Grow 〜異世界群像成長譚〜

おっさん。

文字の大きさ
上 下
15 / 132
おはよ。

第15話 メグルと泳ぎ名人

しおりを挟む
 僕は魔物の死体から魔臓を取り出していく。
 魔臓とは魔物が魔力をためる部位で、ほとんどの魔物が有しているのだ。

 その豊富な魔力のおかげで腐敗しにくく、ほかの肉が腐り落ちても原形をとどめたまま残るので、魔力を感じ取ることのできない僕でも見分けることができた。
 そういう意味では腐敗が進行していて運がよかったのかもしれない。

 取り出した魔臓はどんどんとつるで縛っていき、体に巻き付けられるようにしていく。

 魔臓として残る部位は様々だ。
 眼球や耳、臓器や肉塊等はまだわかりやすい方で、角や牙、骨などは元々腐らないので分かりにくい。
 
 まぁ現在、手っ取り早く判断することはできないので手当たり次第、臓器の袋に詰めていくしかないのだが。

 散らばる魔臓を回収し終えるころには湖の向こうからレトが帰ってきた。

 この辺りから発生する毒は水によく溶け、体内に取り込まない限り、強い毒性も発揮されない。
 雨水で氾濫している今は毒が水に十分溶け、気化しない。その為、湖に浸かっても問題ないようだった。
 …勿論、水に毒は含まれているのでケガなどをしていたり、水を飲んでしまえば危険な事に変わりないけどね。

 しかし、こちらの姿が見えるようになると、レトは時折水中に潜っては沈んでいる死体を貪り始めた。

 そんな事をして目や口から水が入らない訳が無いので、レトはこの毒にある程度耐性があるのかもしれない。
 泳ぎも他の兄弟より、数段上手い…。まさか、投げられ慣れている?

 いや、でも考えてみれば毒への耐性は当たり前か。だってその水で濡れている魔臓を皆、貪っているのだから。毒を摂取しない訳がない。

 レトはたまに見せつけるように大きな魔臓を掲げてくるので、もう食事を終えた皆が少し苛立っている。
 如何やら皆も流石にこの毒沼には入りたくないらしい。

 確かに臭いもすごいし、体に悪そうだもんね…。
 そういう意味での罰ゲームなのだろうが、この泳ぎのうまさから察するに、毎回投げられているであろうレトは一周回って吹っ切れたというところだろうか。

 可哀想に…。
 いや、あのにくたらしいどや顔を見るとそうでもないか。

 レトが岸につくのを待つことなく、皆がきびすを返すと森に向かって歩き始めた。
 僕も姉さんにくわえられその場を後にする。

 レトは慌てるように着いてきたが、皆がぐんぐんと速度を上げていき、その内レトは見えなくなってしまった。

 水の中で威張ったバツだ。
 …それとちょっと臭すぎる…。

 その瞬間だけは兄弟皆の声がしっかり聞こえた気がした。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

称号チートで異世界ハッピーライフ!~お願いしたスキルよりも女神様からもらった称号がチートすぎて無双状態です~

しらかめこう
ファンタジー
「これ、スキルよりも称号の方がチートじゃね?」 病により急死した主人公、突然現れた女神によって異世界へと転生することに?! 女神から様々なスキルを授かったが、それよりも想像以上の効果があったチート称号によって超ハイスピードで強くなっていく。 そして気づいた時にはすでに世界最強になっていた!? そんな主人公の新しい人生が平穏であるはずもなく、行く先々で様々な面倒ごとに巻き込まれてしまう...?! しかし、この世界で出会った友や愛するヒロインたちとの幸せで平穏な生活を手に入れるためにどんな無理難題がやってこようと最強の力で無双する!主人公たちが平穏なハッピーエンドに辿り着くまでの壮大な物語。 異世界転生の王道を行く最強無双劇!!! ときにのんびり!そしてシリアス。楽しい異世界ライフのスタートだ!! 小説家になろう、カクヨム等、各種投稿サイトにて連載中。毎週金・土・日の18時ごろに最新話を投稿予定!!

元邪神って本当ですか!? 万能ギルド職員の業務日誌

紫南
ファンタジー
十二才の少年コウヤは、前世では病弱な少年だった。 それは、その更に前の生で邪神として倒されたからだ。 今世、その世界に再転生した彼は、元家族である神々に可愛がられ高い能力を持って人として生活している。 コウヤの現職は冒険者ギルドの職員。 日々仕事を押し付けられ、それらをこなしていくが……? ◆◆◆ 「だって武器がペーパーナイフってなに!? あれは普通切れないよ!? 何切るものかわかってるよね!?」 「紙でしょ? ペーパーって言うし」 「そうだね。正解!」 ◆◆◆ 神としての力は健在。 ちょっと天然でお人好し。 自重知らずの少年が今日も元気にお仕事中! ◆気まぐれ投稿になります。 お暇潰しにどうぞ♪

異世界大使館はじめます

あかべこ
ファンタジー
外務省の窓際官僚・真柴春彦は異世界に新たに作られる大使館の全権特任大使に任命されることになるが、同じように派遣されることになった自衛官の木栖は高校時代からの因縁の相手だった。同じように訳ありな仲間たちと異世界での外交活動を開始するが異世界では「外交騎士とは夫婦でなるもの」という暗黙の了解があったため真柴と木栖が同性の夫婦と勘違いされてしまい、とりあえずそれで通すことになり……?! チート・俺TUEEE成分なし。異性愛や男性同士や女性同士の恋愛、獣人と人間の恋愛アリ。 不定期更新。表紙はかんたん表紙メーカーで作りました。 作中の法律や料理についての知識は、素人が書いてるので生ぬるく読んでください。 カクヨム版ありますhttps://kakuyomu.jp/works/16817330651028845416 一緒に読むと楽しいスピンオフhttps://www.alphapolis.co.jp/novel/2146286/633604170 同一世界線のはなしhttps://www.alphapolis.co.jp/novel/2146286/905818730 https://www.alphapolis.co.jp/novel/2146286/687883567

ソロ冒険者のぶらり旅~悠々自適とは無縁な日々~

にくなまず
ファンタジー
今年から冒険者生活を開始した主人公で【ソロ】と言う適正のノア(15才)。 その適正の為、戦闘・日々の行動を基本的に1人で行わなければなりません。 そこで元上級冒険者の両親と猛特訓を行い、チート級の戦闘力と数々のスキルを持つ事になります。 『悠々自適にぶらり旅』 を目指す″つもり″の彼でしたが、開始早々から波乱に満ちた冒険者生活が待っていました。

元34才独身営業マンの転生日記 〜もらい物のチートスキルと鍛え抜いた処世術が大いに役立ちそうです〜

ちゃぶ台
ファンタジー
彼女いない歴=年齢=34年の近藤涼介は、プライベートでは超奥手だが、ビジネスの世界では無類の強さを発揮するスーパーセールスマンだった。 社内の人間からも取引先の人間からも一目置かれる彼だったが、不運な事故に巻き込まれあっけなく死亡してしまう。 せめて「男」になって死にたかった…… そんなあまりに不憫な近藤に神様らしき男が手を差し伸べ、近藤は異世界にて人生をやり直すことになった! もらい物のチートスキルと持ち前のビジネスセンスで仲間を増やし、今度こそ彼女を作って幸せな人生を送ることを目指した一人の男の挑戦の日々を綴ったお話です!

ある公爵令嬢の生涯

ユウ
恋愛
伯爵令嬢のエステルには妹がいた。 妖精姫と呼ばれ両親からも愛され周りからも無条件に愛される。 婚約者までも妹に奪われ婚約者を譲るように言われてしまう。 そして最後には妹を陥れようとした罪で断罪されてしまうが… 気づくとエステルに転生していた。 再び前世繰り返すことになると思いきや。 エステルは家族を見限り自立を決意するのだが… *** タイトルを変更しました!

転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。

克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります! 辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。

処理中です...