36 / 132
まだなの?
第35話 カーネと野望
しおりを挟む
私はコンコンと妹の部屋の扉をノックする。
しかし、いつまで経っても返事は帰ってこなかった。
「リリー?開けるよ?」
仕方なくゆっくりと扉を開け、その隙間から部屋の中を確認する。
辺りには色々な物が散乱していた。
「リリー?」
少し警戒しながら部屋の扉を開き切ると、布団が妙に膨らんでいるのを発見した。
如何やらそこに隠れているらしい。
一瞬、何かの事件に巻き込まれたのかと思いヒヤッとした。
胸を撫で下ろして布団に近づくと、その場でしゃがみ込む。
「リリー。お客さんだよ」
声を掛けてみるが返事はない。
…しかしピクリともしないという事はどういう事だろうか。
臆病なリリーであればビクついたり、逃げだしたりするはずである。
「リリー?」
私が布団を少し捲ると、そこには胸に手を当て、息苦しそうに激しく息をするリリーの姿があった。
「リリー?!」
私はすぐに布団を剥すと、妹の体を揺すった。
その顔は真っ青で今にも死んでしまいそうだった。
焦る私の声を聴いてか、コランと仮面の少年も扉の縁からこちらを覗き込む。
「どうしたの?」
少年の言葉が耳に入ると、焦りでいっぱいだった私の頭に知性が戻った。
そうだ。この少年ならなんとかできるかもしれない。
「リリーが!妹の様子がおかしいんだ!」
それを聞いた少年とコランは急いでこちらにかけてくる。
そしてリリーの様子を見た少年はおもむろに布団で妹の顔を覆った。
息苦しそうにしている妹の顔をである。
「お前!何を!」
私は少年をつき飛ばそうとするが、しゃがみこんだ少年はびくともしなかった。
その感覚はまるで岩を押しているようで、まるで動かせる気がしない。
ならば刃物で。と懐に手を伸ばしたところでコランに肩を掴まれる。
「落ち着いて!大丈夫!彼が変な事をするはずがないわ!…それに、ほら、段々リリーちゃんの呼吸が落ち着いて来てる」
コランに言われた通り、妹の様子をよく観察してみると、荒かった胸の動きがだんだんと落ち着いて来ていた。
しばらくするとリリーの呼吸は正常に戻り、それを見た少年が安堵の息を吐く。
そしてすぐに布団を妹の顔から取り払うと、妹の汗を懐から出した布で拭った。
私も安らかに息をして眠る妹の姿を見て安堵する。
一時はどうなる事かと思ったが、彼がいなければ妹を救う事は出来なかっただろう。
「すまなかった…。ありがとう」
私がお礼を言うと、彼は「いえいえ」と、笑顔で答え「こちらも勘違いをさせるような行動をとってしまい申し訳ありませんでした」と続けた。
彼は相当な御人好しらしい。
…これなら付け入る隙は十分にありそうだった。
私は再度「ありがとう」と彼に礼を言うと、リリーの容態を軸に、他愛もない話と混ぜ込んで、彼の事を聞きだしていく。
彼は本当に無防備だった。力と知識こそあれど、私の言葉は鵜呑みにし、私の聞いた事はぺらぺらと喋った。
よくこんな子どもが今まで生きてこれたと思う。
本当に力と知識だけで生き残ってきたのだとすればこんなに使える駒は無いと思った。
欲しい。手に入れたい。使いたい。私の頭をそんな感情が駆け巡る。
何のため?勿論妹の為だ。
妹と私が安心して安全な場所で暮らすため。その為には彼が必要なのだ。
勿論彼を害すつもりもない。
その庇護下に置いてもらえば、お零れを貰えればそれで十分なのだ。
私は彼に心から感謝しつつ、その甘美な香りに舌なめずりをする。
絶対に逃がさない。私の、私達の獲物なのだから。
しかし、いつまで経っても返事は帰ってこなかった。
「リリー?開けるよ?」
仕方なくゆっくりと扉を開け、その隙間から部屋の中を確認する。
辺りには色々な物が散乱していた。
「リリー?」
少し警戒しながら部屋の扉を開き切ると、布団が妙に膨らんでいるのを発見した。
如何やらそこに隠れているらしい。
一瞬、何かの事件に巻き込まれたのかと思いヒヤッとした。
胸を撫で下ろして布団に近づくと、その場でしゃがみ込む。
「リリー。お客さんだよ」
声を掛けてみるが返事はない。
…しかしピクリともしないという事はどういう事だろうか。
臆病なリリーであればビクついたり、逃げだしたりするはずである。
「リリー?」
私が布団を少し捲ると、そこには胸に手を当て、息苦しそうに激しく息をするリリーの姿があった。
「リリー?!」
私はすぐに布団を剥すと、妹の体を揺すった。
その顔は真っ青で今にも死んでしまいそうだった。
焦る私の声を聴いてか、コランと仮面の少年も扉の縁からこちらを覗き込む。
「どうしたの?」
少年の言葉が耳に入ると、焦りでいっぱいだった私の頭に知性が戻った。
そうだ。この少年ならなんとかできるかもしれない。
「リリーが!妹の様子がおかしいんだ!」
それを聞いた少年とコランは急いでこちらにかけてくる。
そしてリリーの様子を見た少年はおもむろに布団で妹の顔を覆った。
息苦しそうにしている妹の顔をである。
「お前!何を!」
私は少年をつき飛ばそうとするが、しゃがみこんだ少年はびくともしなかった。
その感覚はまるで岩を押しているようで、まるで動かせる気がしない。
ならば刃物で。と懐に手を伸ばしたところでコランに肩を掴まれる。
「落ち着いて!大丈夫!彼が変な事をするはずがないわ!…それに、ほら、段々リリーちゃんの呼吸が落ち着いて来てる」
コランに言われた通り、妹の様子をよく観察してみると、荒かった胸の動きがだんだんと落ち着いて来ていた。
しばらくするとリリーの呼吸は正常に戻り、それを見た少年が安堵の息を吐く。
そしてすぐに布団を妹の顔から取り払うと、妹の汗を懐から出した布で拭った。
私も安らかに息をして眠る妹の姿を見て安堵する。
一時はどうなる事かと思ったが、彼がいなければ妹を救う事は出来なかっただろう。
「すまなかった…。ありがとう」
私がお礼を言うと、彼は「いえいえ」と、笑顔で答え「こちらも勘違いをさせるような行動をとってしまい申し訳ありませんでした」と続けた。
彼は相当な御人好しらしい。
…これなら付け入る隙は十分にありそうだった。
私は再度「ありがとう」と彼に礼を言うと、リリーの容態を軸に、他愛もない話と混ぜ込んで、彼の事を聞きだしていく。
彼は本当に無防備だった。力と知識こそあれど、私の言葉は鵜呑みにし、私の聞いた事はぺらぺらと喋った。
よくこんな子どもが今まで生きてこれたと思う。
本当に力と知識だけで生き残ってきたのだとすればこんなに使える駒は無いと思った。
欲しい。手に入れたい。使いたい。私の頭をそんな感情が駆け巡る。
何のため?勿論妹の為だ。
妹と私が安心して安全な場所で暮らすため。その為には彼が必要なのだ。
勿論彼を害すつもりもない。
その庇護下に置いてもらえば、お零れを貰えればそれで十分なのだ。
私は彼に心から感謝しつつ、その甘美な香りに舌なめずりをする。
絶対に逃がさない。私の、私達の獲物なのだから。
0
お気に入りに追加
9
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
平凡冒険者のスローライフ
上田なごむ
ファンタジー
26歳独身動物好きの主人公大和希は、神様によって魔物・魔法・獣人等ファンタジーな世界観の異世界に転移させられる。
平凡な能力値、野望など抱いていない彼は、冒険者としてスローライフを目標に日々を過ごしていく。
果たして、彼を待ち受ける出会いや試練は如何なるものか……
ファンタジー世界に向き合う、平凡な冒険者の物語。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

チートがちと強すぎるが、異世界を満喫できればそれでいい
616號
ファンタジー
不慮の事故に遭い異世界に転移した主人公アキトは、強さや魔法を思い通り設定できるチートを手に入れた。ダンジョンや迷宮などが数多く存在し、それに加えて異世界からの侵略も日常的にある世界でチートすぎる魔法を次々と編み出して、自由にそして気ままに生きていく冒険物語。
異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜
KeyBow
ファンタジー
間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。
何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。
召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!
しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・
いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。
その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。
上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。
またぺったんこですか?・・・
婚約破棄されましたが、帝国皇女なので元婚約者は投獄します
けんゆう
ファンタジー
「お前のような下級貴族の養女など、もう不要だ!」
五年間、婚約者として尽くしてきたフィリップに、冷たく告げられたソフィア。
他の貴族たちからも嘲笑と罵倒を浴び、社交界から追放されかける。
だが、彼らは知らなかった――。
ソフィアは、ただの下級貴族の養女ではない。
そんな彼女の元に届いたのは、隣国からお兄様が、貿易利権を手土産にやってくる知らせ。
「フィリップ様、あなたが何を捨てたのかーー思い知らせて差し上げますわ!」
逆襲を決意し、華麗に着飾ってパーティーに乗り込んだソフィア。
「妹を侮辱しただと? 極刑にすべきはお前たちだ!」
ブチギレるお兄様。
貴族たちは青ざめ、王国は崩壊寸前!?
「ざまぁ」どころか 国家存亡の危機 に!?
果たしてソフィアはお兄様の暴走を止め、自由な未来を手に入れられるか?
「私の未来は、私が決めます!」
皇女の誇りをかけた逆転劇、ここに開幕!

屑スキルが覚醒したら追放されたので、手伝い屋を営みながら、のんびりしてたのに~なんか色々たいへんです
わたなべ ゆたか
ファンタジー
タムール大陸の南よりにあるインムナーマ王国。王都タイミョンの軍事訓練場で、ランド・コールは軍に入るための最終試験に挑む。対戦相手は、《ダブルスキル》の異名を持つゴガルン。
対するランドの持つ《スキル》は、左手から棘が一本出るだけのもの。
剣技だけならゴガルン以上を自負するランドだったが、ゴガルンの《スキル》である〈筋力増強〉と〈遠当て〉に翻弄されてしまう。敗北する寸前にランドの《スキル》が真の力を発揮し、ゴガルンに勝つことができた。だが、それが原因で、ランドは王都を追い出されてしまった。移住した村で、〝手伝い屋〟として、のんびりとした生活を送っていた。だが、村に来た領地の騎士団に所属する騎馬が、ランドの生活が一変する切っ掛けとなる――。チート系スキル持ちの主人公のファンタジーです。楽しんで頂けたら、幸いです。
よろしくお願いします!
(7/15追記
一晩でお気に入りが一気に増えておりました。24Hポイントが2683! ありがとうございます!
(9/9追記
三部の一章-6、ルビ修正しました。スイマセン
(11/13追記 一章-7 神様の名前修正しました。
追記 異能(イレギュラー)タグを追加しました。これで検索しやすくなるかな……。
楽園の天使
飛永ハヅム
ファンタジー
女の子命で、女の子の笑顔が大好きな男子高校生、大居乱世。
転校初日にして学校中のほとんどの女子生徒と顔見知りになっていた乱世の前に、見たことがないほどの美少女、久由良秋葉が現れる。
何故か周りに人を寄せ付けない秋葉に興味を持った乱世は、強引にアプローチを始める。
やがてそのことをきっかけに、乱世はこの地域で起きているとある事件に巻き込まれていくこととなる。
全14話完結。
よろしければ、お気に入り登録や感想お願いいたします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる