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むかえに来たよ。
第86話 リリーと願い
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いつも私は、メグルのくれた本を読んで色々な物を作っている。
そうなると、本を見ながら作業する事が多くなり、本を汚してしまうのではないかと心配だった。
丁度、コランも本に書いてある、魔法とやらが使えそうだという事で、部屋の外に本を持ち出したいと言っていたのだ。
本を汚すのは嫌だ。
それでも本は使いたい。
そうなれば、写しをとろうと思うのは当然の行動だった。
どうせ、写しをとるなら、外装も同じものにしたい。
これは二人に共通した思いだった。
その方が、メグルと一緒に居られる気がする。
「メグル…」
私は胸元のペンダントを優しく握る。
金属のそれは、冬の空気に触れ、冷たくなっていた。
あの時メグルは、私達を逃がすために囮になった。
彼なら大丈夫。
そんな言葉を軽々しく口にできる相手ではなかった。
メグルは生きているかもしれなし、死んでいるかもしれない。
生きていれば万々歳だ。
その時は盛大にお祝いをしよう。
きっと、今磨いている料理の腕が役立つはずだ。
それに家事スキルも、後々必要になってくるだろう。
なんせ、メグルの面倒を見るのは私の仕事なのだから。
でも、そうでなかった場合。
死んでしまっていた場合。
…私は聞いた事がある。
教会が死者を復活させる秘術を持っていると。
その秘術を盗み出すことができれば、メグルは帰ってくるのだ。
最初は半信半疑だった。
でも、メグルの本に書かれていた魔法という不思議な存在。
それは本当に、死者をも蘇らせてしまいそうだった。
教会についてはメグルの本にも書いてあった。
どれだけ汚い奴らなのか、憎しみを込めて書かれていたのだ。
そして、如何やら私もその被害者のようだった。
私は奴らの欲する者になりきって、懐に潜入する予定だ。
秘術を取得した後には教会をめちゃくちゃにしてやる。
勿論、この予定はコランには内緒だ。
絶対、止めるに決まっている。
それにコランは教会の汚い部分や秘術についても何も知らないのだ。
…知らない方が良い。
私は汚い世界で育ってきた。
だから、今更汚れたって、どうなる問題でもないのだ。
でも、コランは違う。
皆に愛されて、皆を愛して生きてきた。
これからも綺麗なままでいて欲しい。
心からの笑顔で笑い続けて欲しい。
だから、コランの本にも汚い部分は写さない。
全部秘密。
汚い事は全部私がして、コランはここで幸せに暮らせば良いのだ。
全てが終わった後に迎えに来る。
…まぁ、その時はコランの口から小言の嵐が吹き荒れるだろうが…。
「…よし」
私はペンダントから手を離すと、作業に戻る。
冷たくなっていたペンダントは、優しい彼女の体温で温められていた。
そうなると、本を見ながら作業する事が多くなり、本を汚してしまうのではないかと心配だった。
丁度、コランも本に書いてある、魔法とやらが使えそうだという事で、部屋の外に本を持ち出したいと言っていたのだ。
本を汚すのは嫌だ。
それでも本は使いたい。
そうなれば、写しをとろうと思うのは当然の行動だった。
どうせ、写しをとるなら、外装も同じものにしたい。
これは二人に共通した思いだった。
その方が、メグルと一緒に居られる気がする。
「メグル…」
私は胸元のペンダントを優しく握る。
金属のそれは、冬の空気に触れ、冷たくなっていた。
あの時メグルは、私達を逃がすために囮になった。
彼なら大丈夫。
そんな言葉を軽々しく口にできる相手ではなかった。
メグルは生きているかもしれなし、死んでいるかもしれない。
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その時は盛大にお祝いをしよう。
きっと、今磨いている料理の腕が役立つはずだ。
それに家事スキルも、後々必要になってくるだろう。
なんせ、メグルの面倒を見るのは私の仕事なのだから。
でも、そうでなかった場合。
死んでしまっていた場合。
…私は聞いた事がある。
教会が死者を復活させる秘術を持っていると。
その秘術を盗み出すことができれば、メグルは帰ってくるのだ。
最初は半信半疑だった。
でも、メグルの本に書かれていた魔法という不思議な存在。
それは本当に、死者をも蘇らせてしまいそうだった。
教会についてはメグルの本にも書いてあった。
どれだけ汚い奴らなのか、憎しみを込めて書かれていたのだ。
そして、如何やら私もその被害者のようだった。
私は奴らの欲する者になりきって、懐に潜入する予定だ。
秘術を取得した後には教会をめちゃくちゃにしてやる。
勿論、この予定はコランには内緒だ。
絶対、止めるに決まっている。
それにコランは教会の汚い部分や秘術についても何も知らないのだ。
…知らない方が良い。
私は汚い世界で育ってきた。
だから、今更汚れたって、どうなる問題でもないのだ。
でも、コランは違う。
皆に愛されて、皆を愛して生きてきた。
これからも綺麗なままでいて欲しい。
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だから、コランの本にも汚い部分は写さない。
全部秘密。
汚い事は全部私がして、コランはここで幸せに暮らせば良いのだ。
全てが終わった後に迎えに来る。
…まぁ、その時はコランの口から小言の嵐が吹き荒れるだろうが…。
「…よし」
私はペンダントから手を離すと、作業に戻る。
冷たくなっていたペンダントは、優しい彼女の体温で温められていた。
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