92 / 172
帰還
第91話
しおりを挟む
「なぁ、こいつらには、言葉は通じないよな?」
リミアがゴブリン内部に残したであろう、糸に接続しながら、コグモに話しかける。
「独自の言語の様な物は、多少、持っているようですが……。少なくとも、我々の使っている言葉は通じません」
「そ、そうか……。ありがとう」
対話で何とか、譲歩を引き出そうとしたが、これで難易度は一気に跳ね上がった。
俺は意識を集中して、相手の欲求を読み取る。
「お腹が減っているみたいだ……。何かないか?」
俺はコグモに問うと、メイド服のスカートの下をゴソゴソし、「これで良いですか?」と言って、何かの遺体の一部を取り出した。
「いや、それ、あからさまに、お前の部品だった物だよな?!」
俺は思わず小声で突っ込むと「予備パーツなので、問題ないです!」と、親指をグッと上に立て、元気に返して来た。
……それなら良いのか?
いや、なんか猟奇的だし、勿体ない気もする。
それに、1m近いゴブリンに対して、40cmも無さそうな彼女のパーツの一部を与えた所で、大した腹の足しにはならないだろう。
「何か、こいつの腹に溜まりそうな物、取って来てくれないか?」
俺は、予備パーツを仕舞わせると、代わりにと言って、お願いをする。
「大丈夫ですか?そんなに私が離れても……」
どうやら、彼女は俺の心配をしてくれるらしい。
優しい子だ。
「糸は切れると思うが、栄養も、随分、吸い取らせてもらったからな、安静にしてる分には1日以上持つし、大丈夫だと思うぞ?」
最悪は、このゴブリンの栄養を分けて貰えば良いしな。
「ゴブリンが暴れても、助けられませんよ?」
それでも、なお、食い下がってくるコグモ。ちょっと心配症らしい。
「大丈夫、大丈夫、最悪、脳を潰して殺すから」
適当に笑って、説得するが、口に出すと、思ったよりパワーワードだった。
しかし、食う食われるのこの世界では、それ程、気にする内容でもないのだろう。
それを聞いたコグモは「そこまで言うなら……」と、言って部屋を出て行ってくれた。
頭が良くて、心配性のコグモは、俺が逃げる心配はしていない様だった。
コグモに依存していると思わせているとはいえ、少し信頼されているようで、嬉しくなる。
「と、言う事で、二人っきりな訳だ」
仁王立ちの俺を睨み続けるゴブリン。
二人だけになったら暴れ出す。なんて事も考えたが、そんな事はなかった。
もし、暴れ出したら、どうするか?
普段は殺す勇気の無い俺でも、流石に、皆を守る為なら、本当に殺せる気がする。
多分、守る対象が俺だけだと、相手の命の重みを感じるが、それより重い皆の命がかかってくると、手を下せるのだと思う。
……それでも、ギリギリまでは相手の動きを見て、拘束できるようには、していきたいな……。
殺さないに越したことはない。
だが、俺の知り合いに、死にはしないまでも、危害が及ぶのは怖い。その時は……殺す。
俺の中での命の価値感が、少し見えた気がした。
リミアがゴブリン内部に残したであろう、糸に接続しながら、コグモに話しかける。
「独自の言語の様な物は、多少、持っているようですが……。少なくとも、我々の使っている言葉は通じません」
「そ、そうか……。ありがとう」
対話で何とか、譲歩を引き出そうとしたが、これで難易度は一気に跳ね上がった。
俺は意識を集中して、相手の欲求を読み取る。
「お腹が減っているみたいだ……。何かないか?」
俺はコグモに問うと、メイド服のスカートの下をゴソゴソし、「これで良いですか?」と言って、何かの遺体の一部を取り出した。
「いや、それ、あからさまに、お前の部品だった物だよな?!」
俺は思わず小声で突っ込むと「予備パーツなので、問題ないです!」と、親指をグッと上に立て、元気に返して来た。
……それなら良いのか?
いや、なんか猟奇的だし、勿体ない気もする。
それに、1m近いゴブリンに対して、40cmも無さそうな彼女のパーツの一部を与えた所で、大した腹の足しにはならないだろう。
「何か、こいつの腹に溜まりそうな物、取って来てくれないか?」
俺は、予備パーツを仕舞わせると、代わりにと言って、お願いをする。
「大丈夫ですか?そんなに私が離れても……」
どうやら、彼女は俺の心配をしてくれるらしい。
優しい子だ。
「糸は切れると思うが、栄養も、随分、吸い取らせてもらったからな、安静にしてる分には1日以上持つし、大丈夫だと思うぞ?」
最悪は、このゴブリンの栄養を分けて貰えば良いしな。
「ゴブリンが暴れても、助けられませんよ?」
それでも、なお、食い下がってくるコグモ。ちょっと心配症らしい。
「大丈夫、大丈夫、最悪、脳を潰して殺すから」
適当に笑って、説得するが、口に出すと、思ったよりパワーワードだった。
しかし、食う食われるのこの世界では、それ程、気にする内容でもないのだろう。
それを聞いたコグモは「そこまで言うなら……」と、言って部屋を出て行ってくれた。
頭が良くて、心配性のコグモは、俺が逃げる心配はしていない様だった。
コグモに依存していると思わせているとはいえ、少し信頼されているようで、嬉しくなる。
「と、言う事で、二人っきりな訳だ」
仁王立ちの俺を睨み続けるゴブリン。
二人だけになったら暴れ出す。なんて事も考えたが、そんな事はなかった。
もし、暴れ出したら、どうするか?
普段は殺す勇気の無い俺でも、流石に、皆を守る為なら、本当に殺せる気がする。
多分、守る対象が俺だけだと、相手の命の重みを感じるが、それより重い皆の命がかかってくると、手を下せるのだと思う。
……それでも、ギリギリまでは相手の動きを見て、拘束できるようには、していきたいな……。
殺さないに越したことはない。
だが、俺の知り合いに、死にはしないまでも、危害が及ぶのは怖い。その時は……殺す。
俺の中での命の価値感が、少し見えた気がした。
0
お気に入りに追加
70
あなたにおすすめの小説
聖なる幼女のお仕事、それは…
咲狛洋々
ファンタジー
とある聖皇国の聖女が、第二皇子と姿を消した。国王と皇太子達が国中を探したが見つからないまま、五年の歳月が過ぎた。魔人が現れ村を襲ったという報告を受けた王宮は、聖騎士団を差し向けるが、すでにその村は魔人に襲われ廃墟と化していた。
村の状況を調べていた聖騎士達はそこである亡骸を見つける事となる。それこそが皇子と聖女であった。長年探していた2人を連れ戻す事は叶わなかったが、そこである者を見つける。
それは皇子と聖女、二人の子供であった。聖女の力を受け継ぎ、高い魔力を持つその子供は、二人を襲った魔人の魔力に当てられ半魔になりかけている。聖魔力の高い師団長アルバートと副団長のハリィは2人で内密に魔力浄化をする事に。しかし、救出したその子の中には別の世界の人間の魂が宿りその肉体を生かしていた。
この世界とは全く異なる考え方に、常識に振り回される聖騎士達。そして次第に広がる魔神の脅威に国は脅かされて行く。
転移想像 ~理想郷を再現するために頑張ります~
すなる
ファンタジー
ゼネコン勤務のサラリーマンが祖父の遺品を整理している中で突如異世界に転移してしまう。
若き日の祖父が言い残した言葉に導かれ、未知の世界で奮闘する物語。
魔法が存在する異世界で常識にとらわれず想像力を武器に無双する。
人間はもちろん、獣人や亜人、エルフ、神、魔族など10以上の種族と魔物も存在する世界で
出会った仲間達とともにどんな種族でも平和に暮らせる街づくりを目指し奮闘する。
その中で図らずも世界の真実を解き明かしていく。
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
魔性の悪役令嬢らしいですが、男性が苦手なのでご期待にそえません!
蒼乃ロゼ
恋愛
「リュミネーヴァ様は、いろんな殿方とご経験のある、魔性の女でいらっしゃいますから!」
「「……は?」」
どうやら原作では魔性の女だったらしい、リュミネーヴァ。
しかし彼女の中身は、前世でストーカーに命を絶たれ、乙女ゲーム『光が世界を満たすまで』通称ヒカミタの世界に転生してきた人物。
前世での最期の記憶から、男性が苦手。
初めは男性を目にするだけでも体が震えるありさま。
リュミネーヴァが具体的にどんな悪行をするのか分からず、ただ自分として、在るがままを生きてきた。
当然、物語が原作どおりにいくはずもなく。
おまけに実は、本編前にあたる時期からフラグを折っていて……?
攻略キャラを全力回避していたら、魔性違いで謎のキャラから溺愛モードが始まるお話。
ファンタジー要素も多めです。
※なろう様にも掲載中
※短編【転生先は『乙女ゲーでしょ』~】の元ネタです。どちらを先に読んでもお話は分かりますので、ご安心ください。
転生幼女のチートな悠々自適生活〜伝統魔法を使い続けていたら気づけば賢者になっていた〜
犬社護
ファンタジー
ユミル(4歳)は気がついたら、崖下にある森の中にいた。
馬車が崖下に落下した影響で、前世の記憶を思い出す。周囲には散乱した荷物だけでなく、さっきまで会話していた家族が横たわっており、自分だけ助かっていることにショックを受ける。
大雨の中を泣き叫んでいる時、1体の小さな精霊カーバンクルが現れる。前世もふもふ好きだったユミルは、もふもふ精霊と会話することで悲しみも和らぎ、互いに打ち解けることに成功する。
精霊カーバンクルと仲良くなったことで、彼女は日本古来の伝統に関わる魔法を習得するのだが、チート魔法のせいで色々やらかしていく。まわりの精霊や街に住む平民や貴族達もそれに振り回されるものの、愛くるしく天真爛漫な彼女を見ることで、皆がほっこり心を癒されていく。
人々や精霊に愛されていくユミルは、伝統魔法で仲間たちと悠々自適な生活を目指します。
婚約破棄されたら魔法が解けました
かな
恋愛
「クロエ・ベネット。お前との婚約は破棄する。」
それは学園の卒業パーティーでの出来事だった。……やっぱり、ダメだったんだ。周りがザワザワと騒ぎ出す中、ただ1人『クロエ・ベネット』だけは冷静に事実を受け止めていた。乙女ゲームの世界に転生してから10年。国外追放を回避する為に、そして后妃となる為に努力し続けて来たその時間が無駄になった瞬間だった。そんな彼女に追い打ちをかけるかのように、第一王子であるエドワード・ホワイトは聖女を新たな婚約者とすることを発表した。その後はトントン拍子にことが運び、冤罪をかけられ、ゲームのシナリオ通り国外追放になった。そして、魔物に襲われて死ぬ。……そんな運命を辿るはずだった。
「こんなことなら、転生なんてしたくなかった。元の世界に戻りたい……」
あろうことか、最後の願いとしてそう思った瞬間に、全身が光り出したのだ。そして気がつくと、なんと前世の姿に戻っていた!しかもそれを第二王子であるアルベルトに見られていて……。
「……まさかこんなことになるなんてね。……それでどうする?あの2人復讐でもしちゃう?今の君なら、それができるよ。」
死を覚悟した絶望から転生特典を得た主人公の大逆転溺愛ラブストーリー!
※最初の5話は毎日18時に投稿、それ以降は毎週土曜日の18時に投稿する予定です
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる