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さて、私も頑張らないと……と思ったけれど、初日からやり過ぎるのも身体に良くない。アッシャーを見て何ともなかったのだから、ナルさんも大丈夫でしょう。リオネット様と雨情は手術とかもあるし、ナルさんに訓練の予定立ててもらって……。
考えながらお風呂に向かうと、いつも通りアンズさんもトコトコついてきた。
「……アンズ、一人でお風呂入れない?」
「み゛ゃっ?!」
雷が落ちみたいな顔になった。
「なんで!どーして!」
「いや、アンズさん、人になったら男の子じゃん。……もしかして、ついてないとか?」
外側が男性っぽいだけで、ついてないなら私の中ではセーフ。
「何が?」
キョトンとするアンズさん。
「えーっと、おしっこするところってどうなってる?」
「え?ーーー[自主規制]」
はい、残念。無理。
むんずと掴んで洗面台へ。先にわしゃわしゃ洗ってあげる。洗い終わったら私もずぶ濡れになるから、私はその後にでもお風呂に入るわ。
洗ってると、確かに以前と違って男の子になっちゃったことが分かった。
「どーしてダメなーのー?」
「流石に男の人の形になれるなら、獣状態でもお風呂は分けないと」
「寝る時は良いのにー?」
「寝るのも分けようか……」
「いや!だめ!カリン!今の忘れて!」
人型に変身してない獣のままならそこまで気にしなくても良い気はする。でも、何か、今更なのにアンズに裸体を晒すのが恥ずかしいという感覚が私の中に生まれてる。はて?昔集団生活してた時、お風呂が男女別だったしかなぁ?
軽く乾かすとアンズはどこかに出かけて行ってしまった。私はゆっくりとお風呂に入る。小狐アンズが口周りにチュッチュとしてきていたのは前からだし、私が色々気にしすぎなのかもしれない。思春期を難なく迎えた息子より戸惑いが酷い母親的な?うーん。
お風呂から出て、ナルさん、と言うか索冥に相談してみることにした。ナルさんはなんかキラキラと輝いていた。
「眩しいね、ナルさん」
「申し訳ありません。我が君のご尊顔を拝見し、気持ちが昂ってしまい……」
認知の歪みの弊害がここまできたか。
当面の間は私は能力を整えるのと、アンズもチカラの調整、雨情は手術からの回復で、ナルさんは昂っても色香をコントロールできる様にする練習とかになりそう。
アッシャーが居ない間も無駄がないなとか考えていたら、キラキラから手紙が差し出された。
「ご回復直後に失礼をいたしますが、兄ナギアより、手紙と言伝を預かっております」
ナギア殿から?と不思議に思いながら、中を検めて、更に謎が深まった。
手紙の内容はナルさんのお見合いについて?
「今朝、カリン様が女性であった事と、聖女に能わなかった事が女王陛下より公にされました。それに伴って、愚兄が私の見合いのパーティーを開きたいと申しております」
「え?私が女だって事と、ナルさんのお見合いに何の関係が?」
「百年ほど前のサンダーランドの主人が僕に恋慕し、子孫を残さなかった例を危惧しているのだと思います」
そういえば、そんな話があった。
「すでに何度も開かれている催しですので、それで見つかるとも思えないのですが、我が君が私を束縛していると勘違いさせると後々お手を煩わせる事になるかと思います。東へ早々に立ちたいと思っておりますが、愚兄の茶番のために出立を1週間遅らせていただけないでしょうか?」
「構わないよ。丁度やらなきゃいけない事があるから。雨情の手術やらもあるしね。ところで、少し索冥と話がしたいんだけど」
「恐れ入りますが、索冥は所用によりここを離れております。しばらく戻る予定もありません」
「しばらく?いつからいないの?」
「はい、すでにひと月以上前からは」
そんなに長い期間?
「……ナルさん、使令が離れて寂しくないの?」
「寂しい……ですか?幼い頃は索冥が乳母の様な物でしたから寂しくありましたが、今は特に。もちろん側にいれば心強い仲間ですが、寂しいとは感じません。他の使令なども同様です」
「そうなんだ。私はアンズが側にいないと凄く寂しいから、驚いちゃった」
「カリン様は私が側に居ないと寂しいですか?」
「え?」
寂しい、か。うーん。
「寂しいかと、聞かれれば寂しい様な?でもアンズに感じるのとは全然違うかな。ナルさんの言葉を借りると、ナルさんは私にとって仲間な感じ。リオネット様やアッシャーと同じ」
ナルさんは微笑んだ。
「使令も僕も突き詰めれば、主人にとってはただの道具です。不便だ、という意味で困る以外の感情は、使令や忠誠の域では無く、対個人への感情なのです。……正直に申しますと、アンズ殿が羨ましく思いますが、彼と我が君の絆の強さを思えば当然。むしろ、報いて思いを返す主人を私は誇らしく思います」
私のアンズへの感情……か。
「我が君。リオネットが最近アンズ殿と懇意にしています。口止めまではされていませんが、我が君にはお伝えしていない様子。先程の女王陛下の発表も、リオネットが一枚噛んでいる様なので、念のため心にお留めください」
「え、ごめん。どういう事?」
「我が君が女性でいる事を表せば、我が兄の行動は予想されました。……リオネットは私の見合いのパーティーにカリン様や雨情、アンズ殿全員を出席させるつもりの様です」
「見合いに?まさか」
「見合いの席以外に、関係者も集まります。そこでは商談や情報のやり取りが行われる。カリン様のお披露目の意味もありましょうが……、念のためお心にお留めください」
意味深だけど、意味が分からない。でも、リオネット様に直接聞いて教えてもらえそうにも思えない。
雨情の手術は恙無く終わり、私達の訓練も予想通りに進められた。アッシャーからは連絡は来ず、そしてナルさんのお見合いの日はやって来た。
考えながらお風呂に向かうと、いつも通りアンズさんもトコトコついてきた。
「……アンズ、一人でお風呂入れない?」
「み゛ゃっ?!」
雷が落ちみたいな顔になった。
「なんで!どーして!」
「いや、アンズさん、人になったら男の子じゃん。……もしかして、ついてないとか?」
外側が男性っぽいだけで、ついてないなら私の中ではセーフ。
「何が?」
キョトンとするアンズさん。
「えーっと、おしっこするところってどうなってる?」
「え?ーーー[自主規制]」
はい、残念。無理。
むんずと掴んで洗面台へ。先にわしゃわしゃ洗ってあげる。洗い終わったら私もずぶ濡れになるから、私はその後にでもお風呂に入るわ。
洗ってると、確かに以前と違って男の子になっちゃったことが分かった。
「どーしてダメなーのー?」
「流石に男の人の形になれるなら、獣状態でもお風呂は分けないと」
「寝る時は良いのにー?」
「寝るのも分けようか……」
「いや!だめ!カリン!今の忘れて!」
人型に変身してない獣のままならそこまで気にしなくても良い気はする。でも、何か、今更なのにアンズに裸体を晒すのが恥ずかしいという感覚が私の中に生まれてる。はて?昔集団生活してた時、お風呂が男女別だったしかなぁ?
軽く乾かすとアンズはどこかに出かけて行ってしまった。私はゆっくりとお風呂に入る。小狐アンズが口周りにチュッチュとしてきていたのは前からだし、私が色々気にしすぎなのかもしれない。思春期を難なく迎えた息子より戸惑いが酷い母親的な?うーん。
お風呂から出て、ナルさん、と言うか索冥に相談してみることにした。ナルさんはなんかキラキラと輝いていた。
「眩しいね、ナルさん」
「申し訳ありません。我が君のご尊顔を拝見し、気持ちが昂ってしまい……」
認知の歪みの弊害がここまできたか。
当面の間は私は能力を整えるのと、アンズもチカラの調整、雨情は手術からの回復で、ナルさんは昂っても色香をコントロールできる様にする練習とかになりそう。
アッシャーが居ない間も無駄がないなとか考えていたら、キラキラから手紙が差し出された。
「ご回復直後に失礼をいたしますが、兄ナギアより、手紙と言伝を預かっております」
ナギア殿から?と不思議に思いながら、中を検めて、更に謎が深まった。
手紙の内容はナルさんのお見合いについて?
「今朝、カリン様が女性であった事と、聖女に能わなかった事が女王陛下より公にされました。それに伴って、愚兄が私の見合いのパーティーを開きたいと申しております」
「え?私が女だって事と、ナルさんのお見合いに何の関係が?」
「百年ほど前のサンダーランドの主人が僕に恋慕し、子孫を残さなかった例を危惧しているのだと思います」
そういえば、そんな話があった。
「すでに何度も開かれている催しですので、それで見つかるとも思えないのですが、我が君が私を束縛していると勘違いさせると後々お手を煩わせる事になるかと思います。東へ早々に立ちたいと思っておりますが、愚兄の茶番のために出立を1週間遅らせていただけないでしょうか?」
「構わないよ。丁度やらなきゃいけない事があるから。雨情の手術やらもあるしね。ところで、少し索冥と話がしたいんだけど」
「恐れ入りますが、索冥は所用によりここを離れております。しばらく戻る予定もありません」
「しばらく?いつからいないの?」
「はい、すでにひと月以上前からは」
そんなに長い期間?
「……ナルさん、使令が離れて寂しくないの?」
「寂しい……ですか?幼い頃は索冥が乳母の様な物でしたから寂しくありましたが、今は特に。もちろん側にいれば心強い仲間ですが、寂しいとは感じません。他の使令なども同様です」
「そうなんだ。私はアンズが側にいないと凄く寂しいから、驚いちゃった」
「カリン様は私が側に居ないと寂しいですか?」
「え?」
寂しい、か。うーん。
「寂しいかと、聞かれれば寂しい様な?でもアンズに感じるのとは全然違うかな。ナルさんの言葉を借りると、ナルさんは私にとって仲間な感じ。リオネット様やアッシャーと同じ」
ナルさんは微笑んだ。
「使令も僕も突き詰めれば、主人にとってはただの道具です。不便だ、という意味で困る以外の感情は、使令や忠誠の域では無く、対個人への感情なのです。……正直に申しますと、アンズ殿が羨ましく思いますが、彼と我が君の絆の強さを思えば当然。むしろ、報いて思いを返す主人を私は誇らしく思います」
私のアンズへの感情……か。
「我が君。リオネットが最近アンズ殿と懇意にしています。口止めまではされていませんが、我が君にはお伝えしていない様子。先程の女王陛下の発表も、リオネットが一枚噛んでいる様なので、念のため心にお留めください」
「え、ごめん。どういう事?」
「我が君が女性でいる事を表せば、我が兄の行動は予想されました。……リオネットは私の見合いのパーティーにカリン様や雨情、アンズ殿全員を出席させるつもりの様です」
「見合いに?まさか」
「見合いの席以外に、関係者も集まります。そこでは商談や情報のやり取りが行われる。カリン様のお披露目の意味もありましょうが……、念のためお心にお留めください」
意味深だけど、意味が分からない。でも、リオネット様に直接聞いて教えてもらえそうにも思えない。
雨情の手術は恙無く終わり、私達の訓練も予想通りに進められた。アッシャーからは連絡は来ず、そしてナルさんのお見合いの日はやって来た。
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