46 / 132
ダメ!それは私の!
第45話 コランと探求心
しおりを挟む
私達は今日も薪拾いに来ていた。
リリーちゃんは相変わらず誰に近づく事もないが、毎日欠かさず薪拾いには参加している。
「くらえ!」
「そうはいくか!」
近くでは男の子たちが拾った薪を振るって、剣士ごっこをしている。
「これ食べれるかな…」
「持って帰っておばあちゃんに聞いてみようか」
木のそばでは女の子たちが雨避け草を摘みながら相談をしていた。
普段は入る事の出来ない森に安全に入れる。
それは誰にとっても魅力的だったようで、日に日に参加する子どもたちの数が増えていた。
今となっては村の大半の子どもがこの薪拾いに参加している。
「今日はここまで!」
カクタスさんが傾き始めた日を睨み集合をかける。
その声に剣士ごっこをしていた男の子の片割れが振り向いた。
「隙あり!」
そんな彼の頭を棒で叩くもう一人の男の子。
当然そんな事をされたら相手も黙っているわけがなく…。
「てめぇ!ふざけんなよ!集合掛かってんだろ!」
そんな叫び声と共にやられた男の子もやり返す。
「こんにゃろ!やったな!」
後はもうただの殴り合いである。
泥だらけになって転がる二人を、囃し立てたり、止めに入ろうとしたり、ちょっとしたお祭り騒ぎになった。
「はぁ…」
カクタスさんは溜息と共に、疲れたように頭を押さえる。
連日、やれ迷子だ。やれ喧嘩だ。誰それが怪我をした。
もう、手に負えないと言った具合である。
それでも衛兵長であるカクタスさんがこの場に来ているのはリリーちゃんの為と、後継の指揮官を育てる為であるらしい。
前回、村の代表として外に出なければいけない状況に陥った際に、村を空ける事に危機感を感じたそうなのだ。
前々から後継さんを育てているという話は聞いていた。
カクタスさん曰く、才能はある。との事なのだが、私から見ても頼りない感じがする後継さん。
しかしその後継さん、自分に自信が無い為、カクタスさんが居ると頼りきりになってしまうらしいのだ。
これではいつまで経っても後衛さんが育たないと、カクタスさんは子どもたちの護衛を買って出て、村を程よく空けるようにしたのである。
…そんな話を子どもである私にするほどにカクタスさんは疲れている。
今も喧嘩を止める事を諦めて、丁度良い岩に腰かけてしまった。
私はスッとカクタスさんの隣に座ると、喧嘩の様子を眺める。
如何やら先に殴られた男の子の方が優勢である様だった。
「大変ですね…」
私がカクタスさんに声を掛けると、彼は俯いたまま「あぁ…」と答えた。
「私にもあの元気を少しは分けてもらいたいものだ」
喧嘩をしている少年たちを指しているのか。囃し立てる観衆を指しているのか。
まぁどちらもカクタスさんの元気を奪うばかりで、その願いは叶いそうにないが。
「ウォオオォン!」
私がカクタスさんに慰めの言葉をかけようとしていると、大きな狩人の遠吠えが響いてきた。
私達は驚き、声のした方向を一斉に振り向く。
もう喧嘩は止まっていた。
地面を蹴る音がだんだんと近づいてくる。
皆その音の主に気が付いてはいるのだが、本能的に体が強張ってしまうのだ。
すぐに森の奥で美しい白が光った。
その巨体は重みを感じさせない軽い足取りで、木々の間をすり抜る。
体色も相まって、冬に降り注ぐ絶望の奇跡の様にみえた。
彼らは見惚れる私達の目の前で足を止める。
「皆さん。そろそろ危険な時間帯になります。そう騒いでいると獣が寄ってきますよ」
その背中に当然のように乗っていた少年は皆に注意を促すと、こちらには目もむけず「では私はこれから狩りに向かうので」と言って去って行ってしまった。
その後には彼の色が残る。
…これは彼を知るまたとないチャンスだ。
私はカクタスさんの様子を横目で窺う。
未だに驚いたように硬直する彼。
私は今ならいける!と思った。
私はゆっくりとカクタスさんのそばから離れると色を追って駆け出した。
「すいません!カクタスさん!私、彼を追います!」
そう言い残すとおてんば少女は、またしても森の中に消えて行った。
カクタスさんの大きなため息が森に木霊したのは言うまでもない。
リリーちゃんは相変わらず誰に近づく事もないが、毎日欠かさず薪拾いには参加している。
「くらえ!」
「そうはいくか!」
近くでは男の子たちが拾った薪を振るって、剣士ごっこをしている。
「これ食べれるかな…」
「持って帰っておばあちゃんに聞いてみようか」
木のそばでは女の子たちが雨避け草を摘みながら相談をしていた。
普段は入る事の出来ない森に安全に入れる。
それは誰にとっても魅力的だったようで、日に日に参加する子どもたちの数が増えていた。
今となっては村の大半の子どもがこの薪拾いに参加している。
「今日はここまで!」
カクタスさんが傾き始めた日を睨み集合をかける。
その声に剣士ごっこをしていた男の子の片割れが振り向いた。
「隙あり!」
そんな彼の頭を棒で叩くもう一人の男の子。
当然そんな事をされたら相手も黙っているわけがなく…。
「てめぇ!ふざけんなよ!集合掛かってんだろ!」
そんな叫び声と共にやられた男の子もやり返す。
「こんにゃろ!やったな!」
後はもうただの殴り合いである。
泥だらけになって転がる二人を、囃し立てたり、止めに入ろうとしたり、ちょっとしたお祭り騒ぎになった。
「はぁ…」
カクタスさんは溜息と共に、疲れたように頭を押さえる。
連日、やれ迷子だ。やれ喧嘩だ。誰それが怪我をした。
もう、手に負えないと言った具合である。
それでも衛兵長であるカクタスさんがこの場に来ているのはリリーちゃんの為と、後継の指揮官を育てる為であるらしい。
前回、村の代表として外に出なければいけない状況に陥った際に、村を空ける事に危機感を感じたそうなのだ。
前々から後継さんを育てているという話は聞いていた。
カクタスさん曰く、才能はある。との事なのだが、私から見ても頼りない感じがする後継さん。
しかしその後継さん、自分に自信が無い為、カクタスさんが居ると頼りきりになってしまうらしいのだ。
これではいつまで経っても後衛さんが育たないと、カクタスさんは子どもたちの護衛を買って出て、村を程よく空けるようにしたのである。
…そんな話を子どもである私にするほどにカクタスさんは疲れている。
今も喧嘩を止める事を諦めて、丁度良い岩に腰かけてしまった。
私はスッとカクタスさんの隣に座ると、喧嘩の様子を眺める。
如何やら先に殴られた男の子の方が優勢である様だった。
「大変ですね…」
私がカクタスさんに声を掛けると、彼は俯いたまま「あぁ…」と答えた。
「私にもあの元気を少しは分けてもらいたいものだ」
喧嘩をしている少年たちを指しているのか。囃し立てる観衆を指しているのか。
まぁどちらもカクタスさんの元気を奪うばかりで、その願いは叶いそうにないが。
「ウォオオォン!」
私がカクタスさんに慰めの言葉をかけようとしていると、大きな狩人の遠吠えが響いてきた。
私達は驚き、声のした方向を一斉に振り向く。
もう喧嘩は止まっていた。
地面を蹴る音がだんだんと近づいてくる。
皆その音の主に気が付いてはいるのだが、本能的に体が強張ってしまうのだ。
すぐに森の奥で美しい白が光った。
その巨体は重みを感じさせない軽い足取りで、木々の間をすり抜る。
体色も相まって、冬に降り注ぐ絶望の奇跡の様にみえた。
彼らは見惚れる私達の目の前で足を止める。
「皆さん。そろそろ危険な時間帯になります。そう騒いでいると獣が寄ってきますよ」
その背中に当然のように乗っていた少年は皆に注意を促すと、こちらには目もむけず「では私はこれから狩りに向かうので」と言って去って行ってしまった。
その後には彼の色が残る。
…これは彼を知るまたとないチャンスだ。
私はカクタスさんの様子を横目で窺う。
未だに驚いたように硬直する彼。
私は今ならいける!と思った。
私はゆっくりとカクタスさんのそばから離れると色を追って駆け出した。
「すいません!カクタスさん!私、彼を追います!」
そう言い残すとおてんば少女は、またしても森の中に消えて行った。
カクタスさんの大きなため息が森に木霊したのは言うまでもない。
0
お気に入りに追加
9
あなたにおすすめの小説

元34才独身営業マンの転生日記 〜もらい物のチートスキルと鍛え抜いた処世術が大いに役立ちそうです〜
ちゃぶ台
ファンタジー
彼女いない歴=年齢=34年の近藤涼介は、プライベートでは超奥手だが、ビジネスの世界では無類の強さを発揮するスーパーセールスマンだった。
社内の人間からも取引先の人間からも一目置かれる彼だったが、不運な事故に巻き込まれあっけなく死亡してしまう。
せめて「男」になって死にたかった……
そんなあまりに不憫な近藤に神様らしき男が手を差し伸べ、近藤は異世界にて人生をやり直すことになった!
もらい物のチートスキルと持ち前のビジネスセンスで仲間を増やし、今度こそ彼女を作って幸せな人生を送ることを目指した一人の男の挑戦の日々を綴ったお話です!
魔法使いの国で無能だった少年は、魔物使いとして世界を救う旅に出る
ムーン
ファンタジー
完結しました!
魔法使いの国に生まれた少年には、魔法を扱う才能がなかった。
無能と蔑まれ、両親にも愛されず、優秀な兄を頼りに何年も引きこもっていた。
そんなある日、国が魔物の襲撃を受け、少年の魔物を操る能力も目覚める。
能力に呼応し現れた狼は少年だけを助けた。狼は少年を息子のように愛し、少年も狼を母のように慕った。
滅びた故郷を去り、一人と一匹は様々な国を渡り歩く。
悪魔の家畜として扱われる人間、退廃的な生活を送る天使、人との共存を望む悪魔、地の底に封印された堕天使──残酷な呪いを知り、凄惨な日常を知り、少年は自らの能力を平和のために使うと決意する。
悪魔との契約や邪神との接触により少年は人間から離れていく。対価のように精神がすり減り、壊れかけた少年に狼は寄り添い続けた。次第に一人と一匹の絆は親子のようなものから夫婦のようなものに変化する。
狂いかけた少年の精神は狼によって繋ぎ止められる。
やがて少年は数多の天使を取り込んで上位存在へと変転し、出生も狼との出会いもこれまでの旅路も……全てを仕組んだ邪神と対決する。

家族もチート!?な貴族に転生しました。
夢見
ファンタジー
月神 詩は神の手違いで死んでしまった…
そのお詫びにチート付きで異世界に転生することになった。
詩は異世界何を思い、何をするのかそれは誰にも分からない。
※※※※※※※※※
チート過ぎる転生貴族の改訂版です。
内容がものすごく変わっている部分と変わっていない部分が入り交じっております
※※※※※※※※※

称号チートで異世界ハッピーライフ!~お願いしたスキルよりも女神様からもらった称号がチートすぎて無双状態です~
しらかめこう
ファンタジー
「これ、スキルよりも称号の方がチートじゃね?」
病により急死した主人公、突然現れた女神によって異世界へと転生することに?!
女神から様々なスキルを授かったが、それよりも想像以上の効果があったチート称号によって超ハイスピードで強くなっていく。
そして気づいた時にはすでに世界最強になっていた!?
そんな主人公の新しい人生が平穏であるはずもなく、行く先々で様々な面倒ごとに巻き込まれてしまう...?!
しかし、この世界で出会った友や愛するヒロインたちとの幸せで平穏な生活を手に入れるためにどんな無理難題がやってこようと最強の力で無双する!主人公たちが平穏なハッピーエンドに辿り着くまでの壮大な物語。
異世界転生の王道を行く最強無双劇!!!
ときにのんびり!そしてシリアス。楽しい異世界ライフのスタートだ!!
小説家になろう、カクヨム等、各種投稿サイトにて連載中。毎週金・土・日の18時ごろに最新話を投稿予定!!

神様のミスで女に転生したようです
結城はる
ファンタジー
34歳独身の秋本修弥はごく普通の中小企業に勤めるサラリーマンであった。
いつも通り起床し朝食を食べ、会社へ通勤中だったがマンションの上から人が落下してきて下敷きとなってしまった……。
目が覚めると、目の前には絶世の美女が立っていた。
美女の話を聞くと、どうやら目の前にいる美女は神様であり私は死んでしまったということらしい
死んだことにより私の魂は地球とは別の世界に迷い込んだみたいなので、こっちの世界に転生させてくれるそうだ。
気がついたら、洞窟の中にいて転生されたことを確認する。
ん……、なんか違和感がある。股を触ってみるとあるべきものがない。
え……。
神様、私女になってるんですけどーーーー!!!
小説家になろうでも掲載しています。
URLはこちら→「https://ncode.syosetu.com/n7001ht/」

うっかり『野良犬』を手懐けてしまった底辺男の逆転人生
野良 乃人
ファンタジー
辺境の田舎街に住むエリオは落ちこぼれの底辺冒険者。
普段から無能だの底辺だのと馬鹿にされ、薬草拾いと揶揄されている。
そんなエリオだが、ふとした事がきっかけで『野良犬』を手懐けてしまう。
そこから始まる底辺落ちこぼれエリオの成り上がりストーリー。
そしてこの世界に存在する宝玉がエリオに力を与えてくれる。
うっかり野良犬を手懐けた底辺男。冒険者という枠を超え乱世での逆転人生が始まります。
いずれは王となるのも夢ではないかも!?
◇世界観的に命の価値は軽いです◇
カクヨムでも同タイトルで掲載しています。

【完結】義妹とやらが現れましたが認めません。〜断罪劇の次世代たち〜
福田 杜季
ファンタジー
侯爵令嬢のセシリアのもとに、ある日突然、義妹だという少女が現れた。
彼女はメリル。父親の友人であった彼女の父が不幸に見舞われ、親族に虐げられていたところを父が引き取ったらしい。
だがこの女、セシリアの父に欲しいものを買わせまくったり、人の婚約者に媚を打ったり、夜会で非常識な言動をくり返して顰蹙を買ったりと、どうしようもない。
「お義姉さま!」 . .
「姉などと呼ばないでください、メリルさん」
しかし、今はまだ辛抱のとき。
セシリアは来たるべき時へ向け、画策する。
──これは、20年前の断罪劇の続き。
喜劇がくり返されたとき、いま一度鉄槌は振り下ろされるのだ。
※ご指摘を受けて題名を変更しました。作者の見通しが甘くてご迷惑をおかけいたします。
旧題『義妹ができましたが大嫌いです。〜断罪劇の次世代たち〜』
※初投稿です。話に粗やご都合主義的な部分があるかもしれません。生あたたかい目で見守ってください。
※本編完結済みで、毎日1話ずつ投稿していきます。
元邪神って本当ですか!? 万能ギルド職員の業務日誌
紫南
ファンタジー
十二才の少年コウヤは、前世では病弱な少年だった。
それは、その更に前の生で邪神として倒されたからだ。
今世、その世界に再転生した彼は、元家族である神々に可愛がられ高い能力を持って人として生活している。
コウヤの現職は冒険者ギルドの職員。
日々仕事を押し付けられ、それらをこなしていくが……?
◆◆◆
「だって武器がペーパーナイフってなに!? あれは普通切れないよ!? 何切るものかわかってるよね!?」
「紙でしょ? ペーパーって言うし」
「そうだね。正解!」
◆◆◆
神としての力は健在。
ちょっと天然でお人好し。
自重知らずの少年が今日も元気にお仕事中!
◆気まぐれ投稿になります。
お暇潰しにどうぞ♪
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる