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2 魔物使い……ではなく猫使いです
しおりを挟む再び目を覚ました一人と一匹は周囲をキョロキョロと見渡す。
「ここは何処だ?」
「にゃあ?」
男はなぜ猫が頭の上に乗っかって召喚されたのかには触れない。
「って、なんだこれ? 視界が……ボヤける?」
周囲をはっきりと見えなくて、男はコンタクトレンズを外す。
「あれ? 視力が回復してる!」
異世界に召喚された人が最も困るのは視力だ。
コンタクトレンズという便利な道具など存在しなければ、ビン底のような眼鏡も貴重な品である。
戦うことが出来ないといった男に神が与えた数少ない加護の一つなのだが、男はまだそのことを知らない。
そして周囲をハッキリと見えるようになった頃、マントを纏った女性が男の目の前にやってきた。
「勇者様、どうかこの世界を救ってください」
「はい?……ってあれ? 言葉が理解出来てる」
異世界で言葉が通じないことを不安視していた男は安堵する。
「神託の勇者様には様々な神様の加護が与えられると聞いています。なので言語理解もその一つなのでしょう」
「へぇー……しかし世界を救うとはどういうことですか?」
「な、な、な、それは一体!?」
跪き祈るように話していた女性はようやく上を見たのだが、男の頭の上にいる猫に気付き固まる。
「えっ? ああ、これですか。これは猫ですよ」
「にゃあ!」
男は猫を手に取り、女性に見せる。
「猫? それは魔物ではないのですか?」
「魔物? いや、ただの動物ですよ。この世界には猫はいないのですか?」
「そのような生き物はこの世界にはいません。ですが……」
「ですが?」
「かわ……い、いえ何でもありません。勇者様は魔物使いの才能があるのやもしれませんね」
女性は猫を触りたそうにするが、場所と役目を弁えて堪える。
「そうなのですか……では、先ほどの話の続きを教えて貰えますか?」
「はい──」
女性がこの世界について説明をする。
この世界には魔物と呼ばれる人を襲う生き物がいて、人は戦い領地を守って生活をしているのだ。
テイムされ共生をしている魔物もいるが、それは稀な例である。
更に魔物の数が増えると厄災と呼ばれる魔王種が誕生し、ただの人では太刀打ち出来なくなってしまう。
そこで異世界より神から特別な加護を施された勇者を召喚し、魔王種と戦ってもらうのだ。
「ちょっと待ってください。その神にも言いましたが、俺は戦いなんて出来ませんよ? 特別な加護と言われても、そんな実感なんて無いですし……」
「いえ何かしらの加護は与えられている筈です。それは調べれば分かることですのでご心配なく」
「そうなのですか?」
「にゃあ?」
「はい。疑問は尽きないかもしれませんが、国王様が勇者様をお待ちですので、まずは付いてきて下さいますか?」
「……分かりました」
「にゃあ」
こうして一人と一匹は国王様に謁見することになった。
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