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いつもと比べるとゆったりとした空の移動中、リオネット様が並走して東の国の情報を教えてくれた。
今回の目的地の東の森は街からかなり離れてはいるが、森は街にとって魔石資源の源。
目的が兄様探しでも、街を治める貴族の許可がいる。
「まずは街を治めている貴族に挨拶へ向かいます。ロイヤルグレイス公はマンチェスターやサンダーランドとは大分毛色が違う方で、正直私とは相いれない」
ロイヤルグレイスと言われて、聞き直そうかと思った。経験上、名前は恐らくそのままの音である場合と意味が翻訳されて聞こえている場合がある。
例えば、マンチェスター家だとイギリスのマンチェスターの都市が私の頭の中にあるため、その地域の雰囲気に似た都市を治めている家、程度の意味だ。ラテン語の由来まで深く突っ込んではない、へっぽこ翻訳機能があてがった名前なので、加護が無ければ違う様に聞こえてると思われる。リオネットやアッサムと言う名前の音は恐らくそのままの音だと思う。意味が関連付けられないし、そもそも翻訳機能がつく前からアッシャーはアッシャーと聞こえていた。
そこにロイヤルグレイス。王の様に気高く女神の様に優美。凄い名前だ。貴族の名前と土地の名前は陛下に許可をもらえれば、自分達で好きにつけられるそうなので、多分自分達の趣味でつけているのだろう。昔からその地方がそう呼ばれていたから、苗字にしましたレベルのマンチェスターとはかなり違いそう。
そして、到着してすぐにその予感は的中した。
「ロイヤルグレイス殿とは本日面会を申し入れていたはずですが?」
「恐れ入りますが、主人は本日気分がすぐれません。また後日」
リオネット様の目の前で城の扉は閉められた。怖い物知らず過ぎないか?
「仕方ありません。本日は街で泊まり、明日また出直しましょうか」
意外にもリオネット様は怒ってない。
「ほなら、宿の確認もしてきますわ。ついでに魔石ハンターの登録もしてきますんで、ちょっと茶でもしばいといてください」
「でしたらカリンも登録してきてもらえますか?公の許可不要で森に入れる人数は確保したいですし、雨情がいれば安心でしょう」
「ならば、このナルニッサも……」
「いやー、ナルニッサ様達が一緒に来てまうと登録でけへん様になります。貴族至上主義でも、それは反則扱いなんで」
私はピアスにカバーつければほぼバレない。
「僕は行くよ」
「アンズはんはかまへんよ。貴族の印あらへんし」
リオネット様達は何か考えがあるようで、城の近くのカフェに入って行った。
「さってと、ほな行くで。先ずは宿の方抑えな」
「予約とかしてないの?」
「一応空いてるか、だけは確認してある」
一応?とりあえず雨情について、いかにも高級な宿について行った。
入口に入ってすぐ感じる場違い感。どこかの貴族や大金持ちの商人だけで無くて、そこには彼らの手足となっている使い走りの人も居るのに、なんというか圧が凄い。
「すんまへん。一番上のスイート空いてます?」
「生憎本日は予約がありまして」
紙一重で埋まっちゃったんだな、残念。と思ったのは私だけの様だ。
「ほぉ、出かける直前までは空いてるっちゅう風に聞いてたんですけどね?その人らキャンセルなるか待っててもかましまへん?」
「……恐れ入りますが、こちらでお待ちいただくのは少々」
「ほな、他の部屋は?」
受付の人が困っている。そして、私達が受け入れられてない事が分かった。他の部屋が全部埋まってるはずは流石にない。
「失礼します」
奥から上司と思われる人が出てきた。
「大変申し訳ありませんが、私どもの宿にお客様は相応しくないと判断せざるをえません。こちらで泊まる事は諦めるようにご主人様にお伝えください」
「なるほど、分かったわ。念のため理由聞いてもええか?」
「……例え使用人でも、異世界人の血の者しか雇えないレベルの方はお客様ではありません。せめて、使いの者位品性のある血筋の者をよこしてください」
はぁ?!
「へい、了解。カリン、ほな行くで」
ムカついた私を制して、雨情は私の髪を耳にかけた。こんな時になんだ?と思った彼は、リオネット様並みに悪い笑顔になってる。
「カリン・マンチェスター本人に向かって、そんなんいう宿はこっちから願い下げやろ?」
あ。
上司の人の顔が真っ青に変わった。
「お、お待ちください!」
「いや、待たへんよ?」
雨情はヘラヘラしていた。
「リオネット様にも、ナルニッサ様もおまたせでけへんしな」
青いを通り越して、最早半紙状態の顔色の横で、初めの受付のお姉さんが倒れた。
「ほなさいなら」
と出て行く雨情を、私は追いかけた。
「ねーねー、さっきのどういう意味なのー?」
アンズは悪意を汲み取れなかったのか、あはー?とはてなを飛ばしている。
「あの宿はあかん。頭ガチガチ過ぎやし」
「でも、ある意味リオネット様には転がしやすそうだったけど?」
「リオネット様、今あんなんに頭のリソース割いてられへんやろ。それに、あんなんでも繁盛してるっちゅう事は、リオネット様の政敵と仲良しなんやと思うで」
「政敵?」
「保守派やな。リオネット様、言うても新しい事やりまくってるから反感買いまくりやで。陛下に寵愛されとるからあの地位やけど」
へー。
私達は次の宿へ。そこも同じく。
「次があかんかったら、隣の領地まで行かなあかんねんけどな。グレード落としたら防犯的に不味いし」
私とアンズは感心しながら雨情の後をついて歩くのみ。
次のホテルは入った時の感覚が違った。そして簡単に部屋を押さえられた。
では、手続きをという段階で、奥から偉い立場っぽい人が走って出てくる。
これはまだ振られるのかと思ったが、そうでは無かった。
「この度はご利用ありがとうございます。私は支配人のザーネと申します。ご不便ございましたらなんなりと」
「うじょー、なんで、この宿の人はさっきのトコと違って丁寧なのー?」
アンズさん!それ今聞いちゃう?私もすっごく気になったけど、今はダメだと思う!
今回の目的地の東の森は街からかなり離れてはいるが、森は街にとって魔石資源の源。
目的が兄様探しでも、街を治める貴族の許可がいる。
「まずは街を治めている貴族に挨拶へ向かいます。ロイヤルグレイス公はマンチェスターやサンダーランドとは大分毛色が違う方で、正直私とは相いれない」
ロイヤルグレイスと言われて、聞き直そうかと思った。経験上、名前は恐らくそのままの音である場合と意味が翻訳されて聞こえている場合がある。
例えば、マンチェスター家だとイギリスのマンチェスターの都市が私の頭の中にあるため、その地域の雰囲気に似た都市を治めている家、程度の意味だ。ラテン語の由来まで深く突っ込んではない、へっぽこ翻訳機能があてがった名前なので、加護が無ければ違う様に聞こえてると思われる。リオネットやアッサムと言う名前の音は恐らくそのままの音だと思う。意味が関連付けられないし、そもそも翻訳機能がつく前からアッシャーはアッシャーと聞こえていた。
そこにロイヤルグレイス。王の様に気高く女神の様に優美。凄い名前だ。貴族の名前と土地の名前は陛下に許可をもらえれば、自分達で好きにつけられるそうなので、多分自分達の趣味でつけているのだろう。昔からその地方がそう呼ばれていたから、苗字にしましたレベルのマンチェスターとはかなり違いそう。
そして、到着してすぐにその予感は的中した。
「ロイヤルグレイス殿とは本日面会を申し入れていたはずですが?」
「恐れ入りますが、主人は本日気分がすぐれません。また後日」
リオネット様の目の前で城の扉は閉められた。怖い物知らず過ぎないか?
「仕方ありません。本日は街で泊まり、明日また出直しましょうか」
意外にもリオネット様は怒ってない。
「ほなら、宿の確認もしてきますわ。ついでに魔石ハンターの登録もしてきますんで、ちょっと茶でもしばいといてください」
「でしたらカリンも登録してきてもらえますか?公の許可不要で森に入れる人数は確保したいですし、雨情がいれば安心でしょう」
「ならば、このナルニッサも……」
「いやー、ナルニッサ様達が一緒に来てまうと登録でけへん様になります。貴族至上主義でも、それは反則扱いなんで」
私はピアスにカバーつければほぼバレない。
「僕は行くよ」
「アンズはんはかまへんよ。貴族の印あらへんし」
リオネット様達は何か考えがあるようで、城の近くのカフェに入って行った。
「さってと、ほな行くで。先ずは宿の方抑えな」
「予約とかしてないの?」
「一応空いてるか、だけは確認してある」
一応?とりあえず雨情について、いかにも高級な宿について行った。
入口に入ってすぐ感じる場違い感。どこかの貴族や大金持ちの商人だけで無くて、そこには彼らの手足となっている使い走りの人も居るのに、なんというか圧が凄い。
「すんまへん。一番上のスイート空いてます?」
「生憎本日は予約がありまして」
紙一重で埋まっちゃったんだな、残念。と思ったのは私だけの様だ。
「ほぉ、出かける直前までは空いてるっちゅう風に聞いてたんですけどね?その人らキャンセルなるか待っててもかましまへん?」
「……恐れ入りますが、こちらでお待ちいただくのは少々」
「ほな、他の部屋は?」
受付の人が困っている。そして、私達が受け入れられてない事が分かった。他の部屋が全部埋まってるはずは流石にない。
「失礼します」
奥から上司と思われる人が出てきた。
「大変申し訳ありませんが、私どもの宿にお客様は相応しくないと判断せざるをえません。こちらで泊まる事は諦めるようにご主人様にお伝えください」
「なるほど、分かったわ。念のため理由聞いてもええか?」
「……例え使用人でも、異世界人の血の者しか雇えないレベルの方はお客様ではありません。せめて、使いの者位品性のある血筋の者をよこしてください」
はぁ?!
「へい、了解。カリン、ほな行くで」
ムカついた私を制して、雨情は私の髪を耳にかけた。こんな時になんだ?と思った彼は、リオネット様並みに悪い笑顔になってる。
「カリン・マンチェスター本人に向かって、そんなんいう宿はこっちから願い下げやろ?」
あ。
上司の人の顔が真っ青に変わった。
「お、お待ちください!」
「いや、待たへんよ?」
雨情はヘラヘラしていた。
「リオネット様にも、ナルニッサ様もおまたせでけへんしな」
青いを通り越して、最早半紙状態の顔色の横で、初めの受付のお姉さんが倒れた。
「ほなさいなら」
と出て行く雨情を、私は追いかけた。
「ねーねー、さっきのどういう意味なのー?」
アンズは悪意を汲み取れなかったのか、あはー?とはてなを飛ばしている。
「あの宿はあかん。頭ガチガチ過ぎやし」
「でも、ある意味リオネット様には転がしやすそうだったけど?」
「リオネット様、今あんなんに頭のリソース割いてられへんやろ。それに、あんなんでも繁盛してるっちゅう事は、リオネット様の政敵と仲良しなんやと思うで」
「政敵?」
「保守派やな。リオネット様、言うても新しい事やりまくってるから反感買いまくりやで。陛下に寵愛されとるからあの地位やけど」
へー。
私達は次の宿へ。そこも同じく。
「次があかんかったら、隣の領地まで行かなあかんねんけどな。グレード落としたら防犯的に不味いし」
私とアンズは感心しながら雨情の後をついて歩くのみ。
次のホテルは入った時の感覚が違った。そして簡単に部屋を押さえられた。
では、手続きをという段階で、奥から偉い立場っぽい人が走って出てくる。
これはまだ振られるのかと思ったが、そうでは無かった。
「この度はご利用ありがとうございます。私は支配人のザーネと申します。ご不便ございましたらなんなりと」
「うじょー、なんで、この宿の人はさっきのトコと違って丁寧なのー?」
アンズさん!それ今聞いちゃう?私もすっごく気になったけど、今はダメだと思う!
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