23 / 132
まだなの?
第22話 カーネとリリー
しおりを挟む
「ただいま」
私は家に上がると、居間に向かって声を掛けた。
すると、タッタッタとかけるような音と共が響いてくる。
しばらくすると妹のリリーが居間の扉から恐る恐ると言った風に、顔だけを覗かせた。
リリーは家に入ってきたのが私だけだと確認すると、安心したように廊下を駆けて私に飛びついてくる。
そして、「おかえりなさい」と呟いた。
彼女はほとんど家の中にいるのだが、よく家に来るコランでさえも怖いらしく、誰か来た時はいつも自分の部屋に籠ってしまう。
そんな人見知りで甘えん坊な彼女の頭を撫でると、妹は満足そうに笑みを浮かべて、手を引いてきた。
私はそれに逆らうことなく引っ張られるようにして居間に向かった。
「ほら、これ。お土産」
やっと手を放してくれた妹に、私は懐にしまっていた裂け頭の実を差し出した。
リリーの視線は暫く木の実とわたしの間を行き来するが、私が微笑むと「ありがとう」と満面の笑みで受け取ってくれた。
裂け頭の実は甘酸っぱくこの時期に森の中でしかならないのだ。
これがリリーの大好物なのでどうしても手に入れたかった。
正直言ってコランの御守りはそのついでである。
それに私一人で森に入って何かあっても助けが来ない可能性が高かった。
そういう面では利用したと言ってもいいだろう。
コランには少し悪い事をしたと思いつつも、今後の為に恩を売っておく事さえ計算に入れる自分が嫌になる。
そんな私の心情を知りもしないリリーは幸せそうに裂け頭の実を頬張る。
それだけで危険な森に入った事も、コランを利用したことすらどうでも良くなってしまうほど幸せな気分になれた。
本当に悪い子だと、自分でも思う。
その後は妹が用意してくれていた夕飯を食べながらどうでも良い話をした。
私は主に今日の事を話し、妹はカタクスさんの話をした。
リリーは本当にカタクスさんが大好きである。
主には「ああいうところが駄目」「ああいうところが困る」等の愚痴なのだが。
しかし、カタクスさんが出かけてから三日。
人見知りなリリーがここまで他人の事を生き生きと話し続けるのだから、姉としては少し嫉妬してしまう。
と、そんな暖かい空気を壊すように、玄関の扉が激しく叩かれた。
雨戸を開け、居間から外を覗いてみるが、残念ながら日が落ちた現状ではその姿を見る事は出来なかった。
こんな遅くに誰だろう。
怖がる妹を慰めた後、恐る恐る玄関の扉に近づき「どちら様ですか?」と声を掛ける。
「私!ミランよ!娘が帰ってこないの!ちょっと話を聞かせて頂戴!」
確かに聞こえてきたのは聞き覚えのある声だった。
きっとコランの母さんで間違いないだろう。
それにしても一緒に帰ってきたはずなのに、どうして?
私は疑問に思いつつも、怖がる妹も焦るおばさんもこのままにはしておけないと、扉を開けて外に出た。
…小競り合いになった時の為に刃物を懐に忍ばせて、ね。
私は家に上がると、居間に向かって声を掛けた。
すると、タッタッタとかけるような音と共が響いてくる。
しばらくすると妹のリリーが居間の扉から恐る恐ると言った風に、顔だけを覗かせた。
リリーは家に入ってきたのが私だけだと確認すると、安心したように廊下を駆けて私に飛びついてくる。
そして、「おかえりなさい」と呟いた。
彼女はほとんど家の中にいるのだが、よく家に来るコランでさえも怖いらしく、誰か来た時はいつも自分の部屋に籠ってしまう。
そんな人見知りで甘えん坊な彼女の頭を撫でると、妹は満足そうに笑みを浮かべて、手を引いてきた。
私はそれに逆らうことなく引っ張られるようにして居間に向かった。
「ほら、これ。お土産」
やっと手を放してくれた妹に、私は懐にしまっていた裂け頭の実を差し出した。
リリーの視線は暫く木の実とわたしの間を行き来するが、私が微笑むと「ありがとう」と満面の笑みで受け取ってくれた。
裂け頭の実は甘酸っぱくこの時期に森の中でしかならないのだ。
これがリリーの大好物なのでどうしても手に入れたかった。
正直言ってコランの御守りはそのついでである。
それに私一人で森に入って何かあっても助けが来ない可能性が高かった。
そういう面では利用したと言ってもいいだろう。
コランには少し悪い事をしたと思いつつも、今後の為に恩を売っておく事さえ計算に入れる自分が嫌になる。
そんな私の心情を知りもしないリリーは幸せそうに裂け頭の実を頬張る。
それだけで危険な森に入った事も、コランを利用したことすらどうでも良くなってしまうほど幸せな気分になれた。
本当に悪い子だと、自分でも思う。
その後は妹が用意してくれていた夕飯を食べながらどうでも良い話をした。
私は主に今日の事を話し、妹はカタクスさんの話をした。
リリーは本当にカタクスさんが大好きである。
主には「ああいうところが駄目」「ああいうところが困る」等の愚痴なのだが。
しかし、カタクスさんが出かけてから三日。
人見知りなリリーがここまで他人の事を生き生きと話し続けるのだから、姉としては少し嫉妬してしまう。
と、そんな暖かい空気を壊すように、玄関の扉が激しく叩かれた。
雨戸を開け、居間から外を覗いてみるが、残念ながら日が落ちた現状ではその姿を見る事は出来なかった。
こんな遅くに誰だろう。
怖がる妹を慰めた後、恐る恐る玄関の扉に近づき「どちら様ですか?」と声を掛ける。
「私!ミランよ!娘が帰ってこないの!ちょっと話を聞かせて頂戴!」
確かに聞こえてきたのは聞き覚えのある声だった。
きっとコランの母さんで間違いないだろう。
それにしても一緒に帰ってきたはずなのに、どうして?
私は疑問に思いつつも、怖がる妹も焦るおばさんもこのままにはしておけないと、扉を開けて外に出た。
…小競り合いになった時の為に刃物を懐に忍ばせて、ね。
0
お気に入りに追加
9
あなたにおすすめの小説

転生した愛し子は幸せを知る
ひつ
ファンタジー
【連載再開】
長らくお待たせしました!休載状態でしたが今月より復帰できそうです(手術後でまだリハビリ中のため不定期になります)。これからもどうぞ宜しくお願いします(^^)
♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢
宮月 華(みやつき はな) は死んだ。華は死に間際に「誰でもいいから私を愛して欲しかったな…」と願った。
次の瞬間、華は白い空間に!!すると、目の前に男の人(?)が現れ、「新たな世界で愛される幸せを知って欲しい!」と新たな名を貰い、過保護な神(パパ)にスキルやアイテムを貰って旅立つことに!
転生した女の子が周りから愛され、幸せになるお話です。
結構ご都合主義です。作者は語彙力ないです。
第13回ファンタジー大賞 176位
第14回ファンタジー大賞 76位
第15回ファンタジー大賞 70位
ありがとうございます(●´ω`●)

精霊に好かれた私は世界最強らしいのだが
天色茜
ファンタジー
普通の女子高校生、朝野明莉沙(あさのありさ)は、ある日突然異世界召喚され、勇者として戦ってくれといわれる。
だが、同じく異世界召喚された他の二人との差別的な扱いに怒りを覚える。その上冤罪にされ、魔物に襲われた際にも誰も手を差し伸べてくれず、崖から転落してしまう。
その後、自分の異常な体質に気づき...!?

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ
25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。
目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。
ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。
しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。
ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。
そんな主人公のゆったり成長期!!
転生王子はダラけたい
朝比奈 和
ファンタジー
大学生の俺、一ノ瀬陽翔(いちのせ はると)が転生したのは、小さな王国グレスハートの末っ子王子、フィル・グレスハートだった。
束縛だらけだった前世、今世では好きなペットをモフモフしながら、ダラけて自由に生きるんだ!
と思ったのだが……召喚獣に精霊に鉱石に魔獣に、この世界のことを知れば知るほどトラブル発生で悪目立ち!
ぐーたら生活したいのに、全然出来ないんだけどっ!
ダラけたいのにダラけられない、フィルの物語は始まったばかり!
※2016年11月。第1巻
2017年 4月。第2巻
2017年 9月。第3巻
2017年12月。第4巻
2018年 3月。第5巻
2018年 8月。第6巻
2018年12月。第7巻
2019年 5月。第8巻
2019年10月。第9巻
2020年 6月。第10巻
2020年12月。第11巻 出版しました。
PNもエリン改め、朝比奈 和(あさひな なごむ)となります。
投稿継続中です。よろしくお願いします!
若奥様は緑の手 ~ お世話した花壇が聖域化してました。嫁入り先でめいっぱい役立てます!
古森真朝
恋愛
意地悪な遠縁のおばの邸で暮らすユーフェミアは、ある日いきなり『明後日に輿入れが決まったから荷物をまとめろ』と言い渡される。いろいろ思うところはありつつ、これは邸から出て自立するチャンス!と大急ぎで支度して出立することに。嫁入り道具兼手土産として、唯一の財産でもある裏庭の花壇(四畳サイズ)を『持参』したのだが――実はこのプチ庭園、長年手塩にかけた彼女の魔力によって、神域霊域レベルのレア植物生息地となっていた。
そうとは知らないまま、輿入れ初日にボロボロになって帰ってきた結婚相手・クライヴを救ったのを皮切りに、彼の実家エヴァンス邸、勤め先である王城、さらにお世話になっている賢者様が司る大神殿と、次々に起こる事件を『あ、それならありますよ!』とプチ庭園でしれっと解決していくユーフェミア。果たして嫁ぎ先で平穏を手に入れられるのか。そして根っから世話好きで、何くれとなく構ってくれるクライヴVS自立したい甘えベタの若奥様の勝負の行方は?
*カクヨム様で先行掲載しております

ある公爵令嬢の生涯
ユウ
恋愛
伯爵令嬢のエステルには妹がいた。
妖精姫と呼ばれ両親からも愛され周りからも無条件に愛される。
婚約者までも妹に奪われ婚約者を譲るように言われてしまう。
そして最後には妹を陥れようとした罪で断罪されてしまうが…
気づくとエステルに転生していた。
再び前世繰り返すことになると思いきや。
エステルは家族を見限り自立を決意するのだが…
***
タイトルを変更しました!
『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる
農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」
そんな言葉から始まった異世界召喚。
呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!?
そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう!
このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。
勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定
私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。
ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。
他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。
なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。
大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです
飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。
だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。
勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し!
そんなお話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる