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ダメ!それは私の!
第47話 コランと勇気
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「…あれ?」
私は追っていた彼の色が突然途切れたことに驚く。
彼に気付かれてしまったのだろうか?
いや、彼が気付いたとして、私をこんな山奥に置いて行くわけがない。
何かあるはずだ。
気配を消す理由…。
もしかしたら敵がいるのかもしれない。
私は身を屈めると辺りを見回した。
「ん?…あれは?」
誰かが立っている。
彼と同じほどの背丈に長い髪。
日が陰って来た為か、そのシルエットしか確認する事は出来ない。
一体誰なのだろうか。
彼女はこちらを見ると、森の奥に向かって駆け出した。
彼女は彼の仲間かも知れない。
あるいは村の子が迷子になってしまったのとか…。
私は少女の後を追いかけるが、彼女は逃げるばかりで一向に止まってくれる気配はなかった。
きっと向こうからも私の姿がちゃんと見えていないのだろう。
獣か何かと勘違いしているに違いない。
「大丈夫だよ!私は人間だから!こっちに来て!」
私の呼びかけに少女は振り返った。
私は安堵の息を吐くと、ゆっくりと少女に近づいていく。
…おかしいな。この距離でも姿がちゃんと見えないなんて。
私がそう感じた次の瞬間、少女は木の後ろに姿を隠した。
私は急いでその木まで走るが、そこに少女の姿は無い。
代わりにその場にはおどろおどろしい色だけが残っていた。
私はあまりの不気味さに身を引く。
不安から辺りを確認すれば後ろには拓けた空間が広がっていた。
不気味だ。
こんな鬱蒼とした森の中でここだけに木が生えていないなんて…。
そんな中、拓けた空間に見覚えのある物を見つけた。
あの薙刀だ。
薙刀は石の詰まれた塚のようなものの前に供えるようにして置いてあった。
一体誰がこんなところに置いたのだろうか。
しかし、今の私はそんな事はどうでも良かった。
縋るような思いでその薙刀を手に取る。
不安で不安で仕方がなかったのだ。
薙刀を握れば、当然私の色は吸い取られて行く。しかし、この圧倒的な力を手にすることで不安が幾分か和らいだ。
あの子は何だったのだろう。
この薙刀の在りかまで導いてくれた?
じゃあ私が追ってきた彼の色も誘導の一部?
分からない。分からないが、この薙刀をもって長く活動する事は出来ない。
私はすぐに山を下りようと踵を返す。
「…?」
何かが後ろで動いた気がした。
しかし、そこには塚しかない。
「!!!!」
塚が揺れた。
塚の下から何かが這い出てこようとしている。
塚の間から噴き出す禍々しい気配は、先ほどの少女と同じ色をしていた。
私は一目散に山を下りた。
この薙刀による身体強化をもってすればすぐに村まで下りる事は出来る。
私は何度も木やその根にぶつかり、つまずきながらも、必死に山を下った。
時折、先程の禍々しい色が辺りを漂う様子が見える。
もしかしたら先程の様な”モノ”が外に溢れ出しているのかもしれない。
そう思うと今までとは別の恐怖が私を襲った。
薪拾いに来ていた子どもたちは無事に帰れただろうか。
村には被害が及んでいないだろうか。
「母さん!!」
私はそれだけで頭がいっぱいになった。
あれ?体が軽い?
薙刀がいつもより私に力を貸してくれている。
…そうか、今の私が光っているから…。
光を纏った少女は日の落ちた森を駆け降りる。
その表情は少女とは思えない程に凛々しかった。
私は追っていた彼の色が突然途切れたことに驚く。
彼に気付かれてしまったのだろうか?
いや、彼が気付いたとして、私をこんな山奥に置いて行くわけがない。
何かあるはずだ。
気配を消す理由…。
もしかしたら敵がいるのかもしれない。
私は身を屈めると辺りを見回した。
「ん?…あれは?」
誰かが立っている。
彼と同じほどの背丈に長い髪。
日が陰って来た為か、そのシルエットしか確認する事は出来ない。
一体誰なのだろうか。
彼女はこちらを見ると、森の奥に向かって駆け出した。
彼女は彼の仲間かも知れない。
あるいは村の子が迷子になってしまったのとか…。
私は少女の後を追いかけるが、彼女は逃げるばかりで一向に止まってくれる気配はなかった。
きっと向こうからも私の姿がちゃんと見えていないのだろう。
獣か何かと勘違いしているに違いない。
「大丈夫だよ!私は人間だから!こっちに来て!」
私の呼びかけに少女は振り返った。
私は安堵の息を吐くと、ゆっくりと少女に近づいていく。
…おかしいな。この距離でも姿がちゃんと見えないなんて。
私がそう感じた次の瞬間、少女は木の後ろに姿を隠した。
私は急いでその木まで走るが、そこに少女の姿は無い。
代わりにその場にはおどろおどろしい色だけが残っていた。
私はあまりの不気味さに身を引く。
不安から辺りを確認すれば後ろには拓けた空間が広がっていた。
不気味だ。
こんな鬱蒼とした森の中でここだけに木が生えていないなんて…。
そんな中、拓けた空間に見覚えのある物を見つけた。
あの薙刀だ。
薙刀は石の詰まれた塚のようなものの前に供えるようにして置いてあった。
一体誰がこんなところに置いたのだろうか。
しかし、今の私はそんな事はどうでも良かった。
縋るような思いでその薙刀を手に取る。
不安で不安で仕方がなかったのだ。
薙刀を握れば、当然私の色は吸い取られて行く。しかし、この圧倒的な力を手にすることで不安が幾分か和らいだ。
あの子は何だったのだろう。
この薙刀の在りかまで導いてくれた?
じゃあ私が追ってきた彼の色も誘導の一部?
分からない。分からないが、この薙刀をもって長く活動する事は出来ない。
私はすぐに山を下りようと踵を返す。
「…?」
何かが後ろで動いた気がした。
しかし、そこには塚しかない。
「!!!!」
塚が揺れた。
塚の下から何かが這い出てこようとしている。
塚の間から噴き出す禍々しい気配は、先ほどの少女と同じ色をしていた。
私は一目散に山を下りた。
この薙刀による身体強化をもってすればすぐに村まで下りる事は出来る。
私は何度も木やその根にぶつかり、つまずきながらも、必死に山を下った。
時折、先程の禍々しい色が辺りを漂う様子が見える。
もしかしたら先程の様な”モノ”が外に溢れ出しているのかもしれない。
そう思うと今までとは別の恐怖が私を襲った。
薪拾いに来ていた子どもたちは無事に帰れただろうか。
村には被害が及んでいないだろうか。
「母さん!!」
私はそれだけで頭がいっぱいになった。
あれ?体が軽い?
薙刀がいつもより私に力を貸してくれている。
…そうか、今の私が光っているから…。
光を纏った少女は日の落ちた森を駆け降りる。
その表情は少女とは思えない程に凛々しかった。
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