20 / 65
ゲシュタルト崩壊
しおりを挟む
翌日、右手にアンズ、左手に索冥、正面にナルさんの配置で仲直りの儀をさせられました。
みりんの様な漢方薬の様な少し甘くてアルコールっぽい液体を3回ずつ飲まされる。
使令の二匹は満足そうで、ナルさんもホッとした様子。私だけよく分かってない。
そもそも、忠誠を誓うってのが全然分からない。
アンズを使令にした時は初めから名前も分かっていたので、提案→受諾→宣誓がサラリと流れて行ったし、それに模した様な制度の人間版?位の理解だ。
アンズがその誓いに反応したからには、何かしら魔法的な契約の様だけれど、具体的にはちんぷんかんぷんの上、恐らくだけど主人側にはほとんど影響を感じられない。
僕側のナルさんは認知の歪み以外にも、信頼とか安心とか色々あるらしい。索冥の説明では犬との信頼関係っぽい感じだったので、二晩寝てなかった時はあんな作戦になったのだ。普通よく知りもしない異性が近くにいたら寝れないだろうし、私の感覚だと主人が側にいたら召使いも熟睡はできなかろうと思う。
「これにて、多少同調率が高まった。カリン様も僕の気持ちも鑑みてたも」
と、僕の僕にやんわり注意を受ける……。僕がゲシュタルト崩壊。
使令で召使いで僕でお友達??多分、元の世界でしっくりくる表現が無いから意味が揺らいで翻訳されている様気がする。
「それで、次の探索の事なんだけど……」
仲直りの儀式も終わった事なので、これからの予定について話を振った。途端に圧を感じる。これは、アレです。ご飯食べてる時にペットから感じるアレや、暇そうにしてる時のサンポツレテケのアレ。アレをナルさんからガンガンに感じる。
「一緒に行きたいの?でもナルさん忙しいから、またムリして寝なかったりしない?」
圧に屈してはならぬと心を鬼にして言いたい事は言う。ナルさんは、何故か嬉しそうだ。
「我が君は、私を心配してくださってあの様な事を仰ったのですか?お邪魔と言うわけではなかったのですか?」
「邪魔な訳無いよ。今回凄くお世話になってて、とても助かってる。でも、立場として難しいんじゃないかなって思って。なんだか、それでも人手が欲しいって私が言ったら無理してついて来てくれそうに思えて、そこまで迷惑はかけたく無いの」
ナルさんは座っていた椅子から徐に下りると床に膝をついて、私の手を取った。
「迷惑などあり得ません。しかし、お心遣い心より感謝いたします。私のサンダーランド領の仕事は一両日中に方がつく予定です。ですから、どうか私めをお側に」
いやなんかね、アンズの私に対する態度や索冥のナルさんに対する態度と、ナルさんの私に対する態度は大きな隔たりがあると思うんですよ。
「本当に?」
「誓って」
「じゃあ、これからもよろしく」
これで元通り、よね?と使令2人の方を見ると、
「しからば、我もついて参ろうぞ。王都と領地の外は久しぶりよの、ほっほっほ」
「わーい、これで僕も人型になる可能性が増えるー」
使令のお二人は脳内の欲求を基本隠そうとはしない。目的はそっちか。
恐らくリオネット様なら、ナルさんが私にくっついて動く事は予想してるのでは無いかと思う。アッサム様にはリオネット様から説明がいってる……よね?
和やかな空気を破る様に突然、バタバタと走る音が聞こえ、部屋のドアが忙しなくノックされた。私がいる時には初めて起きる事だ。ナルさんと索冥に緊張が走って、何か緊急に知らせるべき事が起きたのだと分かった。
「失礼いたします!街に怨嗟が、広範囲に!」
入って来たのはメイドさんでは無く、ローブに紋章入りの帽子、白魔道士の聖職者だった。
「……聖職者達では抑えきれない規模という事か」
「御意にございます。広場を中心に半径1キロ程。また、現地ではマンチェスター家のアッサム様にご助力頂いております」
「アッシャーか、助かる。すぐに行く」
短い言葉で事足りるのか、聖職者はまた部屋から飛び出して行った。
「私では手伝えない?」
「お気持ちだけ頂きます。城の中は安全ですので、こちらでお待ちください」
弱いと自分で言っていたくらいに弱い。アッサム様とナルさんの動きの中では、確かに足手まといにしかならない。
「いいえ」
「え?」
「何か今、我が君の心を曇らせた様なことが理由ではありません。あなた様は、人を傷付けない様に制圧する術をご存知ない。強い弱いで無く、訓練を受けてらっしゃらないから知らないだけなのです。そして、万一でも民が我が君を傷をつけた場合、私が民を傷つけてしまいます。民のために、どうかこちらにて」
そういうと私の手の甲にキスをしてから、ナルさんは空の玄関の方に去っていった。気がつくと索冥もいない。
ちょっと待て。整理しよう。
街では大変な事が起きている。私は使えない。私の心の中が、ナルさんにはバレバレ。手にキスされた。
「どういう事か聞いていいかな、アンズさん?」
「えへー」
「笑って誤魔化そうとしてるけど、無駄ですよ?」
「それ!」
「え?」
「同調率が高まってるんだよ。今カリンが僕の事分かったみたいに、ナルニッサもカリンの事が分かったの!」
それにしては精度高すぎないか?
ってそれどころじゃない!
空用の玄関に行き、街の方を見た。空からなら何か出来ない?普通の人間が怨嗟にやられても、それ程の飛び魔法は使えないだろうから、安全に思う。でも、ナルさんの気が散って、その隙を突かれてしまうかもしれない。そもそも何を手伝えるの?!
「ああ!もう!」
「おや、ご乱心ですね」
のんびりとした声で、リオネット様が街の中心の反対側から空の玄関に降りて来た。ペガサスの様な馬の様な騎獣に乗って。
「リオネット様!」
「何かありましたか?」
「街で怨嗟が、半径1キロ程だそうです。アッサム様とナルさんが戦っているのに、私は足手まといで……」
「簡潔な説明ありがとう。では、カリンには私のお手伝いを頼む事にしましょう」
リオネット様はにっこりと笑った。
みりんの様な漢方薬の様な少し甘くてアルコールっぽい液体を3回ずつ飲まされる。
使令の二匹は満足そうで、ナルさんもホッとした様子。私だけよく分かってない。
そもそも、忠誠を誓うってのが全然分からない。
アンズを使令にした時は初めから名前も分かっていたので、提案→受諾→宣誓がサラリと流れて行ったし、それに模した様な制度の人間版?位の理解だ。
アンズがその誓いに反応したからには、何かしら魔法的な契約の様だけれど、具体的にはちんぷんかんぷんの上、恐らくだけど主人側にはほとんど影響を感じられない。
僕側のナルさんは認知の歪み以外にも、信頼とか安心とか色々あるらしい。索冥の説明では犬との信頼関係っぽい感じだったので、二晩寝てなかった時はあんな作戦になったのだ。普通よく知りもしない異性が近くにいたら寝れないだろうし、私の感覚だと主人が側にいたら召使いも熟睡はできなかろうと思う。
「これにて、多少同調率が高まった。カリン様も僕の気持ちも鑑みてたも」
と、僕の僕にやんわり注意を受ける……。僕がゲシュタルト崩壊。
使令で召使いで僕でお友達??多分、元の世界でしっくりくる表現が無いから意味が揺らいで翻訳されている様気がする。
「それで、次の探索の事なんだけど……」
仲直りの儀式も終わった事なので、これからの予定について話を振った。途端に圧を感じる。これは、アレです。ご飯食べてる時にペットから感じるアレや、暇そうにしてる時のサンポツレテケのアレ。アレをナルさんからガンガンに感じる。
「一緒に行きたいの?でもナルさん忙しいから、またムリして寝なかったりしない?」
圧に屈してはならぬと心を鬼にして言いたい事は言う。ナルさんは、何故か嬉しそうだ。
「我が君は、私を心配してくださってあの様な事を仰ったのですか?お邪魔と言うわけではなかったのですか?」
「邪魔な訳無いよ。今回凄くお世話になってて、とても助かってる。でも、立場として難しいんじゃないかなって思って。なんだか、それでも人手が欲しいって私が言ったら無理してついて来てくれそうに思えて、そこまで迷惑はかけたく無いの」
ナルさんは座っていた椅子から徐に下りると床に膝をついて、私の手を取った。
「迷惑などあり得ません。しかし、お心遣い心より感謝いたします。私のサンダーランド領の仕事は一両日中に方がつく予定です。ですから、どうか私めをお側に」
いやなんかね、アンズの私に対する態度や索冥のナルさんに対する態度と、ナルさんの私に対する態度は大きな隔たりがあると思うんですよ。
「本当に?」
「誓って」
「じゃあ、これからもよろしく」
これで元通り、よね?と使令2人の方を見ると、
「しからば、我もついて参ろうぞ。王都と領地の外は久しぶりよの、ほっほっほ」
「わーい、これで僕も人型になる可能性が増えるー」
使令のお二人は脳内の欲求を基本隠そうとはしない。目的はそっちか。
恐らくリオネット様なら、ナルさんが私にくっついて動く事は予想してるのでは無いかと思う。アッサム様にはリオネット様から説明がいってる……よね?
和やかな空気を破る様に突然、バタバタと走る音が聞こえ、部屋のドアが忙しなくノックされた。私がいる時には初めて起きる事だ。ナルさんと索冥に緊張が走って、何か緊急に知らせるべき事が起きたのだと分かった。
「失礼いたします!街に怨嗟が、広範囲に!」
入って来たのはメイドさんでは無く、ローブに紋章入りの帽子、白魔道士の聖職者だった。
「……聖職者達では抑えきれない規模という事か」
「御意にございます。広場を中心に半径1キロ程。また、現地ではマンチェスター家のアッサム様にご助力頂いております」
「アッシャーか、助かる。すぐに行く」
短い言葉で事足りるのか、聖職者はまた部屋から飛び出して行った。
「私では手伝えない?」
「お気持ちだけ頂きます。城の中は安全ですので、こちらでお待ちください」
弱いと自分で言っていたくらいに弱い。アッサム様とナルさんの動きの中では、確かに足手まといにしかならない。
「いいえ」
「え?」
「何か今、我が君の心を曇らせた様なことが理由ではありません。あなた様は、人を傷付けない様に制圧する術をご存知ない。強い弱いで無く、訓練を受けてらっしゃらないから知らないだけなのです。そして、万一でも民が我が君を傷をつけた場合、私が民を傷つけてしまいます。民のために、どうかこちらにて」
そういうと私の手の甲にキスをしてから、ナルさんは空の玄関の方に去っていった。気がつくと索冥もいない。
ちょっと待て。整理しよう。
街では大変な事が起きている。私は使えない。私の心の中が、ナルさんにはバレバレ。手にキスされた。
「どういう事か聞いていいかな、アンズさん?」
「えへー」
「笑って誤魔化そうとしてるけど、無駄ですよ?」
「それ!」
「え?」
「同調率が高まってるんだよ。今カリンが僕の事分かったみたいに、ナルニッサもカリンの事が分かったの!」
それにしては精度高すぎないか?
ってそれどころじゃない!
空用の玄関に行き、街の方を見た。空からなら何か出来ない?普通の人間が怨嗟にやられても、それ程の飛び魔法は使えないだろうから、安全に思う。でも、ナルさんの気が散って、その隙を突かれてしまうかもしれない。そもそも何を手伝えるの?!
「ああ!もう!」
「おや、ご乱心ですね」
のんびりとした声で、リオネット様が街の中心の反対側から空の玄関に降りて来た。ペガサスの様な馬の様な騎獣に乗って。
「リオネット様!」
「何かありましたか?」
「街で怨嗟が、半径1キロ程だそうです。アッサム様とナルさんが戦っているのに、私は足手まといで……」
「簡潔な説明ありがとう。では、カリンには私のお手伝いを頼む事にしましょう」
リオネット様はにっこりと笑った。
0
お気に入りに追加
63
あなたにおすすめの小説
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない
亮亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。
不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。
そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。
帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。
そして邂逅する謎の組織。
萌の物語が始まる。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!
仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。
しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。
そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。
一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった!
これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!
女性が全く生まれない世界とか嘘ですよね?
青海 兎稀
恋愛
ただの一般人である主人公・ユヅキは、知らぬうちに全く知らない街の中にいた。ここがどこだかも分からず、ただ当てもなく歩いていた時、誰かにぶつかってしまい、そのまま意識を失う。
そして、意識を取り戻し、助けてくれたイケメンにこの世界には全く女性がいないことを知らされる。
そんなユヅキの逆ハーレムのお話。
異世界でただ美しく! 男女比1対5の世界で美形になる事を望んだ俺は戦力外で追い出されましたので自由に生きます!
石のやっさん
ファンタジー
主人公、理人は異世界召喚で異世界ルミナスにクラスごと召喚された。
クラスの人間が、優秀なジョブやスキルを持つなか、理人は『侍』という他に比べてかなり落ちるジョブだった為、魔族討伐メンバーから外され…追い出される事に!
だが、これは仕方が無い事だった…彼は戦う事よりも「美しくなる事」を望んでしまったからだ。
だが、ルミナスは男女比1対5の世界なので…まぁ色々起きます。
※私の書く男女比物が読みたい…そのリクエストに応えてみましたが、中編で終わる可能性は高いです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる