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森だ。森。それも大森林では無い。ゴツゴツとした岩が多く、暖くて生命力が溢れた、そう、ジャングル!
そうかジャングルか、兄様の居たとこでもなさそうだなーって、何で私はこんなとこにいるんでしょうか?
え?なんで?
おちつけ、思い出せ。私は何をした?
扉を開けました。目を瞑りました。外でした……。扉は?
振り返ると錆びついた扉が、ほぼ朽ちている。
ここから出てきたの?
恐る恐る触れると、その扉は開いて、向こう側は洞窟になっていた。そこには何かの魔法陣がある。
難解な魔法陣だ。基礎魔法の知識で、かろうじてこれが出口用だと判る。つまり、ここからは帰れない。
「誰かいますかー?」
大声を上げても、鳥がチチチチと言って飛び立っていっただけだった。
伝書鳩のチュンチュンは……、すでにナルさんに言付けに使ってるし、アンズはもちろん居ない。
これ、詰んでない?
ここは見知らぬジャングルで、私が今使えるのは見開きとかのスキルとごく一部の魔法。しかも、魔法禁止されるレベルで魔力が欠乏しやすい。
なのに、いきなりサバイバルゲーム(ハード)に突入してしまった?
どうする?まずは水の確保か。湧水や雨水を飲める様にする魔法は知ってる。兄様に教えてもらってる。食べ物の取り方も……一応分かる。兄様に教えてもらってる。長期間は無理だけど、数日なら魔力量から考えても何とかなると思われる。そうなると問題は……、
『結界からは出るな。襲われて命を落とせばまだマシだ』
ピンポイントで思い出すべきな様な、思い出さない方が良かった様な兄様の言葉が思い出されてくる。
肉食の獣がヤバい。起きている時、元気なうちには襲ってこない。寝ていたり、寝れずに弱って来たら、本気で危ない。
草食動物の巣の近くで止まっててもヤバい。護るためにと攻撃をされる。
森を出るには……、川に沿って下るか、方向を決めてまっすぐ突き進むか。
記憶の中の地図を思い出す。西も東も端は山脈だ。真っ直ぐ突き進んで平地に出られる確率は命を賭けるにしては心許ない。山とは言っても起伏があるし、全体は見渡せないから坂を降っていても全体としては登っている事もありうるだろう。
「とりあえず、水辺か川を探そう」
自分てこんなに精神的にタフだったっけ?と思いながら、まずは緩やかな坂を降りて行くことにした。心許ないとはいえ、武器類は服の中にしまってあるし、それで確実に食べても死なない木の実や果物を採集しつつ移動だ。
容量大きい暗殺者向けの服で良かった。膨らみの中はポケットや収納がいっぱいあるから。
地面の中に落ちるタイプの滝があったら行き詰まる。どうか川っぽい川に出逢います様に!
耳を澄ませて、水音のする方にゆっくりと進んだ。しかし、音はすれども中々行き当たらない。聴覚が加護やらでかなり良くなってるのかも。
「わっ」
草をかき分けて進んでいると、突然開けて池に行き当たった。そして、そこにはなんと人がいた。
「人だー!」
「うおっ!」
池で水筒に水を汲んでいた男の人が奇声を上げた。驚かせてすみません。
「なんや、自分、どっから沸いた?!」
「それが分からないんです。ここどこですか?」
「って、子供やないか?」
「はい、16歳です。カリンと申します。それで、ここどこですか?」
「何で、こないなとこに子供がおんねん。ここはワイトや」
「ワイト?すみません、それは王都からどちらの方面になりますか?」
「王都からやと真西のいっちゃん端にある森やな。ここら辺には森が広がっとってその先はごっつ寒い山や」
みんなで行こうとしていた森?じゃあ、ここにも兄様はいない……。っていうか、
「私、今の今まで王都にいたんです」
「はぁっ?」
短髪銀髪のその男性は、リアクションが中々派手だった。
池の対岸同士なので、どうにかあちらに行きたいが、ぐるっと回るしかないかな。
「坊主、こっちまで飛べるか?」
「無理だと思います」
「しゃあないな」
その人はそばにあった長い枝を棒高跳びの様に池に刺すと、こちらに飛んできた。身軽過ぎる!と驚いたが、なんと彼は私を小脇に抱えると同じ様にしてまた元の場所に飛んだ。
「す、凄い」
「せやろ、もっと褒めたって」
強面三白眼がにこーっと笑顔になった。なんと表情筋の豊かな。
「身軽な上に、私を運べるなんて、どんな訓練をされてたんですか?」
「まぁ、才能やな」
言われた通り褒めたら、本当に鼻高々としてる。
「で、や。坊主、王都からここに出たってほんまか?」
「はい。女王陛下とお話をしていて……」
「じょおっ」
水を飲もうとして溺れてる人を初めて見た。
「耳!」
「はい?」
「……金のピアス。坊主、お貴族様か?」
「はい、半年ほど前に養子になりました」
「原石、か。おおかた政敵に恨まれたんやろなぁ」
「え?」
「ここ、たまーに、貴族の死体転がっとんねん。なんでやろ、やられてから連れてこられたんかと思とったんやけど、生きたまま放置やったんかー」
「そんな……」
陛下が気を配ってくれていたのに?私は誰かに嵌められた?
「ほんで、どないするん?」
「帰らないと!皆が、兄達が心配しているはずです」
屋敷から出ないようにアッシャーに言われたのに、屋敷どころか王都からも出てしまった。
「どうやって?」
「帰り道を教えてもらえませんか?」
「生憎やけど、遊びでここに来とるんちゃうねん。ほな連れてったろーって訳にはいかん。道て言うたかて、言葉で説明して分かるもんやないやろ。まぁ、せやけど、お子ちゃまやし?仕事済んだら、送ってやらん事もない」
「ほんとですか!」
「まぁな、せやけど、まぁ、あれや。地獄の沙汰もなんとやら。坊主、ラストネームは?」
「マンチェスターです」
「まんっ!げぇほぐぇほ」
今度は水が肺まで入ったらしい。
「まん、まん、マンチェスター?坊主、名前っ」
「先程も申しましたが、カリンです」
「カリン、て。こないだ勇者の格付けん時二位やった……黒魔道士として女王様に要請されるんやないかって噂なっとった、あの?」
「はい、先程正式に要請されました」
彼は緑っぽい顔色になって高速で頭を振った。
「悪い。無理。無理無理無理無理無理よりの無理。街出て、政敵に見つかったら俺の命すら危ういやんけ。ダイレクトにマンチェスターの領地に行かれへんし、他に完全に安全そうなんはサンダーランド位やけど、地理的にはより遠い」
「お金はいくらでも」
「命あっての物種ゆう名言があんねんて」
「そう、ですか」
そこまで危ない事なのか。見ず知らずのこの人を巻き込むのはいけないかも知れない。
「分かりました。自分でなんとか頑張ってみます」
「いや、無理やろ。この森のこと知らんとうろつくんは自殺行為やで?」
「けれど、他に方法がありません」
時間がない、色々と。それにみんな絶対心配してる。
目の前の人は頭をかきむしりながら悶絶していた。本当にボディランゲージが凄い。
「あー、もー、しゃーなしや!街には連れてってやれへんけど、街の近くまでなら連れてったる!子供残していけるほど俺は薄情ちゃうぞ!せやけど、仕事済んでからやで!」
ひきつった自嘲の笑顔で、ピシッと指を指されながらも、彼はそう言ってくれた。
「ありがとうございます!」
「しゃーない。これはしゃーなしや」
今度は泣きながらグルグルしている。
「俺はウジョーや。ここで魔石ハンターやっとる。注文あったサイズの魔石採らな帰られへん。カリンにも協力してもらうからな!」
半分声が裏返りながら、ウジョーさんは絶叫した。
そうかジャングルか、兄様の居たとこでもなさそうだなーって、何で私はこんなとこにいるんでしょうか?
え?なんで?
おちつけ、思い出せ。私は何をした?
扉を開けました。目を瞑りました。外でした……。扉は?
振り返ると錆びついた扉が、ほぼ朽ちている。
ここから出てきたの?
恐る恐る触れると、その扉は開いて、向こう側は洞窟になっていた。そこには何かの魔法陣がある。
難解な魔法陣だ。基礎魔法の知識で、かろうじてこれが出口用だと判る。つまり、ここからは帰れない。
「誰かいますかー?」
大声を上げても、鳥がチチチチと言って飛び立っていっただけだった。
伝書鳩のチュンチュンは……、すでにナルさんに言付けに使ってるし、アンズはもちろん居ない。
これ、詰んでない?
ここは見知らぬジャングルで、私が今使えるのは見開きとかのスキルとごく一部の魔法。しかも、魔法禁止されるレベルで魔力が欠乏しやすい。
なのに、いきなりサバイバルゲーム(ハード)に突入してしまった?
どうする?まずは水の確保か。湧水や雨水を飲める様にする魔法は知ってる。兄様に教えてもらってる。食べ物の取り方も……一応分かる。兄様に教えてもらってる。長期間は無理だけど、数日なら魔力量から考えても何とかなると思われる。そうなると問題は……、
『結界からは出るな。襲われて命を落とせばまだマシだ』
ピンポイントで思い出すべきな様な、思い出さない方が良かった様な兄様の言葉が思い出されてくる。
肉食の獣がヤバい。起きている時、元気なうちには襲ってこない。寝ていたり、寝れずに弱って来たら、本気で危ない。
草食動物の巣の近くで止まっててもヤバい。護るためにと攻撃をされる。
森を出るには……、川に沿って下るか、方向を決めてまっすぐ突き進むか。
記憶の中の地図を思い出す。西も東も端は山脈だ。真っ直ぐ突き進んで平地に出られる確率は命を賭けるにしては心許ない。山とは言っても起伏があるし、全体は見渡せないから坂を降っていても全体としては登っている事もありうるだろう。
「とりあえず、水辺か川を探そう」
自分てこんなに精神的にタフだったっけ?と思いながら、まずは緩やかな坂を降りて行くことにした。心許ないとはいえ、武器類は服の中にしまってあるし、それで確実に食べても死なない木の実や果物を採集しつつ移動だ。
容量大きい暗殺者向けの服で良かった。膨らみの中はポケットや収納がいっぱいあるから。
地面の中に落ちるタイプの滝があったら行き詰まる。どうか川っぽい川に出逢います様に!
耳を澄ませて、水音のする方にゆっくりと進んだ。しかし、音はすれども中々行き当たらない。聴覚が加護やらでかなり良くなってるのかも。
「わっ」
草をかき分けて進んでいると、突然開けて池に行き当たった。そして、そこにはなんと人がいた。
「人だー!」
「うおっ!」
池で水筒に水を汲んでいた男の人が奇声を上げた。驚かせてすみません。
「なんや、自分、どっから沸いた?!」
「それが分からないんです。ここどこですか?」
「って、子供やないか?」
「はい、16歳です。カリンと申します。それで、ここどこですか?」
「何で、こないなとこに子供がおんねん。ここはワイトや」
「ワイト?すみません、それは王都からどちらの方面になりますか?」
「王都からやと真西のいっちゃん端にある森やな。ここら辺には森が広がっとってその先はごっつ寒い山や」
みんなで行こうとしていた森?じゃあ、ここにも兄様はいない……。っていうか、
「私、今の今まで王都にいたんです」
「はぁっ?」
短髪銀髪のその男性は、リアクションが中々派手だった。
池の対岸同士なので、どうにかあちらに行きたいが、ぐるっと回るしかないかな。
「坊主、こっちまで飛べるか?」
「無理だと思います」
「しゃあないな」
その人はそばにあった長い枝を棒高跳びの様に池に刺すと、こちらに飛んできた。身軽過ぎる!と驚いたが、なんと彼は私を小脇に抱えると同じ様にしてまた元の場所に飛んだ。
「す、凄い」
「せやろ、もっと褒めたって」
強面三白眼がにこーっと笑顔になった。なんと表情筋の豊かな。
「身軽な上に、私を運べるなんて、どんな訓練をされてたんですか?」
「まぁ、才能やな」
言われた通り褒めたら、本当に鼻高々としてる。
「で、や。坊主、王都からここに出たってほんまか?」
「はい。女王陛下とお話をしていて……」
「じょおっ」
水を飲もうとして溺れてる人を初めて見た。
「耳!」
「はい?」
「……金のピアス。坊主、お貴族様か?」
「はい、半年ほど前に養子になりました」
「原石、か。おおかた政敵に恨まれたんやろなぁ」
「え?」
「ここ、たまーに、貴族の死体転がっとんねん。なんでやろ、やられてから連れてこられたんかと思とったんやけど、生きたまま放置やったんかー」
「そんな……」
陛下が気を配ってくれていたのに?私は誰かに嵌められた?
「ほんで、どないするん?」
「帰らないと!皆が、兄達が心配しているはずです」
屋敷から出ないようにアッシャーに言われたのに、屋敷どころか王都からも出てしまった。
「どうやって?」
「帰り道を教えてもらえませんか?」
「生憎やけど、遊びでここに来とるんちゃうねん。ほな連れてったろーって訳にはいかん。道て言うたかて、言葉で説明して分かるもんやないやろ。まぁ、せやけど、お子ちゃまやし?仕事済んだら、送ってやらん事もない」
「ほんとですか!」
「まぁな、せやけど、まぁ、あれや。地獄の沙汰もなんとやら。坊主、ラストネームは?」
「マンチェスターです」
「まんっ!げぇほぐぇほ」
今度は水が肺まで入ったらしい。
「まん、まん、マンチェスター?坊主、名前っ」
「先程も申しましたが、カリンです」
「カリン、て。こないだ勇者の格付けん時二位やった……黒魔道士として女王様に要請されるんやないかって噂なっとった、あの?」
「はい、先程正式に要請されました」
彼は緑っぽい顔色になって高速で頭を振った。
「悪い。無理。無理無理無理無理無理よりの無理。街出て、政敵に見つかったら俺の命すら危ういやんけ。ダイレクトにマンチェスターの領地に行かれへんし、他に完全に安全そうなんはサンダーランド位やけど、地理的にはより遠い」
「お金はいくらでも」
「命あっての物種ゆう名言があんねんて」
「そう、ですか」
そこまで危ない事なのか。見ず知らずのこの人を巻き込むのはいけないかも知れない。
「分かりました。自分でなんとか頑張ってみます」
「いや、無理やろ。この森のこと知らんとうろつくんは自殺行為やで?」
「けれど、他に方法がありません」
時間がない、色々と。それにみんな絶対心配してる。
目の前の人は頭をかきむしりながら悶絶していた。本当にボディランゲージが凄い。
「あー、もー、しゃーなしや!街には連れてってやれへんけど、街の近くまでなら連れてったる!子供残していけるほど俺は薄情ちゃうぞ!せやけど、仕事済んでからやで!」
ひきつった自嘲の笑顔で、ピシッと指を指されながらも、彼はそう言ってくれた。
「ありがとうございます!」
「しゃーない。これはしゃーなしや」
今度は泣きながらグルグルしている。
「俺はウジョーや。ここで魔石ハンターやっとる。注文あったサイズの魔石採らな帰られへん。カリンにも協力してもらうからな!」
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