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向上心
第131話
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「これも食っとくか……」
俺は訓練を行っている皆から離れ、一人、色々な物を口に運んでいた。
と、言うのも、昨日、ウサギが言っていた、挑戦なしに、進化は出来ない。と言う言葉が、胸に刺さったからだ。
どうやらウサギは得意な穴掘りを応用して、いたるところに落とし穴を掘り、その下に尖った木の枝などを入れて、獲物が出血により弱るのを待つ、戦わない狩りを行っている様だった。
俺の様に、前世の記憶など持たないウサギが、一人で相手を観察して、自分の得意な事と合わせて、生み出した戦法だ。
俺なんかよりも、よっぽど、物事を観察し、考えている。
それに、肉の処理は、俺なんか、足元にも及ばない。それは、彼がそれだけ、肉の下処理の練習を行い、慣れて行くうちで、最適解を見出たと言う事だろう。
努力的な側面でも、俺は圧倒的に負けている。
俺は相手の神経に入り込み、操作できる便利な糸なんて言う、チートの様な能力と、前世の記憶でブーストしているだけだ。
このままボヤボヤしていると、その内、本当にウサギに負ける。
まぁ、負けたからどうなる物でもないのだが、今までは、生活も安定してきたせいか、我ながら向上心に欠けていたと思う。
ウサギのようなライバルがいれば、俺も頑張れる気がした。
それに、もしかしたら、クリアを犠牲にせずに、リミアを復活させる方法も見つかるかもしれない。
そうだ。今までの俺は、悲観的過ぎたのだ。
提示された代償が気に入らないなら、別の方法を探せば良い。
別の方法が無いなら、作り出せば良い。
俺には腐るほど時間がある。なにも、提示された条件に縋って、焦る必要など、無かったのだ。
と、言う訳で、俺は今、リミアの新しい体を作り出すべく、奮闘している。
リミアの作り出してくれたこの体のおかげで、もう既に、殆どの条件は揃っている。
後は、足りない消化器官を作り出せれば、入れ物としては完成だった。
そして、その消化器官は、俺にも必要な物。
このままコグモの体に負担をかけ続ける訳にも行かなかったので、リミア復活計画自体が、頓挫した所で、この行為は無駄にはならない。
動いた結果のリスクが嫌なら、リスクを肯定すれば良い。
リスクを成果にすれば良い。
行動を起こさなければ事態は動かない。
嘆くだけじゃ、あの社畜生活と同じで、何も変わらないのだ。
そうだ、そうやって、行動を起こす理由を考え続けるんだ。
「ウォェ……」
俺は胃の中で動き回る生物に吐き気を覚えながらも、必死にそいつの進化を促すよう、ありとあらゆる食べ物を胃に詰め込んでいく。
俺は今、胃の形をした袋の中に、粘菌を飼っているのだ。
上手く、この粘菌を、俺の体に合うように進化させられれば、生物の授業で習った、細胞内に住むミトコンドリアの様に、共生できる様になるはず……。
もし無理だった場合でも、他の生物を試したり、体の中に、栄養を生産できる設備を整えたり、別の方法を試せば良い。
少なくとも、この方法が無理だった。と言う成果は生まれるのだ。前向きに行こう。
俺は味覚が切れるのを良い事に、再び色々な物を詰め、粘菌の育成及び、実験を繰り返していくのだった。
俺は訓練を行っている皆から離れ、一人、色々な物を口に運んでいた。
と、言うのも、昨日、ウサギが言っていた、挑戦なしに、進化は出来ない。と言う言葉が、胸に刺さったからだ。
どうやらウサギは得意な穴掘りを応用して、いたるところに落とし穴を掘り、その下に尖った木の枝などを入れて、獲物が出血により弱るのを待つ、戦わない狩りを行っている様だった。
俺の様に、前世の記憶など持たないウサギが、一人で相手を観察して、自分の得意な事と合わせて、生み出した戦法だ。
俺なんかよりも、よっぽど、物事を観察し、考えている。
それに、肉の処理は、俺なんか、足元にも及ばない。それは、彼がそれだけ、肉の下処理の練習を行い、慣れて行くうちで、最適解を見出たと言う事だろう。
努力的な側面でも、俺は圧倒的に負けている。
俺は相手の神経に入り込み、操作できる便利な糸なんて言う、チートの様な能力と、前世の記憶でブーストしているだけだ。
このままボヤボヤしていると、その内、本当にウサギに負ける。
まぁ、負けたからどうなる物でもないのだが、今までは、生活も安定してきたせいか、我ながら向上心に欠けていたと思う。
ウサギのようなライバルがいれば、俺も頑張れる気がした。
それに、もしかしたら、クリアを犠牲にせずに、リミアを復活させる方法も見つかるかもしれない。
そうだ。今までの俺は、悲観的過ぎたのだ。
提示された代償が気に入らないなら、別の方法を探せば良い。
別の方法が無いなら、作り出せば良い。
俺には腐るほど時間がある。なにも、提示された条件に縋って、焦る必要など、無かったのだ。
と、言う訳で、俺は今、リミアの新しい体を作り出すべく、奮闘している。
リミアの作り出してくれたこの体のおかげで、もう既に、殆どの条件は揃っている。
後は、足りない消化器官を作り出せれば、入れ物としては完成だった。
そして、その消化器官は、俺にも必要な物。
このままコグモの体に負担をかけ続ける訳にも行かなかったので、リミア復活計画自体が、頓挫した所で、この行為は無駄にはならない。
動いた結果のリスクが嫌なら、リスクを肯定すれば良い。
リスクを成果にすれば良い。
行動を起こさなければ事態は動かない。
嘆くだけじゃ、あの社畜生活と同じで、何も変わらないのだ。
そうだ、そうやって、行動を起こす理由を考え続けるんだ。
「ウォェ……」
俺は胃の中で動き回る生物に吐き気を覚えながらも、必死にそいつの進化を促すよう、ありとあらゆる食べ物を胃に詰め込んでいく。
俺は今、胃の形をした袋の中に、粘菌を飼っているのだ。
上手く、この粘菌を、俺の体に合うように進化させられれば、生物の授業で習った、細胞内に住むミトコンドリアの様に、共生できる様になるはず……。
もし無理だった場合でも、他の生物を試したり、体の中に、栄養を生産できる設備を整えたり、別の方法を試せば良い。
少なくとも、この方法が無理だった。と言う成果は生まれるのだ。前向きに行こう。
俺は味覚が切れるのを良い事に、再び色々な物を詰め、粘菌の育成及び、実験を繰り返していくのだった。
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