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むかえに来たよ。
第73話 マロウと後悔
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コンコンコン
木の扉がノックされる。
私は焦る心をそのままに、扉を開いた。
「あ、あぁ…」
予想通り、そこにいたのはメグルだった。
全身ボロボロの泥だらけ。
血までついている。
目の下は泣き腫らしたように赤くなっていた。
しかし、何より、私の心を抉ったのは、彼の感情を伴わない瞳だ。
彼の死んだような瞳が私を見上げる。
それでも、彼は生きていた。
私はそれだけで十分だった。
「…良かった。良かったよ、メグルゥ!」
私は堪らず彼を抱きしめる。
彼はなされるが、ままだった。
いつものようにうれしそうに笑う事も無ければ、抱き返してくれることもしない。
ただ、空虚な瞳が私を見つめるだけ。
「大丈夫。大丈夫よ。今はゆっくり、おやすみなさい」
私が、そう言うと、彼は糸が切れた様に体勢を崩した。
「メグル?!」
…安らかな寝息だ。
如何やら寝てしまったらしい。
彼が浴びている血。
その正体を私たちは知っている。
私達を守ってくれた少女から事の顛末を聞いていたからだ。
皆も心配そうに、奥の部屋から顔を覗かせていた。
しかし、どう接すれば良いのか分からないのだろう。
メグルを寝かせる為、私は寝室に移動する。
汚れた服を脱がせると、その壊れそうな体をベッドの上にそっと横たわらせた。
「メグルは寝ちゃったわ」
私がそう言うと、皆がぞろぞろと近づいてくる。
セッタだけは何故か距離を取っているようだった。
メグルの顔を覗き込んだ皆は、一様に、言葉を失う。
堪らずと言った風に、ステリアが、汚れたメグルの顔をペロリと舐めた。
すると、眠っているはずのメグルが手を伸ばす。
その小さな手はステリアの頭をギュッと、抱いた。
ステリアは戸惑う。
しかし、メグルが弱々しく「シバ…」と呟くと、彼女は落ち着きを取り戻した。
ステリアは何も言わずに、何度もメグルの顔を舐める。
それしかしてあげられない事を悔やむような表情だった。
「セッタ?!」
突然セッタが走り出した。
扉に体当たりをし、そのまま飛び出して行ってしまう。
シバの暴走の原因をセッタは知っていたのかもしれない。
いや、セッタだけではない。
皆も薄々気づいていたのか、そんなセッタを見て、一様に苦い顔をしている。
私は知らなかった。
気付きすらしなかった。
シバが私を嫌っているからと、気分を害さないように近寄らなかった。
いや、そんな事は言い訳だ。
本当に彼を家族だと思っているなら、もっと彼を知るべきだった。
そうすれば仲良くもなれただろうし、今回のような悲劇も起らなかったかもしれない。
私が言い訳を続けていた結果がこれなのだ。
「ごめんね。シバ」
もう届かないであろう謝罪を口にする。
届いたところで、嫌われている私の言葉など、無視されてしまうかもしれないが。
私はステリアを離さないメグルの背中に抱き着いた。
小刻みに震える小さな体。
今にも壊れてしまいそうだった。
結局私は今になっても、シバが如何してあのような行動を起こしたのか分からない。
逃げるのは簡単だ。
自分に言い訳をすれば良いだけなのだから。
メグルはこの小さな体と心で、最後までシバに向かい合ったのだろう。
「ごめんね。メグル」
何処からかセッタの遠吠えが響いてくる。
その声はとても悲しげだった。
木の扉がノックされる。
私は焦る心をそのままに、扉を開いた。
「あ、あぁ…」
予想通り、そこにいたのはメグルだった。
全身ボロボロの泥だらけ。
血までついている。
目の下は泣き腫らしたように赤くなっていた。
しかし、何より、私の心を抉ったのは、彼の感情を伴わない瞳だ。
彼の死んだような瞳が私を見上げる。
それでも、彼は生きていた。
私はそれだけで十分だった。
「…良かった。良かったよ、メグルゥ!」
私は堪らず彼を抱きしめる。
彼はなされるが、ままだった。
いつものようにうれしそうに笑う事も無ければ、抱き返してくれることもしない。
ただ、空虚な瞳が私を見つめるだけ。
「大丈夫。大丈夫よ。今はゆっくり、おやすみなさい」
私が、そう言うと、彼は糸が切れた様に体勢を崩した。
「メグル?!」
…安らかな寝息だ。
如何やら寝てしまったらしい。
彼が浴びている血。
その正体を私たちは知っている。
私達を守ってくれた少女から事の顛末を聞いていたからだ。
皆も心配そうに、奥の部屋から顔を覗かせていた。
しかし、どう接すれば良いのか分からないのだろう。
メグルを寝かせる為、私は寝室に移動する。
汚れた服を脱がせると、その壊れそうな体をベッドの上にそっと横たわらせた。
「メグルは寝ちゃったわ」
私がそう言うと、皆がぞろぞろと近づいてくる。
セッタだけは何故か距離を取っているようだった。
メグルの顔を覗き込んだ皆は、一様に、言葉を失う。
堪らずと言った風に、ステリアが、汚れたメグルの顔をペロリと舐めた。
すると、眠っているはずのメグルが手を伸ばす。
その小さな手はステリアの頭をギュッと、抱いた。
ステリアは戸惑う。
しかし、メグルが弱々しく「シバ…」と呟くと、彼女は落ち着きを取り戻した。
ステリアは何も言わずに、何度もメグルの顔を舐める。
それしかしてあげられない事を悔やむような表情だった。
「セッタ?!」
突然セッタが走り出した。
扉に体当たりをし、そのまま飛び出して行ってしまう。
シバの暴走の原因をセッタは知っていたのかもしれない。
いや、セッタだけではない。
皆も薄々気づいていたのか、そんなセッタを見て、一様に苦い顔をしている。
私は知らなかった。
気付きすらしなかった。
シバが私を嫌っているからと、気分を害さないように近寄らなかった。
いや、そんな事は言い訳だ。
本当に彼を家族だと思っているなら、もっと彼を知るべきだった。
そうすれば仲良くもなれただろうし、今回のような悲劇も起らなかったかもしれない。
私が言い訳を続けていた結果がこれなのだ。
「ごめんね。シバ」
もう届かないであろう謝罪を口にする。
届いたところで、嫌われている私の言葉など、無視されてしまうかもしれないが。
私はステリアを離さないメグルの背中に抱き着いた。
小刻みに震える小さな体。
今にも壊れてしまいそうだった。
結局私は今になっても、シバが如何してあのような行動を起こしたのか分からない。
逃げるのは簡単だ。
自分に言い訳をすれば良いだけなのだから。
メグルはこの小さな体と心で、最後までシバに向かい合ったのだろう。
「ごめんね。メグル」
何処からかセッタの遠吠えが響いてくる。
その声はとても悲しげだった。
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