85 / 132
むかえに来たよ。
第84話 ベルガモットと余裕なお姉さん
しおりを挟む
よし!今ならいける!
「とりゃ!」
僕はコランが他の奴に気を取られている内に、彼女の背後で木の棒を振るった。
「おおっと!」
その攻撃を背中に目でもついているように、避けるコラン。
「何でだよ?!」
何で避けられるんだよ!
僕が、そう口にする前に、彼女を相手していた、最後の一人が倒された。
コランは、余裕そうに、木の棒で肩を叩きながら、こちらを振り返る。
そして、少し考えた様に首を傾げ「色?」と、意味不明な答えを返してきた。
彼女自身も良く分かっていないのか、首は傾げたままである。
そんな阿保っぽいコランではあるが、その周りには10人以上の男が倒れていた。
皆、一斉に飛び掛かったにもかかわらず、負けてしまったのだ。
残りは僕だけである。
「降参する?」
コランが木の棒を弄びながら聞いてくる。
初めて出会った頃は良い勝負だったのに…。
「するかぁあ!」
僕は転がっている仲間から木の棒を取り上げ、二刀流で駆ける。
コランは余裕の表情で動かない。
「よっ、と」
そして、僕が間合いに入ると、大きく横に薙ぐように木の枝を振るった。
コランの攻撃は基本ガードできない。
何故なら、力負けしてしまうからだ。
僕は咄嗟に身を屈めると、勢いそのまま、彼女にぶつかりに行く。
彼女を押し倒す作戦だ。
「おっ!」
上手く、コランの懐に飛び込み、腰を掴むことに成功した。
しかし、コランは驚きの声を上げるだけで、びくともしない。
「うぅ~ん!」
勢いがなくなった僕はそれでもコランを押し倒そうと、足を踏ん張る。
「…」
コランが、如何したものかといった表情で、僕を見下ろしていた。
「…まぁ、私に触れたから、一本?」
呆けた顔で首を傾げるコラン。
いつの間にやら、戦う対象とすら見られなくなっていたらしい。
「くそっ!」
僕はコランを倒すのを諦め、僕は地面に転がった。
完全に八つ当たりである。
「がんばった。がんばった」
そう言って、しゃがんだコランが、僕の頭を撫でてくれた。
その表情はいつもより大人っぽく見えて、僕は顔を逸らしてしまう。
「よいしょっと……。んじゃ、私は森に行くね~」
彼女は立ち上がると、そう言って森に消えて行く。
その手には相棒が握られていた。
いつものコランも十分に強いが、あの相棒とやらを手にしたコランは常軌を逸した強さを誇る。
あの相棒とやらが、強さの秘密なのだろうか。
それでも、絶対に触らない様にコランから言われている為、今まで持った事すらない。
…今度、こっそり借りてみようかな…。
と、言っても、いつも相棒はコランの目の届く範囲にあるので、難しいかもしれないが…。
チャンスがあるとすれば、リリーと話をして、注意がそれている時。
負けたまま引き下がるわけにはいかない。
可能性があるなら試してみたかった。
まぁ、減るもんじゃないしね。
ちょっとだけ、貸してもらおう。
僕は悪い笑みを浮かべると、作戦を練り始める。
「なぁ、ベル?」
そんな僕の肩を誰かが叩いた。
僕は「なんだよ、もう」と言って振り返る。
そこには、僕以上に悪い笑みを浮かべる皆が立っていた。
「え?なに?…どうしたの?」
僕は思わず、腰を引いた。
「俺たちのコランちゃんに触れてんじゃねぇ!」
「しかも、腰だぞ!腰!完全にアウトだ!」
「終いには、優しくされてたしな…」
逃げ腰の僕を皆が取り囲む。
「ちょっと待って!話し合おう!あれは訓練だ。だから仕方のない事。それに、触れられないのはお前たちの技量不足だろ?」
僕は必死に弁解するが、最後の最後に、余計な事を口走ってしまった。
思わず、自身の口を手で覆うが、もう遅い。
「そうかそうか…。それなら俺らの訓練に付き合ってくれよ。先輩」
いつの間にやら、コランにやられて伸びていた奴らも加わっている。
完全に逃げ場はなかった。
「くそぉ!」
僕はその場にあった木の枝を手に取り、二刀流で振り回す。
それが開戦の合図だった。
…結果は言うまでもない。
「とりゃ!」
僕はコランが他の奴に気を取られている内に、彼女の背後で木の棒を振るった。
「おおっと!」
その攻撃を背中に目でもついているように、避けるコラン。
「何でだよ?!」
何で避けられるんだよ!
僕が、そう口にする前に、彼女を相手していた、最後の一人が倒された。
コランは、余裕そうに、木の棒で肩を叩きながら、こちらを振り返る。
そして、少し考えた様に首を傾げ「色?」と、意味不明な答えを返してきた。
彼女自身も良く分かっていないのか、首は傾げたままである。
そんな阿保っぽいコランではあるが、その周りには10人以上の男が倒れていた。
皆、一斉に飛び掛かったにもかかわらず、負けてしまったのだ。
残りは僕だけである。
「降参する?」
コランが木の棒を弄びながら聞いてくる。
初めて出会った頃は良い勝負だったのに…。
「するかぁあ!」
僕は転がっている仲間から木の棒を取り上げ、二刀流で駆ける。
コランは余裕の表情で動かない。
「よっ、と」
そして、僕が間合いに入ると、大きく横に薙ぐように木の枝を振るった。
コランの攻撃は基本ガードできない。
何故なら、力負けしてしまうからだ。
僕は咄嗟に身を屈めると、勢いそのまま、彼女にぶつかりに行く。
彼女を押し倒す作戦だ。
「おっ!」
上手く、コランの懐に飛び込み、腰を掴むことに成功した。
しかし、コランは驚きの声を上げるだけで、びくともしない。
「うぅ~ん!」
勢いがなくなった僕はそれでもコランを押し倒そうと、足を踏ん張る。
「…」
コランが、如何したものかといった表情で、僕を見下ろしていた。
「…まぁ、私に触れたから、一本?」
呆けた顔で首を傾げるコラン。
いつの間にやら、戦う対象とすら見られなくなっていたらしい。
「くそっ!」
僕はコランを倒すのを諦め、僕は地面に転がった。
完全に八つ当たりである。
「がんばった。がんばった」
そう言って、しゃがんだコランが、僕の頭を撫でてくれた。
その表情はいつもより大人っぽく見えて、僕は顔を逸らしてしまう。
「よいしょっと……。んじゃ、私は森に行くね~」
彼女は立ち上がると、そう言って森に消えて行く。
その手には相棒が握られていた。
いつものコランも十分に強いが、あの相棒とやらを手にしたコランは常軌を逸した強さを誇る。
あの相棒とやらが、強さの秘密なのだろうか。
それでも、絶対に触らない様にコランから言われている為、今まで持った事すらない。
…今度、こっそり借りてみようかな…。
と、言っても、いつも相棒はコランの目の届く範囲にあるので、難しいかもしれないが…。
チャンスがあるとすれば、リリーと話をして、注意がそれている時。
負けたまま引き下がるわけにはいかない。
可能性があるなら試してみたかった。
まぁ、減るもんじゃないしね。
ちょっとだけ、貸してもらおう。
僕は悪い笑みを浮かべると、作戦を練り始める。
「なぁ、ベル?」
そんな僕の肩を誰かが叩いた。
僕は「なんだよ、もう」と言って振り返る。
そこには、僕以上に悪い笑みを浮かべる皆が立っていた。
「え?なに?…どうしたの?」
僕は思わず、腰を引いた。
「俺たちのコランちゃんに触れてんじゃねぇ!」
「しかも、腰だぞ!腰!完全にアウトだ!」
「終いには、優しくされてたしな…」
逃げ腰の僕を皆が取り囲む。
「ちょっと待って!話し合おう!あれは訓練だ。だから仕方のない事。それに、触れられないのはお前たちの技量不足だろ?」
僕は必死に弁解するが、最後の最後に、余計な事を口走ってしまった。
思わず、自身の口を手で覆うが、もう遅い。
「そうかそうか…。それなら俺らの訓練に付き合ってくれよ。先輩」
いつの間にやら、コランにやられて伸びていた奴らも加わっている。
完全に逃げ場はなかった。
「くそぉ!」
僕はその場にあった木の枝を手に取り、二刀流で振り回す。
それが開戦の合図だった。
…結果は言うまでもない。
0
お気に入りに追加
9
あなたにおすすめの小説

あの味噌汁の温かさ、焼き魚の香り、醤油を使った味付け——異世界で故郷の味をもとめてつきすすむ!
ねむたん
ファンタジー
私は砂漠の町で家族と一緒に暮らしていた。そのうち前世のある記憶が蘇る。あの日本の味。温かい味噌汁、焼き魚、醤油で整えた料理——すべてが懐かしくて、恋しくてたまらなかった。
私はその気持ちを家族に打ち明けた。前世の記憶を持っていること、そして何より、あの日本の食文化が恋しいことを。家族は私の決意を理解し、旅立ちを応援してくれた。私は幼馴染のカリムと共に、異国の地で新しい食材や文化を探しに行くことに。
元邪神って本当ですか!? 万能ギルド職員の業務日誌
紫南
ファンタジー
十二才の少年コウヤは、前世では病弱な少年だった。
それは、その更に前の生で邪神として倒されたからだ。
今世、その世界に再転生した彼は、元家族である神々に可愛がられ高い能力を持って人として生活している。
コウヤの現職は冒険者ギルドの職員。
日々仕事を押し付けられ、それらをこなしていくが……?
◆◆◆
「だって武器がペーパーナイフってなに!? あれは普通切れないよ!? 何切るものかわかってるよね!?」
「紙でしょ? ペーパーって言うし」
「そうだね。正解!」
◆◆◆
神としての力は健在。
ちょっと天然でお人好し。
自重知らずの少年が今日も元気にお仕事中!
◆気まぐれ投稿になります。
お暇潰しにどうぞ♪

ソロ冒険者のぶらり旅~悠々自適とは無縁な日々~
にくなまず
ファンタジー
今年から冒険者生活を開始した主人公で【ソロ】と言う適正のノア(15才)。
その適正の為、戦闘・日々の行動を基本的に1人で行わなければなりません。
そこで元上級冒険者の両親と猛特訓を行い、チート級の戦闘力と数々のスキルを持つ事になります。
『悠々自適にぶらり旅』
を目指す″つもり″の彼でしたが、開始早々から波乱に満ちた冒険者生活が待っていました。
異世界大使館はじめます
あかべこ
ファンタジー
外務省の窓際官僚・真柴春彦は異世界に新たに作られる大使館の全権特任大使に任命されることになるが、同じように派遣されることになった自衛官の木栖は高校時代からの因縁の相手だった。同じように訳ありな仲間たちと異世界での外交活動を開始するが異世界では「外交騎士とは夫婦でなるもの」という暗黙の了解があったため真柴と木栖が同性の夫婦と勘違いされてしまい、とりあえずそれで通すことになり……?!
チート・俺TUEEE成分なし。異性愛や男性同士や女性同士の恋愛、獣人と人間の恋愛アリ。
不定期更新。表紙はかんたん表紙メーカーで作りました。
作中の法律や料理についての知識は、素人が書いてるので生ぬるく読んでください。
カクヨム版ありますhttps://kakuyomu.jp/works/16817330651028845416
一緒に読むと楽しいスピンオフhttps://www.alphapolis.co.jp/novel/2146286/633604170
同一世界線のはなしhttps://www.alphapolis.co.jp/novel/2146286/905818730
https://www.alphapolis.co.jp/novel/2146286/687883567

元34才独身営業マンの転生日記 〜もらい物のチートスキルと鍛え抜いた処世術が大いに役立ちそうです〜
ちゃぶ台
ファンタジー
彼女いない歴=年齢=34年の近藤涼介は、プライベートでは超奥手だが、ビジネスの世界では無類の強さを発揮するスーパーセールスマンだった。
社内の人間からも取引先の人間からも一目置かれる彼だったが、不運な事故に巻き込まれあっけなく死亡してしまう。
せめて「男」になって死にたかった……
そんなあまりに不憫な近藤に神様らしき男が手を差し伸べ、近藤は異世界にて人生をやり直すことになった!
もらい物のチートスキルと持ち前のビジネスセンスで仲間を増やし、今度こそ彼女を作って幸せな人生を送ることを目指した一人の男の挑戦の日々を綴ったお話です!

ある公爵令嬢の生涯
ユウ
恋愛
伯爵令嬢のエステルには妹がいた。
妖精姫と呼ばれ両親からも愛され周りからも無条件に愛される。
婚約者までも妹に奪われ婚約者を譲るように言われてしまう。
そして最後には妹を陥れようとした罪で断罪されてしまうが…
気づくとエステルに転生していた。
再び前世繰り返すことになると思いきや。
エステルは家族を見限り自立を決意するのだが…
***
タイトルを変更しました!
転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。
克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります!
辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。
30代社畜の私が1ヶ月後に異世界転生するらしい。
ひさまま
ファンタジー
前世で搾取されまくりだった私。
魂の休養のため、地球に転生したが、地球でも今世も搾取されまくりのため魂の消滅の危機らしい。
とある理由から元の世界に戻るように言われ、マジックバックを自称神様から頂いたよ。
これで地球で買ったものを持ち込めるとのこと。やっぱり夢ではないらしい。
取り敢えず、明日は退職届けを出そう。
目指せ、快適異世界生活。
ぽちぽち更新します。
作者、うっかりなのでこれも買わないと!というのがあれば教えて下さい。
脳内の空想を、つらつら書いているのでお目汚しな際はごめんなさい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる