Grow 〜異世界群像成長譚〜

おっさん。

文字の大きさ
上 下
44 / 132
ダメ!それは私の!

第43話 コランと嫉妬

しおりを挟む
 カクタスさんの感じた難しいと言う感情。
 きっと一昔前の私なら共感できなかっただろう。

「私も成長してるのかな」

 誰に言うでもなく小さく呟く。
 これは彼のおかげで成長できた私だ。そう思うと、少し口角が上がるのを感じた。

 これからも彼と成長していきたい。
 彼の垣間見せた、幼い部分を支えて行きたい。
 その為にはもっと強くならなくちゃ。

 そう思うと、力がみなぎってきた。

 そうだ、私はただ彼と一緒にいたいわけじゃない。力になって、お互いを支え合えるような関係になりたいんだ。
 そうなる為にはもっと!

 決意と共に目を見開いた瞬間、自身の放った光に目が眩んだ。

 カクタスさんは気に留めた様子もないので、私だけに見える光なのだろう。

 この光は以前にも見た事がある。
 母さんが私を抱きしめながら叱った時や、リリーちゃんが彼を助けた時だ。

 そして彼がリリーちゃんに渡したペンダント。
 あのペンダントに特殊な効果を付ける時、使っていたのも似たように光だった。

 私がそんな事を考えている内に、光はみるみる収まっていく。

 待って!ダメ!その力が必要なの!

 私が強く思うと光はまた輝きを取り戻した。

 しかし気を抜けばすぐに消えてしまう。
 それを何度か繰り返している内に、私は疲れて光を出せなくなってしまった。

 ただ、光を何度も出して分かった事がある。
 これは想いの強さなのだ。強く想えば想うほど光が強くなる。

 何度も行っていると集中力が切れて使えなくなってしまうが、出し方さえわかればこっちのものだ。

 きっとあの薙刀はこの光を無理やり引き出して力に替えていたのだろう。
 だからあれほどの力が出た。

 そしてこの力を無理にすべて出し切ろうとすれば、あの時の様に意識を失ってしまう。

 …いや、もっと酷い事になるかもしれない。

 あの時は私の体が今生きる事以外のすべてを否定したような気がした。
 つまり、力不足になっていたわけだ。

 加えて、母さんが「適性があって良かった」と言っていた事と合わせて察するに、すべて力を使い干せば、最悪、死んでしまう。

 疲れた段階で集中が切れ、光が出せなくなるので問題はないと思う。
 しかし、あの薙刀の様な例外もあるのだ。覚えておいて損はないだろう。

 当面の目標は光を安定して出す事。
 そして、その次は彼の様に光を操れるようになって…。

 そこまで行けば彼に教えをうのも良いかもしれない。
 それこそ親しくなる良い口実こうじつにもなりそうだ。

 そうなれば彼と支え合う関係になる事も…。
 私はそんな未来を想像して、頬が緩むのを感じる。

 と、気づけばもう森の入り口だった。

 森に入ればカクタスさんが見守る中、薪拾いが開始される。
 リリーちゃんも他の子ども達から少し離れた所で、薪を拾い始めた。

 少しずつカクタスさんから離れていくリリーちゃん。
 しかし不安なのか、何度も顔を上げ、カクタスさんの姿を確認している。

 その様子は小動物のようでとても可愛らしかったが、意志の光は誰よりも強く輝いていた。

 何故それほどまでに輝き続けられるのだろうか。

 そんな私の考えを嘲笑あざわらうように、彼女の輝きに共鳴したペンダントが光っていた。

 …いいなぁ。
 私は唯々そう思った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

あの味噌汁の温かさ、焼き魚の香り、醤油を使った味付け——異世界で故郷の味をもとめてつきすすむ!

ねむたん
ファンタジー
私は砂漠の町で家族と一緒に暮らしていた。そのうち前世のある記憶が蘇る。あの日本の味。温かい味噌汁、焼き魚、醤油で整えた料理——すべてが懐かしくて、恋しくてたまらなかった。 私はその気持ちを家族に打ち明けた。前世の記憶を持っていること、そして何より、あの日本の食文化が恋しいことを。家族は私の決意を理解し、旅立ちを応援してくれた。私は幼馴染のカリムと共に、異国の地で新しい食材や文化を探しに行くことに。

元邪神って本当ですか!? 万能ギルド職員の業務日誌

紫南
ファンタジー
十二才の少年コウヤは、前世では病弱な少年だった。 それは、その更に前の生で邪神として倒されたからだ。 今世、その世界に再転生した彼は、元家族である神々に可愛がられ高い能力を持って人として生活している。 コウヤの現職は冒険者ギルドの職員。 日々仕事を押し付けられ、それらをこなしていくが……? ◆◆◆ 「だって武器がペーパーナイフってなに!? あれは普通切れないよ!? 何切るものかわかってるよね!?」 「紙でしょ? ペーパーって言うし」 「そうだね。正解!」 ◆◆◆ 神としての力は健在。 ちょっと天然でお人好し。 自重知らずの少年が今日も元気にお仕事中! ◆気まぐれ投稿になります。 お暇潰しにどうぞ♪

異世界大使館はじめます

あかべこ
ファンタジー
外務省の窓際官僚・真柴春彦は異世界に新たに作られる大使館の全権特任大使に任命されることになるが、同じように派遣されることになった自衛官の木栖は高校時代からの因縁の相手だった。同じように訳ありな仲間たちと異世界での外交活動を開始するが異世界では「外交騎士とは夫婦でなるもの」という暗黙の了解があったため真柴と木栖が同性の夫婦と勘違いされてしまい、とりあえずそれで通すことになり……?! チート・俺TUEEE成分なし。異性愛や男性同士や女性同士の恋愛、獣人と人間の恋愛アリ。 不定期更新。表紙はかんたん表紙メーカーで作りました。 作中の法律や料理についての知識は、素人が書いてるので生ぬるく読んでください。 カクヨム版ありますhttps://kakuyomu.jp/works/16817330651028845416 一緒に読むと楽しいスピンオフhttps://www.alphapolis.co.jp/novel/2146286/633604170 同一世界線のはなしhttps://www.alphapolis.co.jp/novel/2146286/905818730 https://www.alphapolis.co.jp/novel/2146286/687883567

ソロ冒険者のぶらり旅~悠々自適とは無縁な日々~

にくなまず
ファンタジー
今年から冒険者生活を開始した主人公で【ソロ】と言う適正のノア(15才)。 その適正の為、戦闘・日々の行動を基本的に1人で行わなければなりません。 そこで元上級冒険者の両親と猛特訓を行い、チート級の戦闘力と数々のスキルを持つ事になります。 『悠々自適にぶらり旅』 を目指す″つもり″の彼でしたが、開始早々から波乱に満ちた冒険者生活が待っていました。

元34才独身営業マンの転生日記 〜もらい物のチートスキルと鍛え抜いた処世術が大いに役立ちそうです〜

ちゃぶ台
ファンタジー
彼女いない歴=年齢=34年の近藤涼介は、プライベートでは超奥手だが、ビジネスの世界では無類の強さを発揮するスーパーセールスマンだった。 社内の人間からも取引先の人間からも一目置かれる彼だったが、不運な事故に巻き込まれあっけなく死亡してしまう。 せめて「男」になって死にたかった…… そんなあまりに不憫な近藤に神様らしき男が手を差し伸べ、近藤は異世界にて人生をやり直すことになった! もらい物のチートスキルと持ち前のビジネスセンスで仲間を増やし、今度こそ彼女を作って幸せな人生を送ることを目指した一人の男の挑戦の日々を綴ったお話です!

30代社畜の私が1ヶ月後に異世界転生するらしい。

ひさまま
ファンタジー
 前世で搾取されまくりだった私。  魂の休養のため、地球に転生したが、地球でも今世も搾取されまくりのため魂の消滅の危機らしい。  とある理由から元の世界に戻るように言われ、マジックバックを自称神様から頂いたよ。  これで地球で買ったものを持ち込めるとのこと。やっぱり夢ではないらしい。  取り敢えず、明日は退職届けを出そう。  目指せ、快適異世界生活。  ぽちぽち更新します。  作者、うっかりなのでこれも買わないと!というのがあれば教えて下さい。  脳内の空想を、つらつら書いているのでお目汚しな際はごめんなさい。

ある公爵令嬢の生涯

ユウ
恋愛
伯爵令嬢のエステルには妹がいた。 妖精姫と呼ばれ両親からも愛され周りからも無条件に愛される。 婚約者までも妹に奪われ婚約者を譲るように言われてしまう。 そして最後には妹を陥れようとした罪で断罪されてしまうが… 気づくとエステルに転生していた。 再び前世繰り返すことになると思いきや。 エステルは家族を見限り自立を決意するのだが… *** タイトルを変更しました!

転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。

克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります! 辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。

処理中です...