【R18】二回目の異世界では見た目で勇者判定くらいました。ところで私は女です。親友がTS転移でイケメンチートのサイコパスになってた話。

吉瀬

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 口に温かいものが触れる。乾いた体に魔力が染み込んでいき、私の身体を巡るのが分かる。

 生きてる。

 細胞が少しずつ動き出す。

 だけど、この魔力は違う。
 私が欲しい物じゃ無い。これは嫌だ。

 私が欲しいのは

「リ、オネット、さ、ま」

 呻く程度の声しか出せないけれど、私は彼を呼んだ。

 苦しい。

 どこ?

「……カリン」

 彼の声が聞こえて、私はようやく安心して眠りに落ちた。

――――――――――――――――――――――――――

「いつまで寝とんねん!起き起きぃー!」

 雨情の聞き慣れた声で私は飛び起きた。ら、痛い!物凄く痛い!しかも全身!全身全霊をかけての激痛!

「い、いたたたたっ!」
「嘘やん。ほんまに起きた」

 どうゆう事?てゆーか何呑気な声で?!っと声のする方を見たら、雨情が笑っていた。左目には眼帯をして。

「雨情!目!」
「おう、命は取られへんだで!ラッキー!」
「その目、まさか」
「カリンのせいちゃうし、気にしたらあかん。ほんまギリ危ない所でリオネット様達に助けてもろてん」
「私のせいじゃない、訳ない、でしょ……?」
「と思うやろ、ちゃうねんで。エイス、俺の事ちょろっと切った後、残った奴らに拷問しろって命令してからカリン追っかけにいきよってん。ほんで、残った三下がナイフ顔に突きつけて来よったから、隙つくったろー、びびらしたろー思って目に自分で刺したってん。目からナイフがびよーんって出てるとこにリオネット様ご登場!あほやん自分!みたいな」

 笑い話にしてしまおうと雨情がすればするほど、取り返しがつかない事をさせてしまった真実味が増す。雨情は私に何かを背負わすことを極端に嫌うたちだ。

「それよか、全身痛いやろ?横になっとれ。今リオネット様呼んでくるし」

 言われてから周りを見ると、マンチェスターの方の城に帰って来たのだと気がついた。私は長く眠っていたの?

「ご気分はいかがですか?」

 現れたリオネット様は不自然なくらい爽やかにこやかな笑顔だった。でも、視線は合わず、目の色が深く暗い。

「リオネット様。ごめんなさい」
「何故、謝るのですか」

 目を合わせないまま、彼はベッドの側の椅子に腰掛けた。

「だってリオネット様にそんな顔をさせてしまったので」
「本当に貴女は私の事をよく見ている」

 ようやく目が合うと、彼は酷く切なげだった。一旦、彼の口は開かれ、そして閉じる。小さく息を吐いてリオネット様はわたしを抱きしめた。

「……3日も意識が戻らなかった。生きた心地がしませんでした」
「心配かけてごめんなさい」
「許しませんよ。貴女が二度と私と離れる事は認めません」

 優しいキスには魔力が乗っている。何となく、雨情に起こされる直前までリオネット様に魔力をもらっていたのだと感じる。

「あ、アンズは?」
「眠っています。貴女の影の中で、魔力をすべて貴女に注ぐために」

 今度は強く吸われた。甘くて激しくて、戸惑ってしまう。

「カリンの意識の中が私だけで埋め尽くされれば良いのに」
「リオネット、さま?」
「……すみません。嫉妬です。私は相当に嫉妬深いのだと、貴女に教えてもらいました」

 酷く心配をかけてしまったのは間違いない。私はリオネット様のキスを受け入れた。

「……貴女はまだ消耗が激しい。すみません無理をさせる所でした」
「平気です。それだけリオネット様が私の事を大切に思ってくださってるという事ですから」
「人がせっかく自重しようと努力している所を背中から打つ様な事はしないでほしい物ですね」
「はい?」
「その笑顔は、今の私には毒です」

 リオネット様はそう言って私から離れた。彼は、私が伏せっていたからと言う以外で何かとても不安定になっている様に思えた。

「貴女はまだ回復しきっておりません。なので、回復系以外の加護を一時的に弱めています。しばらくアッシャーとナルニッサには会わない方がいいでしょう」
「何故ですか?」
「……ナルニッサは色香テンプテーションというスキルがあり、アッシャーもその耐性をつける訓練をした時に弱いながら色香のスキルが付きました。私は嗜好に偏りがあるので2人の色香はほぼ無効ですが、今のカリンには刺激が強すぎる」
「……あの、アッシャーの様子は?」
「表面上に変わりはありませんが、じきに峠を越えそうです。自力で乗り越えられるまで、もう少し」
「分かりました。私も信じて待ちます」

 リオネット様がそう仰るなら大丈夫だろう。
 祈る事しか出来なくて、弟としての至らなさが悔しいけれど。

「そうだ。雨情を助けてくださってありがとうございました。彼はの目は?」

 リオネット様は首をゆっくりと振った。
 目に刺したと言っていたのだから、やはり無理か。

「他に怪我は?」
「……擦り傷程度です。目も化膿はしていません。脳と繋がっているので、菌毒が一番危険でしたが、それも防いだ」
「ありがとう、ございます」
「それに、本人もやる気があるようなので魔具の義眼を準備しています。手術は必要ですが、目は見えるようになるでしょう」
「ほんと、ですか?」
「ええ」
「ありがとうございます!」

 痛みを忘れて、リオネット様に抱きついた。

「貴女にあの者への負い目を感じさせる訳にはいきませんので」
「リオネット様」
カリン私の恋人を助けてもらった恩は、私が返します」
「リオネット様っ」
「そんなに強く抱きつくと、貴女の腕が傷む……、カリン、雨情とは何もありませんね?」
「何もって何ですか?」
「男女の話です。少し彼はカリンに親切すぎると言う気がして」

 目が点になる。よりによっての、雨情。

「無いです。無い無い。雨情は自分から行くタイプじゃないですし、そっち方面にトラウマもあるし……、相手の性別種族を超えてどがつくお人好しな感じですね」
「お人好し……」
「女性に3回騙されてるので、慎重なんです。でも義理人情に厚いので子供はほっとけないって」
「そうですか」

 リオネット様の目が少し柔らかくなってきた。2ヶ月の間の出来事を埋めたいと感じる。

「そういえばナルさんはお変わりありませんか?」

 その名前を私が出した途端、リオネット様は席を立った。

「流石に話過ぎました。まだ、貴女は寝てなくてはならない。失礼します」
「え?」

 本当に唐突に出て行ってしまった。
 ナルさんと喧嘩でもしてしまったのだろうか?






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