
ただ、目の前で抱き合う二人を見ていると、お互い傷つくよりは良い光景にも思えてきて……。
でも、それは問題を先送りにしているだけなのでは?
私が展開を急ぎ過ぎた?
でも、脅威がいつ襲って来るかも分からないし……。
ゆっくり、見守って行けば良いのだろうか?
しかし、この二人の関係は、何もアクションを起こさなければ、そう簡単に変わらない気がして……。
それこそ、脅威が迫れば、否が応でも、変わらざるを得ないが、それではもう遅い。
命を落とすかもしれないし、歪な形に心が変化してしまうかもしれないのだ。
そして、その時、私が支えてあげられるかも分からない。
二人には、私が居なくなっても、もし、二人の内、どちらかが欠けようとも、健やかな心を持って、生き延びて欲しいのだ。
「ん~………」
どうする事が最適解なのだろう。
どうすれば、誰も傷つかず、成長していけるのだろう。
私は難しい課題に頭を悩ませる。
できるなら、私も、だらだらと、このぬるま湯のような生活を続けたいのだ。
しかし、今はもう秋口。通常、冬を越す事の出来ない私はどうなるか分からないし、冬を越した事のあると言うルリ様も、気温の低下と共に、意識を失って行ったと言う。
このまま何もせずに過ごしていても、誰かが欠ける可能性は出て来る。
それに、誰も欠けなかったとしても、私達が生きている以上、常に様々な脅威にさらされ続けるのだ。
それらの不安を全て拭えるような何か。
それが無いと、私も鬼にならざるを得ない。皆を不幸にしない為には、その前に疑似的な不幸を与え、慣れてもらうしかないのだ。
優しいルリ様には出来ない事。
私が買って出るしかない。
しかし、大切にしている相手を丈夫に育てる為に、傷つける。
その矛盾に私は耐えられるのだろうか?
勿論、脅威を取り去る策や、鍛錬を怠る気も無い。
誰も傷つかないに、越した事はないのだから。
だから、これは万が一、万が一の対策。
私は身を寄せ合うルリ様達を温かく見守りながら、彼らに与える試練について、考え始めた。
立ち止ったクリア様はしばらくすると、頭を抱えてうずくまってしまった。
「助けて……。パパ……」
この距離では聞き取れないような声。
それを、糸の振動を通して私達は聴いていた。
瞬間、ゴブスケさんの投げた投げ槍の様に、勢い良く、一直線に私の横から飛び出すルリ様。
当然、止める暇など無い。
私が「あっ」と、声を出して、手を伸ばした時には、もうすでに、木の葉を舞い上げながら、クリア様の元に着地していた。
それに気が付いたクリア様は、顔を上げる。
そして、申し訳なさそうな笑みを浮かべているルリ様を見ると、顔を埋める様にして抱き着いた。
「ごめんな……」
そんなクリア様の頭を撫でるルリ様。
クリア様は、それに無言の抱擁を続ける事で答える。
「はぁ………」
その光景を見て片手で額を抑える私。
この展開は私の望んでいた物ではなかった。
出来るなら、ルリ様に見守る力を付けさせ、クリア様にも一人でも生きて行けるような行動力や、自立心を持つように仕向けたかったのだ。
しかし、これでは逆効果だったかもしれない。
お互いに、庇護欲と、依存性が高まってしまったように思える。
ただ、目の前で抱き合う二人を見ていると、お互い傷つくよりは良い光景にも思えてきて……。
でも、それは問題を先送りにしているだけなのでは?
私が展開を急ぎ過ぎた?
でも、脅威がいつ襲って来るかも分からないし……。
ゆっくり、見守って行けば良いのだろうか?
しかし、この二人の関係は、何もアクションを起こさなければ、そう簡単に変わらない気がして……。
それこそ、脅威が迫れば、否が応でも、変わらざるを得ないが、それではもう遅い。
命を落とすかもしれないし、歪な形に心が変化してしまうかもしれないのだ。
そして、その時、私が支えてあげられるかも分からない。
二人には、私が居なくなっても、もし、二人の内、どちらかが欠けようとも、健やかな心を持って、生き延びて欲しいのだ。
「ん~………」
どうする事が最適解なのだろう。
どうすれば、誰も傷つかず、成長していけるのだろう。
私は難しい課題に頭を悩ませる。
できるなら、私も、だらだらと、このぬるま湯のような生活を続けたいのだ。
しかし、今はもう秋口。通常、冬を越す事の出来ない私はどうなるか分からないし、冬を越した事のあると言うルリ様も、気温の低下と共に、意識を失って行ったと言う。
このまま何もせずに過ごしていても、誰かが欠ける可能性は出て来る。
それに、誰も欠けなかったとしても、私達が生きている以上、常に様々な脅威にさらされ続けるのだ。
それらの不安を全て拭えるような何か。
それが無いと、私も鬼にならざるを得ない。皆を不幸にしない為には、その前に疑似的な不幸を与え、慣れてもらうしかないのだ。
優しいルリ様には出来ない事。
私が買って出るしかない。
しかし、大切にしている相手を丈夫に育てる為に、傷つける。
その矛盾に私は耐えられるのだろうか?
勿論、脅威を取り去る策や、鍛錬を怠る気も無い。
誰も傷つかないに、越した事はないのだから。
だから、これは万が一、万が一の対策。
私は身を寄せ合うルリ様達を温かく見守りながら、彼らに与える試練について、考え始めた。
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