81 / 132
むかえに来たよ。
第80話 メグルと譲れない想い
しおりを挟む
姉さんなんて嫌いだ!
シバの苦しみを知っておきながら見て見ぬ振りを続けていたくせに!
助けてくれなかった母さんも嫌いだ!
母さんだけは何があっても、僕の味方だと思っていたのに!
「クゥン…」
腕の中で、シバが弱々しく鳴いた。
「待っててね!あの子に頼んで新しい体を作ってもらうから!」
そう、あの子なら何でもできる。
シバを生き返らせてくれたのも、シバの過去を教えてくれたのも、全部、彼女だ。
体だって、簡単に作ってくれるだろう。
そうだ、そうだよ。
もう、あの体もボロボロだった。
彼女にかかれば新しい体なんて、きっと一瞬で出来上がる。
今回、体が駄目になったのは丁度良い機会だったのだ。
そう考えると、姉さん達を許せるような気持になってくる。
「…良かった」
無意識に、そんな言葉が口から零れた。
…一体、何が良かったのだろう。
あぁ、シバの体がどうにかなる事か。
シバが僕の掌を舐める。
僕は安心させるように笑顔を作った。
彼女は神出鬼没だが、シバがここにいるという事は、近くにいるはずだ。
「お~い!出てきて!僕だよ!メグルだよ!」
僕の叫び声が森に木霊する。
彼女は出てきてくれるだろうか。
「待ちなさい!メグル!」
聞こえてきたのは母さんの声。
如何やら、僕の後を追ってきたらしい。
僕はその事に一瞬嬉しくなる。
しかし、母さんが庇ってくれなかった事を思い出し、直ぐに頬を膨らませた。
「母さんなんて嫌いだ!あっちいけ!」
僕は大声で母さんを威嚇する。
しかし、母さんが歩みを止める事は無かった。
どうして?!いつもなら言う事を聞いてくれるのに!
姉さんと一緒で、僕を無視するの?!
姉さんと一緒で、シバを殺そうとするの?!
姉さんと一緒で…。僕を捨てるの?
「来るなぁ!」
母さんは姉さんと一緒じゃない。
だから言う事を聞いて!
僕を捨てないで!
それでも、母さんは僕の声を無視して、こちら向かってくる。
…あぁ、そうか。母さんも僕の事嫌いになっちゃったんだ。
そう考えると、体から力が抜けてしまった。
理由なんて、どうでも良い。
唯々ショックだった。
「危ないわよ。メグル」
倒れ込みそうになった僕を小さな手が支えてくれる。
振り返れば、そこには黒い彼女がいた。
やっぱり、来てくれたんだ…。
彼女は僕に残った最後の味方だった。
「何を迷っているの?」
彼女は僕の背後で、囁くように言葉を紡ぐ。
「シバを救えるのは貴方だけなのよ?それとも、この人たちがシバにしてきた事。忘れちゃった?」
そうだ、彼女の言う通りだ。
シバはずっと一人で辛い思いをしてきた。
そして、母さんたちはずっと、見て見ぬ振りを続けてきた。
もっと早くに手を差し伸べていれば、こうはならなかったかもしれないのに。
確かに、理由はあるのかもしれない。
それでも、母さんたちは結局、シバを見捨てたのだ。
シバの辛さを、苦しみを分かってあげられるのは僕だけ。
だから僕が救わなくちゃいけないんだ!
僕は自分の力で地面を踏みしめる。
「クゥ~ン」
弱々しく、鳴き声を上げるシバ。
「大丈夫だよ、シバ。僕が絶対守るから…」
もう、目を開ける事もできないシバの頭を優しく撫でた。
「そうよ、メグル。あの女にシバの頭まで取られたら、流石の私でも蘇生できなくなる。今、シバを守れるのは貴方だけなの…」
彼女が悲しそうに言う。
「もう、シバも限界だわ。ここで、蘇生術をやらせて」
そういう彼女にシバの頭を受け渡す。
シバはもう、虫の息だった。
「絶対にシバは渡さない!」
僕はそう叫ぶと、母さんを睨む。
それでも母さんは歩みを止めなかった。
僕も引く気はない。
初めての親子喧嘩だった。
シバの苦しみを知っておきながら見て見ぬ振りを続けていたくせに!
助けてくれなかった母さんも嫌いだ!
母さんだけは何があっても、僕の味方だと思っていたのに!
「クゥン…」
腕の中で、シバが弱々しく鳴いた。
「待っててね!あの子に頼んで新しい体を作ってもらうから!」
そう、あの子なら何でもできる。
シバを生き返らせてくれたのも、シバの過去を教えてくれたのも、全部、彼女だ。
体だって、簡単に作ってくれるだろう。
そうだ、そうだよ。
もう、あの体もボロボロだった。
彼女にかかれば新しい体なんて、きっと一瞬で出来上がる。
今回、体が駄目になったのは丁度良い機会だったのだ。
そう考えると、姉さん達を許せるような気持になってくる。
「…良かった」
無意識に、そんな言葉が口から零れた。
…一体、何が良かったのだろう。
あぁ、シバの体がどうにかなる事か。
シバが僕の掌を舐める。
僕は安心させるように笑顔を作った。
彼女は神出鬼没だが、シバがここにいるという事は、近くにいるはずだ。
「お~い!出てきて!僕だよ!メグルだよ!」
僕の叫び声が森に木霊する。
彼女は出てきてくれるだろうか。
「待ちなさい!メグル!」
聞こえてきたのは母さんの声。
如何やら、僕の後を追ってきたらしい。
僕はその事に一瞬嬉しくなる。
しかし、母さんが庇ってくれなかった事を思い出し、直ぐに頬を膨らませた。
「母さんなんて嫌いだ!あっちいけ!」
僕は大声で母さんを威嚇する。
しかし、母さんが歩みを止める事は無かった。
どうして?!いつもなら言う事を聞いてくれるのに!
姉さんと一緒で、僕を無視するの?!
姉さんと一緒で、シバを殺そうとするの?!
姉さんと一緒で…。僕を捨てるの?
「来るなぁ!」
母さんは姉さんと一緒じゃない。
だから言う事を聞いて!
僕を捨てないで!
それでも、母さんは僕の声を無視して、こちら向かってくる。
…あぁ、そうか。母さんも僕の事嫌いになっちゃったんだ。
そう考えると、体から力が抜けてしまった。
理由なんて、どうでも良い。
唯々ショックだった。
「危ないわよ。メグル」
倒れ込みそうになった僕を小さな手が支えてくれる。
振り返れば、そこには黒い彼女がいた。
やっぱり、来てくれたんだ…。
彼女は僕に残った最後の味方だった。
「何を迷っているの?」
彼女は僕の背後で、囁くように言葉を紡ぐ。
「シバを救えるのは貴方だけなのよ?それとも、この人たちがシバにしてきた事。忘れちゃった?」
そうだ、彼女の言う通りだ。
シバはずっと一人で辛い思いをしてきた。
そして、母さんたちはずっと、見て見ぬ振りを続けてきた。
もっと早くに手を差し伸べていれば、こうはならなかったかもしれないのに。
確かに、理由はあるのかもしれない。
それでも、母さんたちは結局、シバを見捨てたのだ。
シバの辛さを、苦しみを分かってあげられるのは僕だけ。
だから僕が救わなくちゃいけないんだ!
僕は自分の力で地面を踏みしめる。
「クゥ~ン」
弱々しく、鳴き声を上げるシバ。
「大丈夫だよ、シバ。僕が絶対守るから…」
もう、目を開ける事もできないシバの頭を優しく撫でた。
「そうよ、メグル。あの女にシバの頭まで取られたら、流石の私でも蘇生できなくなる。今、シバを守れるのは貴方だけなの…」
彼女が悲しそうに言う。
「もう、シバも限界だわ。ここで、蘇生術をやらせて」
そういう彼女にシバの頭を受け渡す。
シバはもう、虫の息だった。
「絶対にシバは渡さない!」
僕はそう叫ぶと、母さんを睨む。
それでも母さんは歩みを止めなかった。
僕も引く気はない。
初めての親子喧嘩だった。
0
お気に入りに追加
9
あなたにおすすめの小説
婚約破棄されましたが、帝国皇女なので元婚約者は投獄します
けんゆう
ファンタジー
「お前のような下級貴族の養女など、もう不要だ!」
五年間、婚約者として尽くしてきたフィリップに、冷たく告げられたソフィア。
他の貴族たちからも嘲笑と罵倒を浴び、社交界から追放されかける。
だが、彼らは知らなかった――。
ソフィアは、ただの下級貴族の養女ではない。
そんな彼女の元に届いたのは、隣国からお兄様が、貿易利権を手土産にやってくる知らせ。
「フィリップ様、あなたが何を捨てたのかーー思い知らせて差し上げますわ!」
逆襲を決意し、華麗に着飾ってパーティーに乗り込んだソフィア。
「妹を侮辱しただと? 極刑にすべきはお前たちだ!」
ブチギレるお兄様。
貴族たちは青ざめ、王国は崩壊寸前!?
「ざまぁ」どころか 国家存亡の危機 に!?
果たしてソフィアはお兄様の暴走を止め、自由な未来を手に入れられるか?
「私の未来は、私が決めます!」
皇女の誇りをかけた逆転劇、ここに開幕!

【完結】名前もない悪役令嬢の従姉妹は、愛されエキストラでした
犬野きらり
恋愛
アーシャ・ドミルトンは、引越してきた屋敷の中で、初めて紹介された従姉妹の言動に思わず呟く『悪役令嬢みたい』と。
思い出したこの世界は、最終回まで私自身がアシスタントの1人として仕事をしていた漫画だった。自分自身の名前には全く覚えが無い。でも悪役令嬢の周りの人間は消えていく…はず。日に日に忘れる記憶を暗記して、物語のストーリー通りに進むのかと思いきや何故かちょこちょこと私、運良く!?偶然!?現場に居合わす。
何故、私いるのかしら?従姉妹ってだけなんだけど!悪役令嬢の取り巻きには絶対になりません。出来れば関わりたくはないけど、未来を知っているとついつい手を出して、余計なお喋りもしてしまう。気づけば私の周りは、主要キャラばかりになっているかも。何か変?は、私が変えてしまったストーリーだけど…

野草から始まる異世界スローライフ
深月カナメ
ファンタジー
花、植物に癒されたキャンプ場からの帰り、事故にあい異世界に転生。気付けば子供の姿で、名前はエルバという。
私ーーエルバはスクスク育ち。
ある日、ふれた薬草の名前、効能が頭の中に聞こえた。
(このスキル使える)
エルバはみたこともない植物をもとめ、魔法のある世界で優しい両親も恵まれ、私の第二の人生はいま異世界ではじまった。
エブリスタ様にて掲載中です。
表紙は表紙メーカー様をお借りいたしました。
プロローグ〜78話までを第一章として、誤字脱字を直したものに変えました。
物語は変わっておりません。
一応、誤字脱字、文章などを直したはずですが、まだまだあると思います。見直しながら第二章を進めたいと思っております。
よろしくお願いします。
最初から最強ぼっちの俺は英雄になります
総長ヒューガ
ファンタジー
いつも通りに一人ぼっちでゲームをしていた、そして疲れて寝ていたら、人々の驚きの声が聞こえた、目を開けてみるとそこにはゲームの世界だった、これから待ち受ける敵にも勝たないといけない、予想外の敵にも勝たないといけないぼっちはゲーム内の英雄になれるのか!
元邪神って本当ですか!? 万能ギルド職員の業務日誌
紫南
ファンタジー
十二才の少年コウヤは、前世では病弱な少年だった。
それは、その更に前の生で邪神として倒されたからだ。
今世、その世界に再転生した彼は、元家族である神々に可愛がられ高い能力を持って人として生活している。
コウヤの現職は冒険者ギルドの職員。
日々仕事を押し付けられ、それらをこなしていくが……?
◆◆◆
「だって武器がペーパーナイフってなに!? あれは普通切れないよ!? 何切るものかわかってるよね!?」
「紙でしょ? ペーパーって言うし」
「そうだね。正解!」
◆◆◆
神としての力は健在。
ちょっと天然でお人好し。
自重知らずの少年が今日も元気にお仕事中!
◆気まぐれ投稿になります。
お暇潰しにどうぞ♪
30代社畜の私が1ヶ月後に異世界転生するらしい。
ひさまま
ファンタジー
前世で搾取されまくりだった私。
魂の休養のため、地球に転生したが、地球でも今世も搾取されまくりのため魂の消滅の危機らしい。
とある理由から元の世界に戻るように言われ、マジックバックを自称神様から頂いたよ。
これで地球で買ったものを持ち込めるとのこと。やっぱり夢ではないらしい。
取り敢えず、明日は退職届けを出そう。
目指せ、快適異世界生活。
ぽちぽち更新します。
作者、うっかりなのでこれも買わないと!というのがあれば教えて下さい。
脳内の空想を、つらつら書いているのでお目汚しな際はごめんなさい。
【完結】聖獣もふもふ建国記 ~国外追放されましたが、我が領地は国を興して繁栄しておりますので御礼申し上げますね~
綾雅(ヤンデレ攻略対象、電子書籍化)
ファンタジー
婚約破棄、爵位剥奪、国外追放? 最高の褒美ですね。幸せになります!
――いま、何ておっしゃったの? よく聞こえませんでしたわ。
「ずいぶんと巫山戯たお言葉ですこと! ご自分の立場を弁えて発言なさった方がよろしくてよ」
すみません、本音と建て前を間違えましたわ。国王夫妻と我が家族が不在の夜会で、婚約者の第一王子は高らかに私を糾弾しました。両手に花ならぬ虫を這わせてご機嫌のようですが、下の緩い殿方は嫌われますわよ。
婚約破棄、爵位剥奪、国外追放。すべて揃いました。実家の公爵家の領地に戻った私を出迎えたのは、溺愛する家族が興す新しい国でした。領地改め国土を繁栄させながら、スローライフを楽しみますね。
最高のご褒美でしたわ、ありがとうございます。私、もふもふした聖獣達と幸せになります! ……余計な心配ですけれど、そちらの国は傾いていますね。しっかりなさいませ。
【同時掲載】小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
※2022/05/10 「HJ小説大賞2021後期『ノベルアップ+部門』」一次選考通過
※2022/02/14 エブリスタ、ファンタジー 1位
※2022/02/13 小説家になろう ハイファンタジー日間59位
※2022/02/12 完結
※2021/10/18 エブリスタ、ファンタジー 1位
※2021/10/19 アルファポリス、HOT 4位
※2021/10/21 小説家になろう ハイファンタジー日間 17位

最初からここに私の居場所はなかった
kana
恋愛
死なないために媚びても駄目だった。
死なないために努力しても認められなかった。
死なないためにどんなに辛くても笑顔でいても無駄だった。
死なないために何をされても怒らなかったのに⋯⋯
だったら⋯⋯もう誰にも媚びる必要も、気を使う必要もないでしょう?
だから虚しい希望は捨てて生きるための準備を始めた。
二度目は、自分らしく生きると決めた。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
いつも稚拙な小説を読んでいただきありがとうございます。
私ごとですが、この度レジーナブックス様より『後悔している言われても⋯⋯ねえ?今さらですよ?』が1月31日頃に書籍化されることになりました~
これも読んでくださった皆様のおかげです。m(_ _)m
これからも皆様に楽しんでいただける作品をお届けできるように頑張ってまいりますので、よろしくお願いいたします(>人<;)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる