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帰還
第88話
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(な、何でも、言う事を聞くんですか?)
俺の、何でも言う事を聞く。と言う言葉に食いついたコグモ。
俺は、この機を逃すまいと、必死に食いついた。
(あぁ!何でもする!何でもするぞ!お風呂洗いから、食器洗いまで、何でもする!)
懇願する俺に、考え込むコグモ。
「二人とも?どうかした?」
リミアに話しかけられたショックで、俺がコグモに施していた拘束が解ける。
(頼む!上手く誤魔化してくれ!)
我ながら無茶ぶりだとは思うし、誤魔化す義理も無いと思うが、もう、そうお願いするしかなかった。
「いえ!ルリ様が、何でもお願いを聞いてくれると言うので、下級兵や新兵の訓練をお願いしようかと考えていたんです!お嬢様と一緒で、ルリ様なら、糸で調教ができますから!」
屈託のない笑顔で、ギリギリ嘘じゃないラインを突くコグモ。
俺が相手ならば、絶対に気が付かない。
「……そう。なんで、何でもお願いを聞く気になったのかは、知らないけど……」
不審そうに、俺を見つめるリミア。
「いやぁ……。よく考えてみれば、ここまで俺が帰ってこられたのは、コグモのおかげだし……。何かお返ししないとなぁ……って」
俺もそれっぽい雰囲気で、それっぽい理由を呟いて見せる。
我ながら、最高の演技だった。
「……なるほど。確かに、それは一理ある」
俺の言葉に、納得したように頷くリミア。
「分かった。ルリの所有権。しばらくコグモに預ける」
俺の所有権が、いつ俺からリミアに移行したのかは分からないが、この際聞かなかった事にしよう。
「でも、夜は連れて帰ってきて」
優しい、妖艶な笑みを湛え、俺の頬を撫でて来るリミア。
全力で首を横に振りたかったが、ここで全てを台無しにする訳にはいかない。
俺は人形になったつもりで、じっと耐えた。
「承知いたしました。ありがとうございます。お嬢様」
コグモはリミアにお礼を言うと「では、失礼致します」と、言って、俺を抱きかかえたまま、部屋出た。
コツコツコツ……。
魔王の部屋が遠ざかって行く。
俺を救い出してくれる勇者はコグモだったらしい。
シュルルルルル
コグモは糸を使って吹き抜けの上下通路を下に降りて行く。
……ここまでくれば大丈夫だろう。
「助かったよ、コグモ!お前は俺の救世主だ!」
俺は思わずコグモに抱き着く。
「ちょっと、どこ触ってるんですか……!……はぁ、体液を吸われていると思うと、この程度の事では、怒る気にもなりません……」
疲れたように溜息を吐くコグモ。
「まぁ、少なくとも、今日一日は、私に付き合って貰いますからね」
俺はコグモに抱えられ、地下への道を下って行く。
家の娘も、これぐらい穏やかな子なら良かったのに……。
今度は、俺が溜息を吐く番だった。
俺の、何でも言う事を聞く。と言う言葉に食いついたコグモ。
俺は、この機を逃すまいと、必死に食いついた。
(あぁ!何でもする!何でもするぞ!お風呂洗いから、食器洗いまで、何でもする!)
懇願する俺に、考え込むコグモ。
「二人とも?どうかした?」
リミアに話しかけられたショックで、俺がコグモに施していた拘束が解ける。
(頼む!上手く誤魔化してくれ!)
我ながら無茶ぶりだとは思うし、誤魔化す義理も無いと思うが、もう、そうお願いするしかなかった。
「いえ!ルリ様が、何でもお願いを聞いてくれると言うので、下級兵や新兵の訓練をお願いしようかと考えていたんです!お嬢様と一緒で、ルリ様なら、糸で調教ができますから!」
屈託のない笑顔で、ギリギリ嘘じゃないラインを突くコグモ。
俺が相手ならば、絶対に気が付かない。
「……そう。なんで、何でもお願いを聞く気になったのかは、知らないけど……」
不審そうに、俺を見つめるリミア。
「いやぁ……。よく考えてみれば、ここまで俺が帰ってこられたのは、コグモのおかげだし……。何かお返ししないとなぁ……って」
俺もそれっぽい雰囲気で、それっぽい理由を呟いて見せる。
我ながら、最高の演技だった。
「……なるほど。確かに、それは一理ある」
俺の言葉に、納得したように頷くリミア。
「分かった。ルリの所有権。しばらくコグモに預ける」
俺の所有権が、いつ俺からリミアに移行したのかは分からないが、この際聞かなかった事にしよう。
「でも、夜は連れて帰ってきて」
優しい、妖艶な笑みを湛え、俺の頬を撫でて来るリミア。
全力で首を横に振りたかったが、ここで全てを台無しにする訳にはいかない。
俺は人形になったつもりで、じっと耐えた。
「承知いたしました。ありがとうございます。お嬢様」
コグモはリミアにお礼を言うと「では、失礼致します」と、言って、俺を抱きかかえたまま、部屋出た。
コツコツコツ……。
魔王の部屋が遠ざかって行く。
俺を救い出してくれる勇者はコグモだったらしい。
シュルルルルル
コグモは糸を使って吹き抜けの上下通路を下に降りて行く。
……ここまでくれば大丈夫だろう。
「助かったよ、コグモ!お前は俺の救世主だ!」
俺は思わずコグモに抱き着く。
「ちょっと、どこ触ってるんですか……!……はぁ、体液を吸われていると思うと、この程度の事では、怒る気にもなりません……」
疲れたように溜息を吐くコグモ。
「まぁ、少なくとも、今日一日は、私に付き合って貰いますからね」
俺はコグモに抱えられ、地下への道を下って行く。
家の娘も、これぐらい穏やかな子なら良かったのに……。
今度は、俺が溜息を吐く番だった。
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