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まだなの?
第22話 カーネとリリー
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「ただいま」
私は家に上がると、居間に向かって声を掛けた。
すると、タッタッタとかけるような音と共が響いてくる。
しばらくすると妹のリリーが居間の扉から恐る恐ると言った風に、顔だけを覗かせた。
リリーは家に入ってきたのが私だけだと確認すると、安心したように廊下を駆けて私に飛びついてくる。
そして、「おかえりなさい」と呟いた。
彼女はほとんど家の中にいるのだが、よく家に来るコランでさえも怖いらしく、誰か来た時はいつも自分の部屋に籠ってしまう。
そんな人見知りで甘えん坊な彼女の頭を撫でると、妹は満足そうに笑みを浮かべて、手を引いてきた。
私はそれに逆らうことなく引っ張られるようにして居間に向かった。
「ほら、これ。お土産」
やっと手を放してくれた妹に、私は懐にしまっていた裂け頭の実を差し出した。
リリーの視線は暫く木の実とわたしの間を行き来するが、私が微笑むと「ありがとう」と満面の笑みで受け取ってくれた。
裂け頭の実は甘酸っぱくこの時期に森の中でしかならないのだ。
これがリリーの大好物なのでどうしても手に入れたかった。
正直言ってコランの御守りはそのついでである。
それに私一人で森に入って何かあっても助けが来ない可能性が高かった。
そういう面では利用したと言ってもいいだろう。
コランには少し悪い事をしたと思いつつも、今後の為に恩を売っておく事さえ計算に入れる自分が嫌になる。
そんな私の心情を知りもしないリリーは幸せそうに裂け頭の実を頬張る。
それだけで危険な森に入った事も、コランを利用したことすらどうでも良くなってしまうほど幸せな気分になれた。
本当に悪い子だと、自分でも思う。
その後は妹が用意してくれていた夕飯を食べながらどうでも良い話をした。
私は主に今日の事を話し、妹はカタクスさんの話をした。
リリーは本当にカタクスさんが大好きである。
主には「ああいうところが駄目」「ああいうところが困る」等の愚痴なのだが。
しかし、カタクスさんが出かけてから三日。
人見知りなリリーがここまで他人の事を生き生きと話し続けるのだから、姉としては少し嫉妬してしまう。
と、そんな暖かい空気を壊すように、玄関の扉が激しく叩かれた。
雨戸を開け、居間から外を覗いてみるが、残念ながら日が落ちた現状ではその姿を見る事は出来なかった。
こんな遅くに誰だろう。
怖がる妹を慰めた後、恐る恐る玄関の扉に近づき「どちら様ですか?」と声を掛ける。
「私!ミランよ!娘が帰ってこないの!ちょっと話を聞かせて頂戴!」
確かに聞こえてきたのは聞き覚えのある声だった。
きっとコランの母さんで間違いないだろう。
それにしても一緒に帰ってきたはずなのに、どうして?
私は疑問に思いつつも、怖がる妹も焦るおばさんもこのままにはしておけないと、扉を開けて外に出た。
…小競り合いになった時の為に刃物を懐に忍ばせて、ね。
私は家に上がると、居間に向かって声を掛けた。
すると、タッタッタとかけるような音と共が響いてくる。
しばらくすると妹のリリーが居間の扉から恐る恐ると言った風に、顔だけを覗かせた。
リリーは家に入ってきたのが私だけだと確認すると、安心したように廊下を駆けて私に飛びついてくる。
そして、「おかえりなさい」と呟いた。
彼女はほとんど家の中にいるのだが、よく家に来るコランでさえも怖いらしく、誰か来た時はいつも自分の部屋に籠ってしまう。
そんな人見知りで甘えん坊な彼女の頭を撫でると、妹は満足そうに笑みを浮かべて、手を引いてきた。
私はそれに逆らうことなく引っ張られるようにして居間に向かった。
「ほら、これ。お土産」
やっと手を放してくれた妹に、私は懐にしまっていた裂け頭の実を差し出した。
リリーの視線は暫く木の実とわたしの間を行き来するが、私が微笑むと「ありがとう」と満面の笑みで受け取ってくれた。
裂け頭の実は甘酸っぱくこの時期に森の中でしかならないのだ。
これがリリーの大好物なのでどうしても手に入れたかった。
正直言ってコランの御守りはそのついでである。
それに私一人で森に入って何かあっても助けが来ない可能性が高かった。
そういう面では利用したと言ってもいいだろう。
コランには少し悪い事をしたと思いつつも、今後の為に恩を売っておく事さえ計算に入れる自分が嫌になる。
そんな私の心情を知りもしないリリーは幸せそうに裂け頭の実を頬張る。
それだけで危険な森に入った事も、コランを利用したことすらどうでも良くなってしまうほど幸せな気分になれた。
本当に悪い子だと、自分でも思う。
その後は妹が用意してくれていた夕飯を食べながらどうでも良い話をした。
私は主に今日の事を話し、妹はカタクスさんの話をした。
リリーは本当にカタクスさんが大好きである。
主には「ああいうところが駄目」「ああいうところが困る」等の愚痴なのだが。
しかし、カタクスさんが出かけてから三日。
人見知りなリリーがここまで他人の事を生き生きと話し続けるのだから、姉としては少し嫉妬してしまう。
と、そんな暖かい空気を壊すように、玄関の扉が激しく叩かれた。
雨戸を開け、居間から外を覗いてみるが、残念ながら日が落ちた現状ではその姿を見る事は出来なかった。
こんな遅くに誰だろう。
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「私!ミランよ!娘が帰ってこないの!ちょっと話を聞かせて頂戴!」
確かに聞こえてきたのは聞き覚えのある声だった。
きっとコランの母さんで間違いないだろう。
それにしても一緒に帰ってきたはずなのに、どうして?
私は疑問に思いつつも、怖がる妹も焦るおばさんもこのままにはしておけないと、扉を開けて外に出た。
…小競り合いになった時の為に刃物を懐に忍ばせて、ね。
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