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のこのこ
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既成事実を作られてしまった。どれだけ、リオネット様のおかげだと釈明しても、民衆の歓声は大きすぎて私の声は全く伝わらない。伝わらないまま城に帰還。
「なんでナルさん、あそこで土下座するかなぁ」
「己の不出来な部分を申し上げさせていただきますと……」
「いや!いいよ!違うの!不出来とかそんなんじゃなくて!ナルさんも失敗に対して土下座とかさせないタイプだと思ったの!」
「それは、カリン様がお美し過ぎるがゆえです」
「……なんつーか、それ、認知歪んでね?」
「ですよね?!」
分かってくれる人が、ここに!
「確かに美しいという言葉の方が力不足感は否めないが、そもそも我が君の偉大さを表すに適した言葉が存在しない。初めての対象であるが故、そんな単語が作られてこなかったのだ」
「なんたる失態」と、急ぎサンダーランド領の学者に新しい単語を作るよう指示しようとするとナルさんの口を両手で塞ぐ。
「……なんか、大変だな。まぁ、でも、ナルニッサ本人は悪い奴じゃねぇんだ」
「ええ、そうなんです。すごくいい人だけど、大変なんです」
「そうか、なんとかしてやりてぇが……、頑張れ」
味方から力強く激励された。
何を頑張れば良いのですか??
リオネット様はリオネット様で勝手に王都から出た事を叱られるかと思ったが、そうでもない。
アッサム様とナルさんが身を清めている間に恐る恐る話を振ってみた。
「あの、勝手に王都を出てごめんなさい」
「そうですね、一言はあった方が良かったですが、私の手の届く範囲ではあったので問題はありません。あなたは無事で、バカな事もしていません。ただ、アッシャーにはこちらで長く泊まっていた事は一応伏せておきましょうか。彼は少し心配が過ぎます」
苦笑いしながら指を口に当てて、ウインクされた。
なんだろう。怒られなくてホッとすべきところなのに、何かリオネット様がまた企んでいる気がしてしまう。
「ああ、そうだ。こちらはお忘れ物です」
取り出されたのは部屋に置いてきた最新のぬいぐるみと魔法の本。
「兄君を探してらしたんでしょうが、その様子では空振りだったのですね?アッシャーにはカリンは大森林で使令と契約するためにこちらに連れてきた、運が良ければ兄君のいた森かも知れないのでその確認も兼ねて、と伝えておきましょう」
リオネット様に大森林が兄様の森ではなかった詳細を話した。やはり彼も私が見た地形は西か東、若干西の山脈の方が可能性が高そうだという意見だ。ただ、西も東もリオネット様達もまだ実際に行ったことは無いそうで、持っている情報では軽装備ではまずいだろうと言う事ぐらい。
それから、リオネット様は今までの会話をまとめた鳥の使令を使ってナルさんに託けた。
ますます怪しい。そこまでして私の家出をアッサム様に隠さなくてはいけないのか……。
「託け様の鳥型の使令はやはり無いと不便です。なので、また一つご用意したのですが……」
取り出されたのは片手に乗るサイズ。完璧な離れ目で、ぽやーっとした表情のスズメのぬいぐるみ。パーフェクト。
「……ところで、何かご不満はございますか?」
「皆無です!」
「こうやって使うと良いですよ」とリオネット様の使令が入ったチュンチュンは私の周りをパタパタ飛んで、手にのり肩にのり、私の心を鷲掴み。
「待たせたな」
「アッサム様。今すぐ森へ!森へ行きましょう。鳥の使令が私を呼んでます!」
お風呂に入ってサッパリしたアッサム様が若干引いていた。そういえば、ナルさんは少し遅いような?なんでだっけ?
とは言え、すぐさま出発!とは行か無かった。アンズさん、安定の「すやぁ」。
大森林に行くのは後日という事になりました。
夜が更けて、私は仮面の前で悩む。
今日アッサム様に仮面娘で会わなければ、しばらく仮面で会う機会は無いと思う。けれど今日はアッサム様本人も含めて何人も人が泊まっている状態で、仮面娘がてくてく廊下を歩いてるのはおかしかないか?でも、見開きで奥まで入り込むには、もう少し仲良くならないと難しいだろうし。
えい、ままよ!と仮面を装着して廊下に出た。何となく、庭でアッサム様は待っているのではないか?と思ってしまったからだ。もう夜中だし、怪しさ満点。
「カリン?」
真夜中の廊下でリオネット様に声をかけられるの巻。
いや、でも落ち着け、変装してるし、落ち着いて「ナルニッサ様の」と答えれば万事オッケー!
「あの、私は……」
「何をやってるんですか?」
振り向いたと同時に仮面を両手でヒョイと取られたの巻。
「なんで、勝手にとっちゃうんですかー?!」
「なんでって、カリンが変な変装してたので。夢遊病で外に出られては困ります。それに、夜中は静かに」
とりあえず、直近のリオネット様の泊まっている部屋に引き込まれた。
「私は白魔道士ですよ?宿泊時は部屋の中や外に使令を見張らせています。そこに強い魔力のこもった仮面をつけたカリンがノコノコ歩いてたら、止めるでしょう、普通。今、夜中ですよ?」
「魔力とか分かります?」
「私は分かります。それに、髪型が変わろうが、仮面で雰囲気が変わろうが、私がカリンを見間違う事はありません」
白魔道士が凄いのか、リオネット様だから凄いのか。多分後者だな。
「それで、何故夜中に?何をするおつもりでしたか?」
仕方なく、アッサム様の心の澱みを見た事を報告した。
「カリン、あなた『見開き』ができるのですか?」
「以前こちらに来た時に覚えました。難しい白魔法なんですか?」
「むずかしいというか、そもそも白魔法ではありません。魔力を媒介にはしますが、どちらかいうとクナイ投げの様なスキルと呼ばれる物だと思います。教えてもらって出来る物では無くて……才能というか特性という様な物ですね。ちなみに私にはできませんし、女王陛下でもできないと思いますよ」
「そんな凄い、スキルなんですか?」
「凄い……ですね。見開きが出来る人は聞いた事が無い」
「聞いた事が無いのに、見開きって言葉あるんですか?」
「ええ、見開きが出来る犬や猫はそれなりにいますので」
まさかの動物のスキルー!
「気づきを促し、心を癒す。あちらでもアニマルセラピーと言われていたと思います」
あるよ!受けた事ある!入院してる時にボランティアの人が連れてきてくれてた!
「すべての動物ができるわけでも、同じ種でも向いてる仔向いてない仔もいます。また、使令にやらせる事も稀にはあるので、確認はされてるスキルですね。確かに、それをやるならもっと触れ合いが必要ですが、アッシャーはカリンでは受け付けないでしょうね。立場的に」
弟子で義弟で、利害の一致で始まった関係だ。彼が私に弱みを見せるとも思えない。
「だからこそ、よく知らない仮面娘の方が良いかなって思ったんです。何故かアッサム様も興味を持ってくださってたし」
「ふむ」
リオネット様は目を伏した。
「そう、ですね。では方法を考えましょう。ただし、今日は部屋に戻ってください。その方が利が多い」
「利、ですか?」
「ええ、庭で待っているアッシャーには、私が布石を打っておきます。では、お部屋までお送りしましょう」
布石って、やっぱり何か企んでるに違いない。そして、企んでるなら絶対教えてはくれない。何事もない様な顔で、リオネット様は私をナルさんの部屋に送った。
「ここは私の部屋ではありません」
「知っていますよ」
夜中なのにトントンっとノックするナルさん。
秒で開く扉。
「ほら、あなたの僕が不安で起きていましたよ」
え?と思ってナルさんを見上げると、切なそうな悲しそうな……、置いて行かれた犬の表情。なんか、可愛い?
「ナルさん、不安だったり、言いたい事があったらちゃんと口に出してください。私は少し鈍感なので」
「申し訳、ありま、せん」
「怒ってるんじゃ無いよ。私はナルさんと分かり合いたいだけなんだから」
うるっと目を潤められて、そのまま部屋にお邪魔しました。
寝かしつけしてあげなきゃダメな僕って他にもいるんだろうか。
「なんでナルさん、あそこで土下座するかなぁ」
「己の不出来な部分を申し上げさせていただきますと……」
「いや!いいよ!違うの!不出来とかそんなんじゃなくて!ナルさんも失敗に対して土下座とかさせないタイプだと思ったの!」
「それは、カリン様がお美し過ぎるがゆえです」
「……なんつーか、それ、認知歪んでね?」
「ですよね?!」
分かってくれる人が、ここに!
「確かに美しいという言葉の方が力不足感は否めないが、そもそも我が君の偉大さを表すに適した言葉が存在しない。初めての対象であるが故、そんな単語が作られてこなかったのだ」
「なんたる失態」と、急ぎサンダーランド領の学者に新しい単語を作るよう指示しようとするとナルさんの口を両手で塞ぐ。
「……なんか、大変だな。まぁ、でも、ナルニッサ本人は悪い奴じゃねぇんだ」
「ええ、そうなんです。すごくいい人だけど、大変なんです」
「そうか、なんとかしてやりてぇが……、頑張れ」
味方から力強く激励された。
何を頑張れば良いのですか??
リオネット様はリオネット様で勝手に王都から出た事を叱られるかと思ったが、そうでもない。
アッサム様とナルさんが身を清めている間に恐る恐る話を振ってみた。
「あの、勝手に王都を出てごめんなさい」
「そうですね、一言はあった方が良かったですが、私の手の届く範囲ではあったので問題はありません。あなたは無事で、バカな事もしていません。ただ、アッシャーにはこちらで長く泊まっていた事は一応伏せておきましょうか。彼は少し心配が過ぎます」
苦笑いしながら指を口に当てて、ウインクされた。
なんだろう。怒られなくてホッとすべきところなのに、何かリオネット様がまた企んでいる気がしてしまう。
「ああ、そうだ。こちらはお忘れ物です」
取り出されたのは部屋に置いてきた最新のぬいぐるみと魔法の本。
「兄君を探してらしたんでしょうが、その様子では空振りだったのですね?アッシャーにはカリンは大森林で使令と契約するためにこちらに連れてきた、運が良ければ兄君のいた森かも知れないのでその確認も兼ねて、と伝えておきましょう」
リオネット様に大森林が兄様の森ではなかった詳細を話した。やはり彼も私が見た地形は西か東、若干西の山脈の方が可能性が高そうだという意見だ。ただ、西も東もリオネット様達もまだ実際に行ったことは無いそうで、持っている情報では軽装備ではまずいだろうと言う事ぐらい。
それから、リオネット様は今までの会話をまとめた鳥の使令を使ってナルさんに託けた。
ますます怪しい。そこまでして私の家出をアッサム様に隠さなくてはいけないのか……。
「託け様の鳥型の使令はやはり無いと不便です。なので、また一つご用意したのですが……」
取り出されたのは片手に乗るサイズ。完璧な離れ目で、ぽやーっとした表情のスズメのぬいぐるみ。パーフェクト。
「……ところで、何かご不満はございますか?」
「皆無です!」
「こうやって使うと良いですよ」とリオネット様の使令が入ったチュンチュンは私の周りをパタパタ飛んで、手にのり肩にのり、私の心を鷲掴み。
「待たせたな」
「アッサム様。今すぐ森へ!森へ行きましょう。鳥の使令が私を呼んでます!」
お風呂に入ってサッパリしたアッサム様が若干引いていた。そういえば、ナルさんは少し遅いような?なんでだっけ?
とは言え、すぐさま出発!とは行か無かった。アンズさん、安定の「すやぁ」。
大森林に行くのは後日という事になりました。
夜が更けて、私は仮面の前で悩む。
今日アッサム様に仮面娘で会わなければ、しばらく仮面で会う機会は無いと思う。けれど今日はアッサム様本人も含めて何人も人が泊まっている状態で、仮面娘がてくてく廊下を歩いてるのはおかしかないか?でも、見開きで奥まで入り込むには、もう少し仲良くならないと難しいだろうし。
えい、ままよ!と仮面を装着して廊下に出た。何となく、庭でアッサム様は待っているのではないか?と思ってしまったからだ。もう夜中だし、怪しさ満点。
「カリン?」
真夜中の廊下でリオネット様に声をかけられるの巻。
いや、でも落ち着け、変装してるし、落ち着いて「ナルニッサ様の」と答えれば万事オッケー!
「あの、私は……」
「何をやってるんですか?」
振り向いたと同時に仮面を両手でヒョイと取られたの巻。
「なんで、勝手にとっちゃうんですかー?!」
「なんでって、カリンが変な変装してたので。夢遊病で外に出られては困ります。それに、夜中は静かに」
とりあえず、直近のリオネット様の泊まっている部屋に引き込まれた。
「私は白魔道士ですよ?宿泊時は部屋の中や外に使令を見張らせています。そこに強い魔力のこもった仮面をつけたカリンがノコノコ歩いてたら、止めるでしょう、普通。今、夜中ですよ?」
「魔力とか分かります?」
「私は分かります。それに、髪型が変わろうが、仮面で雰囲気が変わろうが、私がカリンを見間違う事はありません」
白魔道士が凄いのか、リオネット様だから凄いのか。多分後者だな。
「それで、何故夜中に?何をするおつもりでしたか?」
仕方なく、アッサム様の心の澱みを見た事を報告した。
「カリン、あなた『見開き』ができるのですか?」
「以前こちらに来た時に覚えました。難しい白魔法なんですか?」
「むずかしいというか、そもそも白魔法ではありません。魔力を媒介にはしますが、どちらかいうとクナイ投げの様なスキルと呼ばれる物だと思います。教えてもらって出来る物では無くて……才能というか特性という様な物ですね。ちなみに私にはできませんし、女王陛下でもできないと思いますよ」
「そんな凄い、スキルなんですか?」
「凄い……ですね。見開きが出来る人は聞いた事が無い」
「聞いた事が無いのに、見開きって言葉あるんですか?」
「ええ、見開きが出来る犬や猫はそれなりにいますので」
まさかの動物のスキルー!
「気づきを促し、心を癒す。あちらでもアニマルセラピーと言われていたと思います」
あるよ!受けた事ある!入院してる時にボランティアの人が連れてきてくれてた!
「すべての動物ができるわけでも、同じ種でも向いてる仔向いてない仔もいます。また、使令にやらせる事も稀にはあるので、確認はされてるスキルですね。確かに、それをやるならもっと触れ合いが必要ですが、アッシャーはカリンでは受け付けないでしょうね。立場的に」
弟子で義弟で、利害の一致で始まった関係だ。彼が私に弱みを見せるとも思えない。
「だからこそ、よく知らない仮面娘の方が良いかなって思ったんです。何故かアッサム様も興味を持ってくださってたし」
「ふむ」
リオネット様は目を伏した。
「そう、ですね。では方法を考えましょう。ただし、今日は部屋に戻ってください。その方が利が多い」
「利、ですか?」
「ええ、庭で待っているアッシャーには、私が布石を打っておきます。では、お部屋までお送りしましょう」
布石って、やっぱり何か企んでるに違いない。そして、企んでるなら絶対教えてはくれない。何事もない様な顔で、リオネット様は私をナルさんの部屋に送った。
「ここは私の部屋ではありません」
「知っていますよ」
夜中なのにトントンっとノックするナルさん。
秒で開く扉。
「ほら、あなたの僕が不安で起きていましたよ」
え?と思ってナルさんを見上げると、切なそうな悲しそうな……、置いて行かれた犬の表情。なんか、可愛い?
「ナルさん、不安だったり、言いたい事があったらちゃんと口に出してください。私は少し鈍感なので」
「申し訳、ありま、せん」
「怒ってるんじゃ無いよ。私はナルさんと分かり合いたいだけなんだから」
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