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帰還

第109話

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 「おはよ。ルリ」
 目を覚ませば、今日も先に起きていたリミアが挨拶をしてくる。
 
 「どう?似合う?」
 いつもの清楚で動きやすそうな服装ではなく、ちょっとしたお姫様の様な、ふわふわした服装に身を包むリミア。頭には糸で出来た、白い麦わら帽子の様な物を被っている。
 
 「おぉ!似合ってる似合ってる!まさにお出かけする、お嬢様って、感じだな!」
 俺は手放しで彼女の服装を褒める。
 
 「そう……。良かった。少し動きにくいけど、ルリが好きなら、仕方ない」
 表情が薄いなりに、服を見ながら、嬉しそうに呟く彼女。
 因みに、俺は好きとは言ってないけどな。
 ……まぁ、好きだけど。
 
 「よし!リミアがおめかしするなら、俺も頑張るか!」
 俺は体の強度を度外視して、糸で出来た体を伸ばしていく。
 こうする事で、糸の密度が下がり、筋力や耐久力は落ちる物の、身長を伸ばす事ができるのだ。

 ほとんど使う事は無いが、クマなどの張りぼてを作って、相手を追い返したり、このような、見た目を重視する時には便利な能力である。
 
 「……これで、精一杯か」
 10cmサイズの俺は、何とか2倍の20cm程になったが、それでもリミアと2倍程の身長差があった。
 しかし、これ以上密度を下げると、自身の体を支えきれなくなるので、諦める外ない。
 
 本当は、リミアの親らしく、リミアより大きくなりたかったんだけどなぁ……。
 まぁ、今の密度では仕方が無いか。
 
 「糸、少し分ける?」
 落ち込む俺を見て、リミアが予想外の提案をしてくる。

 でも、そうか、コグモや、ゴブリンの中に残っていたリミアの糸を使って、相手を操作できたと言う事は、俺の糸にリミアの糸を継ぎ足す事も可能かもしれない。
 
 「た、試しにやってみるか……」
 リミアの伸ばしてくる糸を俺の糸で絡めとり、繊維と繊維を絡めて行く。
 
 「いつもの、接続と、あまり変わらないな……」
 俺が完全に糸を接続し終えると、頭にノイズが走った。
 
 (こ、これって、交尾?)
 「ッ……?!」
 
 確実に、リミアの声だった。
 リミアも、俺の心の声が聞こえているようで、驚いたように、こちらを見る。
 
 そうか、俺達は、糸でつないだ相手の思考がお互いに分かるから……。
 やばい!俺の思考も!
 
 「い、一旦糸を切ろう!」
 俺は糸をほつれさせようとするが、離れない。
 
 (離さない)
 どうやら、リミアが俺の繊維を無理矢理に抑え込んでいる様だ。
 
 「な、何してんだよ!お前の思考だって、読まれるんだぞ!」
 しかも、リミアが交尾とか言ってせいで、なんか恥ずかしいし!
 
 糸と糸が絡み合い、繊維がその中に侵入していく光景を、俺はもう、直視できなくなった。
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