26 / 132
まだなの?
第25話 メグルと建前
しおりを挟む
僕は目の前に倒れる少女を見て、如何したものかと首を捻った。
つい先ほどまでは兄弟みんなで森を散策していた。
今までは姉さん単独で僕の面倒を見ると事が多かった。
しかし、僕が魔法を使える事が知れ渡り、姉さんがそれを独り占めにしている事が兄弟にばれてからはずっとこの調子だ。
兄弟たちは僕が魔法を使っている姿を見ているだけなのだが、魔力の流れでも見えているのか、どんどんと制御が上手くなっていき…。
とても悔しい事に体内で魔力を使う分には、僕よりも上手くなっていた。
また、魔力の感知能力に至っては僕の十数倍で、彼女を見つけたのも兄弟達だったのだ。
因みにその時の僕はと言うと、皆が一斉に一か所を向いたためにその方向に向けて意識を集中させてみたが、全く分からなかった。
完敗である。
しかし流石にこれだけ近付けばこの辺りで魔力が使われたことが感じ取れた。
「魔導回路の代わりになったのはこれか…」
僕が未だに魔力を帯びる薙刀に手を伸ばすと、シバがそれを咥えて持ち去った。
「…え?」
一瞬の出来事に面食らい、振り向く頃にはシバの姿は無かった。
…美味しそうな魔力に耐えられなかったのだろうか?
それとも珍しい物にいてもたってもいられなくなったとか?
原因はよくわからないが、そんな事よりもまずは目の前で眠る少女の事が最優先だろう。
どうするべきなのだろう…。
ここにこのまま置いて行くのは論外として、家に連れて帰るべきか、この先にある村に届けるべきか。
家にいったん連れて帰り、話を聞くのが安全だろうが、そろそろ村にも顔を出したいと思っていた。
なんせ家のものすべてが手作りである。
服に至っては作れていないし、ちゃんとした家具なども欲しい。
これは僕の中でちょうど良い切っ掛けだった。
少女の安否云々は差し引いて、しっかりと、今、村に行く理由ができたのである。
それにもしこの子がその村の子どもであれば食料や小道具よりもずっと良い交渉材料になるだろう。
上手くいけば信頼もえられて一石二鳥だ。
そうでなかった場合は家で引き取って目を覚ましてから事情を聴けば良い。
村に行くことを軽く考えているように感じさせる僕だが、今まで足が向かわなかった時点で察してほしい。
自分が黒髪であるという事がどういうことか忘れていない。
人間が怖いものだという事は忘れていないのである。
僕は既にいくつかシミュレートしていた安全な役回りからぴったりな物を引き出す。
そしてその皮を被ると、同時に自身でも分かるほど悪い笑みを浮かべた。
その笑みは役から来たものか、はたまた過去の自分を思い出してのものだったのか。
どちらにしろとても気持ちの良い気分で少女を担ぐと、姉さんに跨って村に向かう。
夜闇に溶けるその風貌たるや、昔話に出てくる悪魔そのものであった。
つい先ほどまでは兄弟みんなで森を散策していた。
今までは姉さん単独で僕の面倒を見ると事が多かった。
しかし、僕が魔法を使える事が知れ渡り、姉さんがそれを独り占めにしている事が兄弟にばれてからはずっとこの調子だ。
兄弟たちは僕が魔法を使っている姿を見ているだけなのだが、魔力の流れでも見えているのか、どんどんと制御が上手くなっていき…。
とても悔しい事に体内で魔力を使う分には、僕よりも上手くなっていた。
また、魔力の感知能力に至っては僕の十数倍で、彼女を見つけたのも兄弟達だったのだ。
因みにその時の僕はと言うと、皆が一斉に一か所を向いたためにその方向に向けて意識を集中させてみたが、全く分からなかった。
完敗である。
しかし流石にこれだけ近付けばこの辺りで魔力が使われたことが感じ取れた。
「魔導回路の代わりになったのはこれか…」
僕が未だに魔力を帯びる薙刀に手を伸ばすと、シバがそれを咥えて持ち去った。
「…え?」
一瞬の出来事に面食らい、振り向く頃にはシバの姿は無かった。
…美味しそうな魔力に耐えられなかったのだろうか?
それとも珍しい物にいてもたってもいられなくなったとか?
原因はよくわからないが、そんな事よりもまずは目の前で眠る少女の事が最優先だろう。
どうするべきなのだろう…。
ここにこのまま置いて行くのは論外として、家に連れて帰るべきか、この先にある村に届けるべきか。
家にいったん連れて帰り、話を聞くのが安全だろうが、そろそろ村にも顔を出したいと思っていた。
なんせ家のものすべてが手作りである。
服に至っては作れていないし、ちゃんとした家具なども欲しい。
これは僕の中でちょうど良い切っ掛けだった。
少女の安否云々は差し引いて、しっかりと、今、村に行く理由ができたのである。
それにもしこの子がその村の子どもであれば食料や小道具よりもずっと良い交渉材料になるだろう。
上手くいけば信頼もえられて一石二鳥だ。
そうでなかった場合は家で引き取って目を覚ましてから事情を聴けば良い。
村に行くことを軽く考えているように感じさせる僕だが、今まで足が向かわなかった時点で察してほしい。
自分が黒髪であるという事がどういうことか忘れていない。
人間が怖いものだという事は忘れていないのである。
僕は既にいくつかシミュレートしていた安全な役回りからぴったりな物を引き出す。
そしてその皮を被ると、同時に自身でも分かるほど悪い笑みを浮かべた。
その笑みは役から来たものか、はたまた過去の自分を思い出してのものだったのか。
どちらにしろとても気持ちの良い気分で少女を担ぐと、姉さんに跨って村に向かう。
夜闇に溶けるその風貌たるや、昔話に出てくる悪魔そのものであった。
0
お気に入りに追加
9
あなたにおすすめの小説

人生初めての旅先が異世界でした!? ~ 元の世界へ帰る方法探して異世界めぐり、家に帰るまでが旅行です。~(仮)
葵セナ
ファンタジー
主人公 39歳フリーターが、初めての旅行に行こうと家を出たら何故か森の中?
管理神(神様)のミスで、異世界転移し見知らぬ森の中に…
不思議と持っていた一枚の紙を読み、元の世界に帰る方法を探して、異世界での冒険の始まり。
曖昧で、都合の良い魔法とスキルでを使い、異世界での冒険旅行? いったいどうなる!
ありがちな異世界物語と思いますが、暖かい目で見てやってください。
初めての作品なので誤字 脱字などおかしな所が出て来るかと思いますが、御容赦ください。(気が付けば修正していきます。)
ステータスも何処かで見たことあるような、似たり寄ったりの表示になっているかと思いますがどうか御容赦ください。よろしくお願いします。

悪役転生の後日談~破滅ルートを回避したのに、何故か平穏が訪れません~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
ある日、王太子であるアルス-アスカロンは記憶を取り戻す。
それは自分がゲームのキャラクターである悪役だということに。
気づいた時にはすでに物語は進行していたので、慌てて回避ルートを目指す。
そして、無事に回避できて望み通りに追放されたが……そこは山賊が跋扈する予想以上に荒れ果てた土地だった。
このままではスローライフができないと思い、アルスは己の平穏(スローライフ)を邪魔する者を排除するのだった。
これは自分が好き勝手にやってたら、いつの間か周りに勘違いされて信者を増やしてしまう男の物語である。

転生した愛し子は幸せを知る
ひつ
ファンタジー
【連載再開】
長らくお待たせしました!休載状態でしたが今月より復帰できそうです(手術後でまだリハビリ中のため不定期になります)。これからもどうぞ宜しくお願いします(^^)
♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢
宮月 華(みやつき はな) は死んだ。華は死に間際に「誰でもいいから私を愛して欲しかったな…」と願った。
次の瞬間、華は白い空間に!!すると、目の前に男の人(?)が現れ、「新たな世界で愛される幸せを知って欲しい!」と新たな名を貰い、過保護な神(パパ)にスキルやアイテムを貰って旅立つことに!
転生した女の子が周りから愛され、幸せになるお話です。
結構ご都合主義です。作者は語彙力ないです。
第13回ファンタジー大賞 176位
第14回ファンタジー大賞 76位
第15回ファンタジー大賞 70位
ありがとうございます(●´ω`●)

異世界に来ちゃったよ!?
いがむり
ファンタジー
235番……それが彼女の名前。記憶喪失の17歳で沢山の子どもたちと共にファクトリーと呼ばれるところで楽しく暮らしていた。
しかし、現在森の中。
「とにきゃく、こころこぉ?」
から始まる異世界ストーリー 。
主人公は可愛いです!
もふもふだってあります!!
語彙力は………………無いかもしれない…。
とにかく、異世界ファンタジー開幕です!
※不定期投稿です…本当に。
※誤字・脱字があればお知らせ下さい
(※印は鬱表現ありです)

異世界でゆるゆるスローライフ!~小さな波乱とチートを添えて~
イノナかノかワズ
ファンタジー
助けて、刺されて、死亡した主人公。神様に会ったりなんやかんやあったけど、社畜だった前世から一転、ゆるいスローライフを送る……筈であるが、そこは知識チートと能力チートを持った主人公。波乱に巻き込まれたりしそうになるが、そこはのんびり暮らしたいと持っている主人公。波乱に逆らい、世界に名が知れ渡ることはなくなり、知る人ぞ知る感じに収まる。まぁ、それは置いといて、主人公の新たな人生は、温かな家族とのんびりした自然、そしてちょっとした研究生活が彩りを与え、幸せに溢れています。
*話はとてもゆっくりに進みます。また、序盤はややこしい設定が多々あるので、流しても構いません。
*他の小説や漫画、ゲームの影響が見え隠れします。作者の願望も見え隠れします。ご了承下さい。
*頑張って週一で投稿しますが、基本不定期です。
*無断転載、無断翻訳を禁止します。
小説家になろうにて先行公開中です。主にそっちを優先して投稿します。
カクヨムにても公開しています。
更新は不定期です。
弱小デイトレーダーが異世界に来たら、いきなりチート投資家になったのです。
comsick
ファンタジー
フルダイブ型VR✕異世界転生✕お仕事・ビジネス系=全乗っけ型小説。
★電脳空間に飛び込んだ弱小デイトレーダーによる、現在ファンタジー
★企業分析が得意なエルフ。
★ハイファンタジー?剣と魔法?株式投資?マネタイズ?
★幻想的な世界観と、ただのリアル。
投資のことを全く知らなくても楽しめます。でもって、ちょっとだけ投資の勉強にもなったりします。。。

俺の幼馴染みが悪役令嬢なはずないんだが
ムギ。
ファンタジー
悪役令嬢?
なにそれ。
乙女ゲーム?
知らない。
そんな元社会人ゲーマー転生者が、空気読まずに悪役令嬢にベタぼれして、婚約破棄された悪役令嬢に求婚して、乙女ゲーム展開とは全く関係なく悪役令嬢と結婚して幸せになる予定です。
一部に流血描写、微グロあり。

屑スキルが覚醒したら追放されたので、手伝い屋を営みながら、のんびりしてたのに~なんか色々たいへんです
わたなべ ゆたか
ファンタジー
タムール大陸の南よりにあるインムナーマ王国。王都タイミョンの軍事訓練場で、ランド・コールは軍に入るための最終試験に挑む。対戦相手は、《ダブルスキル》の異名を持つゴガルン。
対するランドの持つ《スキル》は、左手から棘が一本出るだけのもの。
剣技だけならゴガルン以上を自負するランドだったが、ゴガルンの《スキル》である〈筋力増強〉と〈遠当て〉に翻弄されてしまう。敗北する寸前にランドの《スキル》が真の力を発揮し、ゴガルンに勝つことができた。だが、それが原因で、ランドは王都を追い出されてしまった。移住した村で、〝手伝い屋〟として、のんびりとした生活を送っていた。だが、村に来た領地の騎士団に所属する騎馬が、ランドの生活が一変する切っ掛けとなる――。チート系スキル持ちの主人公のファンタジーです。楽しんで頂けたら、幸いです。
よろしくお願いします!
(7/15追記
一晩でお気に入りが一気に増えておりました。24Hポイントが2683! ありがとうございます!
(9/9追記
三部の一章-6、ルビ修正しました。スイマセン
(11/13追記 一章-7 神様の名前修正しました。
追記 異能(イレギュラー)タグを追加しました。これで検索しやすくなるかな……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる