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帰還
第96話
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「……随分、仲良し、なのね」
彼女消えた扉の方を見つめながら、リミアがポツリと呟いた。
「そうか?……まぁ、確かに、悪くはないけどな」
俺は俺を抱きかかえるリミアの顔を見上げながら、何とはなしに答える。
「コグモ。いつもは、もっと硬い。でも、ルリきてから、柔らかくなった」
その表情からは、どう思っているのか読み取れないが、悪い気はしていないだろう。
「……無関心そうに見えて、ちゃんと見てやってるんだな」
「別に、無関心、違う。コグモ、良い子、信頼も、してる」
そうならそうと伝えてやれば、あいつも喜ぶだろうに……。
気付いていて言わないんだか、そもそも、喜ばれると言うのが分かっていないのか……。
どちらにしろ、それを俺の口から指摘するのは、野暮と言う物か。
「本当に、良い子だよな……」
頭の回転も、気遣いも、優しさも、申し分なしだ。
「ルリ……。コグモ、好き?」
リミアは視線を俺の方へ落として聞いて来る。
「あぁ、好きだぞ」
あんな良い子は中々いないしな。
「……私と、コグモ、どっちが好き?」
……ん?先程までの会話と質が変わったぞ?
しかし、こちらを見下ろすリミアの表情には変化がない。
何となく、聞いてみただけなのだろうか?
「も、勿論、リミアの方が好きだぞ!」
面倒事にならない様、適当な返事を返す。
「そう……。なら、証明、して」
囁くような声で呟くリミア。
「え………?」
思わず聞き返す俺を抱きかかえたまま、昨日と同じように、俯けの状態でベッドにダイブするリミア。
「私、不安。クリスの時もそうだった。ルリが他の子に取られそうで、不安」
彼女は寝返りをうつと、仰向けになり、俺を抱えた両手を、胸の前で掲げた。
「だから、私が一番って。もう捨てないって、証明して……」
リミアを俯瞰する体勢になった俺には、リミアの顔が良く見える。
俺は、その答えに怯える様に、期待する様に、潤む瞳から、目が離せなくなった。
「しょ、証明って……。どうすれば良いんだ?」
リミアに、またあの時と同じ思いをさせてしまうのが、心苦しくて、俺はその要求の内容を聞く。
「私に糸を通して……。糸を通して、支配して。私が、ルリにとっての、悪い子にならない様に……」
「そ、それはっ!!……それは、なんか違うだろ……」
俺は思わず声を荒らげてしまったが、何とか気持ちを抑える。
「そんな事をして、好きになったお前は、お前じゃない……。それこそ、お前にクリナを重ねてみていた時の、あの時の俺と一緒だ……」
俺は思わず、あの日の事を思い出して、目を逸らした。
「良いじゃないか、別に……。別個体なんだから、そりが合わない事だってあるだろ?……そう言う所も含めて、理解し合って、それでも一緒に居たいって思うのが、好きって事じゃないのか?」
俺は再びリミアの目を見ると、必死に説得する。
彼女の表情は、まだ晴れなかった。
「悪い所から目を逸らすでもなく、良い所だけを褒め称えるのでもなく、全部合わせて、こいつなんだって、こいつだから好きなんだって、言える。そんな関係が良い……。いや、違うな。……俺は、悪い所も、良い所も含めて、お前を、他の誰でもないリミアを愛してる!これからも大切にして行きたいと思っている!」
俺は想いを肺の中の空気と一緒に、すべて吐き出す。
もう、リミアの中にクリナの影を追うのは止めたのだ。
それをしっかりと伝えておきたかった。
それに、家族として、俺の子として、大切に思っている事を、リミアが不安にならない様に、しっかりと伝えたかった。
「……これじゃあ駄目か?」
俺は息を整えながら、優しい笑顔で、リミアに聞いた。
「……今の私で良いの?」
髪で表情を隠しながら、小さな声で呟くリミア。
「あぁ、今のお前で良い。今の、そのままのお前が好きなんだ……」
俺は安心させるように、リミアに囁いた。
「私が、悪い事しても、嫌いにならない?」
顔を上げ、不安げな瞳でこちらを見つめて来るリミア。
「嫌いにはなるし、一杯、怒るぞ!……でも、絶対に見捨てたりはしない。死ぬまで一緒だ」
大切だからと言って、傷つけるのを恐れていては、前世の俺の様に、手遅れになりかねないからな。
「そう……。ありがとう、パパ」
リミアは、涙を流すと、嬉しそうに笑う。
俺はその日初めて、リミアと本当の家族になれた気がした。
彼女消えた扉の方を見つめながら、リミアがポツリと呟いた。
「そうか?……まぁ、確かに、悪くはないけどな」
俺は俺を抱きかかえるリミアの顔を見上げながら、何とはなしに答える。
「コグモ。いつもは、もっと硬い。でも、ルリきてから、柔らかくなった」
その表情からは、どう思っているのか読み取れないが、悪い気はしていないだろう。
「……無関心そうに見えて、ちゃんと見てやってるんだな」
「別に、無関心、違う。コグモ、良い子、信頼も、してる」
そうならそうと伝えてやれば、あいつも喜ぶだろうに……。
気付いていて言わないんだか、そもそも、喜ばれると言うのが分かっていないのか……。
どちらにしろ、それを俺の口から指摘するのは、野暮と言う物か。
「本当に、良い子だよな……」
頭の回転も、気遣いも、優しさも、申し分なしだ。
「ルリ……。コグモ、好き?」
リミアは視線を俺の方へ落として聞いて来る。
「あぁ、好きだぞ」
あんな良い子は中々いないしな。
「……私と、コグモ、どっちが好き?」
……ん?先程までの会話と質が変わったぞ?
しかし、こちらを見下ろすリミアの表情には変化がない。
何となく、聞いてみただけなのだろうか?
「も、勿論、リミアの方が好きだぞ!」
面倒事にならない様、適当な返事を返す。
「そう……。なら、証明、して」
囁くような声で呟くリミア。
「え………?」
思わず聞き返す俺を抱きかかえたまま、昨日と同じように、俯けの状態でベッドにダイブするリミア。
「私、不安。クリスの時もそうだった。ルリが他の子に取られそうで、不安」
彼女は寝返りをうつと、仰向けになり、俺を抱えた両手を、胸の前で掲げた。
「だから、私が一番って。もう捨てないって、証明して……」
リミアを俯瞰する体勢になった俺には、リミアの顔が良く見える。
俺は、その答えに怯える様に、期待する様に、潤む瞳から、目が離せなくなった。
「しょ、証明って……。どうすれば良いんだ?」
リミアに、またあの時と同じ思いをさせてしまうのが、心苦しくて、俺はその要求の内容を聞く。
「私に糸を通して……。糸を通して、支配して。私が、ルリにとっての、悪い子にならない様に……」
「そ、それはっ!!……それは、なんか違うだろ……」
俺は思わず声を荒らげてしまったが、何とか気持ちを抑える。
「そんな事をして、好きになったお前は、お前じゃない……。それこそ、お前にクリナを重ねてみていた時の、あの時の俺と一緒だ……」
俺は思わず、あの日の事を思い出して、目を逸らした。
「良いじゃないか、別に……。別個体なんだから、そりが合わない事だってあるだろ?……そう言う所も含めて、理解し合って、それでも一緒に居たいって思うのが、好きって事じゃないのか?」
俺は再びリミアの目を見ると、必死に説得する。
彼女の表情は、まだ晴れなかった。
「悪い所から目を逸らすでもなく、良い所だけを褒め称えるのでもなく、全部合わせて、こいつなんだって、こいつだから好きなんだって、言える。そんな関係が良い……。いや、違うな。……俺は、悪い所も、良い所も含めて、お前を、他の誰でもないリミアを愛してる!これからも大切にして行きたいと思っている!」
俺は想いを肺の中の空気と一緒に、すべて吐き出す。
もう、リミアの中にクリナの影を追うのは止めたのだ。
それをしっかりと伝えておきたかった。
それに、家族として、俺の子として、大切に思っている事を、リミアが不安にならない様に、しっかりと伝えたかった。
「……これじゃあ駄目か?」
俺は息を整えながら、優しい笑顔で、リミアに聞いた。
「……今の私で良いの?」
髪で表情を隠しながら、小さな声で呟くリミア。
「あぁ、今のお前で良い。今の、そのままのお前が好きなんだ……」
俺は安心させるように、リミアに囁いた。
「私が、悪い事しても、嫌いにならない?」
顔を上げ、不安げな瞳でこちらを見つめて来るリミア。
「嫌いにはなるし、一杯、怒るぞ!……でも、絶対に見捨てたりはしない。死ぬまで一緒だ」
大切だからと言って、傷つけるのを恐れていては、前世の俺の様に、手遅れになりかねないからな。
「そう……。ありがとう、パパ」
リミアは、涙を流すと、嬉しそうに笑う。
俺はその日初めて、リミアと本当の家族になれた気がした。
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