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《R-18》55-2 別れ《R-18》

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とくとくという振動と、いつのまにか私から絡めていた足から彼の臀部がブルブルと震えたのを感じると同時に、自分の瞳孔が開くのが分かった。
 眼前の彼も驚いていて、瞳孔が開ききり私の瞳が映る。映った私の顔も彼と同じ。

 あ、この人だ。と分かった。この人が私の唯一の人だ。

 数秒でそれは収まって、くたっと彼が覆いかぶさった。

「ぷっくくく」
「ふふっ」

 笑い声は同時だ。

「今の、感じましたか?」
「おお、めっちゃフィジカルやんけ」

 ひとしきり笑って、またキスをする。満たされて、そして、彼の魂を自分の中に感じた。

「……アルバートさん、私の事、こんなに好きだったんですか?」
「自分もやん」

 愛情が直接伝わって来て、彼が私と同じくらいずっと想ってくれていた事、そして繋がりたいという思いを必死に殺していた事を知る。

「さんづけ、ええ加減辞めよか」
「アル?」
「せや」
「アル?」
「なんや?」

「すき」

 また、キスされる。

「知っとる。……おっ?」

 私の口から移った彼の唇が、耳下腺に沿っうようにして、それから彼は小さく驚いた。

「サヤ、エラできとるで」
「え?」
「ほれ」

 慌てて触れられた場所を触ると、ザラザラした硬い鱗のような物を感じた。

「俺の能力移ったんやろか?」
「それだけ私がアルを欲しかったんだよ」
「それやと俺はこんな華奢になるってか。それはかなわんな」

 腰に手を当てられて、私はもう一度欲しいと思った。が、彼は私から外に出て行ってしまった。とろっと脚を伝うのは、私の血だけでは無い。

「動けそうやったら、池の方行ってみよか」
「んっ」

 下腹部の疲労でか、足が覚束ない。するとアルは私を抱き上げた。
 池のほとりに私を下ろして、まずは彼が池に入る。今度は体力が削がれることは無かった。そして、私も中へ。

 水中の方が痛みも薄く、そして動きやすい。思い切ってもぐってみると地上より呼吸もし易くなっていた。

「ゆっくり、な。いきなりスピードだすと溺れる」
「はい」

 裸のまま二人で少し泳いだ。水流が気持ちよく、水を伝う心臓の音しか聞こえない。私と彼の心臓の鼓動は同調していて、世界に二人しかいないのかと思うほどだ。

「サヤ」

 背後から抱きすくめられて、私は身を任せる。背後から唐突に交尾は始まる。

「あっんっ」

 一気に貫かれて、一気に絶頂へ。ぐりっと押し付けられて、私はまた意識が飛びそうになる。

「おぼ、れ、ちゃうよ」
「それはあかんな」

 顔だけ水面上にだすと、後ろから彼は口を塞ぐ。そんなに吸われて、舌をかめとられちゃうと息はやっぱり出来ない。

 繋がったままほとりにたどり着き、四つ這いになる私を後ろから彼は何度も突いた。そして、びゅっと中に当たると同時に私の中は激しく痙攣して、弓なりになった。

 がりっ。

「痛っ!」

 首の後ろに痛みが走った。今、私は齧られた?

「悪い、噛んでもうた」
「ん、ううん、大丈夫」

 手で触れて見ると、傷は意外と浅く、血もほとんど出ていない。

「痛かったか?」
「少し、でも、血も出てないみたいだし、もう痛くない」
「悪かった」
「ん、美味しそうだったの?」
「そりゃむしゃぶりつきたい位には。でも、もうせぇへんし」

 重ねた口からは、血の香りがした。

 それから、私達は何度もお互いを求めあった。

 口付けより深く、私達は繋がった。誰もいない水辺で、繋がる事は無いと思っていた心が繋がって、私は涙が溢れる。
 それを舐め取られて、全てを与えあって分け合って、愛し合った。

 本当に愛しています。愛して、いました。

 陽が落ちきってどれ程か経って目を覚ますと、アルは私の頭を撫でていた。

「あっ。アルはずっと?」
「……おはよーさん。寝顔可愛い過ぎて、隣で寝られるかいな」

 身を起こして、かけられていた服を手繰り寄せていると、キスされた。安心感と切なさと、今までと違う感覚があって魂の繋がりを感じる。

 天へのゲートは近くは無かった。けれど労ってくれた彼は私を抱いて、山を登った。道は険しくは無いけれど、何故か私は疲れが強くて、息もきれる。彼は私を抱いたまま問題なく登っていて、少し違和感を覚えた。

「アルは、苦しくないの?」
「おお」
「なんで、だろうね」
「……ええて、寝とき。さっき無理させたからやろ」

 寝ろ、と言われるといきなり睡魔に襲われた。体は動かなくなり、意識も下がっていく。
 ぽたり、と雫がかかった。心の目で彼を見ると、声も出さずにアルは泣いていた。

 泣かないで、私、今幸せだよ?抱きしめる事も出来ないまま、私は彼に抱かれていた。置いて行かなくてはならないけど、貴方がいる世界を私はずっと見守っていくから。

 ゲートが見えた辺りで、彼は私を下ろした。高い山では無いはず。なのにさっきより息が、苦しい?

 エウディさんが現れて、ぼんやりとエウディさんの説明をし忘れてたなと思った。

「アルちゃん、やってくれたわね」
「まぁ、そう言うこっちゃ」
「……その作戦、クロノが考えた事あるのよ。でも、早々に立ち消えたはずよ。流石にアルちゃんにはさせられないって。……誰から聞いたの?」
「龍族や。遠い親戚らしい。随分丁寧に教えてくれたわ」
「……アル?」

 アルは、エウディさんの前で私にキスをした。驚いたけど、それがエネルギーを送っているとすぐに気がついた。海で空気を送ってもらった時のように、彼は愛しそうに私を見つめる……え?

 何故、彼が、私にエネルギーを送る側なの?

「ど、して?」

 最悪の答えを思いついて、息が詰まり、声が出ない。

「気ぃついてもうたか。すまんな」
「そんな!嫌です!嫌!」
「ほんと、バカよ……」

 「まぁ、そう言いなや」と言ってエウディさんを振り返った彼の首の後ろには小さな二等辺三角形の刺青があった。魂が繋がったあの時、アルは私から鞘を噛みちぎっていた。

 慌てて、剣の入った葛籠を検めたが、そこにはすでに眼球は無かった。

「心配しんとき。この力使うつもりはないねん」

 アルが使うとは思ってない。思ってなんか無い。
 そう叫びたいのに、再び力が抜けてゆき立てなくなった。
 彼は私に近づいて、龍の鱗にキスした。

「これで、しばらくはもつ。俺らがゲート閉まるまでの辛抱やし」
「いや、です。私も、連れて、いって?アル?」
「あかん、て。たまには姫さんやっとき。俺だけの姫さんや。俺がサヤみたいに華奢になったら困る言うたやろ。守らせてぇや。俺の宝物たからもんやねんから」

 そして、私の番は私の胸に手をかけて……そこから布が抜けて行った。


 息が苦しい。身体も熱い。目の前にいる背の高い男の人は、綺麗な布を腕に巻きつけていた。

「ほな、またな」

 豪快に笑ったその声を私は知っている気がする。
 彼はそのまま、エウディさんに似た羽の生えた人と輝く扉の向こうがに消えていった。扉が閉まるその時まで、私は瞬きすらできなかった。

「なん、だったの?」

 扉が閉まると急激に体が楽になった。何故か私は泣いていて、記憶を辿ろうとしてもうまく辿れず混乱した。

「主人様?!」
「クロノ?」

 ここに来れないはずのクロノがやってきて驚き、何故来れないと思ったのか分からない事に驚いた。それをそのまま、問われたままにクロノに伝えた。

「アルは、彼は、またな、と?」
「うん、知り合い?」

 クロノの片目から一筋涙が流れて、こんな泣き方もするんだとまた驚いた。

「彼は私の親友です。彼は今まで一度も約束を破った事は無い。ですから……」

 朝日の登る中、クロノは扉を見上げていた。
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