53 / 61
53
しおりを挟む
雨情は魔石の案内を終えた後、アッシャーやリオネット様を連れて物資を運んだ。
「何をやってんだ」と言うアッシャー達を雨情が診療室の裏の部屋に連れて行く。諸事情により、患者様が絶対立ち入り禁止になってる区域。うさぎ3にガーゼが足りないと言われて、私もその部屋に失礼する。案の定、雨情が隣の診察室の上映会をやっていた。
『これは……酷い。腕を失ったのはいつですか?』
『3年前です。農作業中に倒れてきた農具に挟まれて』
『こちらの病院の白魔道士は?』
『病院なんて、我々には!診療所で腐らないよう手当と痛みは止めてもらいました』
『信じられないですね。民は貴族の宝。すぐに処置すれば失う必要は無かった。……すみません、再生する事はできません。手と同じように動く義手で許していただけますか?失ってそのままという例を知りませんでした。いつか再生する様な技術を、……探し出してみせます』
迫真の演技で、リオネット様は涙ぐんでる。しかし、その後にペラペラ義手の多機能性を語り始めて台無し。
絶対義手の方が便利だと思ってるでしょ、リオネット様。と思ったのは見ている私達だけらしく、診察を受けていた患者さんは泣いて喜んで跪いていた。
『そんな、膝をつくなど。貴族の勤めを果たしているだけですから』
まだやるか。一緒に膝をついて立ち上がらせる。
「まぁ、この辺で。手術シーンは見ん方がええ。患者さんらも後でそこだけ記憶落とさせるし」
直後、断末魔の様な悲鳴がこだました。
「診療室とここ以外はぐるっと防音魔法も透視不可もかけてあんねん」
私が外でうさぎと働いている間にそんな事に。麻酔の概念は無いのか不憫極まりない。
外に戻るとアンズは一生懸命お仕事をしていた。
「リオネット様って、白魔道士だから残虐なのダメじゃないのかな?」
「治療とかはだいじょぶらしいよー」
「そーなんだ」
「それに、ショック死はしない様な魔法はかけてー!って雨情がリオネットに言ってた。雨情の時は何も無くてやばかったんだってー」
テントではすでに治された人達が休憩していた。可愛らしいフォルムの話せる使令達が、キビキビと手伝いの人達に指示を飛ばしている。
「そちらの患者さんは患部を冷やして。あちらの患者さん、目はしばらく開けない様に。……お手伝いの方々ありがとうございます。こちらの薬を運んでいただけますか?」
優秀すぎるうさぎだ。我々はうさぎの手足として右往左往。
そこに流石に騒ぎに気がついたのか、お役人さんが現れた。もう少し早くきたら結果は違ったかもしれない。病院から出てきたナルさんの色香でやられた後言いくるめられて、回れ右。所要時間十分。
アッシャー達の活躍するもあり、病院施設は整って、その日が終わった。
次の日、リオネット様は朝には宿にいた。ロイヤルグレイス公に今日も会いに行くのかと思ったら「え?行きませんよ?いそがしいですから」と笑顔のお答え。
それよりも、と私達は今度は機械と本を配りに行くアッシャーとナルさんの補助だ。機械や必要物資は既にサンダーランドから直接ホテルに運ばれて来ているので、それを各地で配りまくってるアッシャー達に補充して回る。
色香の力は凄くて、しかも出力を調整すればいい感じにカリスマ性だけ持たせられるらしい。
怨嗟を避ける機械が埋めてある場所は元々怨嗟の元が溜まりやすい場所だ。そこが万一機能しなくなった場合、この機会が役に立つ。平民、村の有力者、役人全員集めてそれぞれに充分量を渡すが、役人や有力者は取り分多くして管理したい。平民は自分達で持ちたがる。
そこにカリスマ性を高めたアッシャー達が、
「民は各自ひとつずつ。これは上のもんが奪っちゃいけない。村長は村人本人が使えなかったり、無くしたりした時に助けてやってくれ。最後の砦は役場だ。魔王を倒すまで、苦労をかけるがよろしく頼む」
とお願いして回っている。すごい慈善事業っぽいし、色香で従順になってるしで、御神託でも聞いてる顔です、皆さん。その何割かはアッシャー教にご入信、もといファンクラブにご入会。いかにも貴族なナルさんは最早説明不要。機械と一緒に入会案内書類もせっせと往復で運んで、ほぼ領内全てに本は行き渡った。
更に翌日、朝からロイヤルグレイス公の使いの方が『面会のお許し』を言いにきた。
「すみません。あいにく体調が優れないので、また後日」
リオネット様は顔色良くにこやかにお断りをして、宿屋の窓から診療所にご出勤。やる事が陰険。
今日は街の調査をして欲しいと言われたので街を出ると……。
「グッズに溢れてる……」
そこもかしこも、ナルさんやアッシャーだけでなく、雨情関連商品まで溢れていた。雨情……巻き込まれてる。
「マンチェスターからこちらに届く品の量も事前に増やしていたの、これを見越してたんだね」
「リオネットすごいー」
しかし、調査ってどうやってやれば良いんだろう?と思ったら、アンズがじゃんっと財布を出した。
「リオネットが頑張ったからカリンにご褒美だって!これ、カリンにお手紙!」
はて?と中身を見ると……、?
「スタンプラリー?」
手紙にはチェック項目があり、指示通りに動けばスタンプが押せる様になっている。スタンプは各要所にリオネット様が虫の使令を待たせてあるから、それを見つけて触れさせれば印が浮かび上がるそうだ。
問題は時々の内容。
「お買い物、ご飯、……お芝居を見てお茶して帰ってくる?」
「僕はエスコートの練習のテストって言われた!頑張る!」
頑張るって言われても、私外で遊んだ事が無いからサポート出来ないし、評価もできないよ?!
そんな事はお構いなしで、アンズは私の手を引いた。
「何をやってんだ」と言うアッシャー達を雨情が診療室の裏の部屋に連れて行く。諸事情により、患者様が絶対立ち入り禁止になってる区域。うさぎ3にガーゼが足りないと言われて、私もその部屋に失礼する。案の定、雨情が隣の診察室の上映会をやっていた。
『これは……酷い。腕を失ったのはいつですか?』
『3年前です。農作業中に倒れてきた農具に挟まれて』
『こちらの病院の白魔道士は?』
『病院なんて、我々には!診療所で腐らないよう手当と痛みは止めてもらいました』
『信じられないですね。民は貴族の宝。すぐに処置すれば失う必要は無かった。……すみません、再生する事はできません。手と同じように動く義手で許していただけますか?失ってそのままという例を知りませんでした。いつか再生する様な技術を、……探し出してみせます』
迫真の演技で、リオネット様は涙ぐんでる。しかし、その後にペラペラ義手の多機能性を語り始めて台無し。
絶対義手の方が便利だと思ってるでしょ、リオネット様。と思ったのは見ている私達だけらしく、診察を受けていた患者さんは泣いて喜んで跪いていた。
『そんな、膝をつくなど。貴族の勤めを果たしているだけですから』
まだやるか。一緒に膝をついて立ち上がらせる。
「まぁ、この辺で。手術シーンは見ん方がええ。患者さんらも後でそこだけ記憶落とさせるし」
直後、断末魔の様な悲鳴がこだました。
「診療室とここ以外はぐるっと防音魔法も透視不可もかけてあんねん」
私が外でうさぎと働いている間にそんな事に。麻酔の概念は無いのか不憫極まりない。
外に戻るとアンズは一生懸命お仕事をしていた。
「リオネット様って、白魔道士だから残虐なのダメじゃないのかな?」
「治療とかはだいじょぶらしいよー」
「そーなんだ」
「それに、ショック死はしない様な魔法はかけてー!って雨情がリオネットに言ってた。雨情の時は何も無くてやばかったんだってー」
テントではすでに治された人達が休憩していた。可愛らしいフォルムの話せる使令達が、キビキビと手伝いの人達に指示を飛ばしている。
「そちらの患者さんは患部を冷やして。あちらの患者さん、目はしばらく開けない様に。……お手伝いの方々ありがとうございます。こちらの薬を運んでいただけますか?」
優秀すぎるうさぎだ。我々はうさぎの手足として右往左往。
そこに流石に騒ぎに気がついたのか、お役人さんが現れた。もう少し早くきたら結果は違ったかもしれない。病院から出てきたナルさんの色香でやられた後言いくるめられて、回れ右。所要時間十分。
アッシャー達の活躍するもあり、病院施設は整って、その日が終わった。
次の日、リオネット様は朝には宿にいた。ロイヤルグレイス公に今日も会いに行くのかと思ったら「え?行きませんよ?いそがしいですから」と笑顔のお答え。
それよりも、と私達は今度は機械と本を配りに行くアッシャーとナルさんの補助だ。機械や必要物資は既にサンダーランドから直接ホテルに運ばれて来ているので、それを各地で配りまくってるアッシャー達に補充して回る。
色香の力は凄くて、しかも出力を調整すればいい感じにカリスマ性だけ持たせられるらしい。
怨嗟を避ける機械が埋めてある場所は元々怨嗟の元が溜まりやすい場所だ。そこが万一機能しなくなった場合、この機会が役に立つ。平民、村の有力者、役人全員集めてそれぞれに充分量を渡すが、役人や有力者は取り分多くして管理したい。平民は自分達で持ちたがる。
そこにカリスマ性を高めたアッシャー達が、
「民は各自ひとつずつ。これは上のもんが奪っちゃいけない。村長は村人本人が使えなかったり、無くしたりした時に助けてやってくれ。最後の砦は役場だ。魔王を倒すまで、苦労をかけるがよろしく頼む」
とお願いして回っている。すごい慈善事業っぽいし、色香で従順になってるしで、御神託でも聞いてる顔です、皆さん。その何割かはアッシャー教にご入信、もといファンクラブにご入会。いかにも貴族なナルさんは最早説明不要。機械と一緒に入会案内書類もせっせと往復で運んで、ほぼ領内全てに本は行き渡った。
更に翌日、朝からロイヤルグレイス公の使いの方が『面会のお許し』を言いにきた。
「すみません。あいにく体調が優れないので、また後日」
リオネット様は顔色良くにこやかにお断りをして、宿屋の窓から診療所にご出勤。やる事が陰険。
今日は街の調査をして欲しいと言われたので街を出ると……。
「グッズに溢れてる……」
そこもかしこも、ナルさんやアッシャーだけでなく、雨情関連商品まで溢れていた。雨情……巻き込まれてる。
「マンチェスターからこちらに届く品の量も事前に増やしていたの、これを見越してたんだね」
「リオネットすごいー」
しかし、調査ってどうやってやれば良いんだろう?と思ったら、アンズがじゃんっと財布を出した。
「リオネットが頑張ったからカリンにご褒美だって!これ、カリンにお手紙!」
はて?と中身を見ると……、?
「スタンプラリー?」
手紙にはチェック項目があり、指示通りに動けばスタンプが押せる様になっている。スタンプは各要所にリオネット様が虫の使令を待たせてあるから、それを見つけて触れさせれば印が浮かび上がるそうだ。
問題は時々の内容。
「お買い物、ご飯、……お芝居を見てお茶して帰ってくる?」
「僕はエスコートの練習のテストって言われた!頑張る!」
頑張るって言われても、私外で遊んだ事が無いからサポート出来ないし、評価もできないよ?!
そんな事はお構いなしで、アンズは私の手を引いた。
0
お気に入りに追加
41
あなたにおすすめの小説
私が美女??美醜逆転世界に転移した私
鍋
恋愛
私の名前は如月美夕。
27才入浴剤のメーカーの商品開発室に勤める会社員。
私は都内で独り暮らし。
風邪を拗らせ自宅で寝ていたら異世界転移したらしい。
転移した世界は美醜逆転??
こんな地味な丸顔が絶世の美女。
私の好みど真ん中のイケメンが、醜男らしい。
このお話は転生した女性が優秀な宰相補佐官(醜男/イケメン)に囲い込まれるお話です。
※ゆるゆるな設定です
※ご都合主義
※感想欄はほとんど公開してます。
二回目の異世界では見た目で勇者判定くらいました。ところで私は女です。お供は犬っぽいナルシストです。
吉瀬
恋愛
10歳で異世界を訪れたカリン。元の世界に帰されたが、異世界に残した兄を想い16歳で再び異世界に戻った。
しかし、戻った場所は聖女召喚の儀の真っ最中。誤解が誤解を呼んで、男性しかなれない勇者見習いに認定されてしまいました。
ところで私は女です。
致し方なく出た勇者の格付の大会で、訳あり名門貴族で若干ナルシストのナルさんが下僕になりました。
私は下僕を持つ趣味はありません。
「『この豚野郎』とお呼びください」ってなんだそれ。
ナルさんは豚じゃなくてむしろ犬だ!
√ナルニッサ
異世界で王城生活~陛下の隣で~
遥
恋愛
女子大生の友梨香はキャンピングカーで一人旅の途中にトラックと衝突して、谷底へ転落し死亡した。けれど、気が付けば異世界に車ごと飛ばされ王城に落ちていた。神様の計らいでキャンピングカーの内部は電気も食料も永久に賄えるられる事になった。
グランティア王国の人達は異世界人の友梨香を客人として迎え入れてくれて。なぜか保護者となった国陛下シリウスはやたらと構ってくる。一度死んだ命だもん、これからは楽しく生きさせて頂きます!
※キャンピングカー、魔石効果などなどご都合主義です。
※のんびり更新。他サイトにも投稿しております。
異世界で婚活を ~頑張った結果、狼獣人の旦那様を手に入れたけど、なかなか安寧には程遠い~
リコピン
恋愛
前世、会社勤務のかたわら婚活に情熱を燃やしていたクロエ。生まれ変わった異世界では幼馴染の婚約者がいたものの、婚約を破棄されてしまい、またもや婚活をすることに。一風変わった集団お見合いで出会ったのは、その場に似合わぬ一匹狼風の男性。(…って本当に狼獣人!?)うっかり惚れた相手が生きる世界の違う男性だったため、番(つがい)やら発情期やらに怯え、翻弄されながらも、クロエは幸せな結婚生活を目指す。
シリアス―★☆☆☆☆
コメディ―★★★★☆
ラブ♡♡―★★★★☆
ざまぁ∀―★★☆☆☆
※匂わす程度ですが、性的表現があるのでR15にしています。TLやラブエッチ的な表現はありません。
※このお話に出てくる集団お見合いの風習はフィクションです。
※四章+後日談+番外編になります。
三年間片思いしていた同級生に振られたら、年上の綺麗なお姉さんにロックオンされた話
羽瀬川ルフレ
恋愛
高校三年間、ずっと一人の女の子に片思いをしていた主人公・汐見颯太は、高校卒業を目前にして片思いの相手である同級生の神戸花音に二回目の告白をする。しかし、花音の答えは二年前と同じく「ごめんなさい」。
今回の告白もうまくいかなかったら今度こそ花音のことを諦めるつもりだった颯太は、今度こそ彼女に対する未練を完全に断ち切ることにする。
そして数か月後、大学生になった颯太は人生初のアルバイトもはじめ、充実した毎日を過ごしていた。そんな彼はアルバイト先で出会った常連客の大鳥居彩華と少しずつ仲良くなり、いつの間にか九歳も年上の彩華を恋愛対象として意識し始めていた。
自分なんかを相手にしてくれるはずがないと思いながらもダメ元で彩華をデートに誘ってみた颯太は、意外にもあっさりとOKの返事をもらって嬉しさに舞い上がる。
楽しかった彩華との初デートが終わり、いよいよ彩華への正式な告白のタイミングを検討しはじめた颯太のところに、予想外の人物からのメッセージが届いていた。メッセージの送り主は颯太と同じ大学に進学したものの、ほとんど顔を合わせることもなくなっていた花音だった。
どうやら私(オタク)は乙女ゲームの主人公の親友令嬢に転生したらしい
海亜
恋愛
大交通事故が起きその犠牲者の1人となった私(オタク)。
その後、私は赤ちゃんー璃杏ーに転生する。
赤ちゃんライフを満喫する私だが生まれた場所は公爵家。
だから、礼儀作法・音楽レッスン・ダンスレッスン・勉強・魔法講座!?と様々な習い事がもっさりある。
私のHPは限界です!!
なのになのに!!5歳の誕生日パーティの日あることがきっかけで、大人気乙女ゲーム『恋は泡のように』通称『恋泡』の主人公の親友令嬢に転生したことが判明する。
しかも、親友令嬢には小さい頃からいろんな悲劇にあっているなんとも言えないキャラなのだ!
でも、そんな未来私(オタクでかなりの人見知りと口下手)が変えてみせる!!
そして、あわよくば最後までできなかった乙女ゲームを鑑賞したい!!・・・・うへへ
だけど・・・・・・主人公・悪役令嬢・攻略対象の性格が少し違うような?
♔♕♖♗♘♙♚♛♜♝♞♟
皆さんに楽しんでいただけるように頑張りたいと思います!
この作品をよろしくお願いします!m(_ _)m
おいしいご飯をいただいたので~虐げられて育ったわたしですが魔法使いの番に選ばれ大切にされています~
通木遼平
恋愛
この国には魔法使いと呼ばれる種族がいる。この世界にある魔力を糧に生きる彼らは魔力と魔法以外には基本的に無関心だが、特別な魔力を持つ人間が傍にいるとより強い力を得ることができるため、特に相性のいい相手を番として迎え共に暮らしていた。
家族から虐げられて育ったシルファはそんな魔法使いの番に選ばれたことで魔法使いルガディアークと穏やかでしあわせな日々を送っていた。ところがある日、二人の元に魔法使いと番の交流を目的とした夜会の招待状が届き……。
※他のサイトにも掲載しています
旦那様が多すぎて困っています!? 〜逆ハー異世界ラブコメ〜
ことりとりとん
恋愛
男女比8:1の逆ハーレム異世界に転移してしまった女子大生・大森泉
転移早々旦那さんが6人もできて、しかも魔力無限チートがあると教えられて!?
のんびりまったり暮らしたいのにいつの間にか国を救うハメになりました……
イケメン山盛りの逆ハーです
前半はラブラブまったりの予定。後半で主人公が頑張ります
小説家になろう、カクヨムに転載しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる