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おいで。早く、おいで…。
第127話 ソフウィンド of view
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「む、村が!人間が人間を襲っていて!…兎に角、助けてくれ!」
俺たちの家に転がり込んで来た村人は、酷く、動揺していた。
お頭が、「何があった?」と、聞いても「人が人を喰う」だとか、「みんな殺されっちまった」だとか、要領を得ない回答ばかり。
お頭も、イライラし始めている。
「邪魔だ。退いてな。お前ら」
村人を取り囲む、俺たちを押し除けて、ソム二さんが現れた。
俺たちはソム二さんの指示通り、二人から、距離を取る。
「そうかい、そうかい。…それで?」
ソム二さんは、慰める事も、奮い立たせる事もせず、ただただ、優しい声色で、村人の言葉を解いて行った。
「詰まりは、流行病の重症患者が、突然、人間を喰い始めた。と」
最後に、状況を整理する様に、呟く、ソム二さん。
その言葉に、村人は落ち着いた態度で「あぁ…」と、答える。
先程まで、あれほど、狼狽えていたと言うのに…。流石は、ソム二さんだ。
…しかし、話を聞きだすまでに、かなりの時間を要してしまった。
話から察するに、村人が逃げ出してきた時点で、村はかなり、壊滅的な状態であり、今現在も、それが進行していると考えると、グズグズしてはいられない。
「待ちな」
家の外に飛び出そうとした俺の肩を、お頭が掴む。
「止めるなお頭!早くしないと、ロワンが!」
俺は必死に抵抗するが、お頭の手、一つ、振り解けない。
「…お前一人。今更、村に行った所で、何になる」
お頭の、肩を掴む手に、力が籠る。
それだけで、肩に痛みが走り、俺は、抵抗を弱めてしまった。
「何にもならない!そんな事は分かってる!現に、お頭の片手すら、振り解けない程、貧弱なんだからな……。でも、それでも、じっとなんか、してられるか!」
俺は、思いの丈をぶつける。
こんなめちゃくちゃな話、通る訳がない。
殴られる覚悟で、目を閉じ、歯を食いしばった。
「………」
しかし、いつまで経っても、その時は来ない。
「……それは、いつも、お前が、ロワンに、やめろ。って、言っている事じゃないのか?」
何でその事を?!
俺は驚き、目を開ける。
パーン!
その瞬間、痛みと、振動が、頭を揺らした。
「…?!」
床に転がり、動揺する俺。あまりのショックに立ち上がれない。
「確かに、お前一人抜けた所で、この山賊家業に支障はねぇ……」
グワングワンと、揺れる視界が、涙で歪む。
泣いている場合じゃないのに。立ち向かわなきゃいけないのに。
「でもな、そう言うのは、理屈じゃねぇんだよ。…動く側も、止める側もな」
そう言うと、お頭は、背中を向けて去って行く。
皆は、お頭に視線を向けながらも、何も言わずに、道を開けた。
部屋の扉へ消える瞬間。お頭は、後ろを向いたまま、ポツリ。
「やるなら、俺の見えない所でやれ」
それだけ言い残すと、完全に姿を消す。
「……やっと、あいつも、子離れできたようだね……」
ソムニさんは、感慨深そうに呟くと、こちらを見る。
「……さぁ、村に行きたいって奴は、名乗りを上げな」
その声を聴いた時、俺は我慢しきれずに、泣き崩れてしまった。
俺たちの家に転がり込んで来た村人は、酷く、動揺していた。
お頭が、「何があった?」と、聞いても「人が人を喰う」だとか、「みんな殺されっちまった」だとか、要領を得ない回答ばかり。
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「邪魔だ。退いてな。お前ら」
村人を取り囲む、俺たちを押し除けて、ソム二さんが現れた。
俺たちはソム二さんの指示通り、二人から、距離を取る。
「そうかい、そうかい。…それで?」
ソム二さんは、慰める事も、奮い立たせる事もせず、ただただ、優しい声色で、村人の言葉を解いて行った。
「詰まりは、流行病の重症患者が、突然、人間を喰い始めた。と」
最後に、状況を整理する様に、呟く、ソム二さん。
その言葉に、村人は落ち着いた態度で「あぁ…」と、答える。
先程まで、あれほど、狼狽えていたと言うのに…。流石は、ソム二さんだ。
…しかし、話を聞きだすまでに、かなりの時間を要してしまった。
話から察するに、村人が逃げ出してきた時点で、村はかなり、壊滅的な状態であり、今現在も、それが進行していると考えると、グズグズしてはいられない。
「待ちな」
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「止めるなお頭!早くしないと、ロワンが!」
俺は必死に抵抗するが、お頭の手、一つ、振り解けない。
「…お前一人。今更、村に行った所で、何になる」
お頭の、肩を掴む手に、力が籠る。
それだけで、肩に痛みが走り、俺は、抵抗を弱めてしまった。
「何にもならない!そんな事は分かってる!現に、お頭の片手すら、振り解けない程、貧弱なんだからな……。でも、それでも、じっとなんか、してられるか!」
俺は、思いの丈をぶつける。
こんなめちゃくちゃな話、通る訳がない。
殴られる覚悟で、目を閉じ、歯を食いしばった。
「………」
しかし、いつまで経っても、その時は来ない。
「……それは、いつも、お前が、ロワンに、やめろ。って、言っている事じゃないのか?」
何でその事を?!
俺は驚き、目を開ける。
パーン!
その瞬間、痛みと、振動が、頭を揺らした。
「…?!」
床に転がり、動揺する俺。あまりのショックに立ち上がれない。
「確かに、お前一人抜けた所で、この山賊家業に支障はねぇ……」
グワングワンと、揺れる視界が、涙で歪む。
泣いている場合じゃないのに。立ち向かわなきゃいけないのに。
「でもな、そう言うのは、理屈じゃねぇんだよ。…動く側も、止める側もな」
そう言うと、お頭は、背中を向けて去って行く。
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「……やっと、あいつも、子離れできたようだね……」
ソムニさんは、感慨深そうに呟くと、こちらを見る。
「……さぁ、村に行きたいって奴は、名乗りを上げな」
その声を聴いた時、俺は我慢しきれずに、泣き崩れてしまった。
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