4 / 132
おはよ。
第4話 メグルと新しい日常
しおりを挟む
僕は今、マロウさんの厚意に甘えて一緒に生活させてもらっている。
同じくマロウさんの下で暮らしている狼7兄弟とも仲良くなれた。
優しい白毛のお姉さんセッタを中心に。
常に凛とし辺りを警戒している黒毛の副官、ハウンド。
従順なレトとステリア。
陽気で活発なコッカーとビーグ。
飛びぬけて好奇心の強いシバ。
マロウさんとの関係性は、幼いころにマロウさんに拾われ、育てられたセッタが彼女を慕ってこの場所を拠点としているらしい。
その他の兄弟は何処からともなくセッタが連れてきたようだが、結局の所、皆、マロウさんとセッタを慕っているようだった。
現在、日が昇り始め、兄弟たちは家に獲物を持って帰ってきた。
皆自分達が食べる分はその場で食しているので持って帰ってきたのは鹿の様な生き物を一頭だけだが、それでも僕らの食事には十分すぎる量だ。
セッタは僕の3倍近くあるアルビノの巨体をマロウさんに擦り寄せ、構って貰っている。
気持ちよさそうにマロウさんに撫でられているセッタの様子を眺めるハウンド。
セッタに好意を抱《いだ》きつつも、マロウさんに構って貰って羨ましいと言う葛藤から何とも言えない表情をしている。
そのハウンドに好意を抱いているステリアが凛とした姿勢のままその隣に座り、尻尾で彼の背中を叩いて励ましている。
そんな三人などお構いなくじゃれ合っているコッカーとビーグを見て、レトが呆れたような表情をしていた。
皆昼間は洞窟にいる事が多く、日が傾き始めると出かけていく。
セッタの体毛が白いので昼間の狩りには向いていないのだ。
逆に他の狼よりも黒い体毛を持つハウンドは夜闇が有利に働くだろう。
それに加えて昼は他の群れの狼達も獲物を探している。
争いを避けるためにも狩りの時間をずらしているようだった。
因みにこの辺りの狼は成体でも体長が1mと少し小柄で辺りの色に同化するために茶色い体毛をしている。
体長が3m以上あるアルビノのセッタと体毛が黒いハウンドは異常個体なのだろう。
僕は現在、そんな皆を見ながら洞窟の外で木に吊るした鹿の解体をしている。
解体に使っている刃物は皮肉にもその鹿からとれる鋭い角のナイフだった。
ナイフと言っても鋭い角の部分を折っかいて、持ち手部分に木の皮を巻いただけの簡素な物なのだが。
まぁ肉程度なら何とか斬れる。
子どもの筋力で肉が切れるのだから、鹿が全力で頭を振れば僕の首なんて一瞬で飛ぶだろう。
因みに僕が来るまではマロウさんの鋭い爪によってバラバラにしていたらしい。
その鋭さはこのナイフの比ではなく、撫でただけで肉を切り裂くので日常生活でもかなり気を遣っているようだった。
またその腕力も凄まじい。
僕がこの辺りの日当たりをよくしたいから木を切り倒すような物は無いか。と聞いたら、直径1mほどある木の幹を掴んで、ねじ伏せるように根っ子ごと木を倒してくれた。
正直ちょっと…。いや、かなりビビった。
だって、いつも僕の隣で寝てるんだよ?
それにあんなに安らかな寝顔をしながら寝相が良く無くて、いつも僕の事を抱き寄せてくるんだ。
その際ふいにあの鋭い爪と、握力でぎゅっとされたらと思うと…。
ゴーヤと言う植物が種を飛ばす瞬間が脳内で再生され、身震いがした。
しかし、おかげでこの辺りは日当たりが良くなり、洗濯物や肉が干せるようになった。
その気になれば土壌も良いので植物も育てられるだろう。
現在抜かれた丸太は僕に枝を落とされ、マロウさんの手によって日当たりの良くなった洞窟付近の岩場に干されている。
頼んだのは僕なのだが、初めの数日間、葉を茂らせ、根っ子を見せたまま岩の上に横たわっている木を見ていると、どことなく哀愁を帯びているような気がして目が合わせられなかった。
村で父さんに教わった通りに動物の腸を抜き終えると、地面にぶちまけた内臓は今か今かと待っていたコッカーとビーグに上げてしまった。
この二人は上下関係を気にしない為、こちらも気軽に接するができる。
お姉さんのセッタは優しいが、対等と言う感じではないし、ハウンド、レト、ステリアに至っては他人行儀で距離を感じる。
シバは自由奔放でほぼ帰ってこないしね。
僕は剥いだ皮を丸太の上に被せ乾かす。
削ぎきれなかった油が多少残ってしまったが、乾かせば多少ましになるだろうし、木の皮が油脂を吸って蝋になってくれるかも知れない。
火を一々つけるのは非常に面倒なのだ。
蝋ができれば篝火を常に焚いて、そこから火をもらえばかなり便利になるだろう。
そんな事を考えつつ鹿の関節を外して脚を落としたり、腹の肉をそぎ落として鹿の解体を進めていく。
体の半分がなくなる頃には兄弟たちの姿が消えていた。如何やら洞窟奥の寝床に向かったらしい。
あともうひと踏ん張り!
汗を拭って鹿と向き合う。
朝の冷たい空気と、優しくこちらを見つめるマロウさんの視線が心地よかった。
同じくマロウさんの下で暮らしている狼7兄弟とも仲良くなれた。
優しい白毛のお姉さんセッタを中心に。
常に凛とし辺りを警戒している黒毛の副官、ハウンド。
従順なレトとステリア。
陽気で活発なコッカーとビーグ。
飛びぬけて好奇心の強いシバ。
マロウさんとの関係性は、幼いころにマロウさんに拾われ、育てられたセッタが彼女を慕ってこの場所を拠点としているらしい。
その他の兄弟は何処からともなくセッタが連れてきたようだが、結局の所、皆、マロウさんとセッタを慕っているようだった。
現在、日が昇り始め、兄弟たちは家に獲物を持って帰ってきた。
皆自分達が食べる分はその場で食しているので持って帰ってきたのは鹿の様な生き物を一頭だけだが、それでも僕らの食事には十分すぎる量だ。
セッタは僕の3倍近くあるアルビノの巨体をマロウさんに擦り寄せ、構って貰っている。
気持ちよさそうにマロウさんに撫でられているセッタの様子を眺めるハウンド。
セッタに好意を抱《いだ》きつつも、マロウさんに構って貰って羨ましいと言う葛藤から何とも言えない表情をしている。
そのハウンドに好意を抱いているステリアが凛とした姿勢のままその隣に座り、尻尾で彼の背中を叩いて励ましている。
そんな三人などお構いなくじゃれ合っているコッカーとビーグを見て、レトが呆れたような表情をしていた。
皆昼間は洞窟にいる事が多く、日が傾き始めると出かけていく。
セッタの体毛が白いので昼間の狩りには向いていないのだ。
逆に他の狼よりも黒い体毛を持つハウンドは夜闇が有利に働くだろう。
それに加えて昼は他の群れの狼達も獲物を探している。
争いを避けるためにも狩りの時間をずらしているようだった。
因みにこの辺りの狼は成体でも体長が1mと少し小柄で辺りの色に同化するために茶色い体毛をしている。
体長が3m以上あるアルビノのセッタと体毛が黒いハウンドは異常個体なのだろう。
僕は現在、そんな皆を見ながら洞窟の外で木に吊るした鹿の解体をしている。
解体に使っている刃物は皮肉にもその鹿からとれる鋭い角のナイフだった。
ナイフと言っても鋭い角の部分を折っかいて、持ち手部分に木の皮を巻いただけの簡素な物なのだが。
まぁ肉程度なら何とか斬れる。
子どもの筋力で肉が切れるのだから、鹿が全力で頭を振れば僕の首なんて一瞬で飛ぶだろう。
因みに僕が来るまではマロウさんの鋭い爪によってバラバラにしていたらしい。
その鋭さはこのナイフの比ではなく、撫でただけで肉を切り裂くので日常生活でもかなり気を遣っているようだった。
またその腕力も凄まじい。
僕がこの辺りの日当たりをよくしたいから木を切り倒すような物は無いか。と聞いたら、直径1mほどある木の幹を掴んで、ねじ伏せるように根っ子ごと木を倒してくれた。
正直ちょっと…。いや、かなりビビった。
だって、いつも僕の隣で寝てるんだよ?
それにあんなに安らかな寝顔をしながら寝相が良く無くて、いつも僕の事を抱き寄せてくるんだ。
その際ふいにあの鋭い爪と、握力でぎゅっとされたらと思うと…。
ゴーヤと言う植物が種を飛ばす瞬間が脳内で再生され、身震いがした。
しかし、おかげでこの辺りは日当たりが良くなり、洗濯物や肉が干せるようになった。
その気になれば土壌も良いので植物も育てられるだろう。
現在抜かれた丸太は僕に枝を落とされ、マロウさんの手によって日当たりの良くなった洞窟付近の岩場に干されている。
頼んだのは僕なのだが、初めの数日間、葉を茂らせ、根っ子を見せたまま岩の上に横たわっている木を見ていると、どことなく哀愁を帯びているような気がして目が合わせられなかった。
村で父さんに教わった通りに動物の腸を抜き終えると、地面にぶちまけた内臓は今か今かと待っていたコッカーとビーグに上げてしまった。
この二人は上下関係を気にしない為、こちらも気軽に接するができる。
お姉さんのセッタは優しいが、対等と言う感じではないし、ハウンド、レト、ステリアに至っては他人行儀で距離を感じる。
シバは自由奔放でほぼ帰ってこないしね。
僕は剥いだ皮を丸太の上に被せ乾かす。
削ぎきれなかった油が多少残ってしまったが、乾かせば多少ましになるだろうし、木の皮が油脂を吸って蝋になってくれるかも知れない。
火を一々つけるのは非常に面倒なのだ。
蝋ができれば篝火を常に焚いて、そこから火をもらえばかなり便利になるだろう。
そんな事を考えつつ鹿の関節を外して脚を落としたり、腹の肉をそぎ落として鹿の解体を進めていく。
体の半分がなくなる頃には兄弟たちの姿が消えていた。如何やら洞窟奥の寝床に向かったらしい。
あともうひと踏ん張り!
汗を拭って鹿と向き合う。
朝の冷たい空気と、優しくこちらを見つめるマロウさんの視線が心地よかった。
0
お気に入りに追加
9
あなたにおすすめの小説

鑑定能力で恩を返す
KBT
ファンタジー
どこにでもいる普通のサラリーマンの蔵田悟。
彼ははある日、上司の悪態を吐きながら深酒をし、目が覚めると見知らぬ世界にいた。
そこは剣と魔法、人間、獣人、亜人、魔物が跋扈する異世界フォートルードだった。
この世界には稀に異世界から《迷い人》が転移しており、悟もその1人だった。
帰る方法もなく、途方に暮れていた悟だったが、通りすがりの商人ロンメルに命を救われる。
そして稀少な能力である鑑定能力が自身にある事がわかり、ブロディア王国の公都ハメルンの裏通りにあるロンメルの店で働かせてもらう事になった。
そして、ロンメルから店の番頭を任された悟は《サト》と名前を変え、命の恩人であるロンメルへの恩返しのため、商店を大きくしようと鑑定能力を駆使して、海千山千の商人達や荒くれ者の冒険者達を相手に日夜奮闘するのだった。

独身おじさんの異世界ライフ~結婚しません、フリーな独身こそ最高です~
さとう
ファンタジー
町の電気工事士であり、なんでも屋でもある織田玄徳は、仕事をそこそこやりつつ自由な暮らしをしていた。
結婚は人生の墓場……父親が嫁さんで苦労しているのを見て育ったため、結婚して子供を作り幸せな家庭を作るという『呪いの言葉』を嫌悪し、生涯独身、自分だけのために稼いだ金を使うと決め、独身生活を満喫。趣味の釣り、バイク、キャンプなどを楽しみつつ、人生を謳歌していた。
そんなある日。電気工事の仕事で感電死……まだまだやりたいことがあったのにと嘆くと、なんと異世界転生していた!!
これは、異世界で工務店の仕事をしながら、異世界で独身生活を満喫するおじさんの物語。

強奪系触手おじさん
兎屋亀吉
ファンタジー
【肉棒術】という卑猥なスキルを授かってしまったゆえに皆の笑い者として40年間生きてきたおじさんは、ある日ダンジョンで気持ち悪い触手を拾う。後に【神の触腕】という寄生型の神器だと判明するそれは、その気持ち悪い見た目に反してとんでもない力を秘めていた。
💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活
XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。
光のもとで2
葉野りるは
青春
一年の療養を経て高校へ入学した翠葉は「高校一年」という濃厚な時間を過ごし、
新たな気持ちで新学期を迎える。
好きな人と両思いにはなれたけれど、だからといって順風満帆にいくわけではないみたい。
少し環境が変わっただけで会う機会は減ってしまったし、気持ちがすれ違うことも多々。
それでも、同じ時間を過ごし共に歩めることに感謝を……。
この世界には当たり前のことなどひとつもなく、あるのは光のような奇跡だけだから。
何か問題が起きたとしても、一つひとつ乗り越えて行きたい――
(10万文字を一冊として、文庫本10冊ほどの長さです)

少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。
30代社畜の私が1ヶ月後に異世界転生するらしい。
ひさまま
ファンタジー
前世で搾取されまくりだった私。
魂の休養のため、地球に転生したが、地球でも今世も搾取されまくりのため魂の消滅の危機らしい。
とある理由から元の世界に戻るように言われ、マジックバックを自称神様から頂いたよ。
これで地球で買ったものを持ち込めるとのこと。やっぱり夢ではないらしい。
取り敢えず、明日は退職届けを出そう。
目指せ、快適異世界生活。
ぽちぽち更新します。
作者、うっかりなのでこれも買わないと!というのがあれば教えて下さい。
脳内の空想を、つらつら書いているのでお目汚しな際はごめんなさい。

悪役顔のモブに転生しました。特に影響が無いようなので好きに生きます
竹桜
ファンタジー
ある部屋の中で男が画面に向かいながら、ゲームをしていた。
そのゲームは主人公の勇者が魔王を倒し、ヒロインと結ばれるというものだ。
そして、ヒロインは4人いる。
ヒロイン達は聖女、剣士、武闘家、魔法使いだ。
エンドのルートしては六種類ある。
バットエンドを抜かすと、ハッピーエンドが五種類あり、ハッピーエンドの四種類、ヒロインの中の誰か1人と結ばれる。
残りのハッピーエンドはハーレムエンドである。
大好きなゲームの十回目のエンディングを迎えた主人公はお腹が空いたので、ご飯を食べようと思い、台所に行こうとして、足を滑らせ、頭を強く打ってしまった。
そして、主人公は不幸にも死んでしまった。
次に、主人公が目覚めると大好きなゲームの中に転生していた。
だが、主人公はゲームの中で名前しか出てこない悪役顔のモブに転生してしまった。
主人公は大好きなゲームの中に転生したことを心の底から喜んだ。
そして、折角転生したから、この世界を好きに生きようと考えた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる