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ちゅっと音を立てて、今度のキスは甘かった。
気持ちいい。
だけど上唇と下唇にキスされ、私の口の端を舌先でくすぐる様に舐めてから、ナツは顔を離した。
「ごっそさん。とびきり甘いデザートもろたな」
「ナツ……」
「ん?」
もう少し、キスしていたい。
そんなはしたない欲求を飲み込んでいると、彼は私の腰を引き寄せた。
「あんな、そんな目で煽らんとってや。狼になってまうで。それから、言いたいことはお口で言うてな」
うぅん?それは、もっとキスしたいと言っても狼さんになるのでは?
「ああ、あかんな。また考え込ませてもうた。……えいこサン、俺が言う通り言うて?」
「うん」
「『夏樹』」
「夏樹」
「『大好き』」
「だ、だいすき……」
「『キスして?』」
「キス……して?」
「なんぼでも」
な、と口を開けたところに彼の舌が滑り込んできた。さっきより激しいキス。唾液腺を舐め上げられてゾクゾクする。溢れた唾液を舌ごと吸われて、下腹部がきゅんとなった。
口が離れる気配がして、慌てて手を彼の首に回すと少し笑われて、今度は歯の裏を舐められた。
心臓の音が彼に聞こえるのではないかと思うくらい早鐘を打っている。そのまま、ソファーベッドに押し倒された。
「えいこサン、俺もめっちゃ好きやねん」
耳元で夏樹の声が低く響いた後、耳を舌が犯した。穴も外もキスされ舐めらて、私は夏樹のシャツを握りしめた。舌は首筋にキスを降らせながら下に向かっていく。
堪らず瞑っていた目を開けると、彼の大きな手は器用に私のブラウスのリボンを解き、ボタンも外していた。その手が私の背中に回されて、胸周りが楽になった。
「あ」
背中全体を片手で持ち上げられて、身体が少し浮いた。重力で私の頭は後ろに下がって、あらわになった顎と喉の境を夏樹はわざと音を立ててキスをする。
くちゅ……ちゅ、ちゅ
「痛っ」
「ごめん、ついマーキングしてもうた」
こんなところ、ぱっと見では人目につかないけど、キスマークなんて……
「そん……」
「あかんなぁ、俺がここ触ったり見つめたりするたんびに、えいこサン今日のこと思い出してまうのになぁ」
わざとっ!?カッなって、首筋から離れた夏樹に文句を言おうと顔をあげたら、そのタイミングで頭を支えられて、反対の手で下着とスカート両方を下された。ぴったりと張り付くほどに濡れた下着が剥がれる感覚がして、恥ずかしさで何も言えなくなる。
「……でも、そこに俺の印があると……眺めながらこういう事できんねんな」
私の両腿を持ち上げて、その間に彼の顔が沈む。一瞬目があって、笑われて、下から快感が襲ってきた。
じゅっじゅっ……
「――っ!」
私シャワー浴びてないっ!
汚いよ、も、駄目、も言葉にならなくて、私は快感で仰け反るような体勢になってしまう。隠したい場所が彼の目の前に突き出すような形になって、恥ずかしすぎて手を強く握りしめた。
蜜を吸い、私の小さな突起にキスをして、彼の舌が私の中に入ってくる。初めての感覚に思わず声が漏れた。
「ぁん」
ピタリ、とソレが止まった。朦朧としかかっていた私でも、流れるようだった動きが止まった事には流石に気がついた。夏樹を見ると口を離してまじまじと私の下を見ていた。と思ったら、顔が一気に真っ赤になった。
「え、えいこサン。もしかして、は、はじめて?」
「あ。」
さぁっと血が下がった。私は自分の意識では二十代前半だけど戸籍上ではそこから十二歳をくっている。その歳で処女は流石に恥ずかしい。
逃げ出そうかと思案していると、夏樹がぐっと顔をしかめた。かちゃかちゃとベルトがなり、細身のパンツが下される。
「一人くらいは、やらなあかんかて覚悟してたんやけど」
夏樹の言葉の意味が分からなくて聞き返そうかと思ったが、それよりもう一つの出来事に呆気にとられてしまった。顔もしかめるはずだ。彼の自身はボクサーパンツが破らんばかりの大きさになっていた。
え?ちょっとまって。ソレが入るんですか?物理的に無理ですって。
「夏樹、ストップ!」
あんなもので貫かれたら死ぬ。私は両手を夏樹の前に差し出して止めた。その手が引かれて、彼に手のひらをぺろりと舐められる。
「血ぃ滲んどるやんか」
無意識に強く握っていたらしい。
ヒョイっと私はお姫様抱っこされて運ばれた。
「えいこサンは痛いのがお好きなん?怪我されるのは嫌なんやけど、ここもええか?」
耳朶を強く吸われた。痛さより熱さを感じて、彼に印を与えられた事が分かった。
何故か異様な興奮を感じて、私から彼にキスをした。ぎこちなくだけど舌を絡ませて、溢れてきた彼の唾液を飲み下す。
「えいこサン、キスも初めてやろ」
「ごめんなさい」
そんなに下手なのか、と思わず謝った私の瞼に優しいキスが一つ落ちた。
「なんで謝んねん。嫉妬深い男に殺される人がおらんのは良いことや」
物騒すぎる冗談に苦笑いしてしまう私を彼はベッドルームのベッドに優しく降ろした。それから夏樹は私から離れて、照明を絞ってオーディオをオンにした。リラックス効果?と思ったがそれにしては音が大きい。
「この部屋の音が漏れる事は無いと思うんやけど、防音にしとけば良かったわ。……えいこサンの鳴き声が他人の耳に入ったら、俺が困る」
叫び声の間違いじゃ?と突っ込む前に私の側に戻った彼はキスを軽くして、私の胸を吸った。
「――!」
「身体冷えてもうたな。あっためよか」
舌で胸の頂きをトントンと弾かれて、私の下腹部はギュンと力が入った。
「力、抜いて?」
「あ、んん!」
ビクビクっと電気が走った。汗と唾液、ついでに涙も出る。心臓がどくどくいって、愛しさが溢れた。
「な、夏樹ぃ」
「指、一本なんやけど。ここで辞めとこかって言えへん俺を恨んでくれ」
「ん」
深いキスをされながら、まだ収縮を感じるところが優しく拡げられる。私がまた手のひらを傷つけないように、両手は頭の上で彼の手を握らされた。
「今度から、爪はちゃんと切らなきゃ、やな」
何故か聞き覚えのある台詞に私の意識は一瞬飛んだ。
それから、唐突に夏樹がこれほど私を愛してくれる理由が分かった。記憶が無くなってなお私達は途切れなかった。
「えいこサン?いくで?」
ハッと意識が戻った時には、私の身体も彼を受け入れる準備ができていた。両手を夏樹の背中に回されて、彼自身があてがわれる。
「痛かったら、背中に爪立ててええから」
ぐっと圧がかかると、ブチっと音がして思わず彼の背中に爪を思い切り立ててしまった。
激痛と気持ち良さで、目の焦点が合わなくなる。私の舌は口を合わせた彼の舌でしごかれるように慰められて、酷い事に彼はそんな私を愛しそうに眺めていた。
キツイのか、ゆっくり進むのが大変なのか、夏樹の背中は少し汗ばんできた。
「えいこサン、しんどぉないか?」
だけど、夏樹が私の事ばかり心配するから愛しくて愛しくて仕方なくなった。
「辛かったら、お口で言うてな?」
「なつ、き、だいすき」
思った以上にに私もいっぱいいっぱいだったらしく、言葉は途切れ途切れになった。
ぐっと中の質量が増した。あ、あかんやつや。
「えいこサン、ごめん」
その言葉の意味が分かったのはだいぶ後だった。この時、実はまだ彼の半分しか進んでいなかったらしい。
突然内臓、胃が心臓に届くかと思うくらい押されたと思った。最奥に彼が叩きつけられて、さっきとは比べ物にならない気持ち良さが全身を駆け巡る。ビリビリした感覚は指先から髪の先に至るまで広がって、自分は隅々まで夏樹の物だと認識した。
「えいこ、サンっ。えいこっ」
私は夏樹がどれほど私を求めていたのか知らなかった。それから、彼の余裕がなけなしの理性の上に成立していた事も、彼が狼なんて可愛いもんじゃない事も。
激しく打ち付けられる度にぐっちょっぐっちょと音がして、オーディオの音も聞こえない。彼の激しい息遣いとその音が響く部屋で、私は何度か意識を失った。
脳みそが溶けそうになりながら、視界に入る自分の小さな足がゆっさゆっさと揺れているのを眺めて意識が飛ばないように集中する。
が、名前を呼ばれる度に快感に襲われて今まで使った事のない内蔵の筋肉は最早限界。それに、自分の最奥が渇望しているものが欲しくて堪らない。
目を瞑って私を端まで味わう彼の頭を両手で優しく包む、それに気づいた彼と目が合って懇願した。
「なつき、あた、し死んじゃう。なつきの……ちょうだ」
最後まで言う前に口を塞がれて、夏樹の唾液で喉が潤った。打ち付けるスピードが少し早くなって、その予兆がして、私は無意識に足を絡めた。
引き抜こうとする彼の首に手を回して、必死に縋り付く。ぶわっとぬくい感覚がお腹に広がると同時に、私に最大の喜びが走って、彼の大量を一滴も逃さないように収縮した。
――――――――――――――――――――――――――
眼が覚めると朝だった。全身をガッチリホールドされていて、すでに馴染んだ彼の汗の匂いに包まれている。オーディオはついたまま。
トイレに行きたい。だけど、起こすのも悪いし、と思い、体をずらそうとしたが、
痛い。すごく、痛い。
覚悟していた場所はもちろん、足のふくらはぎから背中まで全身筋肉痛だ。お腹は空いているし、喉も渇いているけど内臓全体もじんわり痛い。
夏樹を起こさないように、そっとここから脱出なんて出来そうもないし、そもそも歩けるかどうかも分からない。なんてったって、動かそうとしただけでこの激痛。困った。本当に困った。
「ぷっくくく」
「ナツ、起きてたの?いつから?」
「ついさっき、多分えいこサンが起きる直前やな。朝から可愛い姿が見れて幸せや。おはようさん」
「お、おはよ」
耳の、昨日跡をつけられたところにキスされた。そこもちゃんと痛い。
「名残惜しいけど、しゃあないな」
そう言って夏樹はベッドに起き上がった。と同時に、私の下腹部にずるりとした感触があった。
「――――っ!」
「一晩中ごちそうさん」
髪にキスされると、私の下は夏樹の大量を吐き出した。あんなに疲れているはずなのに、キス一つで自分の準備がオートで整ってしまう事実におののく。
「流石に朝からやったら、えいこサン壊してまうわ。ところで、動けそうか?」
「無理、かな?」
夏樹ので支えられていた体は彼が離れた途端崩れた。足腰ガクガクでこれはトイレも行けなさそう。と思ったけれど、尿意は無くなっている。見るとベッドには大きな赤とクリーム色のシミができていた。
「とりあえず風呂やなー」
呑気な感じでヒョイと抱き抱えられてバスルームのバスタブの中に入れられた。そこにぬるめの湯が入れられる。
「……飲みもん取ってくるわ」
そう言って取りに行ってきた夏樹の手には水のペットボトルが二つ。よく冷えているらしく、ボトルは汗をかいている。
「ありがとう」
「えいこサンは体冷やしたらあかんねん」
ボトルを渡されかけて礼を言ったのに、それは夏樹の口に運ばれた。もう一つが常温に戻るのを待つのかな、と甘い事を考えていたらキスされる。驚いたけど、喉の乾きがひどくて少し冷えた水をこくこくと飲んだ。
足りなくて、「もっと」と「ちょうだい」を何度も言わされながら何度も口移しで飲まされる。喉の渇きをとりあえず癒して、いざ反論。
「なんで体冷やしちゃダメなの?水くらいいつも飲んでるよ」
「……守護霊獣がおらんようになった」
「しゅごれいじゅう?」
「山田さんから聞いとらへん?えいこサンが神隠しに遭うた時、あっちから連れてきたやつ。山田さんの話やと、えいこサンが自分の子供にするために連れて帰ってきたらしいねん」
「守護霊がいるとは聞いてたけど、そこまで詳しくは……その子が居なくなったしなにか危ないの?」
「……えいこサン、生理、次いつ?」
言われて逆算して、昨日ができやすい日どんぴしゃの日だった事に気がついた。
「とりあえず、ご両親にご挨拶に伺わな」
ありえない、とか、ほんとだったらどうしよう、とか、嬉しいけど、とかが頭をぐるぐる回った。昨日まで片思い未満だったのが、怒涛の展開だ。精神も追いついて居なかった。
「プロポーズはまた改めてさせて、な。今日は一日えいこサンを愛でる権利貰った訳やし」
誕生日プレゼントの件だと気がついて、言葉を反芻した。つまり、一日利用権が欲しくてお嫁さんの方を延期した、と。
「ずるい。ナツ、ずるい」
「せやけど、えいこサン、一人で風呂も入らへんのと違うか?」
確かに。
バスタブから出されて夏樹の膝の上で全身洗われる。洗い場にはかなり大きな鏡があって、私の表情は夏樹に全てばれていた。多少意地悪をされながらも、怪我人だからか手ぬるく攻められただけだったので、私の中の夏樹の残りが全て出て行く程度だった。
朝ごはんは冷蔵庫の中にあるもの適当に、と夏樹がオムレツとパン、サラダに適温の柚子ティーを用意してれた。やればできるじゃん、というレベルではない。ホテル朝食並み。ふわふわとろとろのオムレツは至福の味だった。料理の腕を隠したくなる心境は理解できたけど、私のこれからのハードルは上がった。
「俺からしたら、えいこサンがこさえたもんの方が数倍美味いんやけどな」
「愛情の調味料が効くのはナツだけだもん。ちゃんと上手くなりたいよ。今度教えてね」
「一緒に料理に立つんは……ええな」
何故か赤くなっているナツが何を考えているかは身の安全のために突っ込まなかった。上記の会話さえ、ナツの膝の上でナツに食べさせて貰っている状態なのだから。
ナツのシャツを着せられて、移動はお姫様抱っこ。私がする事と言えば、誕生日のケーキをナツの口に運ぶだけ。ちなみに私には彼が食べさせている。各々で食べない?という提案は却下されました。
あんまりやられ過ぎで悔しいから、いつか私も夏樹の耳にキスマークくらい残したいと思う。
こうやって私の溺愛ライフは幕を開けた。
気持ちいい。
だけど上唇と下唇にキスされ、私の口の端を舌先でくすぐる様に舐めてから、ナツは顔を離した。
「ごっそさん。とびきり甘いデザートもろたな」
「ナツ……」
「ん?」
もう少し、キスしていたい。
そんなはしたない欲求を飲み込んでいると、彼は私の腰を引き寄せた。
「あんな、そんな目で煽らんとってや。狼になってまうで。それから、言いたいことはお口で言うてな」
うぅん?それは、もっとキスしたいと言っても狼さんになるのでは?
「ああ、あかんな。また考え込ませてもうた。……えいこサン、俺が言う通り言うて?」
「うん」
「『夏樹』」
「夏樹」
「『大好き』」
「だ、だいすき……」
「『キスして?』」
「キス……して?」
「なんぼでも」
な、と口を開けたところに彼の舌が滑り込んできた。さっきより激しいキス。唾液腺を舐め上げられてゾクゾクする。溢れた唾液を舌ごと吸われて、下腹部がきゅんとなった。
口が離れる気配がして、慌てて手を彼の首に回すと少し笑われて、今度は歯の裏を舐められた。
心臓の音が彼に聞こえるのではないかと思うくらい早鐘を打っている。そのまま、ソファーベッドに押し倒された。
「えいこサン、俺もめっちゃ好きやねん」
耳元で夏樹の声が低く響いた後、耳を舌が犯した。穴も外もキスされ舐めらて、私は夏樹のシャツを握りしめた。舌は首筋にキスを降らせながら下に向かっていく。
堪らず瞑っていた目を開けると、彼の大きな手は器用に私のブラウスのリボンを解き、ボタンも外していた。その手が私の背中に回されて、胸周りが楽になった。
「あ」
背中全体を片手で持ち上げられて、身体が少し浮いた。重力で私の頭は後ろに下がって、あらわになった顎と喉の境を夏樹はわざと音を立ててキスをする。
くちゅ……ちゅ、ちゅ
「痛っ」
「ごめん、ついマーキングしてもうた」
こんなところ、ぱっと見では人目につかないけど、キスマークなんて……
「そん……」
「あかんなぁ、俺がここ触ったり見つめたりするたんびに、えいこサン今日のこと思い出してまうのになぁ」
わざとっ!?カッなって、首筋から離れた夏樹に文句を言おうと顔をあげたら、そのタイミングで頭を支えられて、反対の手で下着とスカート両方を下された。ぴったりと張り付くほどに濡れた下着が剥がれる感覚がして、恥ずかしさで何も言えなくなる。
「……でも、そこに俺の印があると……眺めながらこういう事できんねんな」
私の両腿を持ち上げて、その間に彼の顔が沈む。一瞬目があって、笑われて、下から快感が襲ってきた。
じゅっじゅっ……
「――っ!」
私シャワー浴びてないっ!
汚いよ、も、駄目、も言葉にならなくて、私は快感で仰け反るような体勢になってしまう。隠したい場所が彼の目の前に突き出すような形になって、恥ずかしすぎて手を強く握りしめた。
蜜を吸い、私の小さな突起にキスをして、彼の舌が私の中に入ってくる。初めての感覚に思わず声が漏れた。
「ぁん」
ピタリ、とソレが止まった。朦朧としかかっていた私でも、流れるようだった動きが止まった事には流石に気がついた。夏樹を見ると口を離してまじまじと私の下を見ていた。と思ったら、顔が一気に真っ赤になった。
「え、えいこサン。もしかして、は、はじめて?」
「あ。」
さぁっと血が下がった。私は自分の意識では二十代前半だけど戸籍上ではそこから十二歳をくっている。その歳で処女は流石に恥ずかしい。
逃げ出そうかと思案していると、夏樹がぐっと顔をしかめた。かちゃかちゃとベルトがなり、細身のパンツが下される。
「一人くらいは、やらなあかんかて覚悟してたんやけど」
夏樹の言葉の意味が分からなくて聞き返そうかと思ったが、それよりもう一つの出来事に呆気にとられてしまった。顔もしかめるはずだ。彼の自身はボクサーパンツが破らんばかりの大きさになっていた。
え?ちょっとまって。ソレが入るんですか?物理的に無理ですって。
「夏樹、ストップ!」
あんなもので貫かれたら死ぬ。私は両手を夏樹の前に差し出して止めた。その手が引かれて、彼に手のひらをぺろりと舐められる。
「血ぃ滲んどるやんか」
無意識に強く握っていたらしい。
ヒョイっと私はお姫様抱っこされて運ばれた。
「えいこサンは痛いのがお好きなん?怪我されるのは嫌なんやけど、ここもええか?」
耳朶を強く吸われた。痛さより熱さを感じて、彼に印を与えられた事が分かった。
何故か異様な興奮を感じて、私から彼にキスをした。ぎこちなくだけど舌を絡ませて、溢れてきた彼の唾液を飲み下す。
「えいこサン、キスも初めてやろ」
「ごめんなさい」
そんなに下手なのか、と思わず謝った私の瞼に優しいキスが一つ落ちた。
「なんで謝んねん。嫉妬深い男に殺される人がおらんのは良いことや」
物騒すぎる冗談に苦笑いしてしまう私を彼はベッドルームのベッドに優しく降ろした。それから夏樹は私から離れて、照明を絞ってオーディオをオンにした。リラックス効果?と思ったがそれにしては音が大きい。
「この部屋の音が漏れる事は無いと思うんやけど、防音にしとけば良かったわ。……えいこサンの鳴き声が他人の耳に入ったら、俺が困る」
叫び声の間違いじゃ?と突っ込む前に私の側に戻った彼はキスを軽くして、私の胸を吸った。
「――!」
「身体冷えてもうたな。あっためよか」
舌で胸の頂きをトントンと弾かれて、私の下腹部はギュンと力が入った。
「力、抜いて?」
「あ、んん!」
ビクビクっと電気が走った。汗と唾液、ついでに涙も出る。心臓がどくどくいって、愛しさが溢れた。
「な、夏樹ぃ」
「指、一本なんやけど。ここで辞めとこかって言えへん俺を恨んでくれ」
「ん」
深いキスをされながら、まだ収縮を感じるところが優しく拡げられる。私がまた手のひらを傷つけないように、両手は頭の上で彼の手を握らされた。
「今度から、爪はちゃんと切らなきゃ、やな」
何故か聞き覚えのある台詞に私の意識は一瞬飛んだ。
それから、唐突に夏樹がこれほど私を愛してくれる理由が分かった。記憶が無くなってなお私達は途切れなかった。
「えいこサン?いくで?」
ハッと意識が戻った時には、私の身体も彼を受け入れる準備ができていた。両手を夏樹の背中に回されて、彼自身があてがわれる。
「痛かったら、背中に爪立ててええから」
ぐっと圧がかかると、ブチっと音がして思わず彼の背中に爪を思い切り立ててしまった。
激痛と気持ち良さで、目の焦点が合わなくなる。私の舌は口を合わせた彼の舌でしごかれるように慰められて、酷い事に彼はそんな私を愛しそうに眺めていた。
キツイのか、ゆっくり進むのが大変なのか、夏樹の背中は少し汗ばんできた。
「えいこサン、しんどぉないか?」
だけど、夏樹が私の事ばかり心配するから愛しくて愛しくて仕方なくなった。
「辛かったら、お口で言うてな?」
「なつ、き、だいすき」
思った以上にに私もいっぱいいっぱいだったらしく、言葉は途切れ途切れになった。
ぐっと中の質量が増した。あ、あかんやつや。
「えいこサン、ごめん」
その言葉の意味が分かったのはだいぶ後だった。この時、実はまだ彼の半分しか進んでいなかったらしい。
突然内臓、胃が心臓に届くかと思うくらい押されたと思った。最奥に彼が叩きつけられて、さっきとは比べ物にならない気持ち良さが全身を駆け巡る。ビリビリした感覚は指先から髪の先に至るまで広がって、自分は隅々まで夏樹の物だと認識した。
「えいこ、サンっ。えいこっ」
私は夏樹がどれほど私を求めていたのか知らなかった。それから、彼の余裕がなけなしの理性の上に成立していた事も、彼が狼なんて可愛いもんじゃない事も。
激しく打ち付けられる度にぐっちょっぐっちょと音がして、オーディオの音も聞こえない。彼の激しい息遣いとその音が響く部屋で、私は何度か意識を失った。
脳みそが溶けそうになりながら、視界に入る自分の小さな足がゆっさゆっさと揺れているのを眺めて意識が飛ばないように集中する。
が、名前を呼ばれる度に快感に襲われて今まで使った事のない内蔵の筋肉は最早限界。それに、自分の最奥が渇望しているものが欲しくて堪らない。
目を瞑って私を端まで味わう彼の頭を両手で優しく包む、それに気づいた彼と目が合って懇願した。
「なつき、あた、し死んじゃう。なつきの……ちょうだ」
最後まで言う前に口を塞がれて、夏樹の唾液で喉が潤った。打ち付けるスピードが少し早くなって、その予兆がして、私は無意識に足を絡めた。
引き抜こうとする彼の首に手を回して、必死に縋り付く。ぶわっとぬくい感覚がお腹に広がると同時に、私に最大の喜びが走って、彼の大量を一滴も逃さないように収縮した。
――――――――――――――――――――――――――
眼が覚めると朝だった。全身をガッチリホールドされていて、すでに馴染んだ彼の汗の匂いに包まれている。オーディオはついたまま。
トイレに行きたい。だけど、起こすのも悪いし、と思い、体をずらそうとしたが、
痛い。すごく、痛い。
覚悟していた場所はもちろん、足のふくらはぎから背中まで全身筋肉痛だ。お腹は空いているし、喉も渇いているけど内臓全体もじんわり痛い。
夏樹を起こさないように、そっとここから脱出なんて出来そうもないし、そもそも歩けるかどうかも分からない。なんてったって、動かそうとしただけでこの激痛。困った。本当に困った。
「ぷっくくく」
「ナツ、起きてたの?いつから?」
「ついさっき、多分えいこサンが起きる直前やな。朝から可愛い姿が見れて幸せや。おはようさん」
「お、おはよ」
耳の、昨日跡をつけられたところにキスされた。そこもちゃんと痛い。
「名残惜しいけど、しゃあないな」
そう言って夏樹はベッドに起き上がった。と同時に、私の下腹部にずるりとした感触があった。
「――――っ!」
「一晩中ごちそうさん」
髪にキスされると、私の下は夏樹の大量を吐き出した。あんなに疲れているはずなのに、キス一つで自分の準備がオートで整ってしまう事実におののく。
「流石に朝からやったら、えいこサン壊してまうわ。ところで、動けそうか?」
「無理、かな?」
夏樹ので支えられていた体は彼が離れた途端崩れた。足腰ガクガクでこれはトイレも行けなさそう。と思ったけれど、尿意は無くなっている。見るとベッドには大きな赤とクリーム色のシミができていた。
「とりあえず風呂やなー」
呑気な感じでヒョイと抱き抱えられてバスルームのバスタブの中に入れられた。そこにぬるめの湯が入れられる。
「……飲みもん取ってくるわ」
そう言って取りに行ってきた夏樹の手には水のペットボトルが二つ。よく冷えているらしく、ボトルは汗をかいている。
「ありがとう」
「えいこサンは体冷やしたらあかんねん」
ボトルを渡されかけて礼を言ったのに、それは夏樹の口に運ばれた。もう一つが常温に戻るのを待つのかな、と甘い事を考えていたらキスされる。驚いたけど、喉の乾きがひどくて少し冷えた水をこくこくと飲んだ。
足りなくて、「もっと」と「ちょうだい」を何度も言わされながら何度も口移しで飲まされる。喉の渇きをとりあえず癒して、いざ反論。
「なんで体冷やしちゃダメなの?水くらいいつも飲んでるよ」
「……守護霊獣がおらんようになった」
「しゅごれいじゅう?」
「山田さんから聞いとらへん?えいこサンが神隠しに遭うた時、あっちから連れてきたやつ。山田さんの話やと、えいこサンが自分の子供にするために連れて帰ってきたらしいねん」
「守護霊がいるとは聞いてたけど、そこまで詳しくは……その子が居なくなったしなにか危ないの?」
「……えいこサン、生理、次いつ?」
言われて逆算して、昨日ができやすい日どんぴしゃの日だった事に気がついた。
「とりあえず、ご両親にご挨拶に伺わな」
ありえない、とか、ほんとだったらどうしよう、とか、嬉しいけど、とかが頭をぐるぐる回った。昨日まで片思い未満だったのが、怒涛の展開だ。精神も追いついて居なかった。
「プロポーズはまた改めてさせて、な。今日は一日えいこサンを愛でる権利貰った訳やし」
誕生日プレゼントの件だと気がついて、言葉を反芻した。つまり、一日利用権が欲しくてお嫁さんの方を延期した、と。
「ずるい。ナツ、ずるい」
「せやけど、えいこサン、一人で風呂も入らへんのと違うか?」
確かに。
バスタブから出されて夏樹の膝の上で全身洗われる。洗い場にはかなり大きな鏡があって、私の表情は夏樹に全てばれていた。多少意地悪をされながらも、怪我人だからか手ぬるく攻められただけだったので、私の中の夏樹の残りが全て出て行く程度だった。
朝ごはんは冷蔵庫の中にあるもの適当に、と夏樹がオムレツとパン、サラダに適温の柚子ティーを用意してれた。やればできるじゃん、というレベルではない。ホテル朝食並み。ふわふわとろとろのオムレツは至福の味だった。料理の腕を隠したくなる心境は理解できたけど、私のこれからのハードルは上がった。
「俺からしたら、えいこサンがこさえたもんの方が数倍美味いんやけどな」
「愛情の調味料が効くのはナツだけだもん。ちゃんと上手くなりたいよ。今度教えてね」
「一緒に料理に立つんは……ええな」
何故か赤くなっているナツが何を考えているかは身の安全のために突っ込まなかった。上記の会話さえ、ナツの膝の上でナツに食べさせて貰っている状態なのだから。
ナツのシャツを着せられて、移動はお姫様抱っこ。私がする事と言えば、誕生日のケーキをナツの口に運ぶだけ。ちなみに私には彼が食べさせている。各々で食べない?という提案は却下されました。
あんまりやられ過ぎで悔しいから、いつか私も夏樹の耳にキスマークくらい残したいと思う。
こうやって私の溺愛ライフは幕を開けた。
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