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まだなの?
第23話 コランと夜の森
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森に入ったわたしはすぐに獣を見つけた。
こんな暗闇の中だというのに獲物を見つけられた理由は簡単で、不思議と生き物が暖色に光って見えるのだ。
わたしがまず最初に仕掛けたのは突進獣。
夜でも元気に動き回っているが、奴らは前に直進することでしか速度を出せない上、それが唯一の攻撃手段だ。
まだ狩り慣れしていないわたしでも狙える良い獲物だろう。
わたしが駆けだすと、奴らも気が付いたのかこちらに向かって突進してきた。
互いに距離を詰めた為、このまま行けばものすごい勢いで衝突する。
正面からぶつかれば私の倍程はある、あの巨体に吹き飛ばされてしまうだろう。
わたしは衝突の寸前に身を逸らし、刀身だけを突進獣の進路上に残して振り払った。
柔らかい土のせいで足場が悪く、速度を出していた為に上手く踏ん張れない。
もしかしたら押し負けるかもしれないと思ったが、刀身が突進獣の牙と頭に当たる瞬間、一瞬抵抗を感じただけ。
後はあっさりとその体を両断してしまった。
あまりにも呆気なく倒れる獣に唖然としていると、その血の匂いにつられてか、茂みの向こう今度は大喰らいが現れた。
いや、タイミングからしてこちらの様子を窺っていたのかもしれない。
黒い毛に覆われた巨体。
その腕から繰り出される一撃は木の幹も砕くほどの威力だと聞いたことがある。
移動速度も突進獣を直線距離で捕獲できるほど素早い。
加えて、執念深い性格の為、狙われた者は生きて森を出る事は出来ないと言われる程の存在だ。
緊張した面持ちで大喰らいと対面するが、相手はこちらなどには興味がないと言った風に、両断された突進獣を貪り始めた。
それはわたしの獲物だ!
わたしは感情のままに大喰らいに刀身を振り下ろす。
すると、その頭は簡単に砕け、大喰らいは動かなくなった。
…なんだ。簡単じゃない。
わたしは今までの高揚していた感覚がふっと抜けるのを感じた。
それと同時にどっと疲労感がこみあげてくる。
今日はもう帰ろう。狩人ですら仕留められないような大物を狩ったんだ。これで十分だろう。
獲物を背負って帰ろうとするが、何故か先程までの力が全く出なかった。
…そういえば周囲の景色や動物も全く見えなくなっている。
…力が無くなった?
そう思うと今まで何とも思っていなかった、森の恐怖がわたしを襲う。
何も見えない森。
突進獣はわたしが今、見る事のできる数倍の距離でも、わたしを見つけ襲ってきた。
闇の中から突然あの速度で突進されれば、力の無いわたしでは成す術がないだろう。
大喰らいなどもっての外だ。
勝てるわけがないし、逃げられるわけもない。
今だって相手が油断していたから勝てたのであって、力があっても正面から勝てる保証などどこにもないのだ。
もし捕まれば…奴は生きたままの相手でも喰らうという。
考えるだけでも腰が抜けてしまった。
その場にへたり込むともう動けなくなってしまう。
それにこんなに怖いのに、とてつもなく眠い。
ここで寝たら死んでしまう。
そんなことは分かっているのに瞼が言う事を聞かなかった。
まどろむ意識の中、大きな白い影が私の前に現れた。
逃げなければいけない。絶対に勝てないと本能が警鐘を鳴らす。
しかし悲しいかな、わたしには指一本動かす力も残っていなかった。
もう終わった。そう思うと、そしてその白い影から小さな子が飛び降りてきた。
綺麗な黒髪にをした彼はわたしの顔を覗き込んで…。
そこで私の意識は完全に途絶えた。
こんな暗闇の中だというのに獲物を見つけられた理由は簡単で、不思議と生き物が暖色に光って見えるのだ。
わたしがまず最初に仕掛けたのは突進獣。
夜でも元気に動き回っているが、奴らは前に直進することでしか速度を出せない上、それが唯一の攻撃手段だ。
まだ狩り慣れしていないわたしでも狙える良い獲物だろう。
わたしが駆けだすと、奴らも気が付いたのかこちらに向かって突進してきた。
互いに距離を詰めた為、このまま行けばものすごい勢いで衝突する。
正面からぶつかれば私の倍程はある、あの巨体に吹き飛ばされてしまうだろう。
わたしは衝突の寸前に身を逸らし、刀身だけを突進獣の進路上に残して振り払った。
柔らかい土のせいで足場が悪く、速度を出していた為に上手く踏ん張れない。
もしかしたら押し負けるかもしれないと思ったが、刀身が突進獣の牙と頭に当たる瞬間、一瞬抵抗を感じただけ。
後はあっさりとその体を両断してしまった。
あまりにも呆気なく倒れる獣に唖然としていると、その血の匂いにつられてか、茂みの向こう今度は大喰らいが現れた。
いや、タイミングからしてこちらの様子を窺っていたのかもしれない。
黒い毛に覆われた巨体。
その腕から繰り出される一撃は木の幹も砕くほどの威力だと聞いたことがある。
移動速度も突進獣を直線距離で捕獲できるほど素早い。
加えて、執念深い性格の為、狙われた者は生きて森を出る事は出来ないと言われる程の存在だ。
緊張した面持ちで大喰らいと対面するが、相手はこちらなどには興味がないと言った風に、両断された突進獣を貪り始めた。
それはわたしの獲物だ!
わたしは感情のままに大喰らいに刀身を振り下ろす。
すると、その頭は簡単に砕け、大喰らいは動かなくなった。
…なんだ。簡単じゃない。
わたしは今までの高揚していた感覚がふっと抜けるのを感じた。
それと同時にどっと疲労感がこみあげてくる。
今日はもう帰ろう。狩人ですら仕留められないような大物を狩ったんだ。これで十分だろう。
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…そういえば周囲の景色や動物も全く見えなくなっている。
…力が無くなった?
そう思うと今まで何とも思っていなかった、森の恐怖がわたしを襲う。
何も見えない森。
突進獣はわたしが今、見る事のできる数倍の距離でも、わたしを見つけ襲ってきた。
闇の中から突然あの速度で突進されれば、力の無いわたしでは成す術がないだろう。
大喰らいなどもっての外だ。
勝てるわけがないし、逃げられるわけもない。
今だって相手が油断していたから勝てたのであって、力があっても正面から勝てる保証などどこにもないのだ。
もし捕まれば…奴は生きたままの相手でも喰らうという。
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そんなことは分かっているのに瞼が言う事を聞かなかった。
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しかし悲しいかな、わたしには指一本動かす力も残っていなかった。
もう終わった。そう思うと、そしてその白い影から小さな子が飛び降りてきた。
綺麗な黒髪にをした彼はわたしの顔を覗き込んで…。
そこで私の意識は完全に途絶えた。
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