Grow 〜異世界群像成長譚〜

おっさん。

文字の大きさ
上 下
37 / 132
まだなの?

第36話 コランと初恋

しおりを挟む
 また濃くなった…。

 私はカーネちゃんの色を見て顔をしかめめる。
 上手くは言えないが良くない色だ。

 私といる時もこのような色になる事は多かったが、これほどじゃなかった。
 それに暖かい色も混ざっていたように思う。

 比べて今の色は真っ黒だ。
 ドロドロとして、今にもあふれ出し、全てを飲み込んでしまいそうな…。
 悪と言って差しつかえない見た目をしている。

 対して王子様を見ればんだ光が綺麗にまとめられ、宝石のような美しさをかもし出していた。

 まれに赤や青など淡く色が入ることもあるが、すぐに透明な光にその身を溶かして霧散むさんしてしまう。

 その光に触れれば私も存在ごとかき消されてしまう様な。それでいてあまりの美しさに不意に手を触れてしまいそうな。
 危険な魅力を感じる。

 リリーちゃんを気にしつつも、カーネと楽しそうに話す王子様。
 その仮面の下はどうなっているのだろう。
 私は彼の事が知りたくてたまらなかった。

 何故そんなに強いのか。
 何故そんなに物知りなのか。
 何故そんなに頭が良いのか。
 何故そんなに優しいのか。
 彼の全てを知りたい。そして…あわよくば私だけのものにしたい。

 そんなおこがましい事を考えて頭を振る。
 彼は私なんかにどうこう出来る存在ではない。下心を見せて嫌われる事だけはけなくては…。

 しかし考えてしまう。あの優しさが私だけに向けられたらどんなに幸せだろうかと。
 その為なら私は何でもしてしまうのではないかと。

 チラッとカーネちゃんに目を向けた。
 あの黒いドロドロはそういうものなのかもしれない。と。

 そうなるとカーネとはライバルになるわけだが…。
 相手が王子様だ。それは仕方のない事だろう。

 うらみっこなしだよ!とカーネに視線を送るが、王子様との話に夢中なようでこちらに振り向きもしない。

 私は不貞腐ふてくされそうになるが、すぐに気が付いた。
 既に勝負は始まっているのだ。と。

 私は王子様に助けられたというアドバンテージがあるが、それはリリーちゃんを助けたのと同様に、王子様の中では当たり前の事なのだ。
 周りに対する威圧いあつにはなっても、彼の眼中がんちゅうには入らない。

 どうすれば彼は私に興味を持ってくれるのだろう。
 どうすれば私は魅力的に映るのだろう。
 それを知るためには彼をもっと知らなければならなかった。

 私はカーネと王子様の話に真剣に耳をかたむける。
 少しでも王子様の情報を得るために。

 仮令たとえ親友であろうと、王子様は渡さない。
 王子様は私の物なんだから!

 そう思った時、カーネちゃんの黒いドロドロが、私の中の何かと共鳴したような気がした。

 カーネちゃんもそれに気が付いたのか、こちらに目を向ける。
 私はカーネちゃんを威嚇いかくするように睨むが、彼女は余裕ぶった表情でそれに答えた。

 ここからは女の戦いだ。親友なんて関係ない。
 最後に彼を振り向かせた方の勝ちなのだ。

 私達は再び王子に向き直り、話しかける。
 王子様は先程までと違う私たちの気迫きはくに戸惑っているようだったが、逃げ場はなかった。

 焦る王子は次々と心の仮面を落としていく。

「王子様?そんな仮面をしていて息苦しくありませんか?私が持っていてあげますよ」

 そう言って私は王子の最後の仮面に手をかけた。

 誰よりも強いはずの王子は、子どもの様におびえるばかり。
 私達は追剥おいはぎの様に彼の仮面をすべて外してしまった。

 仮面の下から覗いた、怯える様なおさない顔。
 それは私の心を今までとは違う方向にときめかせる。

 彼は何処どこまで行っても魅力的だった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】義妹とやらが現れましたが認めません。〜断罪劇の次世代たち〜

福田 杜季
ファンタジー
侯爵令嬢のセシリアのもとに、ある日突然、義妹だという少女が現れた。 彼女はメリル。父親の友人であった彼女の父が不幸に見舞われ、親族に虐げられていたところを父が引き取ったらしい。 だがこの女、セシリアの父に欲しいものを買わせまくったり、人の婚約者に媚を打ったり、夜会で非常識な言動をくり返して顰蹙を買ったりと、どうしようもない。 「お義姉さま!」           . . 「姉などと呼ばないでください、メリルさん」 しかし、今はまだ辛抱のとき。 セシリアは来たるべき時へ向け、画策する。 ──これは、20年前の断罪劇の続き。 喜劇がくり返されたとき、いま一度鉄槌は振り下ろされるのだ。 ※ご指摘を受けて題名を変更しました。作者の見通しが甘くてご迷惑をおかけいたします。 旧題『義妹ができましたが大嫌いです。〜断罪劇の次世代たち〜』 ※初投稿です。話に粗やご都合主義的な部分があるかもしれません。生あたたかい目で見守ってください。 ※本編完結済みで、毎日1話ずつ投稿していきます。

弱小デイトレーダーが異世界に来たら、いきなりチート投資家になったのです。

comsick
ファンタジー
フルダイブ型VR✕異世界転生✕お仕事・ビジネス系=全乗っけ型小説。 ★電脳空間に飛び込んだ弱小デイトレーダーによる、現在ファンタジー ★企業分析が得意なエルフ。 ★ハイファンタジー?剣と魔法?株式投資?マネタイズ? ★幻想的な世界観と、ただのリアル。 投資のことを全く知らなくても楽しめます。でもって、ちょっとだけ投資の勉強にもなったりします。。。

異世界に来ちゃったよ!?

いがむり
ファンタジー
235番……それが彼女の名前。記憶喪失の17歳で沢山の子どもたちと共にファクトリーと呼ばれるところで楽しく暮らしていた。 しかし、現在森の中。 「とにきゃく、こころこぉ?」 から始まる異世界ストーリー 。 主人公は可愛いです! もふもふだってあります!! 語彙力は………………無いかもしれない…。 とにかく、異世界ファンタジー開幕です! ※不定期投稿です…本当に。 ※誤字・脱字があればお知らせ下さい (※印は鬱表現ありです)

俺の幼馴染みが悪役令嬢なはずないんだが

ムギ。
ファンタジー
悪役令嬢? なにそれ。 乙女ゲーム? 知らない。 そんな元社会人ゲーマー転生者が、空気読まずに悪役令嬢にベタぼれして、婚約破棄された悪役令嬢に求婚して、乙女ゲーム展開とは全く関係なく悪役令嬢と結婚して幸せになる予定です。 一部に流血描写、微グロあり。

異世界でゆるゆるスローライフ!~小さな波乱とチートを添えて~

イノナかノかワズ
ファンタジー
 助けて、刺されて、死亡した主人公。神様に会ったりなんやかんやあったけど、社畜だった前世から一転、ゆるいスローライフを送る……筈であるが、そこは知識チートと能力チートを持った主人公。波乱に巻き込まれたりしそうになるが、そこはのんびり暮らしたいと持っている主人公。波乱に逆らい、世界に名が知れ渡ることはなくなり、知る人ぞ知る感じに収まる。まぁ、それは置いといて、主人公の新たな人生は、温かな家族とのんびりした自然、そしてちょっとした研究生活が彩りを与え、幸せに溢れています。  *話はとてもゆっくりに進みます。また、序盤はややこしい設定が多々あるので、流しても構いません。  *他の小説や漫画、ゲームの影響が見え隠れします。作者の願望も見え隠れします。ご了承下さい。  *頑張って週一で投稿しますが、基本不定期です。  *無断転載、無断翻訳を禁止します。   小説家になろうにて先行公開中です。主にそっちを優先して投稿します。 カクヨムにても公開しています。 更新は不定期です。

悪役転生の後日談~破滅ルートを回避したのに、何故か平穏が訪れません~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
ある日、王太子であるアルス-アスカロンは記憶を取り戻す。 それは自分がゲームのキャラクターである悪役だということに。 気づいた時にはすでに物語は進行していたので、慌てて回避ルートを目指す。 そして、無事に回避できて望み通りに追放されたが……そこは山賊が跋扈する予想以上に荒れ果てた土地だった。 このままではスローライフができないと思い、アルスは己の平穏(スローライフ)を邪魔する者を排除するのだった。 これは自分が好き勝手にやってたら、いつの間か周りに勘違いされて信者を増やしてしまう男の物語である。

転生した愛し子は幸せを知る

ひつ
ファンタジー
【連載再開】  長らくお待たせしました!休載状態でしたが今月より復帰できそうです(手術後でまだリハビリ中のため不定期になります)。これからもどうぞ宜しくお願いします(^^) ♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢  宮月 華(みやつき はな) は死んだ。華は死に間際に「誰でもいいから私を愛して欲しかったな…」と願った。  次の瞬間、華は白い空間に!!すると、目の前に男の人(?)が現れ、「新たな世界で愛される幸せを知って欲しい!」と新たな名を貰い、過保護な神(パパ)にスキルやアイテムを貰って旅立つことに!    転生した女の子が周りから愛され、幸せになるお話です。  結構ご都合主義です。作者は語彙力ないです。  第13回ファンタジー大賞 176位  第14回ファンタジー大賞 76位  第15回ファンタジー大賞 70位 ありがとうございます(●´ω`●)

屑スキルが覚醒したら追放されたので、手伝い屋を営みながら、のんびりしてたのに~なんか色々たいへんです

わたなべ ゆたか
ファンタジー
タムール大陸の南よりにあるインムナーマ王国。王都タイミョンの軍事訓練場で、ランド・コールは軍に入るための最終試験に挑む。対戦相手は、《ダブルスキル》の異名を持つゴガルン。 対するランドの持つ《スキル》は、左手から棘が一本出るだけのもの。 剣技だけならゴガルン以上を自負するランドだったが、ゴガルンの《スキル》である〈筋力増強〉と〈遠当て〉に翻弄されてしまう。敗北する寸前にランドの《スキル》が真の力を発揮し、ゴガルンに勝つことができた。だが、それが原因で、ランドは王都を追い出されてしまった。移住した村で、〝手伝い屋〟として、のんびりとした生活を送っていた。だが、村に来た領地の騎士団に所属する騎馬が、ランドの生活が一変する切っ掛けとなる――。チート系スキル持ちの主人公のファンタジーです。楽しんで頂けたら、幸いです。 よろしくお願いします! (7/15追記  一晩でお気に入りが一気に増えておりました。24Hポイントが2683! ありがとうございます!  (9/9追記  三部の一章-6、ルビ修正しました。スイマセン (11/13追記 一章-7 神様の名前修正しました。 追記 異能(イレギュラー)タグを追加しました。これで検索しやすくなるかな……。

処理中です...