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おはよ。
第11話 メグルと初めての夜歩き
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日が落ち、外は真っ暗だった。
空はまだどんよりとした雲を抱え込んでいた事もあって、夜闇がさらに深くなる。
「この様子だと明日も降りそうだね…」
セッタ姉さんの背に乗ったまま森の中を移動する僕は誰に言うわけでもなくそう呟いた。
すると、姉さんが「おぅ」と、短く返事を返してくれる。
これは肯定的な返事のはずだ。
もう何週間も一緒に過ごしているので簡単な意思表示は理解できるようになっている。
マロウさんと比べれば足元にも及ばないけどね。
兄弟皆人間の言葉をある程度理解しているので、意思疎通と言う点では僕が一番拙い。
まぁ最年少だし許してくれるよね?
セッタ姉さんを先頭に兄弟たちが付いてくる。
いつも女性陣に翻弄されているイメージのハウンド。
ふざけ合っているコッカ―達が一糸乱れぬ隊列で辺りを警戒している姿を見ると、いつも家でゴロゴロしている父さんの仕事っぷりを見せつけられた気分だった。
しかし、何故突然に僕を夜の森へと連れだしたのだろうか。
それにどこに向かっているのかも気になる。
何かを獲物を探っている様子もないので、目的地はあるのだろうが…。狩場か何かだろうか。
疑問を声に出したいのは山々なのだが、いつも騒がしいコッカ―達までもが真剣に辺りを見回している様子を見ると、簡単に声は出せなかった。
きっとそれ程に夜の森と言うのは恐ろしいのだろう。
…というかさっきのセッタ姉さんの返事は本当に肯定だったのだろうか。
実は諫められていたりして…。ありうる…。
心配になり姉さんを見つめるが、特に変わった様子はない。
僕もあれから一言も発していないし、忠告を破ったことにはならないだろうが…。
余計に声を掛けにくくなってしまった。
無言でセッタ姉さんの背に揺られる事、数十分。物凄い勢いで水が流れる音が聞こえてきた。
きっといつも使っている川が連日の大雨で氾濫したのだろう。
何故か姉さんたちはその音のする方向に近づいていく。
氾濫した川になんて立ち寄って何をしようと言うのだろうか。
流石にこれだけの轟音の中では声を出しても大丈夫だろうと、口を開く。
「姉さんたちは何をするつもりなの?」
しかし、返ってきたのは「わふ」と息を抜くような短い返事だけ。
着けばわかるという事だろうか?
そのまましばらく歩くと案の定、氾濫した川が見えてきた。
いつも広く感じていた河原が、丁度氾濫区域だったのだろう。
森の入り口まで濁流が押し寄せていたが、木がなぎ倒されている様子はなかった。
…それでも危ないことに変わりはないが。
姉さんたちは氾濫した川縁を上流へと向かって進んでいく。
一体何があるというのだろうか。
僕は”記憶”を引き出そうとするが、残念ながらこの山に関する物はない。
まぁ、思い出そうとして思い出せる事など殆ど無いので、眠っているだけかもしれないが。
姉さんたちはしきりに足元を気にしている。
何かを探しているようだが、この様子だと、上から濁流によって運ばれてくる物を探しているようだ。
しかし、お目当てのものがなかったのだろう。
姉さんたちは探し物に熱中しているのか、どんどんと川を遡って行く。
その速度は徐々に増していき、僕はしがみ付くので精いっぱいだった。
空はまだどんよりとした雲を抱え込んでいた事もあって、夜闇がさらに深くなる。
「この様子だと明日も降りそうだね…」
セッタ姉さんの背に乗ったまま森の中を移動する僕は誰に言うわけでもなくそう呟いた。
すると、姉さんが「おぅ」と、短く返事を返してくれる。
これは肯定的な返事のはずだ。
もう何週間も一緒に過ごしているので簡単な意思表示は理解できるようになっている。
マロウさんと比べれば足元にも及ばないけどね。
兄弟皆人間の言葉をある程度理解しているので、意思疎通と言う点では僕が一番拙い。
まぁ最年少だし許してくれるよね?
セッタ姉さんを先頭に兄弟たちが付いてくる。
いつも女性陣に翻弄されているイメージのハウンド。
ふざけ合っているコッカ―達が一糸乱れぬ隊列で辺りを警戒している姿を見ると、いつも家でゴロゴロしている父さんの仕事っぷりを見せつけられた気分だった。
しかし、何故突然に僕を夜の森へと連れだしたのだろうか。
それにどこに向かっているのかも気になる。
何かを獲物を探っている様子もないので、目的地はあるのだろうが…。狩場か何かだろうか。
疑問を声に出したいのは山々なのだが、いつも騒がしいコッカ―達までもが真剣に辺りを見回している様子を見ると、簡単に声は出せなかった。
きっとそれ程に夜の森と言うのは恐ろしいのだろう。
…というかさっきのセッタ姉さんの返事は本当に肯定だったのだろうか。
実は諫められていたりして…。ありうる…。
心配になり姉さんを見つめるが、特に変わった様子はない。
僕もあれから一言も発していないし、忠告を破ったことにはならないだろうが…。
余計に声を掛けにくくなってしまった。
無言でセッタ姉さんの背に揺られる事、数十分。物凄い勢いで水が流れる音が聞こえてきた。
きっといつも使っている川が連日の大雨で氾濫したのだろう。
何故か姉さんたちはその音のする方向に近づいていく。
氾濫した川になんて立ち寄って何をしようと言うのだろうか。
流石にこれだけの轟音の中では声を出しても大丈夫だろうと、口を開く。
「姉さんたちは何をするつもりなの?」
しかし、返ってきたのは「わふ」と息を抜くような短い返事だけ。
着けばわかるという事だろうか?
そのまましばらく歩くと案の定、氾濫した川が見えてきた。
いつも広く感じていた河原が、丁度氾濫区域だったのだろう。
森の入り口まで濁流が押し寄せていたが、木がなぎ倒されている様子はなかった。
…それでも危ないことに変わりはないが。
姉さんたちは氾濫した川縁を上流へと向かって進んでいく。
一体何があるというのだろうか。
僕は”記憶”を引き出そうとするが、残念ながらこの山に関する物はない。
まぁ、思い出そうとして思い出せる事など殆ど無いので、眠っているだけかもしれないが。
姉さんたちはしきりに足元を気にしている。
何かを探しているようだが、この様子だと、上から濁流によって運ばれてくる物を探しているようだ。
しかし、お目当てのものがなかったのだろう。
姉さんたちは探し物に熱中しているのか、どんどんと川を遡って行く。
その速度は徐々に増していき、僕はしがみ付くので精いっぱいだった。
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