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お城の探索 √
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自分の借りている部屋の位置を確認しながら、迷子にならない様に廊下を進んで行った。というか、探検と言っても何かあった時に外に出られる様になるのが目標です。ついでにアンズが見つかれば良いな位には期待してるけど、個人の部屋に入ってしまってはいけないしね。
扉の様式やら間取りで何となく食堂っぽい部屋とか、図書室っぽい部屋とか目印にしておく。
地域が近いせいか、それともこちらの常識なのか、王都のマンチェスターの屋敷と配置が近い様だった。空路用の玄関なんてあるから、もっとダンジョンっぽい物かと覚悟していたのだけど。
配慮されてたのかもしれないけれど、メイドさん達にもほとんど出会わず、出会っても軽く黙礼か頭を下げられるだけで声もかけられずで、居心地は良くないけれど悪くもない感じ。
よゆーよゆーと余裕ぶっこいて、庭に出た。人影はあったけれど、庭師さんかなーっと特に避けもせず、庭も軽く散歩……そして、思いもよらない人に声をかけられた。
「すまない。ナルニッサの支度はまだかかるのだろうか?」
「……?っ!」
何故だかどうしてだか、庭でアッサム様っぽい声が聞こえた。
「メイド……では無かったか。失礼した」
「あ、いえ」
思わず立ち止まると私の背後に声の主は近づいているくさい。王都にいて、何やら忙しかったはずのアッサム様が何故ここに?!
「……その声、まさか、カリンか?」
「いえっ、あのっ」
どうするんだったっけ?逃げるんだったけ?左右を思わず見回して、そうだ今はナルさんの恋人的な役だった事を思い出した。いや、でも喋るとなんかばれそうな気もするし。
プチパニックであわあわと不審者ちっくな挙動になった。
「何故ここにいるんだよ」
肩に手をかけられて万事休す。諦めて被ってたストールを下ろして振り返った。
「あの、これは……」
「っ!これは大変失礼しました!」
叱責覚悟で体をすくめていた訳だけど、おや?と思ってアッサム様を見ると、なんと片膝をついて頭を下げていた。
「知り合いの声に似ていたため、確認もせず無礼を働きました。申し訳ありません」
「いえ、大丈夫、です」
そっか!髪と仮面!つけ心地がほぼ無かったのと、アッサム様やリオネット様には何となくバレると思い込んでいて、うっかりしていた。口元と声だけなら、いくらアッサム様でも解らなくてもおかしくない!でも、心持ちちょっと高めの声で返事をしとこう!
「私はアッサム・マンチェスターです。社交界に疎い生活をしており、不躾ながら姫の事を存じておりませんでした」
「私は……ナルニッサ様の」
「さようでございましたか。本日私めは、姫にお会いしておりません。口外いたしませんのでご安心ください。それでは、失礼いたします」
「あの、こちらでナルニッサ様とお約束されてるのでしょう?私が失礼いたします」
「いえ、それは畏れ多い。原石風情が姫君の散策を邪魔だてするとは」
はて?
全体的に爽やか好青年っぽいのも変な感じがするけれど、それよりなんだか妙に謙っているというか、謙りすぎやしませんか?
「そんな、勇者の試合でも先日優勝されたばかりですのに?」
「え?」
アッサム様はいつもの驚いた表情になった。けれど、それは一瞬ですぐまた爽やかマンの顔に戻る。
「……不思議な事を仰る」
「私も社交界などに詳しく無く、世間知らずですので失礼な事を申し上げていたらごめんなさい」
「いや、……深窓の姫君でしたか。流石、ナルニッサの選んだ方だ」
爽やかマンだけど、ほんの少しその目はいつもの柔らかげな光があって、傷つけてはいなかったとちょっと安心した。
「けれど、その優しさも社交界では無垢過ぎる様に思います。貴女が傷つくとナルニッサも心を痛めるでしょう。私も望みません。では」
今度は口を挟む事も出来ずに見送ってしまった。
原石風情って、どういう事だろう。
そういえば、ナルさんもアッサム様について話した時奥歯に何か挟まった様な言い方だった。
アッサム・マンチェスター。最年少剣豪取得者、現在の勇者順位一位。
ファンレターもたっぷりあって人気も上々。なのに。
アッサム様、もといマンチェスターの家の用事があるならナルさんと今日大森林に行くのは難しいだろう。私はとりあえず部屋に戻ってアンズ達の帰りを待つ事にした。
――――――――――――――――――――――――――
「あと少し、が足らぬ」
部屋に戻ると索冥とアンズは戻ってきていて、アンズはしおしおと泣きながら、ベッドに潜り込んでいた。
「魔力のコントロールは悪うない。若いが成獣しておる。にも関わらず、精神的な成熟が足らぬのか、魔力量が安定しておらぬ」
精神的成熟……。
「また抽象的な」
「いかにも。理由がわからぬでは、我のみでは手の出し用が無い」
「うにゃうにゃみゃー」
まぁ、泣き声からしてこれだからね。まだまだ子供に感じるし……。
「アンズ、いつかはできるって事だよ。そんな泣かない。泣かない」
「えぐえぐ、やだよー、早く人間になりたい……」
ばいんっと小狐スタイルは跳ねて私の胸に飛び込む。スリスリしてくるのが可愛すぎて、私の行為がアンズの成長を阻害してる気さえする。
「アンズはそのままでも可愛いし、強いし完璧だよ。急がなくて大丈夫」
「ヤダヤダヤダー!僕がカリンの王子様になるんだもん!」
「へ?」
「昔お話ししてくれたじゃん!カリンが襲われたり、いじめられたりする前に僕が助けるんだ!」
「早くしないとカリンが他の王子様に取られちゃうぅうあぁぁあぁ」と泣きくれるアンズの背中をさすりながら、図書館で読んだ本をうろ覚えのままいくつかお話ししてあげた事を思い出した。
あれだ。白雪姫とシンデレラと眠れる森の美女的な。
アンズさん……、全ての女の子に王子がやってくる訳では無いんだよ……。嬉しいけど、温い気持ちになってしまう。その心配はいらないのだぞ、と。
「さて、我は一旦主人の下へ戻ろう。あやつもあの速さで仕事を片付けるならば、精魂尽き果てるやもしれぬ。二晩寝てもおらぬしな」
寝てない?!と聞き返す前に索冥は霧の様に消えてしまった。
ナルさんは超人が過ぎるかもしれない。
夕方、大変遅くなりましたと恐縮しながら戻ってきたナルさんの口に、晩御飯の肉まんを突っ込んだ。事前にメイドさんに声をかけて、ナルさんの好きな食べ物を作ってきてもらったのだ。本当は肉まんでは無いオサレな名前がついた食べ物です。
「は、はの?」
「食べてください。良く噛んで、はい、ゆっくり飲み込んで」
お茶位は入れられるので、人肌よりは暖かいお茶をナルさんに渡す。
目を白黒させてるのは、喉に詰めた訳では無さそうなので、お茶も有無を言わさず飲ませる。
「ハイ、お風呂入って歯磨きをしてください」
「不快な香りがいたしますか?お側に侍るにあたり、身は清めて参りましたが……」
「お風呂は済んでるのね。じゃあ歯磨き」
すでに元気を取り戻したアンズと、索冥にもお願いしてナルさんの準備を済ませる手伝いをしてもらう。
「これは、いったい?」
「着替えも済ませたぞな。後はカリン様にお任せいたす」
理解ができていない=回避できない様にして、ナルさんをベッドに連れて行く。
「では、寝てください」
「寝る、ですか?」
「はい、布団に入って、横になって、寝る。どうぞ」
「いや、しかし、我が君は……」
「これは命令です。主人でもなんでもなりますから、寝てください。……二晩寝てないと聞きました」
「索冥!」
「索冥を叱るのはダメですよ。私が無理したらナルさんだって多分色々やらかすでしょう?」
叱りつけたナルさんだったけれど、当の索冥はどこ吹く風といった具合だ。主人に忠実というのは主人に絶対服従とは違うらしい。
「寝てください。ナルさんが心配です」
「こんな事をしていただいて、寝るなど……」
索冥が仮面をちょいちょいと指さしながら、「カリン様」と声をかけてきた。忘れてた。仮面を外すと、髪も戻った感覚がした。
「野営ではあなたに背中を預ける事もあると思います。慣れてください。お願いです。寝てください」
「っ!」
ナルさんは以前の、また泣きそうな感じの切なげな表情になった。そんな顔したってダメです。倒れられたら良心の呵責が半端ない。
途中で起き出されては敵わないので、枕元にで待機。無言で何もせず座ってると居心地が悪いので、子守唄歌いながら、お腹をぽんぽんやってみる。こっちの世界で通用するかは分からないけどね。
扉の様式やら間取りで何となく食堂っぽい部屋とか、図書室っぽい部屋とか目印にしておく。
地域が近いせいか、それともこちらの常識なのか、王都のマンチェスターの屋敷と配置が近い様だった。空路用の玄関なんてあるから、もっとダンジョンっぽい物かと覚悟していたのだけど。
配慮されてたのかもしれないけれど、メイドさん達にもほとんど出会わず、出会っても軽く黙礼か頭を下げられるだけで声もかけられずで、居心地は良くないけれど悪くもない感じ。
よゆーよゆーと余裕ぶっこいて、庭に出た。人影はあったけれど、庭師さんかなーっと特に避けもせず、庭も軽く散歩……そして、思いもよらない人に声をかけられた。
「すまない。ナルニッサの支度はまだかかるのだろうか?」
「……?っ!」
何故だかどうしてだか、庭でアッサム様っぽい声が聞こえた。
「メイド……では無かったか。失礼した」
「あ、いえ」
思わず立ち止まると私の背後に声の主は近づいているくさい。王都にいて、何やら忙しかったはずのアッサム様が何故ここに?!
「……その声、まさか、カリンか?」
「いえっ、あのっ」
どうするんだったっけ?逃げるんだったけ?左右を思わず見回して、そうだ今はナルさんの恋人的な役だった事を思い出した。いや、でも喋るとなんかばれそうな気もするし。
プチパニックであわあわと不審者ちっくな挙動になった。
「何故ここにいるんだよ」
肩に手をかけられて万事休す。諦めて被ってたストールを下ろして振り返った。
「あの、これは……」
「っ!これは大変失礼しました!」
叱責覚悟で体をすくめていた訳だけど、おや?と思ってアッサム様を見ると、なんと片膝をついて頭を下げていた。
「知り合いの声に似ていたため、確認もせず無礼を働きました。申し訳ありません」
「いえ、大丈夫、です」
そっか!髪と仮面!つけ心地がほぼ無かったのと、アッサム様やリオネット様には何となくバレると思い込んでいて、うっかりしていた。口元と声だけなら、いくらアッサム様でも解らなくてもおかしくない!でも、心持ちちょっと高めの声で返事をしとこう!
「私はアッサム・マンチェスターです。社交界に疎い生活をしており、不躾ながら姫の事を存じておりませんでした」
「私は……ナルニッサ様の」
「さようでございましたか。本日私めは、姫にお会いしておりません。口外いたしませんのでご安心ください。それでは、失礼いたします」
「あの、こちらでナルニッサ様とお約束されてるのでしょう?私が失礼いたします」
「いえ、それは畏れ多い。原石風情が姫君の散策を邪魔だてするとは」
はて?
全体的に爽やか好青年っぽいのも変な感じがするけれど、それよりなんだか妙に謙っているというか、謙りすぎやしませんか?
「そんな、勇者の試合でも先日優勝されたばかりですのに?」
「え?」
アッサム様はいつもの驚いた表情になった。けれど、それは一瞬ですぐまた爽やかマンの顔に戻る。
「……不思議な事を仰る」
「私も社交界などに詳しく無く、世間知らずですので失礼な事を申し上げていたらごめんなさい」
「いや、……深窓の姫君でしたか。流石、ナルニッサの選んだ方だ」
爽やかマンだけど、ほんの少しその目はいつもの柔らかげな光があって、傷つけてはいなかったとちょっと安心した。
「けれど、その優しさも社交界では無垢過ぎる様に思います。貴女が傷つくとナルニッサも心を痛めるでしょう。私も望みません。では」
今度は口を挟む事も出来ずに見送ってしまった。
原石風情って、どういう事だろう。
そういえば、ナルさんもアッサム様について話した時奥歯に何か挟まった様な言い方だった。
アッサム・マンチェスター。最年少剣豪取得者、現在の勇者順位一位。
ファンレターもたっぷりあって人気も上々。なのに。
アッサム様、もといマンチェスターの家の用事があるならナルさんと今日大森林に行くのは難しいだろう。私はとりあえず部屋に戻ってアンズ達の帰りを待つ事にした。
――――――――――――――――――――――――――
「あと少し、が足らぬ」
部屋に戻ると索冥とアンズは戻ってきていて、アンズはしおしおと泣きながら、ベッドに潜り込んでいた。
「魔力のコントロールは悪うない。若いが成獣しておる。にも関わらず、精神的な成熟が足らぬのか、魔力量が安定しておらぬ」
精神的成熟……。
「また抽象的な」
「いかにも。理由がわからぬでは、我のみでは手の出し用が無い」
「うにゃうにゃみゃー」
まぁ、泣き声からしてこれだからね。まだまだ子供に感じるし……。
「アンズ、いつかはできるって事だよ。そんな泣かない。泣かない」
「えぐえぐ、やだよー、早く人間になりたい……」
ばいんっと小狐スタイルは跳ねて私の胸に飛び込む。スリスリしてくるのが可愛すぎて、私の行為がアンズの成長を阻害してる気さえする。
「アンズはそのままでも可愛いし、強いし完璧だよ。急がなくて大丈夫」
「ヤダヤダヤダー!僕がカリンの王子様になるんだもん!」
「へ?」
「昔お話ししてくれたじゃん!カリンが襲われたり、いじめられたりする前に僕が助けるんだ!」
「早くしないとカリンが他の王子様に取られちゃうぅうあぁぁあぁ」と泣きくれるアンズの背中をさすりながら、図書館で読んだ本をうろ覚えのままいくつかお話ししてあげた事を思い出した。
あれだ。白雪姫とシンデレラと眠れる森の美女的な。
アンズさん……、全ての女の子に王子がやってくる訳では無いんだよ……。嬉しいけど、温い気持ちになってしまう。その心配はいらないのだぞ、と。
「さて、我は一旦主人の下へ戻ろう。あやつもあの速さで仕事を片付けるならば、精魂尽き果てるやもしれぬ。二晩寝てもおらぬしな」
寝てない?!と聞き返す前に索冥は霧の様に消えてしまった。
ナルさんは超人が過ぎるかもしれない。
夕方、大変遅くなりましたと恐縮しながら戻ってきたナルさんの口に、晩御飯の肉まんを突っ込んだ。事前にメイドさんに声をかけて、ナルさんの好きな食べ物を作ってきてもらったのだ。本当は肉まんでは無いオサレな名前がついた食べ物です。
「は、はの?」
「食べてください。良く噛んで、はい、ゆっくり飲み込んで」
お茶位は入れられるので、人肌よりは暖かいお茶をナルさんに渡す。
目を白黒させてるのは、喉に詰めた訳では無さそうなので、お茶も有無を言わさず飲ませる。
「ハイ、お風呂入って歯磨きをしてください」
「不快な香りがいたしますか?お側に侍るにあたり、身は清めて参りましたが……」
「お風呂は済んでるのね。じゃあ歯磨き」
すでに元気を取り戻したアンズと、索冥にもお願いしてナルさんの準備を済ませる手伝いをしてもらう。
「これは、いったい?」
「着替えも済ませたぞな。後はカリン様にお任せいたす」
理解ができていない=回避できない様にして、ナルさんをベッドに連れて行く。
「では、寝てください」
「寝る、ですか?」
「はい、布団に入って、横になって、寝る。どうぞ」
「いや、しかし、我が君は……」
「これは命令です。主人でもなんでもなりますから、寝てください。……二晩寝てないと聞きました」
「索冥!」
「索冥を叱るのはダメですよ。私が無理したらナルさんだって多分色々やらかすでしょう?」
叱りつけたナルさんだったけれど、当の索冥はどこ吹く風といった具合だ。主人に忠実というのは主人に絶対服従とは違うらしい。
「寝てください。ナルさんが心配です」
「こんな事をしていただいて、寝るなど……」
索冥が仮面をちょいちょいと指さしながら、「カリン様」と声をかけてきた。忘れてた。仮面を外すと、髪も戻った感覚がした。
「野営ではあなたに背中を預ける事もあると思います。慣れてください。お願いです。寝てください」
「っ!」
ナルさんは以前の、また泣きそうな感じの切なげな表情になった。そんな顔したってダメです。倒れられたら良心の呵責が半端ない。
途中で起き出されては敵わないので、枕元にで待機。無言で何もせず座ってると居心地が悪いので、子守唄歌いながら、お腹をぽんぽんやってみる。こっちの世界で通用するかは分からないけどね。
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