32 / 132
まだなの?
第31話 メグルとお祭り騒ぎ
しおりを挟む
あのお祭りのような騒ぎは空が夕焼けに染まるまで続けられた。
最後の方にはいつの間にか子どもたちまで参加していて…。
大人たちを窘めてくれていた。
本当に助かった。
村の人たちとも話をしたが、まだこの村は教会の教えが浸透していないのか、黒髪をあまり気にした様子がなかった。
それどころか黒髪の姉妹が住んでいると聞いた時は心底驚いた。
その子の親は警備の仕事でこの騒ぎには参加しておらず、妹も人見知りだという事で、姉であるカーネと言う子にしか会えなかったのは誠に残念な事態ではあるが…。
しかしカーネと言う少女が違和感なく村に溶け込んでいる様子を見ると、本当に皆に愛されているようで…。
嬉しく思う反面、ちょっともやもやした気持ちになってしまった。
その後も、ミランさんから娘さんと共に、改めてお礼をされたり、酒場を経営するおじさんに絡《から》まれたり、大変だった。
そうこうしている内に…。やってしまった。
森の入り口に着く頃には日が完全に沈んでしまったのである。
当たり前のことだが、夜の森は危険だ。
そして村人の話によると森の浅い部分で獣が密集し、凶暴化しているのだという。
そのせいで畑は荒らされ、森にも入れず食べ物に困っていた所、僕が現れたと言う訳だ。
しかも本来は山奥にいる大喰らいと呼ばれる熊まで山を下りてきているらしく、いつ村に降りてくるか心配していた為、大量の熊皮を見せた時は感謝された。
その時の僕の顔ときたら…。とってつけたような笑顔だったに違いない。
なんせ、その主な原因は僕達家族にあるのだから。
一言で言うなら暴れまわりすぎました。すいません。という事だ。
村の事なんて全く考えていなかったし、自分たちがそれほど森に影響を与えている感覚もなかった。
危うく村一つ潰すところだったのかと思うと冷や汗が出てきた。
話を戻すが、この辺りの森は今、危険地帯なのである。
姉さんたちとの夜の狩りでも、獣に不意を突かれてヒヤッとする事がある。
そんな奴が、危険地帯を魔導車という良い的で、一人突っ切るのはどう考えても無理があるのだ。
でも、連絡なく帰らない場合に起る母さんの癇癪を想像するのも無理があるのだ。
無理がるのだよ…。
想像するだけで鬱になりかけるので、気持ちを切り替えると、森の中に車を進める。
姉さんたちとは比べ物にならないが、一応僕も気配を感じられるようになった。
精々、半径10m程度ではあるが、生物が発する微量な魔力を感じて、何かいるな。程度には感じ取ることができる。
しかし今回はその気配を避けて通ることもできないのだ。
理由は簡単しっかりとした道でないとこの手作りポンコツ車では進めないからである。
「?!」
やけくそで走っていた僕の目の前に急に現れたのはシバだった。
全く魔力探知に引っかからなかった。シバの速度が速すぎたせいだろうか。
いや、走ってきた感じはしない。魔力を隠して待ち伏せていたのか…。
シバは得意げに鼻を鳴すと荷台に飛び乗り…寝転んだ。
実に頼もしい護衛である。
蹴り落してやろうかとも考えつつも、心配でわざわざ見に来てくれたことには感謝している。
今回は許してやろう。
そんな気持ちで前を向くが、シバに服を引っ張られ、再び後ろを向く。
何事かと思えば、シバが尻尾の先に魔力を溜めて荷台に文字を書いていく。
『魔力感知もできないんですね。セ、ン、パイ♪』
それを読み終えた僕の顔を見てシバは再び鼻をフンと鳴らした。
そしてスッと魔導車の前に降りたち、挑戦的に振り返える。
…よかろう。戦争だ。
この後第24回魔術戦争が起こったのは言うまでもない。
最後の方にはいつの間にか子どもたちまで参加していて…。
大人たちを窘めてくれていた。
本当に助かった。
村の人たちとも話をしたが、まだこの村は教会の教えが浸透していないのか、黒髪をあまり気にした様子がなかった。
それどころか黒髪の姉妹が住んでいると聞いた時は心底驚いた。
その子の親は警備の仕事でこの騒ぎには参加しておらず、妹も人見知りだという事で、姉であるカーネと言う子にしか会えなかったのは誠に残念な事態ではあるが…。
しかしカーネと言う少女が違和感なく村に溶け込んでいる様子を見ると、本当に皆に愛されているようで…。
嬉しく思う反面、ちょっともやもやした気持ちになってしまった。
その後も、ミランさんから娘さんと共に、改めてお礼をされたり、酒場を経営するおじさんに絡《から》まれたり、大変だった。
そうこうしている内に…。やってしまった。
森の入り口に着く頃には日が完全に沈んでしまったのである。
当たり前のことだが、夜の森は危険だ。
そして村人の話によると森の浅い部分で獣が密集し、凶暴化しているのだという。
そのせいで畑は荒らされ、森にも入れず食べ物に困っていた所、僕が現れたと言う訳だ。
しかも本来は山奥にいる大喰らいと呼ばれる熊まで山を下りてきているらしく、いつ村に降りてくるか心配していた為、大量の熊皮を見せた時は感謝された。
その時の僕の顔ときたら…。とってつけたような笑顔だったに違いない。
なんせ、その主な原因は僕達家族にあるのだから。
一言で言うなら暴れまわりすぎました。すいません。という事だ。
村の事なんて全く考えていなかったし、自分たちがそれほど森に影響を与えている感覚もなかった。
危うく村一つ潰すところだったのかと思うと冷や汗が出てきた。
話を戻すが、この辺りの森は今、危険地帯なのである。
姉さんたちとの夜の狩りでも、獣に不意を突かれてヒヤッとする事がある。
そんな奴が、危険地帯を魔導車という良い的で、一人突っ切るのはどう考えても無理があるのだ。
でも、連絡なく帰らない場合に起る母さんの癇癪を想像するのも無理があるのだ。
無理がるのだよ…。
想像するだけで鬱になりかけるので、気持ちを切り替えると、森の中に車を進める。
姉さんたちとは比べ物にならないが、一応僕も気配を感じられるようになった。
精々、半径10m程度ではあるが、生物が発する微量な魔力を感じて、何かいるな。程度には感じ取ることができる。
しかし今回はその気配を避けて通ることもできないのだ。
理由は簡単しっかりとした道でないとこの手作りポンコツ車では進めないからである。
「?!」
やけくそで走っていた僕の目の前に急に現れたのはシバだった。
全く魔力探知に引っかからなかった。シバの速度が速すぎたせいだろうか。
いや、走ってきた感じはしない。魔力を隠して待ち伏せていたのか…。
シバは得意げに鼻を鳴すと荷台に飛び乗り…寝転んだ。
実に頼もしい護衛である。
蹴り落してやろうかとも考えつつも、心配でわざわざ見に来てくれたことには感謝している。
今回は許してやろう。
そんな気持ちで前を向くが、シバに服を引っ張られ、再び後ろを向く。
何事かと思えば、シバが尻尾の先に魔力を溜めて荷台に文字を書いていく。
『魔力感知もできないんですね。セ、ン、パイ♪』
それを読み終えた僕の顔を見てシバは再び鼻をフンと鳴らした。
そしてスッと魔導車の前に降りたち、挑戦的に振り返える。
…よかろう。戦争だ。
この後第24回魔術戦争が起こったのは言うまでもない。
0
お気に入りに追加
9
あなたにおすすめの小説

鑑定能力で恩を返す
KBT
ファンタジー
どこにでもいる普通のサラリーマンの蔵田悟。
彼ははある日、上司の悪態を吐きながら深酒をし、目が覚めると見知らぬ世界にいた。
そこは剣と魔法、人間、獣人、亜人、魔物が跋扈する異世界フォートルードだった。
この世界には稀に異世界から《迷い人》が転移しており、悟もその1人だった。
帰る方法もなく、途方に暮れていた悟だったが、通りすがりの商人ロンメルに命を救われる。
そして稀少な能力である鑑定能力が自身にある事がわかり、ブロディア王国の公都ハメルンの裏通りにあるロンメルの店で働かせてもらう事になった。
そして、ロンメルから店の番頭を任された悟は《サト》と名前を変え、命の恩人であるロンメルへの恩返しのため、商店を大きくしようと鑑定能力を駆使して、海千山千の商人達や荒くれ者の冒険者達を相手に日夜奮闘するのだった。

独身おじさんの異世界ライフ~結婚しません、フリーな独身こそ最高です~
さとう
ファンタジー
町の電気工事士であり、なんでも屋でもある織田玄徳は、仕事をそこそこやりつつ自由な暮らしをしていた。
結婚は人生の墓場……父親が嫁さんで苦労しているのを見て育ったため、結婚して子供を作り幸せな家庭を作るという『呪いの言葉』を嫌悪し、生涯独身、自分だけのために稼いだ金を使うと決め、独身生活を満喫。趣味の釣り、バイク、キャンプなどを楽しみつつ、人生を謳歌していた。
そんなある日。電気工事の仕事で感電死……まだまだやりたいことがあったのにと嘆くと、なんと異世界転生していた!!
これは、異世界で工務店の仕事をしながら、異世界で独身生活を満喫するおじさんの物語。

強奪系触手おじさん
兎屋亀吉
ファンタジー
【肉棒術】という卑猥なスキルを授かってしまったゆえに皆の笑い者として40年間生きてきたおじさんは、ある日ダンジョンで気持ち悪い触手を拾う。後に【神の触腕】という寄生型の神器だと判明するそれは、その気持ち悪い見た目に反してとんでもない力を秘めていた。
💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活
XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。
光のもとで2
葉野りるは
青春
一年の療養を経て高校へ入学した翠葉は「高校一年」という濃厚な時間を過ごし、
新たな気持ちで新学期を迎える。
好きな人と両思いにはなれたけれど、だからといって順風満帆にいくわけではないみたい。
少し環境が変わっただけで会う機会は減ってしまったし、気持ちがすれ違うことも多々。
それでも、同じ時間を過ごし共に歩めることに感謝を……。
この世界には当たり前のことなどひとつもなく、あるのは光のような奇跡だけだから。
何か問題が起きたとしても、一つひとつ乗り越えて行きたい――
(10万文字を一冊として、文庫本10冊ほどの長さです)

少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。
30代社畜の私が1ヶ月後に異世界転生するらしい。
ひさまま
ファンタジー
前世で搾取されまくりだった私。
魂の休養のため、地球に転生したが、地球でも今世も搾取されまくりのため魂の消滅の危機らしい。
とある理由から元の世界に戻るように言われ、マジックバックを自称神様から頂いたよ。
これで地球で買ったものを持ち込めるとのこと。やっぱり夢ではないらしい。
取り敢えず、明日は退職届けを出そう。
目指せ、快適異世界生活。
ぽちぽち更新します。
作者、うっかりなのでこれも買わないと!というのがあれば教えて下さい。
脳内の空想を、つらつら書いているのでお目汚しな際はごめんなさい。

悪役顔のモブに転生しました。特に影響が無いようなので好きに生きます
竹桜
ファンタジー
ある部屋の中で男が画面に向かいながら、ゲームをしていた。
そのゲームは主人公の勇者が魔王を倒し、ヒロインと結ばれるというものだ。
そして、ヒロインは4人いる。
ヒロイン達は聖女、剣士、武闘家、魔法使いだ。
エンドのルートしては六種類ある。
バットエンドを抜かすと、ハッピーエンドが五種類あり、ハッピーエンドの四種類、ヒロインの中の誰か1人と結ばれる。
残りのハッピーエンドはハーレムエンドである。
大好きなゲームの十回目のエンディングを迎えた主人公はお腹が空いたので、ご飯を食べようと思い、台所に行こうとして、足を滑らせ、頭を強く打ってしまった。
そして、主人公は不幸にも死んでしまった。
次に、主人公が目覚めると大好きなゲームの中に転生していた。
だが、主人公はゲームの中で名前しか出てこない悪役顔のモブに転生してしまった。
主人公は大好きなゲームの中に転生したことを心の底から喜んだ。
そして、折角転生したから、この世界を好きに生きようと考えた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる